「ちゃんと伝えた」のに動いてもらえない。その原因は3つの「視点のズレ」だった。

説明の視点ズレを解消するピラミッド構造のイメージ図

「ちゃんと説明したはずなのに、なぜか伝わらない」

そういう経験が続くと、こんな考えが頭をよぎるかもしれません。

「もしかして、自分は説明が下手な人だと思われているのだろうか……。話し方のテクニックを磨かなければ――」

そう考えるのも無理はありません。でも、その前に確認してほしいことがあります。多くの場合、伝わらない原因は話し方ではなく、「視点の置き方」のズレにあるからです。

「一生懸命説明しているのに伝わらない人」は、視点のズレに気づかないまま話しています。一方、「サラッとした説明なのに知性が伝わる人」は、視点のズレを最初から整えているのです。

本記事では、その「視点のズレ」の3つのパターンと原因、そして今日から使える思考整理の方法をお伝えします。

「なぜ伝わらないのか」の正体がわかれば、次の説明から変わることができます。

話が伝わらない「視点のズレ」とは何か

視点を単純に分類すると「自分軸」と「相手軸」になります。

  • 自分軸:自分の気持ちや価値観を基に判断する。
  • 相手軸:相手の意思を尊重し、寄り添う(自ら相手の選択を受け入れる)。

自分軸で話すと、腑に落ちることは多いかもしれません。「伝えた感」も生じやすいでしょう。

しかし、聞いた相手が「?」という顔をしていたら、あなたの満足度と結果は逆行していることになります。

ここからは、ズレやすい視点の置き方を3つのパターンで説明します。読みながら、「これ、自分かもしれない」と感じるものがあれば、そこが改善のポイントです。

ズレ1.「自分の扱いやすさ」ばかりを大事にしている

「うまく説明できた」と感じているのに、相手の反応がいまひとつ——。

その場合、無意識のうちに自分が話しやすい・満足しやすいかたちで話を進めているかもしれません。

  • 上層部相手なのに、担当者目線に偏る
    (例)新しいツールの導入によって得られる利益やかかるコストを知りたい上層部に対して、UIの使い勝手のよさを熱心に説明しているような状況

  • 相手の理解レベルを考慮せず、ただ専門性に偏る
    (例)ITに詳しくない人に対して、専門用語を使って技術面の話ばかりを行なうような状況

思い当たるなら、説明の内容ではなく「誰のために話しているか」を見直す必要があります。

KANDO株式会社代表取締役の高橋輝行氏は著書でこう述べています。*1

「会話の目的は、話すことではなく、相手が行動を起こすこと。そのためには、相手の立場や思考のステージに合わせて語りかけなければなりません。」

まずはいったん、以下を思いきって捨ててみてください。

  • 相手が知りたい情報以外は捨てる
  • 相手が理解できない専門的な説明は捨てる

そこから、自分が伝えたいことを厳選して加える。これだけで、相手の反応が変わり、あなたが本当に伝えたいことにもスポットライトが当たるようになります。

ズレ2.「隠れている大事なこと」を無視している

「ちゃんと正確に伝えた」「自分の意図をしっかりと伝えた」——それなのに部下が動かない、指示通りに返ってこない。

そういう経験があるなら、伝えている内容は正確でも、相手が動くために必要なものが抜けている可能性があります。

前出の高橋氏は「背景や理由、思考のプロセスを一緒に伝えること。相手が納得して初めて、話は『伝わった』ことになる」と述べます。*1

  • (例)作業指示を正確に出しているのに、期待通りの成果物があがってこない
    作業の背景や目的が相手に伝わっていないため、相手は言われたことしかできず応用が利かない

  • (例)1on1を定期的に実施しているのに、部下の行動に変化が見られない
    部下の状況を把握せずに自分が話したいことを一方的に伝えるため、部下は常に「聞いて終わり」になっている

相手の背景・内側に「隠れている大事なこと」に目を向けると、伝え方はこう変わります。

  • 作業の背景と目的から伝えて「当事者意識」をもってもらう。
    →✖ 背景と目的がわからないと、相手も進む先がわからず他人事のまま。マニュアル外の事態が起きたときに手が止まってしまう。
    →◎ 当事者意識をもてば自分ごとになり、「応用力」も生まれやすくなる。

  • 相手の背景や考えていることを聞いてから1on1を実施し、「存在承認」「心理的安全性」を与える。
    →✖ 自分の考えや状況を無視された状態だと、部下は「受け身の聞き手」のまま。
    →◎「存在承認」と「心理的安全性」が担保されると、部下は「自律的な当事者」へと変化する。

「正確に伝えた」から「相手が動いた」へ。

その差を生むのは、隠れている大事なことを無視しないことです。

ズレ3.「自分のリスク回避」に重心を置いている

長い前置きをしてから順を追って話してしまう——その背景には、

  • まず過程を伝えて自分の努力を知ってもらいたい
  • 漏れなく正確に伝えたい
  • 結論だけ伝えることで責められるのが怖い
  • 先に失敗した理由を聞いてほしい

――など、さまざまな深層心理が隠れているかもしれません。

「ちゃんとしたい」「よく見せたい」「間違った解釈をしないでほしい」。その意識はよくわかります。でも、相手にとってはただ「わかりにくい話」になっているだけです。

『1分で話せ』(SBクリエイティブ, 2018)で武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長の伊藤羊一氏は、話がわからなくなる理由のひとつとして「結論がないこと」を挙げています。*2

(例)「明日の会議の件ですが、会議室の予約システムを見たら第1会議室が埋まっていて……第2会議室も確認しましたが、そこは明日の午後から工事が入るみたいで……」

「で、どうしてほしいの?」

自分を守ろうとするほど、評価は下がっていきます。

逆に言えば、結論から話せるようになるだけで、「話が早い人」「頭がいい人」という印象に変わります。

ただ、結論から話すことを即興でやるのはなかなか難しいもの――。

そこで有効なのが、事前準備としての思考整理です。

視点のズレを直し、まずは結論から伝えるビジネスパーソン

ピラミッド構造で「説明前」の思考を整理する方法

伊藤氏によると、ビジネスにおけるコミュニケーションは、原則として「ピラミッドのやり取り」で成立するといいます。

「最初に結論、そのあとに『3つの根拠』、そしてそれぞれの具体例を持ってくる」こと。これを意識すれば、相手とのやり取りがスムーズになると伊藤氏は言います。*2

そこで、「後輩に対して優先順位のつけ方をアドバイスする」場面を想定し、実際に試してみました。思考の順番はこのようなかたちです。*2

  1. いまある情報を並べる
  2. 「だから何?」で意味づけする
  3. 目的から判断軸をつくる
  4. 根拠と事例に整理する
  5. 結論を明確にする
  6. ピラミッドに組み上げる

実際にやってみたものはこちらです。

後輩への優先順位アドバイスをピラミッド構造で思考整理した実践例

このピラミッド構造の中身は、

  • 結論:「タスクAを最優先すべき」
  • 根拠:「期限が近い」「影響範囲が大きい」「重要度が高い」
  • 具体例:遅れた場合のリスクや、背景事情など

これらを言葉にすると――

 
 
 
タスクAを優先してはどうかな? 期限が近くて重要度も高い。しかも影響の範囲が大きい。プロジェクト全体のスケジュールにも関わることだし、今後の案件獲得にも影響するはず。大きなプロジェクトで会社の信用問題にも関わることなので、難しいかもしれないけれどタスクAを優先するのが得策かもしれない。どう思う?

整理しておくと、結論に説得力が生まれるだけでなく、判断のプロセスそのものを相手に渡すことができます。

「なぜそう判断したのか」が伝わることで、相手は納得して動けるようになるでしょう。

***
伝わらない原因は、話し方のテクニックより先に「視点のズレ」にあることがほとんどです。

  • 相手の扱いやすさを第一に考える
  • 作業の背景と目的から伝える
  • 相手の状況を先に理解する
  • 結論から伝える

この4つを意識するだけで、同じ内容を話しても相手への伝わり方は大きく変わります。
「また説明が伝わらなかった」という徒労感がなくなり、「話が早くてわかりやすい人」という評価に変わっていくはずです。

よくある質問(FAQ)

Q説明しても「で、結局なに?」と言われてしまいます。どうすれば?

A結論が後回しになっている可能性があります。まず結論を伝え、そのあとに根拠を3つほど添える「ピラミッド構造」を意識してみてください。事前にメモで整理しておくと、より効果的です。

Q「相手軸」で話すには、具体的にどうすればいいですか?

A「この人はいま何を知りたいのか?」「この人の理解レベルはどのくらいか?」を先に考えることが出発点です。相手が知りたい情報以外は思いきって削り、相手が扱いやすい言葉と順番で伝えるよう意識しましょう。

Q部下に指示を出しても期待どおりの成果が返ってきません。なぜ?

A作業内容だけでなく「背景」と「目的」が伝わっていない可能性があります。なぜその作業が必要なのかを先に共有すると、部下に当事者意識が生まれ、応用力も発揮されやすくなります。

Qピラミッド構造はどんな場面で使えますか?

A上司への報告、プレゼン、後輩へのアドバイス、メールなど、ビジネスのあらゆる場面で活用できます。「結論・根拠・具体例」の構成で整理する習慣をつけると、どんな状況でも伝わりやすい説明ができるようになります。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。