監修:秀道広先生(医師・広島市立病院機構理事長)

HAE治療の目標は、病気を完全にコントロールし、患者さんの生活を健常化することです。
HAEに対して、日々より効果的な薬剤を開発するための研究が続けられています。近年、HAEに有効な治療法の選択肢が増えて、HAE患者さんのなかには、腫れや痛みからほとんど全く解放された生活をおくることができる患者さんも多くおられます。

現在のHAE治療方針は、以下の3つとなります。

A. 発作時の治療(発作時の迅速な治療)
B. 長期予防(HAEの症状出現を継続的に予防するための治療)

C. 短期予防(発作を誘発する可能性のある歯科処置や外科的処置を受けるHAE患者の症状出現を予防するための治療)

A. 発作時の治療

発作時の治療の目的は、現れ始めた浮腫の進行を止め、症状を軽減させることです。これは特にのどの発作に対しては重要で、治療せずに放置すると窒息により死亡する可能性があります。

日本では現在、以下の2種類の発作時の治療薬があります。

  1. ブラジキニンB2受容体拮抗薬:フィラジル®皮下注30mgシリンジ
  2. 血漿由来C1インヒビター製剤:ベリナート® P静注用500
    ※日本では、ベリナート® P静注用500は、医療従事者によって静脈内に注射することが義務付けられています。フィラジル®は、医療従事者または患者さん自身による皮下注射が可能です。

B. 長期予防

長期予防のために治療薬を使用する目的は、定期的な治療により発作の頻度と重症度を減らすことにあります。

この治療を行うことについては、発作の頻度と重症度のほか、患者のQOL(生活の質)、医療インフラ、急性発作治療の効果などを考慮して、すべてのHAE患者に対して検討されるべきです。なお、長期予防を行っていても腫れやむくみの発作が起こる可能性はあるため、長期予防を行っているすべてのHAE患者は発作時の治療薬も保持しておくことが非常に重要です。

最近、長期予防効果のある新たなHAE治療薬が開発されています。現在、日本では以下の4つの長期予防治療薬が使用可能です。

  1. ベリナート®皮下注用2000
  2. タクザイロ®皮下注300㎎シリンジ
  3. オラデオ®カプセル150mg
  4. アナエブリ®皮下注200mgペン

今後、日本でも長期予防治療を受ける患者数が増えることが予想されています。

HAEの長期予防に特化した効果の高い治療薬が開発されるまでは、トラネキサム酸(トランサミン®)、蛋白同化ホルモン(ダナゾール®)が主に使用されていました。これらの薬は、ある程度発作の回数を減らすことができますが、効果が不十分、あるいはさまざまな副作用を伴うという欠点があります。弱毒化アンドロゲンは、高頻度でかつ/または重い症状に苦しむ患者さんで、一般に勧められているHAEに特化した治療薬が使えない場合も使用されるケースがあります。※1,3

C. 短期予防

発作のきっかけになることが知られている歯科処置や手術を受ける患者さんには、短期予防治療が推奨されます。
予防的治療を行わなかった患者の3分の1が局所の浮腫を生ずる可能性がありの50%は10 時間以内、75%は24 時間以内に出現します。しかし、処置前予防的治療を行うこと発症リスクを減すことができます。※2

海外のガイドラインでは C1インヒビターの静脈注射を短期予防における第1選択薬として推奨しており、日本でベリナート® P静注用500を短期予防のために使うことが認められています。抜歯などの歯科治療や侵襲を伴う手術前のできるだけ処置に近いタイミングで投与することが推奨されています。※2

D. HAE治療法(日本で承認されている治療)

ベリナート®P静注用500は、成人および小児におけるHAE発作の治療に適応を有するヒト血漿由来C1エステラーゼ阻害因子C1インヒビター製剤)です。

しかし「小児に対するC1インヒビター製剤の安全性は日本では確立されていないため、小児の発作時のC1インヒビター製剤の投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に行われます」※3

ベリナートは静脈内に注射され、医師による注射が承認されています。

詳細はhttps://pro.csl-info.com/product-brand/berinertpiv/

急性発作・短期予防
大人と子供
医療従事者による投与
静脈注射

発作時の治療

・短期予防

大人と子供

医療従事者による注射

静脈注射

急性発作・短期予防

皮下注射

長期予防

大人と子供

自己投与

大人と子供

医療従事者による投与

静脈注射

ベリナート®皮下注用2000は、米国では6歳以上の患者におけるHAE発作の日常的予防を適用とするヒト血漿由来C1インヒビターの濃縮製剤です。

日本では、ベリナート®皮下注用2000の8歳未満の小児等を対象とした臨床試験成績は得られていません※4

ベリナート®皮下注用2000は皮下注射により使われ、自己注射が承認されています。定期的に補充(週2回皮下注射)することで、HAE 急性発作の発症を抑制します。

詳細はhttps://pro.csl-info.com/product-brand/berinertsc/

急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防

長期予防

大人と子供

自己注射

皮下注射

フィラジル®皮下注30mgシリンジはブラジキニンB2受容体拮抗薬で、2歳以上のHAE急性発作の治療に適用があります。

フィラジル®皮下注30mgシリンジは皮下注射により使われ、自己注射することが承認されています。

詳細はhttps://www.firazyr.jp/patient/

急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防

大人と子供

皮下注射

急性発作

皮下注射

皮下注射

長期予防

大人と子供

自己投与

自己投与

発作時の治療

大人と子供

自己注射

皮下注射

タクザイロ®皮下注300mgシリンジは血漿カリクレイン阻害(モノクローナル抗体)で、12歳以上の患者におけるHAE発作出現の予防を適としています。タクザイロ®は皮下注射により使われ、自己注射することが承認されています。通常は、1回300mg(シリンジ1本)を2週間隔で皮下注射します。

継続的に発作がみられず、症状が安定している場合には、医師に相談のうえ1回300mgを4週間隔で皮下注射することもできます。

詳細はhttps://www.takhzyro.jp/

急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防

長期予防

大人と子供

自己注射

皮下注射

オラデオ®カプセルは血漿カリクレイン阻害で、成人および12歳以上の小児HAE発作出現の予防に適があります。オラデオ®は1日1回経口服用します。

詳細はwww.orladeyo.com

急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防

大人と子供

大人と子供

長期予防

長期予防

自己投与

自己投与

飲み薬

長期予防

大人と子供

自己服用

飲み薬

アナエブリ®皮下注200mgペンは活性化第XII因子阻害モノクローナル抗体(抗FXIIa mAb)で、成人および12歳以上の小児のHAEの発作出現の予防に適用があります。通常、初回に400mgを皮下注射し、以降は200mgを月1回皮下注射します。

急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防
急性発作・短期予防

長期予防

大人と子供

自己注射

皮下注射

HAEについてのより詳細な情報については下記をご参照ください。

HAE-info
HAEライフ

参照先:

※1 Iwamoto K., Yamamoto B., Ohsawa I., Honda D., et al., The diagnosis and treatment of hereditary angioedema patients in Japan: A patient reported outcome survey, Allergology International, Volume 70, Issue 2,2021.
https://doi.org/10.1016/j.alit.2020.09.008.
※2 WAO/EAACI遺伝性血管性浮腫治療ガイドライン―2021年改定版

https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/72/3/72_237/_article/-char/ja/
※3 遺伝性⾎管性浮腫(Hereditary angioedema: HAE)診療ガイドライン改訂 2023 年版 一般社団法人日本補体学会 HAE ガイドライン 作成委員会
https://square.umin.ac.jp/compl/common/images/disease-information/hae/HAEGuideline2023_final.pdf

https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6343426D1023_1_03/?view=frame&style=XML&lang=ja