
※記事内の手書き画像はすべて筆者が作成した
「なぜうまくいかないのだろう」「どのように判断を下せばいい?」
解決すべき問題が山積みで、考えれば考えるほど、問いが増える――そんなときに必要なのは「問いを減らす」ことなのかもしれません。
思考の "量" に飲み込まれてしまうとゴールから遠ざかってしまいます。問いが多いほど真剣に向き合っているように感じますが、実際には前に進めなくなることも多いものです。大切なのは、いかに "焦点" を絞れるか。
本記事では、問いを減らして焦点を絞る方法を、筆者の実践を交えながらご紹介します。
問いが増えるほど認知資源が分散?
「なにから手をつければいい? 解決の糸口が見えない」
「決断しなければいけないのに、懸念点ばかり思いつく」
頭のなかで会議が止まらない。あれも問題、これも不安。気づけば何時間も経っているのに、何も決められない……。
このように思考のループに陥っているとき、私たちは認知資源を消耗させてしまっています。
認知資源とは注意や思考、判断を行なうために必要なエネルギーのこと。使えば使うほど消耗していくと説明するのは、東京未来大学 モチベーション行動科学部講師の岩﨑智史氏です。*1
- 判断力の低下 *1
- 生産性の低下 *2
- 集中力低下 *1 *3
- ミスの増加 *3
- 疲労 *1
加えて、過去の出来事について悩み続ける "反芻思考" は、認知資源をより消耗させます。
「あのときにもっとこうしておけばよかった」
「また同じ失敗をしてしまうかもしれない」
このように意識が過去に向いてしまえば、本来フォーカスすべき目の前の問題から注意がそれ、悩みが増殖していきます。そのため決断も前進もできず、さらに悩み事が増えてしまう――これでは完全なる "負のループ" です。
↓
注意が分散する
↓
決断できない
↓
動けない
↓
さらに悩み事が生まれ、問いが増殖する
もともとは問題を解決するために思考していたはずなのに、解決から遠ざかってしまえば本末転倒。思考を前進させるには「もっと考える」のではなく「問いを減らす」のが重要だと言えるでしょう。

問いをひとつに統合する技法
「問いの断捨離」を実践するポイントは、大きくふたつあります。
1. 問題の一行化
散らばった問いを一文に圧縮します。問いのすべてに答えを見いだそうとせず、「これ以上削れない一文」にするのです。
(例)
- なぜ進捗が遅れているのか?
- 誰の判断で方針が変わったのか?
- このまま続けて成果は出るのか?
→「いま優先して立て直すべき事柄は何か?」
細かな疑問を追いかけるのではなく、行動につながる問いへと束ねていきます。
2. 目的の固定化
「何が解決すればゴールか?」を定めることも重要です。目的が曖昧なまま思考を巡らすと、問いが無限に増え広がってしまいます。
(例)
- 評価を下げたくない
- チームの信頼を失いたくない
- 長期的にも成功したい
全部本音でしょうが、同時に扱うと脳は混乱します。
そこで一度、そもそもの目的を振り返り、「今回は "今月の数字を立て直すこと" に集中する」といった具合に「どこまで考えればいいか」を明確にするのです。
問題の一行化 × 目的の固定化により、「問い」は圧縮できます。

問いの削減を実践してみた
筆者はオンライン主体の広報プロジェクトに関わっています。プロジェクトメンバーは全員本業をもち多忙で、常に人手不足の状態です。
やりとりは基本的にメールで行なわれ、オンラインミーティングも年に3回ほど。全体の流れを把握しているのは限られた一部の人のみという状況で、筆者が抱えている問いを削減してみます。
1. 問いを書き出す
いきなり「問題の一行化」するのは難しいと感じたので、まずは頭のなかにある問いをすべて洗い出してみることにしました。
指示された作業の成果物が無断で差し替えられたり、急な担当変更や作業の追加があったりしたときの「問い」を洗い出した様子がこちらです。

書き出してみると、状況を把握できないことが原因で問いが増えていると気づきました。しかし、仮に事情を知ったとしても、すぐに組織の仕組みが変わるわけではありません。ここにエネルギーを使い続けても、前進できるとは思えませんでした。
2. 目的から問いを整理する
このプロジェクトに参加した理由は「執筆の経験を積み、仕事の幅を広げること」でした。それをふまえて思考の棚卸しをしてみると……

どの問いも、筆者がひとりで悩んでも答えを見つけるのは難しいものだと結論づけられました。悩みの原因が外部にある問いはいったん棚上げします。そうすると、もっと内的な問いが浮かんできました。

組織の仕組みに感じている疑問も、もちろん解決すべきことです。しかし、いますぐに変えられるのは筆者自身の取り組み。
これらのステップをふんで圧縮された問いは「いまの環境はスキルアップにつながっているのか?」です。問いを圧縮すると、筆者が次にとれる行動が見えてきます。
この問いから、以下の行動が見えてきました。
- 筆者の品質不足による差し替えならば、今後に活かすためにフィードバックが欲しいとお願いしてみる
- 担当してみたい箇所や、書いてみたいテーマなどを伝えてみる
上記を実践できれば、執筆の経験を積めて、本来の目的の達成につながります。期間を定め、自分自身がスキルアップできるかどうかを確かめてみようと思えました。
自分でコントロールできる範囲が明確になった
実践してみて一番感じたメリットは、「感情に流された判断を避けられる」という点です。
悩みすぎると「もういいや」と投げ出したくなるなど、ネガティブな感情に影響されて決断してしまうことがあります。しかし「問い」を削れば冷静に、建設的な判断ができると感じました。
また、思考のベクトルを自分に向き直せるのもメリットだと感じました。悩みの原因が外部にあるとき、自分ひとりで悶々と考えても、なかなか答えにはたどり着けません。
しかし、問いを圧縮すれば自分でコントロールできる範囲が明確になります。「自分は何を変えられるのか?」という建設的な問いにたどり着けるのです。
やるときはここに注意して
「問いの削減」が「不満の整理」にならないよう注意が必要です。
不満を書き連ねるだけでは、「やめる」という短絡的な判断に傾きやすくなります。ネガティブな感情は一度脇に置き、目的に照らして問いを削ることが大切です。
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問いの圧縮では、本質的な問いに集中するために以下を削ります。
- いま扱わなくてもいい問い
- ゴールに直結しない問い
問題が山積みで思考が停滞しているときこそ、思いきって問いを減らしてみませんか?
よくある質問(FAQ)
Q. なぜ問いが増えると判断できなくなるのですか?
A. 問いが増えると注意が分散し、認知資源が消耗するためです。その結果、判断力や集中力が低下し、決断が難しくなります。
Q. 問いを減らすと、考えが浅くなりませんか?
A. むしろ逆です。重要な問いに集中できるため、思考の質が高まります。不要な問いを削ることで、本質的な判断がしやすくなります。
Q. 問いの一行化がうまくできません。コツはありますか?
A. 「この問いに答えたら次に何ができるか?」という観点で絞るのがコツです。行動につながらない問いは削っていきましょう。
Q. 感情が強くて問いを整理できない場合はどうすればいいですか?
A. まずは感情を書き出して切り離すのがおすすめです。そのうえで「本来の目的は何か?」に立ち戻ると、問いを整理しやすくなります。
Q. どのタイミングで問いを減らすべきですか?
A. 「考えているのに前に進まない」と感じたときがタイミングです。思考が停滞しているサインとして、問いの削減を試してみましょう。
*1 東京未来大学の教員が綴るWebマガジン|認知資源が減ると疲れるという話
*2 日本経済新聞|働き方の変化とモチベーション(2) 多忙化による認知資源の枯渇
*3 日経BOOKプラス|集中力アップに必要な「認知リソース」を補充する活動とは?
STUDY HACKER 編集部
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