「わかったつもり」はこれで解決。辛抱強すぎる聞き手 “AI” 相手に学びを深めた話

AIと対話しながら学ぶビジネスパーソン

本を読み、講義を受け、メモもとっているのに――

「勉強しているわりには、成長している実感がない」と感じたら、「まだ努力が足りないのだろうか?」と不安になりますよね。

でも、その問題は努力不足でも能力不足でもなく、学びの負荷が足りない点にあります。

本記事では、私たちの学びを妨げる「わかったつもり」バイアスを取り上げ、AIを活用して脳に負荷をかける学びのスタイルをご紹介します。

「わかったつもり」に妨害される?

 

わかりやすい講義を受けたり、本を読んだりしたあと「とてもよくわかった」と感じられた。それなのに、あとから振り返ると内容を思い出せない……。

この状態の厄介な点は、本人が学習できたと思い込んでしまうところです。わかった感覚(=わかったつもり)と、実際の理解は、まったくの別物です。「わかったつもり」は、私たちの欠けている部分を覆い隠し、学びを妨害しているのです。

探索活動を妨害する「わかったつもり」

教育心理学者の西林克彦氏は、「わかったつもり」についてこう指摘します。不十分な理解であっても「わかった」という確信をもって安定してしまうため、そこから先へ進む探索が行なわれない、と。

本当にわからなければ人はすぐ調べ直すものです。しかし「わかったつもり」になっている場合、その必要性自体を感じられなくなる。これが探索活動を妨害する最大の問題です。*1

勉強したら満足な人は要注意

また、学習院大学文学部心理学科教授の篠ヶ谷圭太氏も「勉強の効果が上がらない大きな要因のひとつは、『わかったつもりになる』こと」にあると指摘しています。

そして、以下の悪い流れを例に挙げ――

  1. 勉強すること自体が目的化
  2. 学習行為そのものに満足してしまう
  3. 結果、既知と未知の整理を怠りやすくなる

特にこの状態にある人が、「わかったつもり」になりやすいと示唆しています。*2

「今日もたくさん勉強した」という達成感だけで満足している人は、特に要注意です。

勉強しただけで満足しているビジネスパーソン

成長している人の学び方は何が違う?

これまでの内容をふまえると、「わかったつもり」は成長の機会を奪う大きな要因です。なぜなら自分の理解度を客観視できなくなり、探索を止めて、表面的な理解や勉強しているという事実だけで満足してしまうからです。つまり、それは勉強しながら思考を止めているようなもの。

だからこそ、成長している人は意図して脳に負荷をかけています

「脳に負荷をかける」とは、情報を受動的に受け取るのではなく、「主体的に脳を働かせる」ということ。「わかったつもり」防止には不可欠です。

ここで、ノートの取り方に関する興味深い研究を紹介しましょう。

▼研究内容
アメリカの高校生180人を次の4グループに分け、アフリカの架空の部族に関する文章を読んでもらい、勉強直後と1週間後の学習効果を比較する。

▼各グループへの指示
・Aグループ:読んだ内容を3行で要約してノートに書く
・Bグループ:重要箇所を自分の言葉で言い換えてノートに書く
・Cグループ:重要箇所を3行抜き書きする
・Dグループ:ただ文章を読むだけ

▼結果
AグループとBグループは、CグループとDグループよりも点数が高かった
・AグループとBグループの点数はほぼ変わらない
・CグループとDグループの学習効果はほぼ変わらない

この研究について『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(KADOKAWA,2024)の著者で米国内科専門医の安川康介氏は、脳の処理に負荷がかかっているかどうかが学習効果を左右すると分析しています。*3

抜き書きや読むだけといった受動的な学習は、情報をなぞるだけ。脳は深い処理を必要としません。一方、要約や言い換えでは理解した内容を再構成する必要があります。その過程で、自然と思考が働くのです。

成長している人の学び方には、この「深い思考をともなう工程」が含まれています。

自分の言葉に変えながら、深い思考をともなう工程を踏み学ぶ人

学びを「成長に役立てる」ためのシンプルな方法

したがって、学ぶ際には「深い思考をともなう工程」で脳に負荷をかけることが大切です。では、どのようにしてその工程を踏めばよいのでしょうか?

前出の研究を参考にすると、学びを「自分の言葉で説明する」ことが有益だとわかります。説明に詰まる部分は、理解が浅い証拠となるはずです。

前出の篠ヶ谷氏も、説明できない部分があれば「それらが、あらためて学び直すべきポイント」だと述べています。*2

ただ、その場合――ひとりで「説明するつもり」を続けるのは、なかなかハードルが高めです。毎回誰かに説明する前提があればいいですが、その相手を探すのはひと苦労。そこで、ぜひ活用していただきたいのがAIです。

「自分の言葉で説明する」ためのAI活用法

具体的にはAIに特定の人物の役割を与え、そのキャラクターに対して、自分が学んだ内容を説明する流れをつくります。AIの反応を受け取りながら話すことで思考が深まり、知識を整理しながらアウトプットできるはずです。

さっそく実践してみましょう。

AI相手に学びを「考える力」に変えてみた

今回の題材は、筆者が行動経済学分野の全体像をつかむために読んでいるダン・アリエリーの『予想どおりに不合理』(早川書房,2013)です。AIとの対話により、この本で得た知識の整理を行ないます。

目的が理解の整理なので、できるだけリラックスして行なえるよう、AIの役割は「聞き上手な同僚」「お昼休憩中の雑談相手」と、少し柔らかめに設定してみました。

▼ セッション始まりのプロンプト

行動経済学がどのようなものなのかを知りたくて、ダン・アリエリーの『予想どおりに不合理』を読んでいるよ。

# 目的
本から得た知識の整理

# 依頼内容
読書で得た知識をあなたに伝えるので、以下の設定で私と会話してください。

  • 行動経済学に詳しくないビジネスパーソン
  • 聞き上手な同僚
  • お昼休憩中の雑談

▼ 実際のやりとりの様子

先に示した「セッション始まりのプロンプト」を入力したところ、以下のような応答をAIが返してくれました。

Geminiとのセッション1

(以下は上画像内テキストの要約・AIパート部分↓)

【AI】

僕、行動経済学って、普通の経済学と何が違うのかずっと気になっていたんです。

たとえば、「あ、これは仕事や私生活でも心当たりがあるな」って感じた具体的なエピソードとかありますか?


そうすると――

必然的に、筆者が「自分の言葉で説明する状況」がつくられます。

Geminiとのセッション2

(以下は上画像内テキストの要約↓)

【筆者】

経済学とつくから、お金が動くような場面についての学問だと思ってたの。でもそれだけではなくて、自分の思考や決断が未来にどのような影響を及ぼすかっていうのも行動経済学のなかのひとつで、面白いと思った。

たとえば(例を挙げ――)

プラセボ効果って医療現場以外でもあるんだね。


すると、AIは上手に話を広げてくれます。

Geminiとのセッション3

(以下は上画像内テキストの要約↓)

【AI】

それってつまり中身よりも「自分の思い込み」のほうが、脳に与えるインパクトが強いってことですよね。ビジネスの場でもめちゃくちゃ大事な視点じゃないですか?

(例を示し――)

ほかにもその本に人間の「不合理」なクセについて書いてありましたか?


こうして対話は続きます。

AIは以下のように、テーマが深まる方向で話をつなげてくれました。

Geminiとのセッション4

(以下は上画像内テキストの要約↓)

【筆者】

最初に買った値段がその後の判断にも影響するらしいよ。たとえば「ちょっとこのカフェ高いな」と思っても、一度入っちゃえば、そのあとも通い続けたり。

【AI】

ええっ、それすごくわかります……! 一回「ここはこういうものだ」って受け入れちゃうと、次から抵抗がなくなっちゃうんですよね。(※アンカリング、とかでしたっけ?)

お昼休みの僕らで例えると、こんな感じですよね。
(例を挙げ――)

これって、「自分の過去の行動」を正当化しようとする心理も働いてるんでしょうか。

そうしてやり取りを続けるなか、内容を思い出しながら説明していると、自分の理解が曖昧だった点にも気づくことができます。

Geminiとのセッション5

(以下は上画像内テキストの要約↓)

【筆者】

確か「アンカリング」だったと思うけど、自信ない……!
その背景もふまえて、読み直してみるね。

その結果、自然と復習につながりました。

▼ 所感と注意点

この実践では、気づいていなかった "理解が甘い部分" が明確になり、学び直すべき箇所を放置せずに済みました。これは大きな利点です。

ただ、やり取りのなかで、AIが知識を補ってくれる部分には注意が必要です。どのAIにも必ず入力スペースの下に、「間違えることがあります」「重要な情報は確認するようにしてください」といったことが記されています。対話のリズムに流されて、つい、そのまま言われたことを鵜呑みにしてしまわないよう気をつけましょう。

特にこの実践では、「説明がうまくいくかどうか」「自分の言葉で説明できているかどうか」を確認し、理解の甘さに気づかせてくれる相手として活用するのが得策です。

***
学んだ内容を自分の言葉で説明する――それだけで、学習の質は大きく変わります。時と場所を選ばないAIを相手に、今日からさっそく試してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 「わかったつもり」はなぜ起こるのですか?
A. わかりやすい講義や本に触れると「理解できた」という感覚が生まれますが、それは表面的な理解にすぎません。教育心理学者の西林克彦氏によれば、不十分な理解でも「わかった」という確信を持ってしまうと、そこから先への探索が止まってしまうのです。
Q. 「脳に負荷をかける学び」とは具体的にどういうことですか?
A. 情報を受動的に受け取るのではなく、要約や自分の言葉への言い換えなど、脳に深い処理を求める学び方のことです。研究では、重要箇所を自分の言葉で書き直したグループは、ただ抜き書きしたグループより高い学習効果を示しています。
Q. AIを使った学習で注意すべき点はありますか?
A. AIが補ってくれる知識をそのまま鵜呑みにしないことです。どのAIにも「間違えることがあります」と記されているように、情報の正確性は自分で確認する必要があります。この実践では、AIを「理解の甘さに気づかせてくれる相手」として活用するのが得策です。
Q. AIとの対話で使うプロンプトのコツは何ですか?
A. AIに役割を与えると効果的です。本記事では「行動経済学に詳しくないビジネスパーソン」「聞き上手な同僚」「お昼休憩中の雑談相手」と設定しました。リラックスした雰囲気を作ることで、自然な言葉で説明しやすくなります。
Q. この方法は読書以外にも使えますか?
A. はい。セミナーや講義の内容、資格試験の学習、業務で得た知識など、あらゆる学びに応用できます。大切なのは「学んだ内容を自分の言葉で説明する」という工程を踏むこと。AIはその相手として、時間や場所を問わず活用できる点が大きなメリットです。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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