不透明な時代の家づくり――住まい手とつくり手が共有しておきたい三つのこと

東日本大震災のあと、合板の生産工場が被災し、建築用の合板が市場から姿を消した時期がありました。さらにコロナ禍では半導体不足の影響を受け、トイレや給湯器といった住宅設備が長く入荷しない状況も続きました。木材価格が急騰したいわゆるウッドショック、そして現在も続く物価高騰による建築資材の値上がり。振り返れば、この十数年のあいだ、家づくりは社会情勢の影響を強く受け続けてきたと言えるでしょう。

いまも世界情勢は落ち着いたとは言えません。ウクライナ情勢の長期化に加え、中東での緊張も高まり、エネルギー価格の上昇は避けられない見通しです。こうした状況のなかで、これから家づくりを進める人、あるいは考え始めた人は、どのような心構えを持っておくべきなのでしょうか。

まず大切なのは、自分たちの要望を整理し、優先順位をはっきりさせることです。住まいに求めることを頭の中だけで考えていると、考えはどうしても揺れ動きます。紙に書き出し、言葉にして整理することで、はじめて輪郭が見えてきます。そして、その内容を設計者や工務店にしっかり伝えること。家づくりは受け身では進みません。住まい手が主体的に考え、共有することが、よい住まいへの第一歩になります。

その整理の中には、必ず予算も含めておく必要があります。予算が依頼先の家づくりとかけ離れてしまえば、いくら希望を並べても入口で立ち止まってしまいます。相手の反応をうかがうような伝え方ではなく、「自分たちはここまで出せる」という現実的な数字を率直に示すこと。それが設計の方針を定める大切な材料になります。

次に考えておきたいのは、予算にある程度の余裕を持たせておくことです。通常、工事は契約金額に基づいて進みますが、社会情勢の影響で資材価格が急に変わることもあります。住宅工事では材料を工程に合わせて発注するため、契約時には想定できなかった値上がりが起きる場合もあります。つくり手の努力だけでは吸収しきれない状況になれば、追加の負担をお願いする場面が生まれる可能性もあります。

実際、ウッドショックの際には、高騰した木材費を工務店が抱え込み、結果として資金繰りが悪化し、事業を続けられなくなった会社もありました。事情はさまざまだったと思いますが、その背景には、施主とつくり手のあいだに十分な信頼関係が築かれていなかったこともあったのかもしれません。

依頼先が決まったら、お互いに信頼関係を育てていく姿勢が欠かせません。家づくりは数か月から一年以上に及ぶ共同作業です。途中で困難が生じることもあります。そのとき、同じ方向を見て乗り越えられる関係であるかどうかが、とても重要になります。

もうひとつ考えておきたいのが工期です。住宅は多くの材料や設備を組み合わせて完成しますが、世界情勢の影響で納期が読みにくくなることがあります。以前のように合板や設備機器が手に入らない、あるいは希望していた製品が長く入荷しないということも起こり得ます。代替品で対応するか、希望の製品を待つか。その判断によっては完成時期が変わることもあるでしょう。だからこそ、工期にはある程度の幅を見ておくことが大切です。

もちろん、理由のない遅れは許されるものではありません。しかし、住まい手もつくり手も、それぞれ生活や経営を抱えています。状況を丁寧に共有し、最善の方法を一緒に考えていく姿勢が求められます。

社会情勢の影響を受けるのは、住まい手だけでも、つくり手だけでもありません。どちらかが優位で、どちらかが被害者という関係ではなく、同じ状況をともに乗り越える仲間のような関係が理想です。

一つの建物が無事に完成へと導かれるとき、そこには施主の力、設計の力、そして現場の力が重なり合っています。先行きが見えにくい時代だからこそ、その三つの力がより強く結びつく家づくりが大切なのだと、私たちフラグシップは感じています。

▼現在進行中の砺波市/千保の家
20260305 (17)


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