モチベーションを管理するな。やる気が「勝手に湧く人」の順番の話

前を向いて颯爽と歩くビジネスパーソンの姿(目標なしから始めるキャリアのイメージ)

「5年後の理想像から逆算しよう」
「まずは明確なゴールを決めよう」

キャリア論やビジネスの現場で、耳にタコができるほど聞く言葉です。正論だとわかってはいる。でも、こう言われるたびに、どこか気が重くなる——そんな感覚はないでしょうか。

明確な夢を語る人を見て、焦る必要はありません。あなたは「目標を決めてから動く」のではなく、「動きながら方向性を見つける」ほうが向いているタイプなだけかもしれません。

ビジネスの世界では、目標から逆算して物事を進める習慣が根強くあります。けれど人によっては、身近な行動を積み上げながら考えるほうが、無理なく動ける場合もあるのです。

今回は、そんな「やりながら見つける」タイプの人に向けて、楽しみながらキャリアや興味の方向性を見つけていく方法を紹介します。

目標が立てられないのは、欠点じゃない

目標を先に設定し、そこから現在の行動を逆算する方法は、キャリア論や勉強法では定番です。実際、目標を設定することで行動量が増え、成果につながりやすいことは、心理学でも広く知られています。

ただ、そのやり方がどうしても苦手な人もいます。次のような感覚に、心当たりはないでしょうか?

「何をやりたいの?」と聞かれると困る

「どうしてもこれを実現したい」という欲が薄い

5年後の理想像や業務目標などを考えるのが苦手

やりたいこと探しをしているうちに、時間だけが過ぎていく

無理やり目標を立てても、途中で「違う気がする」と感じやすい

明確な夢を語れる人を見ると、焦りを覚える

もし複数当てはまるなら、「目標を決めてから動く」よりも、「身近な行動から方向性を見つける」ほうが合っているタイプかもしれません。

じつはこのタイプは、何かに取り組む際、その内容に無理がないため、前向きな気持ちが自然と続きやすいという特徴があります。

脳科学者の岩崎一郎氏は、新しいことを始めるときには、できるだけ早い段階で「良い点」「できている点」「成長している点」を、小さくてもいいので探し、ポジティブなフィードバックをたくさんすることが、やる気を高め、維持することにつながると語っています。*1

つまり、取り組んでいるときの自分の感覚そのものがポジティブなフィードバックになるため、自分を奮い立たせる必要がありません。行動が次の行動を呼ぶ循環ができ、自然と前へ進めるのです。

ただし、ここでいう「やる気」は、世間でよく語られる「モチベーション」とは少し違います。

モチベーションは、高める・維持する・切らさないように管理する——そんな文脈で語られがちです。けれど、管理しないと消えてしまうような燃料に自分の歩みを預けるのは、心もとないと思いませんか。

やりながら進むタイプが使うのは、そうした「大きなやる気」ではなく、行動のたびにその場で生まれる小さな手応えです。燃料は走りながらつくられる。事前に貯めておくものではありません。

だから、「やる気を出す」「モチベーションを保つ」という発想そのものが不要になるのです。その日のやる気の高低を、もう気にしなくていい。

やりながら進む人のメリット①=やる気を管理しなくていい

自分に合うキャリアの方向性を見つけて笑顔のビジネスパーソン

目標を決めないほうが「本当に合うもの」に出会える理由

このタイプの最大のメリットは、本当に自分に合うものを見つけやすいことです。

目標から逆算するタイプの場合、「将来役立ちそうだから」「市場価値が高そうだから」といった損得が、目標設定に入り込みやすくなります。もちろん、これはこれで効率的に成果へ近づける強みでもあります。

一方、やりながら見つけるタイプは、実際に触れて感じたことをベースに次の行動につなげていけます。そのため損得勘定ではなく、自分の感覚を優先できるというメリットがあるのです。

やりながら進む人のメリット②=本当に自分に合うものに出会える

動きながら方向性を見つける、3つのステップ

では、目標設定より「試しながら見つける」ほうが合う人は、具体的にどう動けばいいのでしょうか。キャリア選択を例に、3つのステップを紹介します。

STEP1:「自分の好きなもの」をベースに、広げる・掘り下げる

まず、自分の好きなものを広げたり掘り下げたりすることを、意識的に行ないます。

たとえば……

映画が好き
(広げる)同じ監督の作品以外に、脚本家や撮影技法にも興味を広げてみる
(深める)レビューを書いたり、「なぜこの作品が好きなのか」を言語化してみる

カフェ巡りが好き
(広げる)内装デザイン、BGM、接客、経営スタイルにも目を向ける
(深める)コーヒー豆や抽出方法を調べ、自宅でも淹れてみる

生成AIが気になる
(広げる)業務効率化、著作権、教育、働き方の変化にも触れてみる
(深める)実際の仕事で毎日1回使い、使い方を改善してみる

自分の好きなものに関連することを試してみると、無理なく視野を広げることができます。

STEP2:感想をメモする

テーブルでノートとペンを使い、自分の感情や気づきをメモする姿

STEP1で新しい体験をしたら、そのときの自分の反応を簡単に記録します。

Gallup認定ストレングスコーチのしずかみちこ氏は、以下の4つをメモすることで、自分の強みや興味を見つけやすくなると語っています。*2

■ 感情

■ 身体感覚

■ 違和感

■ 他者からのフィードバック

たとえば、こんなふうにメモします。

■ 「調べていたら、気づいたら1時間経っていた」

■ 「人に説明するとき、意外と楽しかった」

■ 「作業はできたけど、正直ワクワクしなかった」

■ 「その説明わかりやすいね、と言われた」

簡単なメモですが、「何に反応したか」を蓄積していくと、自分の興味や価値観の偏りが見えやすくなります。

STEP3:繰り返し出てくることに注目する

体験と記録を続けていると、似た内容が繰り返し登場するようになります。

✓ 「新しいツールを試したとき」に毎回テンションが上がっている

▶ 新しい仕組みを覚えることや、業務改善そのものに興味があるかもしれない

✓ カフェ巡りをしていると、毎回「導線」や「接客」を見てしまう

▶ 空間設計や体験設計に関心があるのかもしれない

✓ SNSでは、商品紹介より「人の働き方」の投稿を読んでしまう

▶ キャリア支援や組織づくりへの関心が隠れているかもしれない

最初はバラバラに見えていた興味も、あとから振り返ると、「自分は○○に惹かれやすい」と線でつながってくるのです。

こうして見つかった興味の断片を手がかりに、さらに新しい体験を重ねていく。このスタイルが、「やりながら見つける」タイプの人にとって、無理なく続けやすいキャリアの見つけ方なのです。

***

ゴールを決めてから進むことだけが、正解ではありません。少しずつ世界を広げながら、自分の肌感覚を頼りに進むというやり方が合う場合もあります。

まずは今週、自分の好きなものを1つ選び、それに触れたときの感想を3行だけメモするところから始めてみてください。その小さな記録の積み重ねが、あなただけの方向性を浮かび上がらせてくれるはずです。

よくある質問(FAQ)

Q. 目標がないとキャリアは築けないですか?

そんなことはありません。目標から逆算せず、身近な行動を試しながら方向性を見つけるやり方も有効です。自分の感覚を頼りに進める分、本当に合うものに出会いやすくなります。

Q. やりたいことが見つからないときはどうすればいいですか?

まず自分の好きなものを広げ・掘り下げ、そのとき感じたことをメモしましょう。繰り返し出てくる反応に注目すると、隠れた興味や方向性が線でつながって見えてきます。

Q. 目標を立てるのが苦手なのは性格的な欠点ですか?

欠点ではありません。逆算型が合う人もいれば、動きながら見つける積み上げ型が合う人もいます。自分に無理のないやり方を選ぶことが、前向きに続けるコツです。

Q. モチベーションが続かず、いつも途中でやめてしまいます。

モチベーションを管理しようとする必要はありません。やりながら見つけるタイプは、行動の中で生まれる小さな手応えが次の行動につながるため、大きなやる気を保たなくても自然と続けられます。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。