「忙しいから趣味は後回し」が逆効果な理由。心理学が示す "回復のメカニズム"

忙しいからこそあえて好きなことをする女性――心理学的に正しい理由

「最近、好きなことをする余裕がない」——こう感じることはありませんか?

「いまは頑張りどきだから」「落ち着いてから楽しめばいい」。そう考えて、仕事や勉強で忙しい毎日を「やるべきこと」だけで埋めてしまう人も少なくありません。

しかし心理学研究では、忙しい時期にこそ、あえて「好きなこと」をする時間を持つことが、ストレスの軽減や集中力の回復につながる可能性が示されています。

本記事では、「忙しいときこそ、好きなことをやる」がなぜ良いのかを、心理学の研究をもとに解説します。

「仕事から離れる時間」がストレスを消す。心理的デタッチメントとは

こんなエッセイがありました。

Why you should pursue a passion project this exam season

(試験期間中に情熱を傾けられるプロジェクトに取り組むべき理由)

キングスカレッジロンドンの学生が、試験期間中に「編み物にチャレンジする」という小さなプロジェクトを並行して行なった結果、心の健康や時間管理などにいい影響があったというものです。*1

これは大学生の個人的な体験談に過ぎませんが、このように「忙しいときにあえて好きなことをする」というのは、じつは心理学の観点から見ても正しい行動なのです。

仕事や勉強から「あえて離れる時間」が疲労とストレスを減らす!

心理学では、プライベートの時間に仕事から物理的・心理的に距離をとることで、仕事によるストレスが和らぎ、疲労からの回復に効果的であることがわかっています。*2

これは「心理的デタッチメント」と呼ばれる考え方。

先ほどのエッセイのように、試験期間中でも1日中勉強漬けにするのではなく、あえて編み物の時間をとることは、まさに「心理的デタッチメント」にあたります。

やるべきことが山積みで、「すべての時間をそこに注ぎ込まないと」と思っているときこそ、あえて趣味の時間をとる。この「切り替え」が、結果的にストレスを和らげ、集中力や生活全体のコンディションを整えてくれるのです。

キングス・カレッジ・ロンドンに掲載されたエッセイのトップ画像

「ちょうどいい趣味」の条件。何でもいいわけではない

とはいえ、「好きなことなら何でも回復につながる」というわけでもありません。回復効果が高い活動には、いくつか共通点があります。

なかでも重要なのが、「少しだけ挑戦感があること」と、「自分で選んでいる感覚があること」です。

1. 少しだけ挑戦感があること(マスタリー体験)

仕事以外の活動を通じて、仕事から意識を切り離しつつ、挑戦的な経験や学習機会を得ることを「マスタリー体験」といいます。*3

挑戦・学習するわけなので、ある程度の努力や試行錯誤が必要です。一見負担が大きいように見えますが、「マスタリー体験」によって「スキル」「能力」「自己効力感」が育ち、むしろ心理的な回復につながることがわかっています。*3

これをふまえると、回復効果が高い活動のポイントは以下のふたつになります。

  • 仕事とは違う種類の挑戦であること
  • 頭や身体を使い、「自分でやった」という感覚が残る活動

つまり、完全に受動的な趣味より、適度に能動性のある趣味のほうがおすすめなのです。

✅ おすすめ:「自分で成し遂げた」という感覚が残りやすい行動

  • 新しいレシピに挑戦する
  • ギターで好きな曲を弾く練習をする
  • リフティングの練習をする

⚠️ NG:受け身になりがちな行動

  • 映画やアニメを観る
  • 本・マンガを読む
  • SNSやショート動画を見る

2. 「自分で選んでいる感覚」があること

もうひとつ大切なのが、「自分で選んでいる感覚」です。

自己決定理論では、人は自分で決めて行動すると、高い動機づけが生まれ、結果として学習効果や創造性、幸福感が高まることがわかっています。*4

逆に、「やらなければ」「役に立たなければ」という義務感が強くなると、回復効果は得られないのです。

【例】同じ英会話でも……

●「オンラインでいろんな国の先生と雑談をするのが楽しいから、英会話をやる」
→ 自分のために、自分で選択した活動なのでOK

●「どうせやるなら、将来につながることを趣味にしなければ。英会話をやろう」
→ 楽しさより成果を優先しているので、回復につながらない

マスタリー体験の例――あえて難しいことに挑戦するビジネスパーソン

忙しい時期の「小さな時間」のつくり方

「忙しい時期に趣味の時間を捻出するのは無理」と感じる人も多いでしょう。ここでは、取り入れやすい簡単なコツを紹介します。

予定として先に入れておく

仕事の予定と同じように、手帳やスケジュール表に先に入れておくと、「ここは趣味のための時間」と認識しやすくなり、予定が仕事に侵食されにくくなります。

【例】

  • 火曜と木曜の22時から20分はギターを弾く時間
  • 日曜の朝は散歩しながら写真を撮る

「選べるリスト」をつくっておく

回復が目的なので、ストイックに追い込む必要はありません。あらかじめ、「これなら楽しめそう」という行動をいくつかリスト化しておき、その日の気分で選べるようにしておくと、心理的ハードルが下がります。

【例】イラストを描くのが趣味の場合

このようなリストをつくり、その日の気分で選ぶ。

  • 15分だけ好きなキャラクターのラフスケッチを描く
  • SNSに投稿する用ではなく、自分だけの落書きを描く
  • 新しいブラシ設定や描画ツールを試してみる

忙しいときには、あらかじめ「好きなこと」をやる時間を予定に入れてしまう

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大切なのは、短時間でも「切り替えの時間」を生活に組み込むこと。忙しい時期こそ、意図的に「好きなこと」をする時間をつくってみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q. 忙しいときに趣味の時間をとると、かえって効率が下がりませんか?

逆です。趣味の時間は「心理的デタッチメント」として機能し、ストレスを和らげて翌日の集中力を回復させます。

Q. 回復効果が高い趣味と低い趣味の違いは何ですか?

「自分で選んでいる」「少し挑戦感がある」活動が高い効果を持ちます。受け身の動画視聴やSNS閲覧は効果が出にくいとされています。

Q. 忙しくて趣味の時間がとれない場合はどうすればいいですか?

15〜20分でも効果があります。仕事の予定と同様にスケジュールに先入れし、「選べるリスト」を用意しておくと始めやすくなります。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。