
かつて職場で評価される人は、「知識が多い人」「専門用語を使いこなす人」だと考えられていました。情報にアクセスできる人ほど有利だった時代です。
しかし2026年の現在、状況は大きく変わりました。
AIの普及によって、誰でも短時間で膨大な情報や答えにアクセスできるようになったからです。つまり、「知識を知っていること」そのものの価値は、以前ほど高くありません。
では――いま職場で評価を分けているものは何でしょうか。
それは、誠実さや適応力といった、人としての振る舞いです。
AIを使う環境だからこそ、「この人は信頼できるか」「チームで仕事を進められるか」といった点が、以前にも増して見られるようになっています。
実際、AI時代の職場では「能力が低い」と思われてしまう人には、ある共通した行動パターンがあります。ここでは、2026年の働き方のなかで特に評価を下げやすい5つの振る舞いを見ていきましょう。
- 1.「AI任せ」の無機質なコミュニケーション
- 2.「専門用語」を武器にするデジタル知ったかぶり
- 3. ハイブリッド時代の「自律性」の欠如
- 4.「ひとりで抱え込む」非効率な働き方
- 5.「感情のダダ漏れ」が周囲を疲れさせる
- よくある質問(FAQ)
1.「AI任せ」の無機質なコミュニケーション
AIが文章作成を手助けしてくれる時代になり、メールや資料の作成は以前より簡単になりました。しかしその便利さゆえに、AIがつくった文章をそのまま送ってしまう人も増えています。
たとえば、どこか機械的で長すぎるメールや、誰にでも当てはまるような曖昧な表現の資料。こうした文章は一見整っているように見えても、読む側にはなんとなく伝わってしまいます。
こんなふうに――。
だからこそ、職場で信頼される人はAIをそのまま使うのではなく、必ず自分の視点を加えています。
大きな工夫は要りません。AIがつくった文章に対して、相手に合わせた一文を加えたり、要点を整理したりするだけでもいいのです。
AIの出力はあくまでも下書きだと考え、自分の言葉という “血の通った1割” を加えることが、信頼されるコミュニケーションの鍵となるでしょう。
自動化システムを過度に信頼し、依存する傾向をオートメーションバイアス(Automation Bias)といいます。医療分野の研究では、この影響で判断ミスのリスクが約26%増加するという報告も(Goddard et al., 2012)。AI時代だからこそ注意が必要です。*1
2.「専門用語」を武器にするデジタル知ったかぶり
新しいテクノロジーが登場すると、それに関連する専門用語やカタカナ語も一気に増えます。AI、DX、LLM、アーキテクチャ――。
こうした専門用語を並べることで、知的に見せようとする人もいるでしょう。しかし、この振る舞いは “逆効果” になることが少なくありません。
なぜなら、本当に理解している人ほど、難しいことを簡単な言葉で説明できるからです。たとえば高IQ集団「MENSA(メンサ)」の元会員として知られる脳科学者の中野信子氏は、複雑な理論を日常の悩みなどに絡めて、非常にわかりやすく解説してくれます。
ドイツ生まれの理論物理学者、アルベルト・アインシュタインが言ったとされる、この言葉も有名です。
つまり、専門用語ばかりを使う人は、むしろ「本質を理解していないのではないか」「上澄み(表面)だけをなぞっているのではないか」と感じられてしまうリスクがあるのです。
知性とは、難しい言葉を使うことではありません。相手に合わせて伝え方を変えられることこそ、理解の深さ――知性の深さの証です。
たとえば、「AIが最適化してくれる」と言う代わりに、「AIがデータを見て一番よい方法を選んでくれる」と説明する。そんな少しの工夫が、知ったかぶりではない本当の知性を感じさせてくれるでしょう。
情報処理がスムーズなほど対象を肯定的に評価する心理現象を処理流暢性(Processing Fluency)といいます。画像でも、文章でも、人物でも、企業でも、理解しやすいほど「正しい」「好ましい」「低リスク」と評価される傾向があります(八木他, 2023)。*2
3. ハイブリッド時代の「自律性」の欠如
2026年の働き方では、リモートと出社を組み合わせたハイブリッドワークが一般的になっています。働く場所や時間の自由度が増えた一方で、求められる能力も変化しました。
それが「自律性」です。
どんなに便利なツールを使っていても、通知に振り回されて集中できない、オンライン会議に遅れる、作業の優先順位が整理できないといった状況であれば、「自己管理ができない人」という印象につながります。
そして職場ではしばしば、
と判断されてしまいます。
一方、ハイブリッドワークで信頼される人は、自分なりのルールをもっています。集中したい時間帯を確保する、通知の優先度を整理する、タスクを「今日やること」と「今週やること」に分けておくなど――。
これらは、決して特別なスキルではありません。自分の働き方を自分で設計しているかどうかの差なのです。
大切なのは、自分の時間と注意力の配分を、自分にとって最適なかたちで、自ら決められること。
それが、ハイブリッド時代に求められる「自律性」の正体です。
タスクを切り替えても、前のタスクへの注意が頭に残り続け、次の作業のパフォーマンスが低下する現象を注意残余(Attention Residue)といいます(Leroy, 2009)。*3
このハイブリッド時代に “自分なりのルール” をもたず、通知のたびに作業を中断させていたら、「注意の残りカス」を蓄積させてしまいかねません。
4.「ひとりで抱え込む」非効率な働き方
仕事で行き詰まったとき、「自分でなんとかしなければ」と考える人は多いでしょう。
しかし、わからないことをひとりで抱え込み、何時間も悩んだ末に締切直前になって「できませんでした」と報告する――これは間違いなくチーム全体の生産性を下げてしまう行動です。
つまり、
ということ。
むしろ評価されるのは、早い段階で助けを求められる人です。2026年における有能さの定義は「スピードとコラボレーション」と言えるでしょう。
いち早くAIや同僚に質問するなどして、早く問題を解決するほうが、結果としてチーム全体の成果につながります。
「助けて」と言えることは、弱さではありません。チームに貢献できる「真に賢い人」の姿勢であり、仕事を前に進める力でもあるのです。

5.「感情のダダ漏れ」が周囲を疲れさせる
チャットやビデオ会議が中心の職場では、感情の伝わり方も変わりました。対面よりもニュアンスが伝わりにくいぶん、態度や言葉のトーンが強く印象に残りやすいのです。
たとえば、不機嫌そうな返信、焦りを感じさせる言葉、会議中の露骨な苛立ち。
こうした感情が続くと、周囲は
と感じてしまいます。
近年の組織では、心理的安全性が重視されています。つまり、「安心して発言できる環境」をつくれるかどうかが大事だということ。その環境を壊してしまう人は、能力とは別の意味で「リスク」と見なされることがあります。
つまり、真の知性とは “単に知識が多いこと” ではなく、感情をコントロールし、冷静に振る舞えることです。2026年においては、ますます感情を適切に管理・活用する能力(EQ:心の知能指数)が不可欠になってくるでしょう。
自分や他者の感情を認識し、適切に管理・活用する能力をEQ(Emotional Intelligence:心の知能指数)といいます。1990年に提唱された概念を、心理学者のダニエル・ゴールマン氏が著書で普及させました。IQだけでは測れない「仕事や人間関係での成功要因」として広く知られています(Goleman, 1995)。*4
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AIによって、知識へのアクセスは誰にとっても平等になりました。だからこそ、職場で評価されるポイントも変化しています。
「賢いフリ」を脱ぎ捨て、素直に学び、誠実に働き、周囲と協力しましょう。
その「等身大」の振る舞いこそが、2026年で最も評価される「高IQな振る舞い」――つまり、最強の武器となるのです。
よくある質問(FAQ)
*1: PMC|Automation bias: a systematic review of frequency, effect mediators, and mitigators
*2: 八木善彦・笠置遊・井上和哉(2023)「処理流暢性を巡る議論の変遷」『心理学研究』94巻3号, pp.261-280.
*3: ScienceDirect|Why is it so hard to do my work? The challenge of attention residue when switching between work tasks
*4: APA PsycNet|Emotional intelligence.
STUDY HACKER 編集部
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