もう記録に追われない。AI時代に実践したい「考えるメモ」の習慣

手書きで「解釈」と「次の行動」だけを書いたもの

毎日のようにさまざまなメモを残しているのに、いまひとつ役に立っていない——そんな悩みを抱えていませんか?

会議やミーティングのメモ、部署やチームの共有事項、仕事に役立つ情報、思いついたことを書き留めたノート。どれも欠かせない、役立てる前提で残したはずなのに。気づけば溜まっていくばかりで、開くことすらなくなっている……。

もしかすると、メモの取り方そのものを見直す時期が来ているのかもしれません。

生成AIが日常のなかに浸透しているいま、「記録」という作業は人間がすべて担う必要がなくなりつつあります。

そこで本記事では、事実の記録はAIに任せ、人間は「意味づけ」と「次の行動」だけを書く——という新しいメモ習慣を提案します。

「記録メモ」は増えるほど役に立てにくい

私たちは、「メモをとる習慣はあるけれど、物理的にも内容的にも、メモの整理にすごく長けているわけではない」というケースがほとんどではないでしょうか。

そうなると、誰しもこんな経験があるはずです。

「あの会議の途中で出た〇〇の話、どこかにメモしたはずなんだけど……」

そうして、あちこち探して、やっとの思いでメモを見つけるわけです。

しかし、そのメモを読んでみたら、

  • 当時の文脈が思い出せない
  • ポイントがどの箇所なのかわからない

という状況があるかもしれません。だから私たちは、決まってこう言ってしまうのです。

「これ、つまり、なんだったっけ……?」

会議で出た発言、誰が何をやって何をやっていないかのリスト、合間に読んだ記事の要約、留意しておくこと——などなど。

どれもが正確に記録されているはずなのに、なぜか見返してもよくわからない、頭に入ってこないとすれば、以下の原因が考えられます。

  • 情報量が多すぎる
    →文脈を思い出そうとする負荷が増える

  • 単につらつらと書き留めている
    構造化されていないのでわかりにくい
    深く考えていないので印象に残りにくい

深く考えなければ定着しない

認知心理学の研究では、単なる事実の記録よりも「意味づけ」をともなう情報のほうが、記憶への定着率が高いことがわかっています。

心理学者のファーガス・クレイク氏とロバート・ロックハート氏が提唱した「処理水準説」によれば、情報を深く処理するほど、記憶に残りやすくなるとされています。*1

つまり、出来事をそのまま書き写すだけの「浅い処理」では、記憶にも思考にも残りにくいのです。「この出来事は自分にとって何を意味するのか」という解釈を加える「深い処理」があって初めて、メモは "意味をもつもの" へと変わります。

時間と労力がかかる

それに、整理されていない大量のメモを保管していても、探すだけで時間と労力がかかってしまいます。

そうなると、「また探すくらいなら調べたほうが早い」となり、せっかくのメモが活用されないまま、埋もれていってしまうのです……。

パソコンのなかのファイルが見つからず困っているビジネスパーソン

人間は「解釈と次の一手」だけを書けばいい

では、どうすれば「溜まるだけのメモ」から抜け出せるのでしょうか。

ここで提案したいのが、事実の記録はAIに任せ、人間は「解釈」と「次の行動」だけを書くというメモ術です。

たとえば、マーケティングの会議で問題になったことを記録する場合、従来であれば以下のように書いていたかもしれません。

すべて正確に書こうとしたが、わかりにくいメモ

<上画像のなかの内容>

  • A社向け施策の進捗共有
  • SNS流入が想定より少ない
  • 原因として訴求軸が弱い可能性
  • 競合は動画コンテンツを強化中
  • 次回ミーティングまでに改善案を各自検討
  • 来週火曜に再度レビュー予定

しかし、今後は、そうした "事実の整理" はAIに任せてしまうのです。整理されていない情報をバサッとAIに渡すだけで、たった数分ほどで構造化されたわかりやすいメモにしてくれるでしょう。(以下例参照)

 
 
 
  • 【現状】
    SNS経由の流入数が目標を下回っている
  • 【仮説】
    訴求軸がユーザーの関心とズレている可能性
  • 【競合動向】
    競合他社は動画コンテンツを強化中
  • 【次回アクション】
    各自が改善案を検討し、来週火曜に共有

そのうえで、人間が書くのは次の3点だけです。

  • 何が問題(または発見)だったか
  • 自分は何を感じたか
  • 明日どう行動するか

具体的には、このように書きます。

手書きで「解釈」と「次の行動」だけを書いたもの

<上画像のなかの内容>

  • 問題:訴求が機能ベースになりすぎている
  • 気づき:ユーザー視点での価値整理が不足
  • 次の一手:顧客インタビューを3件実施する

出来事の要約ではなく、自分の解釈と次のアクションを中心に書くのです。

こうすることで、メモは単なる記録ではなく、意思決定の材料になります。読み返したときに「何をすべきか」がすぐにわかるので、行動につながりやすくなるはずです。

『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社,2022)の著者でコクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタントの下地寛也氏も、

自分らしく考えるためのメモは、考えずに全てを書くのではありません。自分の知識に一度取り込む情報を選別し、血肉化した上で活用するというスタンスに立つ必要があります。(P.34)*2

と述べています。

実感:労力が減り「本質」に集中できる

このメモ術を実践すると、まず一番に「記録にかけていた時間と労力」の軽減が実感できます。事実を漏れなく、自分なりにわかりやすく書き残そうとする負担がなくなるのです。

そのぶん、「この出来事から何を学ぶか」という本質的な部分に集中できるようになります。振り返りの質が上がり、以前より行動に移しやすくなると感じました。

AIにすべて任せすぎはNG

ただし――

AIに事実をまとめてもらうのはいいですが、「何が問題(または発見)だったか、自分は何を感じたか、明日どう行動するか」という部分まで、AIに提案してもらい、そのまま自分のメモとして書き残すのはおすすめしません。

自分の頭を使って考えるプロセスが省略されてしまうからです。それは、多大なメリットを放棄してしまうことを意味します。

自分で書くことのメリット

精神科医の樺沢紫苑氏は、自分の悩みを書き出すことの効果を、次のように伝えています。*3

  • 頭のなかの整理
  • 悩みが明確化
  • ストレスの軽減
  • 自己洞察力が鍛えられる

これは、仕事の問題について考えを深めることにも通じるはずです。

また、樺沢氏によれば、書き出すことで間違った考え方や不適切な感情にも気づきやすくなるため、そこから修正する手がかりを得ることができるといいます。*3

つまり、メモの価値は「自分で書いて、その過程で思考が動くこと」にあるのです。

なんでもかんでも、AIに任せすぎない意識をもつことが大切です。

「自分はここで何を感じたのか」「次に何をすべきだと思うのか」を、しっかりと自分の言葉で書くひと手間が、メモを「情報の倉庫」から「学びの装置」へと変えてくれるでしょう。

***
メモを溜め込んでいるのに、なぜか役に立たない——。

そう感じているなら、「何を記録するか」ではなく「何を考えるか」に焦点を移してみてください。

AIが記録を引き受けてくれる時代だからこそ、人間は「意味づけ」と「次の一手」に集中できる。その小さな習慣の変化が、日々の学びと行動を確実に変えていくはずです。

FAQ(よくある質問)

Q AIに事実の記録を任せるメリットは何ですか?

A 事実を漏れなく書き残そうとする時間と労力を削減できます。そのぶん「この出来事から何を学ぶか」という本質的な部分に集中でき、振り返りの質が上がります。

Q 人間がメモに書くべき3つのポイントとは?

A 「何が問題(または発見)だったか」「自分は何を感じたか」「明日どう行動するか」の3点です。出来事の要約ではなく、自分の解釈と次のアクションを中心に書くことで、メモが意思決定の材料になります。

Q なぜ「意味づけ」まで全部AIに任せてはいけないのですか?

A 自分の頭を使って考えるプロセスが省略されてしまうからです。自分で書くことで、頭のなかの整理、悩みの明確化、ストレスの軽減、自己洞察力の向上といった多大なメリットが得られます。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。