成功者の夜は「読書」で心を整える——ビブリオ・セラピーの絶大な効果

筆者がビブリオセラピー(読書療法)を5日間実践して書いた感情記録ノートの見開き

ベッドに入ってもなかなか寝つけず、気づけば日付が変わるまでSNSをずっとスクロールしてしまう——翌朝、目覚めても頭が重く、昨日のストレス・仕事の問題は消えないまま。

  • 疲れをその日のうちにリセットできない
  • 朝スッキリ起きられない

これは多くのビジネスパーソンが抱える共通の悩みです。

一方で、長年にわたり世界に影響を与えてきた人物たちは、驚くほどのバイタリティを維持し、精力的に仕事をこなしています。その違いはどこにあるのでしょうか?

——じつは、ビル・ゲイツ氏やアリアナ・ハフィントン氏など、多くの成功者は「寝る前の読書習慣」で疲れをリセットしています。

読書には、心を落ち着かせたりストレスを和らげたりする効果があるとされており、睡眠の質の改善につながる可能性も指摘されています。こうした読書の心理的効果は「ビブリオセラピー(読書療法)」と呼ばれます。

今回の記事では、ビブリオセラピーの効果を専門家の知見を交えて解説し、筆者の実践報告もあわせてお伝えいたしましょう。

成功者は夜に「読書」で脳を癒す

マイクロソフトの共同創業者、読書家で知られるビル・ゲイツ氏は夜に読書をするのが習慣です。同氏はシアトル・タイムズのインタビューで「夜の読書は『眠りにつくことの一部』」と述べています。*1

また、ニュースサイト『ハフポスト』の共同創設者で、現在はウェルビーイング分野の事業でも注目を集めるアリアナ・ハフィントン氏も夜に読書時間を設けています。同氏は睡眠を重視し、夜の読書も「リラックスする」目的で行なっているといいます。*1

注目すべきは、彼らにとって「読書」が知識のインプットだけでなく、寝る前のリラックス目的でもあるということ。

シアトルを拠点とする歯科医で、睡眠の専門家(睡眠歯科医学)のスティーブン・カーステンセン博士も、読書という心を落ち着かせる活動に集中することで、雑念が遠ざけられ、脳の睡眠中枢が働きやすくなる——と述べています。*2

就寝前の読書は疲れをリセットし、質の高い睡眠につなげる有効な習慣と言えるでしょう。

夜の読書を楽しむ女性のイラスト——星空のなかの幻想的な部屋でリラックスしながら本を読んでいる

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読書で心を癒す「ビブリオセラピー」とは

じつのところ読書は古くから、心を癒し、問題解決の糸口を見いだすための手法として知られています。

これは「ビブリオセラピー(読書療法)」と呼ばれるもの。1916年に米国の牧師・随筆家でもあったサミュエル・マッコード・クローザーズ氏が提唱しました。*3

もともとは負傷兵や病気の兵士が自由に読書を楽しめるようにすることが目的でしたが、現代では科学に基づいたアプローチから、文学に基づいたアプローチまで多岐にわたるといいます。*3

イギリス・サセックス大学心理学部准教授、ジュリア・ポエリオ博士は2020年の論文で、「読書をしない人と比べ、読書習慣を楽しんでいる人は、ストレスや孤独を感じにくく、社会的なつながりや自信をもちやすい傾向がある」と報告しています。*4

ただし、これは必ずしも因果関係ではなく、「読書を楽しむ生活習慣」が心の安定を支える要素だ、という可能性を示唆しているものです。*4

したがって、ビブリオセラピーは「明日のために心を整えるきっかけ」ととらえることが最適かもしれません。

ビブリオセラピー(読書療法)の効果を象徴する、光を放つ本のイラスト

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「ビブリオセラピー」に適した本選び

なお、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラーで、読書療法の普及にも携わる寺田真理子氏は、さまざまな状況における「ビブリオセラピーに適した5つのパターン」を提案しています。*5

本を選ぶ際に参考にしてみてはいかがでしょう。

  1. 自分をもっと知りたいとき
    →深いテーマで描かれたものが多い絵本。大人だからこそ理解でき、染みる。
  2. 心の栄養を蓄えたいとき
    詩集や俳句集、児童文学など。美しく洗練された言葉の栄養が精神に染み渡る。
  3. 現実逃避したいとき
    ファンタジーやSFなど。疲れた人の「安全な避難場所」になる。
  4. 「〜べき」価値観から解放されたいとき
    →無意識に押しつけられてきた価値観を問い直すような哲学性のある本
  5. 心が疲れたとき
    →漫画など初心者にもわかりやすい心理学系の本

つまり、その日の自分の状態にあわせて始められる無理のないセルフケア――それが私たちの身近なビブリオセラピーなのです。

夜に「ビブリオセラピー」を5日間試してみた

では実際に、ビブリオセラピーでどのような効果が得られるのでしょうか? 筆者が5日間体験してみました。

前出の寺田氏の提案を参考に、筆者が選んだのはこちらの3冊です。

筆者がビブリオセラピーのために選んだ3冊——『工藤直子詩集』『楽しい夜』『無意識の構造』

筆者がビブリオセラピーのために選んだ3冊

心の栄養→『工藤直子詩集』

『工藤直子詩集』/工藤直子(ハルキ文庫)

童話作家でもあり、詩人の工藤直子氏の詩集。子どものような視点から、童話的な世界を詩でかたちづくる。ときには本質を突く一節があり、ハッとさせられることも。

現実逃避→『楽しい夜』

『楽しい夜』/岸本佐知子 訳(講談社)

翻訳者岸本佐知子氏が選んだ海外小説のアンソロジー(全11編収録)。どれも多様な世界が繰り広げられており、いまいる場所から別の世界へといざなってくれる。

心が疲れた→『無意識の構造』

『無意識の構造』/河合隼雄(中公新書)

心理学者、京都大学名誉教授の河合隼雄氏の著書。心の奥深い場所のメカニズムの解釈をくれるもの。自分の心と向き合い、理解する一助となる。

ビブリオセラピー&ノート

こうして、それぞれ一日の終わりに ‟心が求めている本" を選び、15分程度読書時間を設け、5日間継続してビブリオセラピーを体験してみました。

加えて読書後に「どんな感情になったのか」を簡単にノートに記録してみたのです。

ビブリオセラピー実践後に感情を記録したノートの見開き——日ごとの読書内容と心の変化が書かれている

筆者の場合は、疲れている夜は「詩」、内省したい夜は「心理学系」の本と分けて読書。とくに詩はリラックス効果がありました。

ビブリオセラピーの感情記録ノートのアップ——詩集を読んだ日のリラックス効果についてのメモ

ビブリオセラピーを試してみた効果・工夫点

最後に、筆者が「ビブリオセラピー」を体験して感じた効果と工夫点を共有しましょう。

🟢 効果

  • リラックス効果があり、入眠しやすくなった
    とくに詩や小説のような美しい言葉に触れると、心が穏やかになる。人で疲れた日に詩集を読むと、幼いころの懐かしい気持ちが呼び起こされ、癒される。
  • 日中のモヤモヤは「心理学系」で考えが整いやすい
    引っかかる出来事があったときは、夜に心理学や自己啓発系の本を選ぶのが好ましいと感じた。今回筆者は心理学系の本で「心の仕組み」の解釈をひとつ得ることができ、一歩引いて考えられた。

⚪ 工夫点

「夜に読まなければ」と義務的に考えるのは逆効果。あくまでも「リラックスするための読書」なので、夜に余裕がなければ「読まなくていい」と自分に許可を出すのも大切かもしれない。

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***
忙しい毎日のなかで、心の疲れはつい後回しにされてしまいます。

ビブリオセラピーは、特別な準備や努力を必要とせず、「いまの自分に合う本を選ぶ」だけで始められるセルフケア。

あなたも日々のパフォーマンス向上のために、眠る前のわずかな時間で心を静かに整える、読書習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q. ビブリオセラピー(読書療法)とは何ですか?

読書を通じて心を癒し、問題解決の糸口を見いだす手法です。1916年に米国の牧師サミュエル・マッコード・クローザーズ氏が提唱しました。現代でも世界的に活用されています。

Q. 寝る前の読書にはどんな効果がありますか?

心を落ち着かせる活動に集中することで雑念が遠ざけられ、脳の睡眠中枢が働きやすくなるとされています。疲れをリセットし、質の高い睡眠につなげる効果が期待できます。

Q. どんな本を選べばいいですか?

その日の心の状態にあわせて選ぶのがおすすめです。心の栄養を蓄えたいときは詩集や児童文学、現実逃避したいときはファンタジーやSF、心が疲れたときは読みやすく理解しやすい心理学系の本など、自分の状態に合った本を選びましょう。

Q. 読書の時間はどのくらい必要ですか?

15分程度でも効果が期待できます。大切なのは義務的に考えないこと。余裕がなければ「読まなくていい」と自分に許可を出すことも、リラックス効果を得るためには重要です。

Q. 実際にどんな効果が得られましたか?

筆者の5日間の体験では、リラックス効果により入眠しやすくなったこと、日中のモヤモヤを心理学系の本で整理できたことが報告されています。とくに詩や美しい言葉に触れると心が穏やかになる効果がありました。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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