集中できないのは脳のせい。職場で“ちょっと”鍛える3つの注意力

書類を虫眼鏡で見るビジネスパーソン

最近、こんなことが増えていませんか?

  1. 周囲の話し声やキーボードの音が気になり、目の前の業務に集中できない。
  2. 話を聞きながらメモを取ることができず、内容を聞き漏らしてしまう。
  3. 急な差し込み仕事が入るとパニックになり、元の作業に戻るのに時間がかかる。

もしかしたら、それは「注意力」低下のサインかもしれません。

現代人が息をするように触れているオンラインコンテンツ――。じつは、それにより、心理学で言うスイッチング(注意がさまざまな対象へ切り替わること)が、意図せず繰り返されている可能性があります。

そうなると、脳は電子機器に触れていないときにも集中力が弱まり、注意が散漫になってしまうといいます。*1

しかし、私たちが現代のデジタル環境を手放す選択肢はありません。

それに、ビジネスシーンには、「注意を向ける」「複数を同時に処理する」「切り替える」といった要素がたくさん詰まっています。つまり、仕事の現場は「注意力」を鍛えるには最適な場なのです。

東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏は、注意力を鍛えるために、普段の生活のなかで「意識的に注意を向ける」練習をするようすすめています。*2

そこで今回は、ビジネスシーンで「注意力」を鍛える実践アイデアを紹介します。

脳の「スポットライト」3つの機能

「注意力」とは、私たちが日々触れる膨大な情報を脳がフィルタリングして、取捨選択する働きのことです。

前出の川島氏は「脳のスポットライトのような機能」だと表現し、日頃から使っていないと働きが悪くなると指摘します。*2

では、具体的にどのように鍛えていけばいいのでしょうか?

その鍵は――いつもの仕事のなかで “ちょっとした意識転換” を行なうことです。

川島氏によれば、脳科学において注意力は、以下のとおり大きく3つに分類されるといいます。*2

  • 「選択的注意」
  • 「分割的注意」
  • 「転換的注意」

この3つをビジネスシーンで磨く方法を、具体例とともに紹介しましょう。

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1. 職場で「選択的注意」を鍛える方法

「選択的注意」とは、「たくさんの情報の中から特定の対象だけに意識を向ける」ことです。*2

有名なのは、カクテルパーティー効果でしょう。大勢が集う騒がしいパーティーでも、自分の名前が呼ばれるとすぐに気づけるのがこの働きです。

つまり、「気が散るものが他にあるときに、最も重要な情報に集中する能力」ということ(Amazon Adsより)。*3

マーケティングの場でも多く活用されています。

たとえば、Web広告などで「30代のあなたへ」「〇〇市にお住まいの方へ」といったターゲットを絞ったコピーを使う手法です。不特定多数への言葉はスルーされますが、自分に該当するキーワードには無意識に選択的注意が働いて目が留まります。

この能力が低下した場合、マーケティングの仕掛けなら「自分宛てのメッセージ」に気づきにくくなるだけですが――仕事の場合は「注意を払うべき場所の履き違え」が起き、ミスにつながってしまいます。

これは大きな問題です。

会議は「選択的注意」のトレーニング場

この選択的注意を磨くなら、会議やミーティングの場が最適です。必要な情報だけを仕分ける、いいトレーニングになるでしょう。

💡 会議やミーティングでの実践

  • 「感情」と「事実」を切り分ける
    発言者の話のなかから、個人の感想(感情)は脇に置き、「起きた事実」と「具体的な数字」を狙って聞き取る。

  • 「ネクストアクション」だけを狩り取る
    議論のプロセスは聞き流しつつ、「誰が」「いつまでに」「何をやるか」が決まる瞬間を逃さずメモする。

  • 「疑問点」にアンテナを立てる
    全体を漫然と聞くのではなく、「自分の業務に影響しそうな矛盾点」や「説明が不十分な箇所」を検知するモードで参加する。

ただ受け身で聞くのではなく、“どこにスポットライトを当てるか” を意識することで、散漫になりやすい注意力を研ぎ澄ましてくれるはずです。

会議で必要な情報だけを仕分けようとしているビジネスパーソン

2. 職場で「分割的注意」を鍛える方法

「分割的注意」とは、「複数のことに同時に意識を向ける」ことです。*2

たとえば「運転中のハンドル操作と周囲の確認」や、「料理中の火加減と包丁さばき」などがいい例でしょう。いわゆるマルチタスクを支える力です。

ビジネスシーンでマルチタスクはあまり推奨されませんが、「説明を聞きながらメモをとる」「まわりに注意を払いながら作業する」などは、基本的なビジネスシーンでも必須の分割的注意力です。

もしも、この能力が低下してしまった場合、説明を聞きながらメモをとろうとしても大事なことを聞き逃してしまったり、周囲の動きに気づけず、対応が後手に回ってしまったり――といったことが起こってしまいます。

メタ意識を働かせ「分割的注意」を磨く

「複数のことを同時にこなす」ために必要なのは、特別な才能ではありません。どちらかというと、“慣れ” によって向上する側面が強いと言えます。

外部からの刺激により、人間の脳は変化するもの。いわゆる経験や学習による、シナプスの可塑性です。*4

「あえて負荷のかかる・でも無理のない・しかも業務に役立つ」――この3拍子が揃った活動を繰り返すことで、脳は新しい神経回路を形成し、その処理に慣れていくはずです。

そして、分割的注意が効果的に機能するためには、メタ意識(一段上からの俯瞰)が働いている必要があります。つまり、この負荷の鍵はメタ意識です。

💡 あえて負荷をかける無理のない実践

  • 同時に10%の意識配分:自分のデスクワークに集中しつつ、同時に「周囲の動き」へ10%の意識を配り続ける――というメタ意識をもつ。

  • 同時に全体像も見る:議論の細部を聞きつつ、メタ意識を働かせ、同時に「いまは全体のどこを話しているか」を意識し続ける。

  • 同時に複数調べる:調べ物をする際にメタ意識を働かせ、Aという調べ物と、Bという調べ物を一緒に探し、整理していく。

これらのトレーニングに共通するのは、「主作業に没頭しすぎず、常に別の視点を残しておく」という点です。脳に複数のルートを同時に走らせる習慣がつけば、忙しい現場でも冷静に全体を把握できる、「ミスに強い脳」へと進化していくでしょう。

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3. 職場で「転換的注意」を鍛える方法

「転換的注意」とは、「状況の変化に合わせて意識の対象を切り替える」ことです。*2

たとえばテレビを観ているときに話しかけられ即座に返事をしたり、料理中にタイマーが鳴り手元の作業を止めて火を止める――といったことがこれに当たります。

ビジネスシーンなら、このような状況です。

  • 集中して資料をつくっている最中に、上司に呼ばれる
    →イラッとしてしまい、上司の話が頭に入らない。
  • あと少しで完成というところで、電話が鳴る
    →電話を切ったあと、どこまで作業したかわからなくなり、ミスが混入する。
  • 説明の途中で、質問される
    →元の説明の流れに戻れなくなる。

上記の例は、太字が切り替えの原因、矢印のあとが、転換的注意力が低下しているときに陥りやすい “困った状態” です。

このような状況(原因となるもの)は日常茶飯事のはず。避けられないなら、転換的注意のほうをしっかりと鍛える必要があります。

ゲーム感覚で「転換的注意」を鍛える

転換的注意を鍛えるには、以下のように「中断をネガティブにとらえず、いかに素早く脳をリセットするか」というゲーム感覚を取り入れるのがコツです。

💡ゲーム感覚で中断をポジティブに

  • 「即レス・即戻り」ゲーム
    チャットの通知が来たら、あえてすぐに返信。思考を強制的に切り替えたあと、どのくらいで元の作業の続きを再開できるか試してみる。

  • 「アジェンダ・スイッチ」ゲーム
    会議中に議題が変わるタイミング、もしくは同僚とのランチで話題が変わるタイミングで、前のトピックへの未練をスパッと捨て、ゲームがリセットされたように真っさらな状態を思い浮かべてみる。

  • 「ポモドーロ・テクニック」ゲーム
    25分の集中と5分の休憩の繰り返しがよりゲーム感覚になるよう、あらかじめ休憩時のルーティンを決めておく。たとえば、以下を順番に行なうなど。
    1. スクワット〇回
    2. トイレに行く
    3. コーヒーを淹れる
    4.何かひとつ片づける(例:本を棚に入れる)

「転換的注意」を鍛えることは、いわば脳のギアチェンジをスムーズにすることです。中断を『邪魔者』ではなく『訓練の合図』ととらえることで、不測の事態にも動じない、柔軟でタフな仕事脳がつくられていくでしょう。

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注意力の有無は生まれもった才能ではなく、あとから鍛えられるものです。仕事中のちょっとした意識転換で、脳のスポットライト機能は少しずつ鍛えられていくはずです。

よくある質問

Q

「注意力」と「集中力」は同じものですか?

A

厳密には異なります。注意力は「情報を取捨選択する脳のスポットライト機能」を指し、選択的注意・分割的注意・転換的注意の3種類があります。一方、集中力は「ひとつの対象に意識を持続させる力」のこと。注意力は集中力の土台となる、より広い概念だといえます。

Q

注意力は大人になってからでも鍛えられるのでしょうか?

A

はい、何歳からでも鍛えられます。脳には「シナプスの可塑性」があり、経験や学習によって新しい神経回路が形成されるためです。重要なのは、特別なトレーニングではなく、普段の仕事のなかで「意識的に注意を向ける」練習を継続すること。日常の業務そのものが、最高のトレーニング場になります。

Q

3つの注意力のうち、どれから鍛えるのがおすすめですか?

A

ご自身の弱点から始めるのが効果的です。たとえば「会議で重要な情報を聞き逃す」なら選択的注意、「マルチタスクで混乱する」なら分割的注意、「中断後に作業に戻れない」なら転換的注意、というように、課題と直結する力を優先的に鍛えると、効果を実感しやすくなります。

Q

スマホやSNSの使用は、注意力にどんな影響を与えますか?

A

頻繁にオンラインコンテンツに触れていると、心理学でいう「スイッチング(注意の切り替え)」が無意識に繰り返され、電子機器に触れていないときにも注意が散漫になりやすくなるといわれています。デジタル環境を手放すのは現実的ではないため、本記事のように「仕事のなかで意識的に鍛える」アプローチが有効です。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。