
登場人物の多い長編小説で、「これ誰だっけ?」と迷子になった経験がある方は意外と多いのではないでしょうか。それを確認するために読み返していると、今度は本筋のストーリーを見失ってしまう……。
しかし、この「行ったり来たり」に悩まされていた筆者は、あるとき "「しおり」に登場人物をメモしながら読み進める" という解決策に行き着いたのです。これにより、過去のページを読み返す手間はほとんどなくなりました。
つまり、しおりを外部メモリ(記憶の補助)として活用することで、読書における「記憶の忘却」を防げるということ。ここから私は、「もしかしたらこのアプローチは、ビジネス書などを用いた『学び』にも活用できるのではないか」と思い至ったのです。
このメソッドは、次のような悩みを抱え、読書自体を諦めてしまったビジネスパーソンの大きな助けになるかもしれません。
- 仕事が忙しく、まとまった読書時間がとれない
- →よって途切れ途切れに読むため、前半の内容を忘れてしまう
- →それで結局は最後まで読みきれず、読書への苦手意識が強まる
読書の挫折ループを断ち切り、限られた時間で成果を出すために――本記事では、学びを取りこぼさないための「しおり読書術」を解説します。
小説の挫折から生まれた「しおりメモ」の実験
冒頭で紹介した読書法を思いついたきっかけは、ある特徴的なしおりとの出会いでした。それがこの「書きこめるしおり」です。

一般的なしおりとは違い、方眼罫のメモ帳が少し厚くなったような素材なので、文字を書き込むための "しおり" といったところ。
これを見た瞬間、「長編小説の登場人物をメモしながら読めば、あの『ページ引き返しループ』から抜け出せる……!」と考えました。
実際に、小説を読みながらリアルタイムで書き込んでみたものがこちらです。

逢坂冬馬氏著『ブレイクショットの軌跡』より *2
効果は明らかでした。久しぶりに登場する人物が出てきても、しおりに目を落とすだけで瞬時に人物関係が把握できます。
前のページに遡る必要がなくなったため、読書スピードが向上し、最後までノンストレスで読み進めることができました。
そして、筆者はこう確信――「本に挟む "しおり" に情報を集約し、記憶を外部化(メモ)すれば、脳の負担を減らして効率的に本を読み進められる」
認知科学では、頭のなかの情報を「メモやツール」に外部化する行為を「認知的オフロード(Cognitive Offloading)」と呼びます。ドイツ・テュービンゲン大学の研究でも、この行為が限りあるワーキングメモリ(作業記憶)の負担を軽減する可能性が示されています。*3
つまり、読書の途中でしおりに大事なポイントなどを書き込んでおけば、脳の負担が減って、「途切れ途切れの読書」あるいは「久々に続きを読む場合」でも集中しやすくなり、挫折もなくなると期待できるわけです。
この、脳の仕組みにかなったアプローチは、小説だけでなく、ビジネス書や専門書での学びを深める「新しい読書術」につながるはずです。
「しおり読書術」を学びにも活かしてみた
そこで、さっそく筆者も実践。今回の題材は、永松茂久氏著の『人は聞き方が9割』(すばる舎)です。*4
下の画像のように、自分の言葉で「節」ごとのポイントをメモしてみました。

本を開いたときに、これまでのポイントが一覧となって一目でわかるので、ストンと理解を深めてから先に進むことができます。

章ごとに色分けして――
最終的には以下のとおり、4枚のしおりを使用しました。

しおりの下のほうにできた余白には――
その章から得た学びを簡潔にまとめ、記しています。

毎回、本のポイントも、自分の言葉で書いた「学び」も確認できるので、読書の深まりが格段に増しました。
しおり読書術の6つの効果と注意点
なお今回この「しおり読書法」を実践してみて、筆者が気づいた効果は次の6つです。
- 読書への復帰が速くなる
振り返るべき内容がしおり1枚に集約されているため、「これはどういう意味だった?」「どのあたりに書いてあった?」と見直す時間が大幅に減る。 - 情報の取捨選択能力が鍛えられる
しおりの限られたスペースに書く必要があるため、「本当に重要な箇所はどこか」を見極める要約力が身につく。 - 「他者に説明する力」がつく
ポイントをまとめながら読んでいるので、「どんな本だった?」と聞かれたときに、すぐ要点を伝えられるようになる。 - 「わかったつもり」を防げる
自分の言葉で要約するには、内容を理解していなければならないため、「いい本だったな」で終わらせない能動的な読書に変わる。 - 便利で手軽なので続けやすい
本に挟んでおくだけなので外出先でも荷物にならず、心理的ハードルがとても低い。 - 読書ノートにもなる
読み終えた際に、これらのしおりをノートに貼れば、「読書ノート」が完成する。
本のジャンルに応じた「賢い使い分け」
一方で、初めて学ぶ専門書などの場合、しおりのスペースだけでは足りなくなってしまいます。そこで、本のジャンルに合わせた次のような使い分けを提案します。
- ビジネス書・自己啓発書:今回ご紹介した「ポイントの要約」に
- 専門書・教養書:頻出する用語の定義や、キーワードの「備忘録」に
- 理数系の参考書:何度も見返す「基本公式や定数のメモ」に
つまり、本の内容が難しくなるにつれて、メインの記録はノートに任せ、しおりは「特によく見返す内容」を書き留める補助ツールとして活用するのがおすすめです。
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日々忙しくてなかなか時間がとれず、疲れも溜まっているでしょう。毎日連続して、さまざまな本を読み続けるのは結構大変な作業です。
しかし、読書を一時中断しても、再開しやすい仕組みがあれば、読書ハードルはぐんと下がるのではないでしょうか。
今回ご紹介した方法をひとつのヒントとして、自分なりに無理なく続けられるスタイルを見つけてみてくださいね。
*1: 無印良品|書きこめるしおり インデックス付
*2: 逢坂冬馬著(2025), 『ブレイクショットの軌跡』,早川書房.
*3: Universität Tübingen|Determinants and consequences of offloading working memory processes
*4: 永松茂久著(2021), 『人は聞き方が9割』,すばる舎.
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。