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海外製サプリメントの輸入販売は成立するのか|薬機法を軸にした事業判断
海外製サプリメントの輸入販売は、一見すると魅力的なビジネスに見えます。商品は軽くて単価が高く、在庫の回転も早そうで、小規模事業者や個人事業主でも始めやすい印象があります。実際、NMN、CBD、メラトニン、睡眠サプリ、筋トレ・ダイエット系、美容・アンチエイジング系といった分野では、日本向けの輸入相談が絶えません。
しかし、この分野は「需要は強いのに、失敗する人が極めて多い」典型例です。本記事では、海外製サプリメントを販売目的で輸入する事業が本当に成り立つのかを、実務的な視点から整理します。
最大の落とし穴:輸入できても、販売できるとは限らない
海外製サプリメント輸入で最も重要なポイントは、たった一つです。
「食品として輸入できたからといって、日本国内で販売できるとは限らない」
税関を通過できるかどうかは、ビジネスが成り立つかどうかの判断基準にはなりません。唯一の判断基準は、その製品や成分が日本の薬機法上どう扱われるかという一点に集約されます。
そして、この判断は輸入前にしかできません。輸入後に成分を差し替えたり、表示を修正したりして事態を好転させることは、原則として不可能です。
関係する制度と行政機関の役割
海外製サプリメントの輸入販売には、複数の行政機関が関わります。それぞれの役割を正確に理解しておく必要があります。
食品検疫所・薬務課
薬機法の所管は厚生労働省ですが、実際に成分の照会や監視を行うのは、各都道府県の薬務課です。事業者が事前に相談するのも、厚労省本省ではなく、原則としてこれらの地方自治体になります。現場の判断は自治体が担い、厚労省は通知や解釈の枠組みを示す立場です。
次に重要なのが、食薬区分の考え方です。実務では、「専ら医薬品として使われる成分リスト」と「医薬品的な効果を謳わなければ食品として認められる成分リスト」が運用されています。ただし、これらのリストに載っていない新しい成分や、抽出方法・使用部位によって評価が分かれるケースが多く、リストだけで白黒が決まらない点が、実務上の最大の難所です。
税関
税関は輸入時に、医薬品に該当するかどうかや販売目的かどうかを一次的に判断しますが、税関を通過したからといって、その後の国内販売が保証されるわけではありません。通関後に都道府県の判断で販売不可となるケースは頻繁に起きています。
消費者庁
消費者庁は表示や広告、効果表現を所管しますが、本記事では主軸としません。販売段階で出てくる追加リスクとして位置付けます。広告物、デザイン、売り場など、販売に関する全ての要素から薬機法に抵触していないか?景品表示法違反の有無などを判断されます。

例:○○に効果があるなどと、効果・効能を標ぼうすると一発でアウト
販売形態の選択肢
海外製サプリメントを扱う方法には、大きく分けて2つのモデルがあります。ひとつは、自ら輸入して国内で在庫を持ち販売する通常の輸入販売です。もうひとつは、輸入代行の形態をとり、注文を取り次ぐだけで自らは在庫を持たない方法です。
後者の場合、海外ショップから購入者へ直送することで「個人使用目的の輸入」の定義を満たし、薬機法や食品衛生法の規制を回避できます。
ただし、輸入代行モデルは薄利であり、顧客対応や品質管理の面で制約があるため、本格的な事業展開には向きません。本記事では、前者の「自ら輸入し国内販売する」形態を前提に解説します。

代行業者が広告(集客)を行うと、それはもはや個人輸入の範囲を超えて、販売(薬機法違反)とみなされることがあります。
よくある失敗パターン
この分野では、事業撤退につながる失敗が繰り返されています。
1. 税関は通ったが、販売できない
成分自体は問題なさそうに見えても、都道府県の判断で「医薬品的」と評価され、ECモールから削除されたり、アカウント停止に至ったりします。在庫は合法的に処分できず、全損になることも珍しくありません。
2. 輸入前の確認を怠り、没収・廃棄される
成分名だけを見て判断し、植物のどの部位を使っているか、どう抽出したかまで確認していなかった結果、通関時に医薬品扱いとなり廃棄されます。特に、果実は食品でも根や茎は医薬品扱いになる例は代表的です。
3. 「海外で合法」「海外で流通している」を判断基準にしてしまう
日本独自の規制を軽視し、英語の成分表を正確に読み切れていなかったり、複数成分の組み合わせによる医薬品的評価のリスクを見落としたりしています。
4. 指定薬物への抵触
CBD製品にTHCが混入していたり、ダイエット系サプリに指定薬物が含まれていたりした場合、単なる販売不可では済みません。麻薬及び向精神薬取締法や関税法に基づく刑事責任の対象となります。小規模事業者にとって最大のリスクは赤字ではなく、前科が付く可能性がある点です。
関税の実務と負担
サプリメントの関税率は、主要成分によって異なりますが、おおむね10%前後です。さらに消費税も課されるため、合計で商品価格の12〜15%程度のコストが上乗せされます。
ただし、1回の輸入額が20万円以下の場合は簡易税率が適用され、一律15%の関税率となります。小規模事業者が少量ずつ輸入する場合、簡易税率の範囲に収めることでコスト計算がシンプルになる一方、まとめて輸入する場合に比べて割高になる可能性もあります。
小規模事業者が不利になる構造
海外製サプリメント輸入が成立しにくい最大の理由は、事業構造上の格差にあります。
大手事業者は、専門部署や外部顧問を持ち、成分照会や自治体への事前相談、分析試験をコストとして吸収できます。THCフリー証明や指定外添加物検査などには1検体あたり数万円から十数万円かかりますが、大量ロットに分散することで吸収可能です。また、万が一の廃棄やリコールにも耐えられます。
一方、小規模事業者は単一商品・単一ロットへの依存度が高く、事前照会や分析試験に十分な時間と費用をかけにくい構造にあります。その結果、廃棄が発生した時点で即赤字が確定し、事業継続が困難になります。
さらに、健康被害が発生した場合には、輸入者が製造物責任法(PL法)上の責任を製造者と同等に負う点も、重い負担となります。一度事故を起こすと、事業そのものが続けられなくなります。こうしたリスクに備えるためPL保険への加入が推奨されますが、保険料自体も小規模事業者には負担となります。
販売時の追加義務
輸入が認められても、国内販売時には食品表示法に基づき、日本語の栄養成分表示ラベルを貼付する義務があります。英語表記のままでは販売できません。このラベル作成・貼付も、小ロットでは単価が上がりやすく、コスト構造を圧迫します。
判断を誤った場合の最悪シナリオ
判断を誤ると、以下の事態が連鎖的に発生します。
- 商品は没収または廃棄され、仕入れ代金、送料、関税は回収不能になる
- ECモールのアカウントが停止され、同ジャンルでの再挑戦が難しくなる
これらは、経験や工夫で取り戻せる失敗ではありません。一度起きると、事業そのものが終了します。
結論:小規模事業者にとっては「やらない」が合理的
海外製サプリメントの販売目的輸入は、「輸入できるかどうか」ではなく「販売できるかどうか」で成否が決まります。そして、その判断は輸入前にしかできません。
成分の扱いが曖昧で、事前照会に十分なリソースを割けない小規模事業者にとって、この分野は構造的に不利です。多くの場合、「やらない判断」を選ぶことが、最も合理的な事業判断です。
この領域は、知識や努力で突破できるものではなく、制度と構造によって可否が決まる分野であることを、事前に理解しておく必要があります。
海外製サプリメントを完成品として輸入する限り、
小規模事業者が負える責任範囲を超えます。
完成品輸入という前提を外した場合に限り、
事業構造そのものが異なる判断軸があります。

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