免許返納!? : 特集
【いま映画.com編集長が、“我々世代”に推したい1本】
笑い!泣き!共感! そして溢れる映画愛が深く染み入る
私たちの頭のなかの気持ちを“200%”描いてくれる

映画「免許返納!?」(6月19日公開)は、ただのコメディではありません。

主演・舘ひろし扮する大スターが「免許を返したくない!」とダダをこねる姿に笑い、やがて見えてくる“本当の理由”にホロっと泣かされる、愛と共感にあふれた物語。
そして、映画を観る自分たちにも訪れる切実な問題を題材にし、私たちの頭の中の気持ちを“200%”の解像度で描き出す良質なテーマもある――。

さらには、舘自身の俳優人生と重なる「バードマン」的な奇跡のシンクロや、随所に散りばめられた映画ファン感涙の仕掛けまで。
今、スクリーンで観るべき本作の底知れぬ魅力を、映画.com編集長が熱く語り尽くします !

【まずは、あらすじや出演者を予告編でチェック!】
●筆者紹介

以下、映画.com編集長によるレビュー
■【最初に肝心なポイント:そもそも映画の面白さが一級品】
免許を返したくない本当の理由とは…!? 笑えるんです、泣けるんです、グッと来るんです──

舘ひろし扮する主人公・南条弘が、とにかくチャーミングと形容するほかないほどに、観る者を惹きつけて止まない。映画スターにだって、葛藤はある。
芸術映画で映画賞を受賞すればするほど渇望するアクションから遠ざかる姿は、実績を積み上げたことで逆に希望部署への異動がかなわぬ人々の姿と大差なく見える。


わがまま、傍若無人……。担当マネージャー役の西野七瀬、所属事務所社長役の吉田鋼太郎らに毒づく姿を見るにつけ「芝居ではない、普段の舘だったらどう振る舞うんだろう?」と妄想が妄想を呼ぶ。
人間味溢れる立ち居振る舞いは、時としてチャーミングとは対極の印象を人に植え付けてしまいがちだが、そのバランスが秀逸というか格別だ。

酸いも甘いも噛み分けてきた舘が“奏でる”からこそ、クスっとした笑いもホロっと流す涙も共存することができるストーリーラインに仕上がったと言えるのではないだろうか。

■【共感必須!今の私たちの頭のなかの気持ちが“200%”描かれる映画】
自分の親世代&自分世代に刺さる「その気持ち…分かる…」の連続の2時間!

筆者の母親も70代に突入しており、これまでマイカーで自由に運転を楽しんできた世代だが、近年の運転ぶりを見るにつけ「いつまで運転できるだろうか」という不安が付きまとうようになってきた。

警察庁の発表によれば、令和7年の運転免許の自主返納は43万5067件で、そのうち75歳以上が26万915件となっている。これは、全体の60%を占める。
盟友かつライバルの尾崎(宇崎竜童)がバイク事故を起こしたことに対して発したコメントが誤解を生み、世論は一気に「南条弘、免許を自主返納へ」と突き進むくだりは、当事者の焦燥感が手に取るように分かる。

まだまだフェラーリを乗り回し、アクション映画でショットガンをぶっ放したい南条に対し、娘の純子(河井青葉)が投げかける「自分だけは大丈夫だと思っていない?」という、大切な人を思う切実な訴えには、幾度となく頭を縦に振り続けてしまった。
一事が万事この調子なのは、作り手にとっても、演じる側にとってもこれが他人事ではないからに他ならない。

そして劇場で観る側にとっても、当事者として“自分事”と捉えざるを得ない。仮に今は他人事であったとしても、そう遠くない将来、自分や大切な誰かが南条のように「俺は大丈夫」と意固地にはならない!と言い切ることは誰にもできないのだから。

■【一方でこんな“良さ”もありまして…】
永遠の趣味や生き甲斐が“できなくなった”とき、どうすればいい? その答えを本作が教えてくれるかもしれない

今作には、まだまだ語り尽くせないほどのメッセージが内包されている。「永遠の趣味」なるものを誰もが持ち合わせているとは思わないが、南条にとって

南条がジタバタすればするほど、筆者の中には「形あるものはいつか壊れる」という“諸行無常”に通じる思考がめぐり始めた。永遠に変わるものなどなく、すべての物質や現象はいつか必ず終わりを迎える。
この真理と南条の心の整理具体が合致するのか否かは本編を観てもらいたいが、少なくとも自分に置き換えたときに「生き甲斐」がなくなったとしても、心乱すことなく「今この瞬間を慈しみ、受け入れる」ことができるのではないか……。

観る人によって感じ方は千差万別であろうが、
■【さらに!俳優 舘ひろし本人と主人公の“酷似”に注目】
まるでアカデミー賞「バードマン」!? 永遠のアクションスターの俳優人生と“奇跡のシンクロ”!

また、本編を観れば少なくない確率で、第87回アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む4部門を制したアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」と、主人公を演じたマイケル・キートンのことが脳裏に浮かんでくる。
バットマンに扮したことのあるキートンが、かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」を体現してきた主人公リーガンとシンクロするさまは、鑑賞中から不思議な余韻をもたらした。

今作でも同様に、舘ひろしと南条弘の姿がシンクロしてきても不思議ではない。
ただ、人によって「あぶない刑事」の鷹山敏樹を生きる舘に見えるだろうし、別の世代には矢沢永吉がリーダーだったロックバンド「キャロル」の親衛隊として知られていたバイクチーム「クールス」の舘、「西部警察」のバイクスーツを着こなす鳩村英次に息吹を注ぐ舘の姿とフォーカスが合うかもしれない。

ましてや舘はかつてヘビースモーカーだったが、60歳を迎える2010年に禁煙のCM出演がきっかけとなり卒煙したというエピソードがある。
禁煙啓蒙活動への参加などで禁煙普及に努めてきただけに、何をかいわんやである。
■【最後に:“このシーン”は深く染み入るでしょう――】

コメディの色合いが濃い今作ではあるが、本編途中からはロードムービーの趣も加わり、映画としての色彩をより豊かにしてくれる。

とりわけ、南条と盟友・尾崎の愛息、亮を救ったデコトラの運転手・康太(八嶋智人)に連れられ、康太の姉・しずえ(南野陽子)が経営するスナックで寛ぐカットは今作で最も好きなシーンに挙げたい。
映画談議に花を咲かせるだけでなく、舘と南野、否、南条としずえがデュエットで「泣かないで」を歌うくだりは、もうニヤケ笑いが止まらなくなるのだ。

他にも挙げればキリがない。宇崎竜童との丁々発止のやり取りはもちろんだが、「あぶない刑事」の“相棒”レパードの雄姿、若き日の南条をスターに押し上げた大ヒット映画「ハーレーライダー」の製作陣との数十年ぶりの邂逅など、そこかしこに

そして、「SHOGUN 将軍」でも存在感を発揮した西岡徳馬が、「カチカチ」とボールペンをノックする癖がある“あの役”で登場した際には、不覚にも再びニヤケ笑いを浮かべてしまった。
まだまだ書き続けたいが、そろそろおあとがよろしいようで……。






