Pinned
サトウ・レン
79.6K posts
いくつかの投稿サイトをぐるぐるとしています。
匿名用の質問箱作ったのでもし良かったら→mond.how/ja/RS_hon
※ツイートのツリーにショートショートと付いているものは、140字の小説になります。
Joined June 2019
- 結婚報告のために、彼氏を実家に連れて行った。無言の父の前で、緊張した面持ちの彼が言った。「お父さん。あなたの娘は僕が預かりました。返して欲しければ、結婚を認めてください!」「そんな。娘は絶対に無事なんだろうな」「認めてさえくれれば、必ず」母が父を。私が彼を殴ったのは、同時だった。
- 結婚報告のため、実家に彼氏を連れて行った。父が険しい顔をしている。黙って彼の話に耳を傾けていた父が、ようやく口を開く。「きみは好青年だが、浮気はいかんと思う」浮気、ってどういうこと。父が続ける。「娘はむかし、『パパと結婚する』って私と約束したんだ」母が父の頭にお盆を振り下ろした。
- クラスに無類のイケメンがいる。クラスの女子全員と付き合ったことがある、という噂が立つほどの。男としてはやはり嫉妬してしまう類の男だ。思い切って彼に聞いてみる。「そんなわけないだろ。女の子の手を握ったことさえないよ」と返ってきた。ほっとする僕に、彼が続ける。「男はあとひとりだけど」
- 書店で見掛けた本の帯に、『ラスト1ページ、驚愕の結末が』と書かれていた。実際に買って読んでみる。ありふれたミステリだな、と思いつつ、辿り着いた最後のページは真っ白だった。何の脈絡もなく。驚きはしたが、同時に卑怯だと思った。評価が変わったのは十年後、製本のミスだった、と知った時だ。
- 「俺、普段、全然ミステリ読まないんだけど」「うん」「俺、天才だから、さ。誰も思い付かないミステリ思い付いたよ」「何?」「容疑者が全員死亡」「あるよ」「えっ。じゃあこれは、容疑者が全員犯人」「あるって」「えっ、じゃあ、じゃあ。語り手が犯人、ってのは、どうだ」「今度、貸してあげるよ」
- 有名なミュージシャンの彼は事故で記憶を失った後、音楽活動を辞めた。昔から知る僕は彼に内緒で、彼自身の曲を聴かせた。一曲目、「下手くそで、ひどい曲だ」と彼が笑う。彼が最初に作った思い出の曲だ。二曲目、「良い曲だ」と彼が涙を流す。有名になった彼が、「金に魂を売った」と吐き捨てた曲だ。
- 仮病で学校を休んだ。部屋で泣いていると、窓を叩く音が聞こえた。同級生の彼だ。部屋に招き入れると、「お見舞い」と言う。びっくりする私に、「こういう場面に憧れてる、って前に言ってただろ」と笑った。すこし話して、彼がベランダから帰っていく。ここはマンションの10階で、きのう死んだ彼が。
- 気付くと私は、シンデレラの姉になっていた。長女のほうだ。めっちゃかわいいな、シンデレラ。次女と母親のいじめを止め、甘やかした。舞踏会で見初められた私は王子様と結婚式を挙げた。シンデレラはいない。結婚式の途中、「お姉様は私の物」と馬車に乗ったシンデレラが入り口の扉を突き破ってきた。
- 受け持つクラスの生徒たちに、親孝行の意味を説明したことがある。「みんなも親孝行するように」と言って、職員室に戻ると、ひとりの生徒が来て、「お父さんいないから、代わり」と肩を叩いてくれたのだ。「ごめんな」無神経だった、と反省して、謝る。だけど言えなかった。私が代わりじゃないことは。
- マッチ売りの少女が、マッチに火を付けると、赤ずきんが狼に食べられる映像が浮かびました。また火を付けると、次はシンデレラがいじめられている映像でした。次は白雪姫が毒林檎で倒れる映像でした。不幸なのは私だけじゃないんだと安心した少女は眠りにつきました。彼女たちの幸せな結末も知らずに。
- 結婚報告のため、実家に彼氏を連れて行った。父が険しい顔をしている。黙って彼の話に耳を傾けていた父が、ようやく口を開く。「きみは好青年だが、浮気はいかんと思う」浮気、ってどういうこと。父が続ける。「娘はむかし、『パパと結婚する』って私と約束したんだ」母が父の頭にお盆を振り下ろした。
- 昔、友達だった男から連絡があった。こんな声だったかな。「お金に困ってる。助けてくれ。親友だろ」と言われた。詐欺の類だ。騙すなら、もっと調べろよ、まったく。俺は久し振りに友達だった男と会うことにした。「俺たちの絶交、ってまだ続いてるよな」彼が昔を水に流すように笑う。「当たり前だろ」
- とある大学でミスコンが復活した。審査員はむかしグランプリを取った女性だ。運営のもとに、『ルッキズムめ。廃止しろ』と手紙が届いた。「怖いですね」と怯える運営のひとりに、彼女が言った。「本当に怖い。彼女、私の時の準グランプリだったんだ。逆だったら、私がこうなってたのかな、って思うと」

