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マガジン一覧

ちくま文庫

ちくま文庫の関連記事です。1985年12月創刊の文庫レーベル(2025年12月に創刊40周年)。エッセイ、小説、漫画、ノンフィクション、人文書、芸術書…皆様の好奇心にお応えします。

笛吹きと泥棒 ー 阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男――伝説とその世界』について / 柴田 元幸【ちくま文庫】

✑柴田 元幸  いま僕は現代アメリカ小説の翻訳を主な仕事としているが、何十年か前には、アメリカの古典文学、特にハーマン・メルヴィルの研究を志したことがある。そんなとき、新聞で阿部謹也氏がメルヴィルの主著『白鯨』を取り上げている文章を目にした。『白鯨』はいまでこそ「グレート・アメリカン・ノベル」などともてはやされたりするわけだが、1851年の刊行当時はその混沌ぶりに非難囂々、読者を得るどころかそれまでの読者もメルヴィルはこの本で失った。それについて阿部氏は、「流行作家が売れる

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【今日はハーメルンの日】崖っぷち院生と「笛吹き男」/川添愛『裏の裏は表じゃない』より特別公開

✑川添愛  初めて人文書というものを手に取ったのはいつだっただろうか。大学に入ってから何冊か読んだはずだが、ほとんど理解できなかったということしか覚えていない。当時の私の読解力はお粗末で、今のAIよろしく「暗記」「パターンマッチ」および「今までこうだったからこう」という推測を駆使しながらどうにかやっていた。それで間に合わせられたのは、当時の私が異様に器用だったからなのか、たまたまそのときの環境がイージーモードだったからなのか、今となってはよく分からない。ただ不幸だったのは、

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遺書として/比嘉慂『カジムヌガタイ』より

✑比嘉慂 「比嘉さん、戦場でもいい人はいい、つまらん奴は本当につまらんよ」  そう話してくれたN先生は沖縄戦で民間の医者として徴用され、いわゆる〝ひめゆり学徒隊〟と共に負傷兵の看護に当たった。  もう二十年前のことになるが、その女子学徒隊のことを知りたくて、N先生に取材を申し込んだ。その前に『カジムヌガタイ』(二〇〇三年刊)を読んでもらった。  今にして思えば、日本兵と住民の軋轢を描いた物語に戦場を思い出したが故の感想の一つだったと理解する。  沖縄戦を知る為に、戦場を逃

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あなたのなかに誰かいる ー 世界文学のはじまり / 西崎 憲【ちくま文庫】

✑西崎憲  未読の方のためにストーリーをすこし紹介しよう。  一人称の語り手である柴田は紙管製造会社で事務員として働いている。前職は人材派遣会社事務で、二十代半ば過ぎにはチーフを務めていた。しかしハラスメントがきっかけになって退職し現在の会社に就職した。  最初は転職先の牧歌的な体制に安心するが、しだいに古い体質が浮き彫りになっていく。ことにジェンダーロールの固着は耐えがたいもので柴田は女性であることで理不尽な務めをつぎからつぎへと押しつけられる。  そして商談スペースの煙

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一般書

筑摩書房の一般書にかかわる記事です。

【今日はハーメルンの日】崖っぷち院生と「笛吹き男」/川添愛『裏の裏は表じゃない』より特別公開

✑川添愛  初めて人文書というものを手に取ったのはいつだっただろうか。大学に入ってから何冊か読んだはずだが、ほとんど理解できなかったということしか覚えていない。当時の私の読解力はお粗末で、今のAIよろしく「暗記」「パターンマッチ」および「今までこうだったからこう」という推測を駆使しながらどうにかやっていた。それで間に合わせられたのは、当時の私が異様に器用だったからなのか、たまたまそのときの環境がイージーモードだったからなのか、今となってはよく分からない。ただ不幸だったのは、

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私たちが孕むもの ー 『空芯手帳』書評 / 彩瀬 まる【単行本】

✑彩瀬 まる  これでいい、もしだめでも仕方がない、と自分に対して思えるようになったのは、いつからだろう。少なくとも、十代や二十代の頃は思えていなかった。自分の在りようを漠然と受けとめ、不出来で見苦しい部分も、もう自分だけは許そう。そう体の中で納得が生じた一時が、人生のどこかにきっとあった。 『空芯手帳』を読みながら、その一時の感覚をうっすらと思い返していた。主人公の柴田は小さな紙管製造会社で働く正社員で、部署内で唯一の女性だ。特にそうした雇用契約を結んだわけでもないのに通

暗号の楽園 ー 『休館日の彼女たち』について / 八木 詠美

✑八木詠美  子どものころの交換日記を見つけた。チェック柄のB5のリングノート。嬉々として開く。が、何が書いてあるのかわからない。幼い字が読めないのではない、インクが色褪せてしまったのでもない。すべて暗号で書かれていた。  ピンクやブルーなどランダムに色が変化するペンの跡を見ながら(そのとき流行していた〝マーブルペン〟のことはなぜかすぐに思い出せる)、母音と子音の組み合わせに対応していることに気づく。アルファベットとセットで1~5の数字が並んでいる。ちょうど小学校でローマ字

親から子に伝えたい「一生お金に困らない」考え方って?【漫画】

✑ さざなみ 【書籍情報】 『金持ち父さんのお金の教科書』ロバート・キヨサキ | 筑摩書房 全世界シリーズ累計6600万部突破! 金持ち父さんシリーズ史上1番わかりやすいお金の本   「仕事で金持ちになることはない。金持ちは家庭でなるものだ。」 金持ち父さんから授業形式で学ぶ、お金についての考え方 知識0から始められる、待望の最新刊誕生!   学校では教えてくれないお金の真実を、子どもの頃から教えよう。 お金の本の大定番『金持ち父さん 貧乏父さん』著者ロバート・キヨサキに

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ちくま新書

読者の思索を支援する「問い」とともに――ちくま新書は、自らの頭で考え抜くための「問い」を立て、果敢に投げ込んでいきます。1994年9月創刊の新書レーベルです(2024年9月、創刊30周年)。

【特別寄稿】フーコー手稿デジタル化の最前線~フーコー資料事情その2/重田園江

●フーコー研究の "ブルーオーシャン" へ  昨年、歴史学者の高澤紀恵さんから、二宮宏之『講義 ドラマールを読む』(刀水書房、2024年)の存在を知らされ、さっそく買い求めた。二宮素子さんと刀水書房の尽力で出版された素晴らしい書物なのだが、残念ながら200部限定出版で、すでに品切れとなっている。二宮氏の東京大学西洋史学の学部向け講義(1984年)のテープ起こしから作られた本書には、氏の歴史への情熱と、ニコラ・ドラマールという奇特な役人への愛着が随所に感じられる(*1)。それ

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「富士山は日本で2番目に高い山だ」と言う人にどう反論しますか?――『科学否定論はなぜ人をひきつけるのか』ためし読み/松村一志【ちくま新書】

●富士山は日本で一番高い山?  最初に一つ思考実験をしてみたい。  目の前に「現在、富士山は日本で2番目に高い山だ」と主張する人物が現れたら、どう反応するだろうか。 「そんなはずない」と怒るかもしれないし、その人物の認知機能や精神状態を心配するかもしれない。どちらにしても、「富士山は日本で最も高い山だ」という信念が揺らぐことはないはずだ。  けれども、これに続けて、「富士山が最も高い山だと言える根拠を出せ」と言われたら、どうだろう。「そんなの常識じゃないか」とか「学校で

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なぜ告発文から問題が大きくなったのか

✑小林和樹 「何を信じたらいいのかわからない」 「何と戦っていたのかわからない」  選挙のたびに、このような声を聞くことが増えた。  有権者から、そして落選した候補だけでなく当選した人の中からも同様の発言を聞くことがある。共通しているのは、選挙期間中に、SNSやYouTubeなどで拡散された、膨大な情報の波にさらされた人たちだということだ。  公職選挙法が改正され、SNSを含むインターネットを利用した選挙運動ができるようになったのは2013年。当初は、候補者や陣営も手探

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条文・判決を読む、調べる、考えるための基本が詰まった一冊――『法律の読み方がわかる本』試し読み

✑白石忠志 はじめに「法律」、「法務」、「法規」、「法学」などと呼ばれる分野に接することになった場合に、条文や判決の実物を読む力を初歩から身に付け、そのような力を武器として、関係する法的な領域を歩き回れるようになるには、どうすればよいか。この本は、そのような状況を想像しながら書きました。  そうかといって、初歩だけで終わるつもりはありません。かなり具体的で現代的な話題を取り上げ、それらを素材として、読む経験を積んでいきます。  そのようにして、楽しみながら、いつの間にか

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何言うてんねん ✑Aマッソ 加納

Aマッソ加納の大人気エッセイ連載! 忘れられないあのツッコミ、身近な人のよくわからない発言、芸人に投げかけられがちな一言……。唯一無二の言葉を操る若手芸人が、「何言うてんねん」と感じる事々を綴ります。

第100回「人生なので」

✑ Aマッソ 加納  原稿は最後まで赤だらけだった。  全100回の中で、初稿から修正がなかった回は一つもない。最後まで自立できなかったのは情けないが、安心して世に文章を届けられていたのは、第一回から担当してくれた藤岡さんのおかげだ。掲載がWeb上であるだけで、これはブログでも呟きでもなくエッセイであるということ、そしてエッセイのなんたるかを、毎月赤文字で丁寧に教えていただいた。  他の媒体で単発の原稿を書かせてもらう際、あまりの赤の少なさに「これで大丈夫だろうか……」と不

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第99回「第二章」

✑ Aマッソ 加納  相方が母になる。これから想像を超える苦労があるだろうが、彼女が今幸せな気持ちで満たされているといいなと思う。家族や友人、SNSに寄りかかれるだけ寄りかかって苦労を減らし、楽しみを享受し、親になった自分をこれまで以上に愛せていたら嬉しい。 この期間、私には何も役に立てることがない。せいぜいコンビの看板をおろさないよう、目の前の仕事に邁進するのみだ。    そう、仕事であった。ともに仕事をしてきたのだ、と改めて考える。具体的な将来について話し合ったことはな

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第58回「まじでウケてた」|何言うてんねん

✑ Aマッソ 加納   お笑い芸人は、物事を驚くほど誇張して話す。目の前のお客さんにウケているのを良いことに、現実では到底ありえないようなことも「自分でも信じられないんだけど」という顔でいけしゃあしゃあと、放っておくと100分も1000分も1000000分も話す。天井の照明や左右の幕に届かんばかりのボディランゲージを幾度となく繰り出し、どんな些細な話でもみるみる今世紀最大の大事件に変身させる。それを聞いている、いや、丁寧にご清聴くださっている、すべてのスケジュールを泣く泣く

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第54回「パルト」 |何言うてんねん

✑ Aマッソ 加納  もうどれくらい、いもちゃんの寝ている姿を見ていないだろうか。逆にいもちゃんは今まで何度、私の寝顔を見てきただろう。つい先週も、終電でいもちゃんの家に行き、到着するなり「5時になったら起こして」と言って彼女が編集作業で寝ないであろうことを前提に、ベッドを占領してグーグー寝た。  朝になると、パンパンッと柏手のように手を叩く音と「時間です」という抑揚のない声が聞こえ、私は不機嫌にのろのろと起き上がる。いもちゃんはいつも私の体を揺さぶったりはせずに、必ず柏手

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世の中ラボ ✑斎藤美奈子

ただいま話題のあのニュースや流行の出来事を、毎月3冊の関連本を選んで論じます。書評として読んでもよし、時評として読んでもよし。「本を読まないと分からないことがある」ことがよく分かる、目から鱗がはらはら落ちます。筑摩書房のPR誌・月刊「ちくま」の好評連載。こちらでも読めます。

【第193回】ネットとAIの時代に読書の復権はあるのか

✑斎藤美奈子  今般の中高生は隠れて本を読んでいる、という話を聞いたのは十数年前だった。読書は「特殊な趣味」であり、本を読むのは「変わった人」。なので本好きな子でも、本は隠れキリシタンみたいにこっそり読む。外で本の話はもちろんしない。  真偽のほどは不明だが、ありそうな話。スマートフォンが普及して以来、新聞や雑誌を含め、印刷メディアの出番は激減した。電車の中で本を読んでいる人もついぞ目にしない。  嘆かわしいといいたいところだが、私自身の読書習慣も10年前とは激変した。今の

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【第192回】人気芸人が書く小説とエッセイの境目

✑斎藤美奈子  お笑い芸人を生業にしている人には文章家が多い。べつに不思議ではない。自らネタを書いて自ら演じる芸人は、脚本家と俳優を兼ねたような職業だ。演劇畑や音楽畑同様、編集者が「お笑い業界にも才能が眠っているのでは」と考えるのは当然だろう。  近年、小説デビュー作がヒットした例として記憶されるのは100万部超のベストセラーとなった劇団ひとり『陰日向に咲く』(2006年)だろう。社会からドロップアウトしかけた年齢も性別も異なる6人を描いた5編からなるこの短編集は、コント風

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【第191回】国政選挙まで左右した?「推し活」の表と裏

✑斎藤美奈子  自民党が316議席をとり、同党の圧勝に終わった2月8日の衆院選。立憲民主党と公明党が合流した中道改革連合の、当然といえば当然の不人気。多党化で票が割れたことによる大政党の優位。根本的な原因として指摘されている小選挙区制の弊害。自民圧勝の背景にはもろもろの要因が考えられるが、今衆院選でにわかにクローズアップされたのが高市早苗首相の個人的人気に依拠した「推し活選挙」「ファンダム選挙」と呼ばれる現象だった。 「推し活」とは「推し」と呼ばれるアイドルなどの特定の対象

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【第190回】2025年ベストセラー小説の共通点

✑斎藤美奈子  一昨年、2024年のベストセラー・ランキングで気を吐いた文芸書は宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』だった。年間総合ランキングで堂々3位。続編、続々編を含めたシリーズの累計部数は26年1月の時点でじつに200万部超である。  昨年、2025年の年間総合ランキングにも、文芸書が10位以内に複数ランクインした。2位に入った阿部暁子『カフネ』、そして8位につけた土屋うさぎ『謎の香りはパン屋から』だ。種明かしをすると『カフネ』は本屋大賞受賞作、『謎パン』は「このミステ

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ぼくはこんな音楽を聴いて育ったー東京編ー

大学に入学した大友青年を待ち受ける音楽三昧の日々、師との出会い、訣別――。『ぼくはこんな音楽を聴いて育った』の続編!

第21話 高柳昌行北海道ツアー[東京編 第二部]      大友良英

大友良英 1959年横浜生まれ。 2012年プロジェクトFUKUSHIMA ! で芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門受賞。2013年「あまちゃん」の音楽でレコード大賞作曲賞他受賞。著書に、『ぼくはこんな音楽を聴いて育った』(筑摩書房)ほか多数。  今から書くのは42年も前、1984年11月の高柳昌行北海道ツアーの話だ。その人生において音楽的なターニングポイントと言える大きな変化がいくつもあった高柳昌行だけれど、このときの北海道5都市で行われたソロのツアーは、世界に類例のない

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第20話 ボーヤと宅録、そしてレッスンに家庭教師の日々        大友良英

大友良英 1959年横浜生まれ。 2012年プロジェクトFUKUSHIMA ! で芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門受賞。2013年「あまちゃん」の音楽でレコード大賞作曲賞他受賞。著書に、『ぼくはこんな音楽を聴いて育った』(筑摩書房)ほか多数。 ニューヨーク・ダウンタウンシーンとの出会い   今この文章を書いているのは、イタリアのボローニャからウイーンに向かう機内。ドラマーのジョーイ・バロンと打楽器奏者ロビン・シュルコウスキーとのヨーロッパツアーの真っ最中だ。  ジョン・

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第19回 オレはボーヤになった       大友良英

大友良英 1959年横浜生まれ。 2012年プロジェクトFUKUSHIMA ! で芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門受賞。2013年「あまちゃん」の音楽でレコード大賞作曲賞他受賞。著書に、『ぼくはこんな音楽を聴いて育った』(筑摩書房)ほか多数。 ノイズとサンバとトンカツとーー ニュー・ディレクションユニットとアングリーウェイブス     4ヶ月の見習い期間を経て1983年4月、オレは高柳昌行さんのボーヤに正式採用となった。ボーヤとは前回も書いた通りアシスタントのこと。芸

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第18回 高柳さんのGibson ES-175  大友良英

大友良英 1959年横浜生まれ。 2012年プロジェクトFUKUSHIMA ! で芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門受賞。2013年「あまちゃん」の音楽でレコード大賞作曲賞他受賞。著書に、『ぼくはこんな音楽を聴いて育った』(筑摩書房)ほか多数。 「ロンリー・ウーマン」と田邉義博   高柳教室で自由課題の録音の提出が始まった。これで俄然調子に乗ったオレは毎週のように宅録テープを提出、悪ノリしてへんなテープまで出したりしたある日、高柳さんに呼び出されたってまでが前回の話。  

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ちくまプリマー新書

ちくまプリマー新書は、子どもにとっても大人にとっても「さいしょの新書」。毎月の新刊のハイライトや書評、ときにはオリジナル記事も登場します。 2025年に創刊20周年を迎えました! 好評既刊『世界の力関係がわかる本』『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』『客観性の落とし穴』『「叱らない」が子どもを苦しめる』『東大ファッション論集中講義』『友だち幻想』など。

「とりあえず」という最強の意思決定を使いこなすための1冊

✑中嶌 剛 序 章 「とりあえず志向」について みなさんこんにちは。筆者の中嶌剛と申します。私は約20年にわたり、キャリアのとらえ方やキャリア教育について、「とりあえず」をキーワードにしながら研究してきました。この「とりあえず」というのは面白い言葉で、みなさんもきっと、友だちと「とりあえず○○に行こう」と話したり、「とりあえず○○しとこう」と日常的な判断をしたり、無意識で口にしている言葉だと思います。さらには日常だけに限らず、「とりあえず大学に行きたい」「とりあえず資格はと

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「医者になりたい」理由は、何ですか?――久坂部羊『医人の夢』試し読み

✑久坂部 羊 (第三章より) 「どうだ。疲れただろ。麻酔科の医局で少し休んでいけばいい。コーヒーくらいご馳走するぞ」  黒崎は医人の返事も聞かず、エレベーターで手術部のある四階に降りた。  麻酔科の医局だけは手術部の横にあり、当直室も兼ねているのか、奥に二段ベッドと人工皮革のソファが据えてあった。麻酔科医は全員出払っているようで、十ほどの机にはだれもいない。  ソファで待っていると、黒崎がポットから注いだコーヒーを二つ持ってきて、向いに座った。 「今日、聞かせたのは現場の

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あなたを苦しめる「がんばれ」という言葉

✑外山 美樹 「がんばれ」  この言葉を、私たちはどれだけ聞いてきたでしょうか。  運動会のスタートラインで。受験前夜の机の前で。部活の最後の大会で。失敗して落ち込んだ帰り道で。  この四文字は、ときに私たちの背中を押し、限界の一歩先へ連れていってくれます。  けれど同時に、こんな瞬間はなかったでしょうか。 「もう十分がんばっているのに」 「これ以上、どうやってがんばればいいのだろう」 「がんばれない自分には、価値がないのかな」  本来は励ましのはずの言葉が、いつ

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学問としてのエレガンスへ|中野香織『エレガンス入門』試し読み

✑中野 香織   エレガンスとは何でしょうか。  辞書を引くと「上品」「優雅」「洗練」といった語が並びます。形容詞の「エレガント」は、高価な服をまとった洗練された人を形容するときに使われがちです。  しかし、エレガンスとは人の品格と深く結びつく概念でもあり、時代や文化によって姿を変えるため、実は決定的な定義をもちません。  たとえば西洋の宮廷文化においては、エレガンスは格式や権威の演出でした。現代では、個人の美意識や知性のあり方を指すことが多くなっています。  このように意

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本は本屋にある

各界の著名人が、「本屋」について書くリレーエッセイです。

21軒目 本というブランド品──女性と本と文化 ✑イリナ・グリゴレ

 弘前では何年も前に大きな本屋が潰れてしまい、今はショッピングモールにある大手チェーンの本屋でも貴重な存在となり、新しい本屋との出会いはほとんどない。できれば女性が経営している本屋に入ってみたい、あまりないから。私にとって本屋とは、複雑なイメージがある。子供の頃、街にただ一軒あった本屋が好きだった。でも文房具以外のもの、本を買ったことがない。高いからだ。「図書館で借りなさい」と母にいつも言われ、村の図書館から水を運ぶバケツに本を入れて持ち帰った。一度でいいから、あのカタツムリ

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20軒目 飲みに行く前に、本屋へ ✑酒徒

 高校時代、埼玉の片田舎から池袋まで予備校に通っていた。池袋駅の地下は、いつも人であふれていた。その流れに身をゆだねるようにして、授業へ向かう。その帰り道に、必ず立ち寄る場所があった。「ジュンク堂書店 池袋本店」である。  地下一階から九階まで、すべてが本。はじめてその規模を知ったときの衝撃はいまも鮮明に覚えている。本屋とは、ここまで大きくなるものなのかと圧倒された。そこはまさに知の宝物庫であり、自分にとっての「大都会」そのものでもあった。  当時、関心はもっぱら歴史、とり

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19軒目(後編) 知らないというのは怖いこと ✑石破茂

(前編:横山書店と『法学セミナー』) 書店離れの何が問題か  全般的に言えることだけど、活字文化が廃れるのは実に良くないことですね。私は政府や党の役職にない時はJRとか地下鉄に乗ることが多いのですが、空いてる時間に乗っても本を読んでいる人はまずいない。みんなこれ(スマホ)を見てるわけですよ、全員が。間違いない、誇張抜きに全員が。本なんか読んでる人を見るとね、本当に行って握手したい、そんなもんですよ。  古い世代だからかもしれないけど、やっぱり情報とは紙媒体だっていう風に

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19軒目(前編) 横山書店と『法学セミナー』 ✑石破茂

どんな本屋に通っている(いた)か  今は本屋さんには行っていないですね。警護官(SP)付きだからなかなか気楽に行けなくなっちゃった。総理大臣になる前は、地下鉄半蔵門駅の上にあった山下書店が便利で良かったですけどね。近かったし品揃えも良かったから、週に1回2回は行ってました。あそこがなくなっちゃってからは神保町の書泉グランデまで行ってたし、それから東京駅近くの八重洲ブックセンターは何でもあって便利だった。  あとは新幹線から在来線に乗り換えるとき。姫路駅の構内に書店があるよ

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絵の記憶

修復家の田口かおりさんによる、自身の記憶と芸術作品の来歴とを重ね合わせたエッセイです。バナー画像は、イダショウイチスタジオにお借りした作品を使わせていただいています。

息をして

✑田口かおり その小さな紙片を最初に見つけたのは、フィレンツェの工房に通い始めてまもなくのことだった。作業棚にある溶剤をもってきて、と工房の先生(マエストラ)にことづかった私は、透明な液体がたっぷり入った瓶を取ろうと背伸びをして、ふと棚のふちに小さな紙片が貼られているのに気づいた。 RESPIRA ──息をして。   紙片には一言、そう書かれていた。息をして? 意識するよりも前に喉がつまってしまったのは、幼い頃から何度も読み返した物語に登場するラベル付きの瓶のことを思

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ちくま学芸文庫

人文・社会科学からサイエンスまで、不朽性と現代性を兼ね備えた作品を取り揃えています。

知が政治的信念に変わるとき――『シュラクサイの誘惑』解題

✑高田宏史  本稿の目的は、マーク・リラの主要著作を参照軸として、『シュラクサイの誘惑――現代思想にみる無謀な精神』(ちくま学芸文庫、2026年)を彼自身の問題意識の展開のなかに位置づけ直すことにある。本文庫版には増補版あとがきが新たに訳出されており、本書の狙いはその「あとがき 信仰のみ」や訳者あとがきでもかなり明示されている。したがって本稿では、それらを繰り返すのではなく、原著刊行後にリラが公刊した主要著作を参照しながら、本書の読みどころを二つの軸に沿って整理したい。

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アイツの虚偽の手口がコレだとわかります ── 『虚偽論入門』書評/武田砂鉄

✑ 武田砂鉄  世界を混乱させる為政者の発信を見聞きして、「さてはコイツ、また嘘ついてんな?」と疑うところから始めなければならない日々が続くのがだいぶしんどい。このしんどさを消すためには為政者に改めてもらわなければならないのだが、毎日のように言い分が変わる様子からは、改める気がないことだけがわかる。すると、受け止める側が諦めてしまいがち。で、その諦めが更なる暴走を招くのだ。自分自身を「ピースメーカー(平和の調停者)」と呼ぶドナルド・トランプ大統領は、「虚偽」をばら撒き続けて

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ウィトゲンシュタイン哲学の外部へ――飯田隆『ウィトゲンシュタイン〔増補新版〕』書評/小川哲

✑小川 哲  ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を初めて読んだときのことは今でもよく覚えている。感動とショックと恐怖が入り混じった、これまで自分が生きてきた世界が崩れ去るような、あるいはまったく新しく構築されていくような、そういう感覚に陥った。それからしばらく、僕は世界をこれまでにないやり方で認識するようになった——正確には認識せざるを得なくなった。「目の前の状況を、ウィトゲンシュタインならどう切り分けるだろうか」というものだ。 という『論理哲学論考』の序文を読んで、

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ちくま学芸文庫Math & Scienceは、数学を伝えられたか

✑渡辺英明 前史  ちくま学芸文庫Math & Science(以下Math & Science)は、学芸文庫のシリーズとして2005年12月に刊行を始めました。これは社内のシリーズ企画の公募に応えたもので、『一般相対性理論』(P. A. M.ディラック)、『幾何学基礎論』(D.ヒルベルト)、『数学史入門』(佐々木力)の3冊が、初回配本時のラインナップです。その頃の筑摩書房はと言いますと、編集部内はもとより部の垣根を越えて毎晩お酒が酌み交わされていて、それぞれの本音をよく

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