NIKE (ナイキ)は、トレイルランニング向けの新アパレルテクノロジー「NIKE ACG Radical AirFlow(ラディカル エアフロー)」を発表しました。
世界的な気温上昇が進むなか、高温環境で長時間行動するトレイルランナーに向けて開発されたのがRadical AirFlowです。今回発表されたRadical AirFlowは、空気の流れを活用して発汗による体温調節をサポートすることを目指して開発された新素材です。開発には部門を横断して結成されたチームが携わり、2年以上にわたるフィールドテストと研究施設での検証を経て完成しました。

ベンチュリ効果を応用した新しい通気テクノロジー
Radical AirFlowの開発では、従来のメッシュ素材や通気構造そのものが見直されました。開発チームが立てた仮説は、「工学的に設計された空気孔をウェア全体に配置することで、空気を効率よく集めて加速させ、肌へ導くことができるのではないか」というものでした。アスリートが走ることで発生する空気の流れを利用し、素材がその流れを加速させることで汗の蒸発を促進する仕組みです。

Radical AirFlowは冷却素材というよりも、人体が本来持つ発汗と蒸発による冷却機能を効率化するテクノロジーといえます。空気孔によって肌へ向かう空気の流れを加速させることで、汗の蒸発を促進し、体温調節をサポートします。
開発チームが着目したのは、流体力学におけるベルヌーイの定理です。ベルヌーイの定理とは、簡単に言えば「流体は流れが速くなるほど圧力が下がる」という考え方です。ここでいう流体には水だけでなく空気も含まれます。
その中でもベンチュリ効果は、空気が狭い通路を通るときに流れが速くなる現象を指します。ホースの先を指で少しつぶすと水の勢いが増すのと同じように、空気も狭い部分を通ることで加速します。
Radical AirFlowでは、この考え方をウェアの通気構造に応用しています。素材に配置された空気孔を通じて、外側の空気が肌の方向へ効率よく流れ込むように設計されているのです。

単に穴を開けて風を通すのではなく、空気を積極的に集めて加速させることを目指した点が、この素材の最大の特徴です。
また、従来の吸汗速乾素材が「汗を吸い上げて乾かす」ことを重視していたのに対し、Radical AirFlowは「空気の流れそのものを利用して汗の蒸発を促進する」という新しいアプローチを採用しています。素材選定からエンジニアードニット構造に至るまで、肌へ向かう空気の流れをどのように加速できるかという視点で研究とテストが繰り返されました。
完成した新素材は、化学的親水化処理を施したエンジニアードニット素材です。湿気をコントロールしながら空気の流れを感じやすい着用感を実現しています。
さらに特徴的なのが空気孔の構造です。素材表面から皮膚方向へ向かって空気が加速するよう設計されており、それぞれの空気孔に対応する形でガーメント裏面にはディンプル構造を配置。ナイキの研究チームは、このディンプル構造によって皮膚表面での空気循環がより長時間持続することを発見しました。
また、テストの結果、大小さまざまな漏斗状(ファンネル形状)の空気孔を均一に配置することで、空気を効率よく集めて加速できることも分かりました。外側で集めた空気を漏斗状の空気孔によって絞り込み、肌方向へ加速させることで、効率的な空気循環を実現しています。
開発を担当したベーバハニー氏は次のように話しています。
「テストや開発の全段階で、空気孔についてはあらゆる形状やサイズ、配置を試しました。大きいものから小さいものまで、漏斗状の穴を均一に配置すると、肌に向かう空気が最も効率的に集まり、加速することがわかりました」
身体全体の空気循環を促す長袖設計
Radical AirFlowの性能を最大限に引き出すため、ナイキは新たな長袖トップスも開発しました。一般的には暑熱環境で長袖は不利に思われがちですが、ナイキは肌を露出するよりも空気の流れをコントロールできる面積を増やした方が効率的に冷却できると考えました。そのため、あえて長袖を採用し、身体全体で空気循環を促進する設計としています。
ゆとりのあるレーシングフィットを採用し、空気が皮膚へ直接流れ込む構造を実現。長時間のトレイルランニングでも快適性を維持できるよう、脇下には大型のカットアウトを配置しています。これにより通気性の向上だけでなく、可動域の確保と軽量化にも貢献しています。

さらに縫製やトリミングを工夫することで、汗や摩擦が集中しやすい部位の擦れを軽減。クロップド丈を採用することで軽量化を図るとともに、下腹部からの通気を促進し、ランニングパックのウエストベルトへのアクセス性も高めています。
なお、この素材の性能を最大限に引き出すために開発された新しい長袖トップスは、ゆとりのあるレーシングフィットを採用し、空気が皮膚へ直接流れ込むよう設計されています。
2年以上にわたるフィールドテストと研究所での検証
開発チームは2年以上にわたり、フィールドと研究施設の双方で検証を実施しました。北カリフォルニアでは、All Conditions Racing Department(ACRD)のアスリートたちが極限環境下でプロトタイプを着用し実走テストを実施。そのフィードバックが製品開発へ反映されています。

アスリートたちは、涼しさと通気性に驚き、「涼しい風が肌を通り抜けるこれまでにない感覚だった」と評価したといいます。さらに米国オレゴン州のNike Sports Research Lab(NSRL)では、環境調整室を使用した高温環境下での比較試験を実施。トレイルランナーが酷暑レースで直面する急激な気温上昇を再現した条件下で、従来のDri-FITウェアとの比較が行われました。
ACRDのアスリートたちは何度もNSRLを訪れ、プロトタイプのテストを繰り返し実施。フィールドテストと研究施設でのデータ収集を往復しながら開発が進められました。その結果、高温下での長時間ランニング後において、Radical AirFlowのプロトタイプはDri-FITと比較して汗の吸収・保持量が50%少ないことが確認されました(NSRLによる社内試験)。

また、発汗型マネキンを用いた評価では、Dri-FITと比較して大幅に高い通気性を示し、汗の蒸発抵抗も25%低いことが確認されています(NSRLによる社内試験)。
日本人アスリートのコメント
小笠原光研選手
「風が通る構造によって、特にダウンヒルでスピードを出す場面で涼しく感じます。さらに水に濡らすと一気に冷却され、暑さの厳しい環境でも快適に走れる効果があります。小さな穴があいた特徴的な見た目ですが、着てみると違和感はなく、長袖なのに肌を露出している部分よりも着ている部分の方が涼しく感じます。機能性だけでなく、デザイン性の高さも魅力だと思います」
甲斐大貴選手
「初めて着たときに“何これ?”と驚くほど快適でした。長袖なのに風がしっかり抜けて、とくにスピードを出しているときは非常に涼しく感じます。一方で、登りなどでペースが落ちたときにはしっかり保温もされるので、幅広いコンディションに対応できるのが魅力です。スタート時は低温で日中は非常に暑くなるようなレースでも、この一着で対応できます。さらに、肌に張り付きにくく、ベタつかない点も非常に快適です」
高村貴子選手
「寒暖差の大きいレースでも快適に着用できるウェアだと感じています。実際に、スタート時が寒く、ゴール時にはかなり気温が上がるレースでも、暑くなりすぎることもなく、下りでも身体が冷えすぎることもありませんでした。また、水をかけても肌に張り付くことがなく、冷却感がありながらすぐに乾くので、最後まで快適な状態で走ることができました。ウェアの機能性の高さを実感できる一着だと思います」
「NIKE ACG Radical AirFlow(ラディカル エアフロー)」は、2026年6月4日よりNIKE.COMおよび一部ナイキ販売店にて発売予定です。
NIKE ACG ラディカル エアフロー ロングスリーブ トップ
・価格:22,330円(税込)
・特徴:新開発ラディカル エアフロー素材採用
・仕様:長袖、クロップド丈
・発売日:2026年6月4日














