8万人の研究で判明。「外国語を学ぶ人」は脳の老化スピードが半分になる可能性がある

仕事がうまく回らないと悩むビジネスパーソン

「集中力が続かない」「切り替えがうまくいかない」「以前より仕事に時間がかかる」など――私たちは仕事がうまく回らないとき、ついこう考えてしまいます。

  • 「自分は要領が悪い」
  • 「もう若くない」
  • 「能力が落ちた」

しかし、こうした感覚はもしかしたら現代社会の罠かもしれません。特にスマートフォンの過度な使用は、脳疲労につながるといいます。

そうしたなか――

2025年の大規模研究は、複数の言語を話すこと・習得することが、脳のレジリエンス(回復力)を強化すると示唆しました。

これまで脳の回復における影響力は、睡眠・有酸素運動・デジタルデトックス・瞑想といった文脈で語られることが多かったはずです。複数言語で脳の回復力を高めるという新たな視点を経て、創造できることはたくさんあるのではないでしょうか。

そこで本記事では、大規模研究の成果をヒントに “脳のレジリエンス” の鍛え方を探ります。仕事が回らないと悩んでいる方の、ちょっとしたヒントになれば幸いです。

8万人超の大規模研究が示した「多言語と脳の老化防止」の関係

老化をテーマにしたオンライン限定ジャーナル『Nature Aging』に掲載された2025年の大規模研究によると、複数の言語を話す人は、ひとつの言語しか話さない人に比べて老化が遅い可能性があります。*1

『Nature Aging』(2025年)の研究詳細

研究グループはヨーロッパ27か国86,149人の参加者を対象に、AIを使って「生物学的な年齢」と「実年齢」のズレを評価。*1

その結果、複数の言語を話すことが「生物学的および認知的老化」を遅らせる可能性があると明らかになりました。

具体的には、マルチリンガルの人は、モノリンガルの人に比べて老化の加速リスクが2.17分の1になる傾向があったといいます。逆に言えば、モノリンガルの人は老化が加速するリスクが2倍以上高かったということです。

研究者は次のように述べています。*1

  • この研究結果は、多言語能力が健康的な老化の保護因子として機能することを強く示唆している

  • 言語の学習と使用は、注意力、記憶、実行制御、そして社会的相互作用に関連する脳の中核的なネットワークを活性化させ、生涯にわたるレジリエンスを強化するメカニズムとなる

つまり、複数の言語を使うことは、脳のさまざまな回路を同時に動かし続ける “総合トレーニング” になっているのです。それが脳の回復力に寄与するということ。

この知見は、脳が衰えやすい現代に生きる私たちの、大きな助けになるかもしれません。

複数言語を使う国際的な環境のイメージ

語学学習が「最高の脳トレ」と言えるワケ

ここからはさらに、違う視点で掘り下げてみましょう。

たとえば外国語を扱うとき、私たちの脳は無意識のうちに次のような処理をしています。

  • リスニングで「R」と「L」の発音を聞き分けたり、新しい言語の文法に意識を向けたりする(注意力)
  • 新しい語彙を獲得する(記憶力)
  • 長い文章を聞いているあいだ、文頭の内容を保持しながら文末を解釈する(実行制御)
  • 表情やジェスチャー、文化的背景から相手の意図を汲み取る(社会的相互作用)

これらはすべて、前出の中核脳ネットワークの働きです。

また、アメリカ・ノースウェスタン大学教授で心理言語学者のビオリカ・マリアン氏は、ふたつ以上の言語を使い分ける効果について、「脳内により多くの神経の通り道が形成されるため、脳が衰えてもそれらが補う役割を果たす」と話します。*2

もちろんクロスワードパズルや数独、運動、読書なども脳の健康維持には効果的でしょう。

しかし、「使う言語を選ぶ、使わない言語を抑制する、言語を使いこなす、言語を管理するといった認知機能のエクササイズが、マルチリンガルの脳内ではすべて自動的に行われている」――と、その効果の高さをマリアン氏は強調しています。

なおかつ同氏によれば、複数の研究を対象にしたメタ分析で「バイリンガルであることが認知機能に与える影響は、運動が認知機能に与える影響とだいたい同じ」だと報告されているそうです。*2

つまり語学学習は、無理なく脳を多角的に鍛えられる「最高の脳トレ」とも言えるのです。

外国語で書かれたテキスト

今日からできる「脳のレジリエンス」を高める多言語アプローチ

こうした知見をヒントに、その効果を最大化するための具体的なステップとしては、まず専門の機関で言語を学ぶという選択肢があるはずです。

しかし、ここで注目したいのは、この効果を手軽に得るための、誰もが実践可能なちょっとした日々の活動です。

たとえば――

  • スマートフォンの表示言語を、週に数日だけ英語に切り替えてみる
  • 内容がわかる海外ニュースやTED動画を、字幕なしで5分だけ視聴する
  • SNSやYouTubeで、興味のあるテーマを外国語で検索してみる
  • 観慣れた海外のドラマや映画を、違う言語で観てみる
  • 日記やメモを、1日1文だけでも外国語で書いてみる

――といったこと。

日記やメモを外国語で書いているイメージ

日常のなかに、「楽しみながら軽い言語負荷」をかける習慣を取り入れることで、多少なりとも脳が刺激され、脳のレジリエンスも強化されることが期待できます。

誰でも気負いなく、すぐできることなので、よろしければ今日からでもお試しください。脳の回復力を高める活動を取り入れるのは、早ければ早いほどいいはずです。

***
「最近頭が回らなくなってきたな」と感じたら、それは新しい言葉を学ぶタイミングかもしれません。あるいは、思考回路をもう一度しなやかに編み直すタイミングとも言えるでしょう。

「言語を学ばなければ……!」と力む必要はありません。いつでも無理なく取り組める「脳のメンテナンス」と考えましょう。

さっそく今日から、始めてみませんか?

よくある質問(FAQ)

Q複数の言語を話すと老化が遅くなるって本当ですか?

A2025年に『Nature Aging』に掲載された大規模研究(27か国・86,149人対象)によると、複数の言語を話す人はモノリンガルの人に比べて老化の加速リスクが約2分の1になる傾向があることが示されました。多言語能力が健康的な老化の保護因子として機能する可能性があるとされています。

Qなぜ語学学習が脳のレジリエンス強化に効果的なのですか?

A外国語を使うとき、脳は注意力・記憶力・実行制御・社会的相互作用に関わる中核ネットワークを同時に活性化させます。心理言語学者のビオリカ・マリアン氏によれば、ふたつ以上の言語を使い分けることで脳内に多くの神経の通り道が形成され、脳が衰えてもそれらが補う役割を果たすとされています。

Q語学学校に通わなくても効果はありますか?

A何もしない状況と比較すれば、日常のなかにほんの軽い言語負荷をかけるだけでも、脳のレジリエンス強化は期待できるはずです。たとえば、スマートフォンの表示言語を英語に切り替える、海外ニュースを字幕なしで5分だけ視聴する、日記を1日1文だけ外国語で書くといった手軽な方法から始められます。

Q語学学習の効果は運動と比べてどうですか?

A心理言語学者のビオリカ・マリアン氏によれば、複数の研究を対象にしたメタ分析で「バイリンガルであることが認知機能に与える影響は、運動が認知機能に与える影響とだいたい同じ」と報告されています。語学学習は、身体を動かさずとも脳を多角的に鍛えられる点が大きな利点です。

(参考)

*1: Neuroscience News|Speaking Multiple Languages May Slow Down Biological Aging(原著論文:Ibáñez et al., "Multilingualism protects against accelerated aging in cross-sectional and longitudinal analyses of 27 European countries," Nature Aging, 2025)
*2: 東洋経済オンライン|"複数の言語を話す"が脳の健康に良いという真実 人間がAI時代に外国語を学習する意味は何か

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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