
「よし、今日から英語の勉強を始めよう」
カフェでノートを開きながら、あなたは決意を新たにします。
最初の数日はやる気もあり、なんとか進められたものの、次第にやる気がなくなりフェードアウト……。
このように、「やる気が続かない」「習慣が定着しない」——ということはままあることですが、じつはそういう人は無意識に「継続が難しくなる悪習慣」をしてしまっている可能性があります。
この記事では、「習慣化を妨げる悪習慣」を脳科学的に分析し、習慣化する力を高める具体的な対処法を解説します。
悪習慣①: 最初から飛ばしすぎる
【シーン例】
「よし、今日から新しい習慣を始めるぞ!」と意気込んで、「英語の勉強を1日1時間」「朝は6時に起きてジョギングを5km」のような高めの目標を立てて実行。なんとか数日はこなせたものの、時間確保ができない、疲労がたまるなどで徐々に負荷に対応できなくなり、一気に失速してしまう……。
このパターンの問題点は「最初から飛ばしすぎる」こと。
どんなこともスタート時はやる気に満ち、理想が高くなりがちです。
たしかに高い目標を習慣化できれば理想的ですよね。しかし、スタート時からいきなり高負荷をかけるのは、習慣化の観点では逆効果なのです。
習慣化に詳しいメンタルコーチの大平信孝氏は「脳は本来、変化を嫌うものです。防衛本能があるので、今まで生き延びてこれた思考や行動パターンを変えたがりません」と説明しています。*1
【原因】 脳には恒常性(ホメオスタシス)という機能があり、急激な変化に対してストレス反応(抵抗)を示します。いきなり高いハードルを課すと、脳はそれを「苦痛」として認識。三日坊主になるのは、脳が正常に防衛反応を起こした結果です。

◇対処法:「スモールステップ」で始める
脳の仕組みから言えば、ロケットスタートするよりも、スモールステップで始めたほうが習慣化しやすいです。掲げた目標を小さなステップに分解し、あえて「ゆるく始めること」を意識してみましょう。
心理カウンセラーの中島輝氏は、スモールステップは「達成できそうな課題にとり組むこと」「課題を達成したという成功体験を得ること」のふたつを満たすため、報酬系を刺激し、モチベーションの持続につながると述べています。*2
- 勉強なら「語学アプリを開くだけ」
- 運動なら「ウェアに着替えてストレッチするだけ」
- 読書なら「1ページ読むだけ」
「あれもこれも!」という気持ちを抑え、「これくらいでいいの?」と思うくらい簡単にするのがコツです。小さな達成感を積み重ね、着実に習慣化につなげましょう。
悪習慣②: 完璧なやり方以外は意味がないと思い込む
【シーン例】
「寝る前の暗記が効果的なのに、昨日はできなかった。いまさらやっても効果が薄いし、もういいや」「脂肪を燃やすには30分以上運動しなきゃダメって聞いたし、20分しかできないならやらなくていいか」……というように「理想のかたちでないなら意味がない」と思い、いつの間にかやらなくなってしまった。
このパターンの問題点は、「完璧主義で継続を壊してしまう」ことです。
習慣化の初期段階で大切なのは、なんといっても行動に慣れること。
習慣化コンサルタントの古川武士氏も、続けることが大変な初期(反発期)を乗り越えるには「毎日どんなことがあっても行動を絶やさないことだけに集中」することがコツであると述べています。*3
【原因】 新しい習慣を身につけるとは、脳内に新しい神経回路(道)を作ることです。この回路を定着させるうえで最も重要なのは、一度の刺激の強さではなく、刺激の頻度です。繰り返すことで、神経細胞の軸索を覆う「ミエリン鞘」が厚くなり、電気信号がスムーズに流れるようになります(ミエリン化)。

◇対処法:簡単なことを、できるだけ毎日やる(毎日じゃなくてもいい)
前項のように、やりたいことを「スモールステップ」に分け、できるだけ頻繁に取り組むようにします。
- 勉強:「1分だけテキストを開く」を1週間毎日続ける
- 運動:「平日は階段を見つけたら使う」を1週間毎日続ける
もしできなかった日があっても大丈夫です。
南カリフォルニア大学経営心理学教授のウェンディ・ウッド氏によると、新たに始めた行動を1日や2日できなかったとしても、習慣がゼロに戻ることはありません。*4
「絶対毎日やらなくてないけない」ではなく「できるだけ頻繁に取り組む」という姿勢が継続のポイントなのです。
悪習慣③: 環境とタイミングがバラバラ
【シーン例】
「今日は朝にやったけど、明日は夜にやるか」「昼休みに勉強しようと思ったけれど会議が入ったから、帰ってからにしよう」……こんなふうに、毎日違う時間・違う場所で取り組んでしまう。気分やスケジュールに合わせて柔軟に動くのは一見スマートですが、実際は……
このパターンの問題点は、「行動のリズムがつくれない」ことにあります。
習慣とは、毎日繰り返す「型」があってこそ定着するもの。やる時間も場所も毎日バラバラだと、脳に「これは毎日やることだ」と認識させるのが難しくなります。
その結果、「今日はやる日なのか?」「どこでやればいい?」「いつやるのがベスト?」と毎回判断が必要になり、小さなストレスとなって「今日はいいや」と先延ばしにつながっていきます。
【原因】「やる/やらない」「どこで」「いつ」といった判断は、エネルギー消費が大きい前頭前野で処理されています。こうした小さな判断が積み重なると脳に負荷がかかり、判断力・実行力が低下しやすくなります。習慣化とは、この前頭前野による意識的な判断を、無意識の行動を司る大脳基底核へと移行させるプロセスなのです。

◇対処法:「アンカリング」をする
大平氏は、習慣化には「アンカリング(条件付け)」が効果的だと語ります。*5
アンカリングは心理学用語で、ある条件(場所・時間・タイミングなど)で同じ行動を続けることを指します。
次第に「この条件だと、この行動がやりやすい」と刷り込まれ、無理なく習慣化につながるのです。
- 毎朝歯磨きのあとに、机に座って5分間読書する
- 帰宅後、夕食の前にストレッチマットの上で軽く運動する
- 昼食後にカフェに寄って15分だけ英語アプリを使う
ちなみに、生活が不規則で難しい場合は、「タイミング」を複数用意しておくのが効果的。1日の中で「できそうなタイミング」をあらかじめ3つくらい想定しておけば、忙しさでできなくても、柔軟に対応しやすくなります。
タイミングを決めて繰り返すうちに、脳が「この流れのときは、これをやるもの」と覚え、無意識でも行動できるようになります。
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習慣化のメカニズムを理解すると、妨害となっていた悪習慣もよく理解できるのではないでしょうか。目標は極力低く、アクションは極限まで小さく、考えなくてもできることから習慣化の一歩を始めましょう。
この観点で今のあなたのトライアルを見直せば、きっとやりたいことを継続できるようになりますよ。
よくある質問(FAQ)
Q: なぜ新しい習慣はいつも三日坊主で終わってしまうのですか?
脳のホメオスタシス(恒常性)が変化を拒むためです。急激な変化を「苦痛」と認識する脳の防衛本能により、高い目標ほど挫折しやすくなります。
Q: 習慣化を成功させるために、まず何をすべきですか?
目標を「1分だけ取り組む」など、極限まで小さくするスモールステップが有効です。脳にストレスを与えない負荷から始め、成功体験を積み重ねることが近道です。
Q: 忙しくて決まった時間に習慣に取り組めない場合はどうすればいい?
「歯磨きの後」など既存の行動に紐づけるアンカリングが効果的です。難しい場合は、あらかじめ1日の中で3つほど候補のタイミングを決めておくと柔軟に対応できます。
*1 PHPオンライン|専門家が教える「先延ばしする人」「すぐやる人」で分かれる脳の使い方
*2 プレジデントウーマンオンライン|へこんだ時、平常心に戻れるすごい小ワザ2つ
*3 プレジデントオンライン|「続かない人」の挫折パターンは3つある
*4 ダイヤモンド・オンライン|【科学で解明】習慣は身につくまでに「何日」かかるのか?【書籍オンライン編集部セレクション】
*5 東洋経済オンライン|三日坊主は卒業!「簡単に」行動を習慣化する方法
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。