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〒146-0095 東京都大田区多摩川1-6-16
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当クリニックでは専門外来として各種アレルギー疾患の治療、相談を行っています。
ここからアレルギーや代表的なアレルギー疾患の特徴、診断、治療について解説します。
アレルギーとは、外敵から身を守るための免疫反応が、食物や花粉など本来は体に害のない物質(アレルゲン)に対して過剰に反応して皮膚のかゆみや発赤、蕁麻疹、くしゃみ、鼻水、咳、腹痛、嘔吐、下痢などのいろいろな症状を引き起こす状態をいいます。アトピー素因というアレルギーを起こしやすい遺伝的な体質を背景に生活環境が関係して発症するといわれています。アトピー素因とは、家族や本人に何らかのアレルギー疾患がある、血液中のIgE抗体を作りやすいという体質です。近年日本では食物アレルギーやアレルギー性鼻炎などのアレルギー患者は増えており社会的な問題になっています。
食物アレルギーやアレルギー性鼻炎などの発症に関係するアレルギー反応の中心は、アレルゲン特異的IgE抗体による即時型反応です。抗体とは皮膚や粘膜から侵入してくる自分の体の成分以外の病原体や異物(主にタンパク質で抗原といいます)を外敵と認識し、それに一対一に結合して攻撃、排除するよう作られる生体物質です。一つの抗体は一つの特定の抗原にだけ反応するということを特異的と表現します。抗体は、抗原提示細胞、Tリンパ球との共同作業によってBリンパ球から変化した抗体産生細胞によって作られます。抗体にはIgM、IgG、IgE抗体など数種の型がありますが、病原体感染やワクチンなどによって体を守るために作られる抗体はIgMやIgG抗体です。IgE抗体は、寄生虫感染の時に寄生虫を排除するために作られ、誰でも作ることができますが、食物や花粉などのアレルゲンには通常は作られないような仕組みがあります。先に述べたようにアレルゲンに対してIgE抗体を作りやすい人が、アレルギー体質であるということになります。皮膚、粘膜から侵入したアレルゲンにより特異的IgE抗体が作られることをアレルギー感作といいますが、作られたIgE抗体は血管を通って、体中の粘膜(鼻、気管支など呼吸器や消化管)や皮膚、臓器の血管の周囲に広く存在している肥満細胞という細胞の表面のレセプターに結合します。このように感作が成立した状態で、次にアレルゲンが皮膚や粘膜から侵入し肥満細胞の表面上の特異的IgE抗体に結合すると、マスト細胞は顆粒という袋に蓄えていた化学伝達物質を細胞外に一気に放出します。脱顆粒という現象ですが、放出されたヒスタミンを代表する化学伝達物質によりいろいろなアレルギー症状が、比較的短時間で引き起こされます。これを即時型反応(IgE依存性反応)といいます。化学伝達物質は、周囲の毛細血管を拡張させ、血液の水分が血管外に漏れて組織のむくみを起こし、かゆみなどの刺激になります。具体的には、食物アレルギーでは食物アレルゲンの摂取で、口内粘膜の発赤やかゆみ、皮膚の蕁麻疹が、花粉症では花粉の鼻や目の粘膜への付着でくしゃみ、鼻汁、鼻づまり、目の充血、かゆみなどの症状が引き起こされることになります。
アレルギー体質があると同じ個人で、乳幼児期から皮膚湿疹が続く状態のアトピー性皮膚炎をおこし、その後卵や牛乳などの食物アレルギーを発症しやすくなり、さらにこれらの疾患がよくなるころから、呼吸がゼーゼーと苦しくなる気管支喘息やアレルギー性鼻炎、花粉症を順次発症するという経過をたどる傾向があります。この現象はアレルギー疾患がマーチ(行進)のようにつぎつぎと現れることからアレルギーマーチと言われます(下図)。
アレルギー疾患は、その病気の性質から症状が反復し持続的に見られますが、個人個人の体質の差や生活環境の影響によって症状の出かたや重さに違いがあります。また免疫反応によらない過敏な反応や急性の病気などアレルギー以外の原因によって似たような症状が起きることもあり区別する必要があります。初めて症状が出てからしばらくの間は診断がつかないこともありますが、症状が長引き、経過とともに重症化するのを予防することが重要ですので、なるべく早く診断して適切な治療やフォローを続ける必要があります。最近の医学研究によりアレルギー疾患の病態に基づいた副作用の少ない安全な薬物療法や生活指導、食事指導などが進歩しています。医学的エビデンスに基づいたアレルギー疾患の診断、治療管理のガイドラインが整ってきており、当クリニックでもこれらのガイドラインで推奨されている標準的な医療を基本に個々の患者さんにあった適切な診療を心がけています。
次に代表的アレルギー疾患について当クリニックで行っている治療を含めて紹介します。大事な点を太字にしてありますのでそこだけご覧いただいてもかまいません。
アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹が、軽快、悪化を繰り返しながら慢性的な経過で見られる皮膚の疾患です。多くの患者はアトピー素因をもち、大部分は乳幼児期から発症し小児期に成長とともによくなりますが、再発を繰り返し成人まで持続する場合や年長から思春期に発症することも稀にあります。
湿疹は赤いぶつぶつした(丘疹)あるいは斑点状(紅斑)の発疹で、痒みのため乳児でも皮膚を服や寝具にこすりつけたり、手の届くところを搔いたりします。年齢によって湿疹の分布に特徴があり、乳児期のはじめには顔や頭から体、手足に広がってきますが、幼小児期以降には首や四肢の関節部に、思春期、成人では顔、首、胸や背中の上半身に強い傾向があり、いずれも左右対称にみられます。 長く続く湿疹の部位は皮膚が厚く苔のようにごわごわした病変(苔癬化)となり、全年齢を通じて皮膚は乾燥傾向(ドライスキン)があります。
生まれつきのアトピー体質と皮膚のバリア機能(外的刺激への抵抗性や保湿能力)の低下がアトピー性皮膚炎の発症に関係しており、その他いろいろな刺激が複雑に加わって皮膚の慢性的な炎症を引きおこすことで痒みを伴う湿疹が持続すると考えられています。 アトピー体質は遺伝する傾向がありますが、兄弟や親子でも違いがあります。また胎児期の母親の食事や生活習慣がアレルギーの発症に直接影響することはないと考えられています。IgE抗体を作りやすい体質を持つため、食物アレルギーやダニ・ホコリアレルギーが合併しやすく、これらの刺激が二次的に皮膚炎を悪化させることはありますが、特定のアレルゲンや刺激だけでアトピー性皮膚炎になるわけではありません。
アトピー性皮膚炎を診断する特別な検査はなく、特徴的な痒みのある皮膚湿疹が1歳までの乳児では2か月以上、その他では6か月以上にわたって繰り返し持続した場合に臨床的に診断します。 アトピー性皮膚炎の診断以前でも、すぐに消えない湿疹があるときは皮膚の持続的な炎症があると考えて適切な外用療法を行いながら経過を見て最終的に診断をつけます。特に生後1-2か月の乳児早期の湿疹は、一時的な脂漏性湿疹や乳児湿疹のことがありますが、それ以降も湿疹やドライスキンが持続する場合は、アトピー性皮膚炎である可能性が高まります。
生後6か月以降の乳幼児期では秋から冬に生まれたこどもでアトピー性皮膚炎の発症が多いことが分かっており、これは生後しばらく冬場の乾燥時期にあたるため皮膚の刺激を受けやすくアトピー素因のある乳児で皮膚炎を起こしやすくなると考えられます。アトピー性皮膚炎の発症や悪化の予防には乳児期早期からのスキンケアや湿疹の治療が大切です。特に赤ちゃんの肌がカサカサして赤くなりやすい、布団や服に皮膚をこすりつけるなどの痒みを疑う様子があるときは要注意です。アトピー性皮膚炎の症状はごく軽いものから重症まで幅が広く、同じ子どもでも診察時の状態でアトピーである、あるいはアトピーではないといわれることがありますが、湿疹の持続期間や皮膚の状態で早めに診断、治療していくことが必要です。乳児期に発症するアトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能の発達してくる1歳以降に湿疹が限局してきて軽くなることが多いのでそれまでに湿疹のコントロールをしっかりしていきます。
アトピー性皮膚炎の治療は、湿疹のもととなっている皮膚の炎症を抑える薬物療法、皮膚のバリア機能低下を補正するスキンケア、炎症を悪化させる因子への対処が柱になります。治療の最終的な目標は、症状がなく、あっても軽く日常生活に支障がない、薬による治療をあまり必要としない状態を保つことです。アトピー性皮膚炎の標準的な治療は、抗炎症外用薬と呼ばれる皮膚の炎症を抑える塗り薬によるもので、ステロイド外用薬とステロイド以外の外用薬(非ステロイド抗炎症外用薬)が用いられます。 ステロイド外用薬は、その抗炎症作用の強さにより最も弱い5群から最も強い1群まであります。非ステロイド抗炎症外用薬には以前から使用されていたタクロリムス(プロトピック®)と、最近小児にも使用可能となったジファミラスト(モイゼルト®)、デルゴシチニブ(コレクチム®)があります。やはりステロイドと異なる非ステロイド系消炎外用薬(スタデルム®、フェナゾール®など)が以前から使われてきていましたが、皮膚炎症を抑える作用が弱く、それ自体でかぶれを起こすこともありアトピー性皮膚炎にはあまり使用しなくなっています。
まず初めに適切な強さの抗炎症外用薬によって今ある皮膚の炎症と痒みを速やかに抑える治療を行います。これを寛解導入療法と言います(寛解とは、一時的に病気による症状がほぼ認められなくなったが、完全な治癒とは異なり、再発の可能性が残る状態をいいます)。赤みが強く、じくじくしたり、もり上がりがある、かさぶたが付着したり剥がれ落ちる状態などの強い炎症があるときはしっかり目のステロイド外用薬を使用しますが、数日塗ることで症状が改善してすべすべの皮膚の状態に近づくようなものを選ぶことがポイントです。薬の吸収されやすい顔面や外陰部は弱めの外用薬を使用します。寛解導入がうまくいったあとでも全く治療をしない、あるいは特別の薬を使わずに保湿・保護剤によるスキンケアだけで完治した状態を保つのは難しく、はじめのうちはしばらくして湿疹がぶり返すことが多いので根気よく外用療法を継続して症状のない状態を保つようにします。湿疹が再発したときのみ抗炎症外用薬で抑えていく治療をリアクティブ療法と言います。湿疹が出にくくなっている皮膚の場合はリアクティブ療法で間に合う場合もありますが、短期間で湿疹がぶり返す場合には、再発が起きる前に定期的に抗炎症外用薬を使い炎症を抑える治療であるプロアクティブ療法をおこない湿疹を予防していきます。アトピー性皮膚炎では、炎症が軽くなって一見正常に見える皮膚でも、隠れた炎症が残っていて、掻いたりこすれたりの物理的刺激や気温湿度の変化などの環境刺激で炎症がぶり返し易いため注意深いフォローが必要です。皮膚の炎症を火事に例えると、湿疹があるときは炎が燃えている状態ですが、ある程度消火活動をして火が消えたように見えてもくすぶった状態が続き、風が吹くとまた炎が立ち、湿疹がぶり返すイメージです。その意味から寛解導入療法、寛解維持療法としてのプロアクティブ療法を十分行ってからリアクティブ療法にステップダウンすることが勧められます。抗炎症外用薬による治療中でも保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤など)や保護剤(白色ワセリン、プロペト®、亜鉛華軟膏など)により皮膚バリア機能の低下したドライスキンを補正するスキンケアをしっかり行います。
抗炎症外用薬の副作用が心配になるかもしれませんが、ランクの高いステロイド外用薬を大量に全身に塗布しない限りは全身に影響する副作用は起きず、皮膚の毛細血管が赤く蛇行して透けて見える毛細血管拡張や皮膚の菲薄化などの部分的な副作用は、プロアクティブ療法で短期の休止期間を置き、ステロイド外用薬のランクを下げていくことで予防できます。また非ステロイド抗炎症外用薬はこうした副作用がないことから、湿疹がもともと軽症の場合での寛解導入に使用したり、ステロイド外用薬による寛解導入後に湿疹が軽くなってきた部分への維持療法として休まず連日使用することもできます。
抗炎症外用薬や保湿剤の塗り方は、湿疹部位に一か所から延ばして刷り込むように塗るのではなく、十分量を取って何か所かに分散させて湿疹部を覆うように塗ります。外用薬の塗布量は、大人の人差し指の先端から第一関節まで軟膏チューブから押し出されてくる量(1フィンガーチップユニットFTU=約0.5g)、ローションタイプでは1円大分の量がそれぞれ大人の手のひら2枚分の皮膚の面積に塗るのに適した量になります。
冬場の乾燥や夏の発汗、皮脂などによる皮膚の汚れ、とびひなどの皮膚の感染、タオルや衣類による摩擦、日焼けなどが皮膚炎の悪化因子となります。熱すぎないお風呂やシャワーで中性の低刺激の石鹸を使用し皮膚を清潔に保ち、肌に触れるものに注意を払います。湿度の高い季節でもエアコンなどにより皮膚の乾燥は一年を通じで見られるため、保湿剤によるスキンケアを欠かさないようにます。
痒みに対する治療として飲み薬の抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)があります。痒みで皮膚を搔きむしってしまう、夜に安眠できないなどの症状を緩和する作用が期待できますが、湿疹を直接改善するものではないため、外用療法をしっかり行い、痒みが軽快したら休止します。
抗炎症外用薬による治療を十分行ってもなかなか寛解が維持できない場合や全身の痒みが強く生活に支障がある場合には、近年、新しく開発された抗炎症内服薬(オルミエント®、リンヴォック®、サイバインコ®)や注射薬である生物学的製剤(デュピクセント®、ミチーガ®など)を使用することがあります。内服薬は、皮膚炎や痒みを引き起こす原因となる炎症性細胞に働き、サイトカインという炎症物質が作られるのを抑えます。12歳以上からの適応で、1日1回毎日内服しますが、免疫反応を全般的に抑えるため副作用として感染症に注意が必要です。生物学的製剤は、作られたサイトカインを中和することで炎症を抑え効果を発揮し、比較的副作用も少なく安全に治療できます。生物学的製剤はデュピクセント®が6か月から、ミチーガ®が6歳からの適応で、年齢により2週あるいは4週ごとに皮下注射をしますが、簡便なペンシル型製剤があり自宅で本人や保護者が注射することができます。抗炎症内服薬、生物学的製剤いずれも皮膚の炎症や痒みに効果があり、寛解導入、寛解維持に優れた効果を発揮します。いずれも開始して3-4か月で効果を判定し、有効であれば最低1年以上は継続していく例が多いです。
稀ですが乳児期に全身皮膚に強い炎症を起こす重症なアトピー性皮膚炎となり、皮膚のブドウ球菌感染を起こし、また皮膚から多量の滲出物がでるため体からタンパク質などの栄養素が失われ体重が増えないなど成長障害を起こすことがあります。その際は病院に入院して徹底した外用療法による緩解導入を行います。
近年アトピー性皮膚炎はアレルギーマーチの始まりの疾患として食物アレルギーの発症に関与することが分かってきました。現在では バリア機能が低下したアトピー皮膚から食物アレルゲンが体内に侵入することでIgE抗体が作られ(これを食物アレルゲンの経皮感作と言います)食物アレルギーが発症しやすくなると考えられるようになりました。アレルギーマーチの進行を予防、阻止するために乳児期に早くからスキンケアや湿疹の治療をしっかり行っていく必要があるのはこのためです。
食物アレルギーは、食物により体にとって有害、不利益な症状が起きる現象ですが、それが自分の免疫反応によって起きる場合をいいます。乳幼児の卵白、牛乳、小麦アレルギー、幼児以降でのナッツアレルギーなどでは食物タンパクに対して作られた特異的IgE抗体を介して起きる即時型アレルギー反応が典型的です。一部にIgE抗体によらない免疫反応に基づく特殊な病型の食物アレルギーもあります。
食物アレルギーは、特定の食物を食べて症状が引き起こされことと、その食物に特異的な血液中のIgE抗体が陽性であるなど免疫反応の関与を証明して診断します。食後にアレルギー症状があった場合、食物摂取の履歴を詳細に検討することで原因の食物を絞って、血液中の特異的IgE抗体測定や皮膚プリックテストなどを行います。但し、たまたま測定したある食物への特異的IgE抗体が陽性であっても症状なくその食物を食べることができているのであれば、食物アレルギーとは言わず、摂取を控える必要はありません。 誘発された症状がアレルギー反応か疑わしいときや複数の食物が疑われるときは、個々の食物を実際に少量から食べて症状の有無を確認する食物経口負荷試験を行って診断することがあります。
食物を食べることで免疫反応によらず食物アレルギーと似たような症状を起こす食物不耐症や食中毒などを除外する必要があります。野菜、根菜、果実や赤身魚(青魚)、甲殻類などではそれぞれの食物にもともと含まれるヒスタミン、セロトニン、アセチルコリンなどの活性物質により皮膚のかゆみや発疹、嘔気、嘔吐などのIgE抗体が関与する即時型アレルギー反応と似た症状が起きることがあります。こうした活性物質での症状を起こす食物を仮性アレルゲンと呼びます。特に乳児期には野菜や魚で食物アレルギーを起こすことはまれで、多くが仮性アレルゲンとしての症状であり血液検査でもIgE抗体は陰性です。
食物アレルギーを持つ患者は、乳児期が最も多く、年齢が上がるにしたがって治ってくることが多いため、全体としては減少してきます。その割合は、乳児期には7-8%で学童期では3%程度です。 原因食物の頻度は、発症年齢によって変化し、1歳前の乳児期には卵、牛乳、小麦の順で多くみられますが、最新の統計では1歳を過ぎるとクルミやイクラのアレルギーが増え、特にクルミは単独で3歳から17歳までの新規発症例の1位となり、全年齢を合わせても卵の次に多く、牛乳、小麦を上回っています。木の実類ではクルミ以外にカシューナッツ、マカダミアも増えており、クルミ、ピーナッツ(マメ科で木の実とは別です)に次いで多くなっています。
食物アレルギーの即時型反応の症状は、口内の痒み、違和感、口周囲や顔の皮膚の発赤などの軽いものから、呼吸困難や腹痛、嘔吐、さらに意識低下や循環不全を伴うショックまであります。食物を食べた直後から、遅くとも1-2時間のうちに症状が起きますが、重症な場合ほど短期間に症状が進行します。重症な即時型反応をアナフィラキシー(最重症はアナフィラキシーショック)と言いますが、これは皮膚粘膜以外の複数の臓器(呼吸器、消化器、循環器)に症状が出現し、通常は急速に進行し、致命的にもなりうる重篤な全身性の過敏反応であり、緊急の対応が必要です。
食物アレルギーの即時型症状の治療は、迅速に症状の重さを判断して行います。皮膚・粘膜のみの軽い症状であれば、しばらくして自然に消えることもあり、痒みが強い場合は抗ヒスタミン薬の内服を行います。重症のアナフィラキシー症状のある時は、アドレナリンの筋肉注射を行う必要があり、病院への救急受診や救急車の要請をします。一度でも呼吸器や循環器症状や意識低下などアナフィラキシー症状の経験がある、アナフィラキシーの既往はないがソバ、ピーナッツ、木の実などの重症症状が出やすい食物へのアレルギーの診断をされており、海外や病院から遠方に住んでいるあるいは旅行に行くなどの場合は、アドレナリンの自己注射薬(エピペン®、保護者や本人が自分でうてる簡便なペンシル型製剤)や点鼻薬(ネフィー®)をアナフィラキシー症状出現時にすぐ使えるように常時携帯します。使用の目安を以下に示します。
| 症状分類 | エピペン®、ネフィー®を処方されている患者でアナフィラキシーショックを疑う場合、 下記の症状が一つでもあれば使用すべきである |
|---|---|
| 消化器症状 | ・繰り返し吐き続ける ・持続する強い(がまんできない)おなかの痛み |
| 呼吸器症状 | ・のどや胸が締め付けられる ・声がかすれる ・犬が吠えるような咳 ・持続する強いせき込み ・ゼーゼーする呼吸 ・息がしにくい |
| 全身の症状 | ・唇や爪が白い ・脈を触れにくい・不規則 ・意識がもうろうとしている ・ぐったりしている ・尿や便を漏らす |
食物アレルギーの治療管理の基本は適切な診断に基づいた必要最低限な原因食物の除去と、除去解除を目指した栄養食事指導です。食物アレルギーの多くの患者は、原因食物を閾値量(その量を超えると症状を起こす量)以下の少量で継続的に食べていると以前の閾値量を超えて、最終的に普通の日常量を症状なく食べられるようになってきます。これを耐性獲得と言います。
アトピー性皮膚炎のところで述べたように、アトピー皮膚から食物アレルゲンが体内に侵入すると経皮感作(IgE抗体の産生)がおき食物アレルギーが発症しやすくなりますが、逆に食物を消化吸収する消化管では本来、食物に接触することでアレルギーの発症を抑えるえる免疫システムが働くことが最近の研究で分かってきました。アレルギーを起こする食物の多くは家庭内の生活環境中に普通に存在するため、アトピー体質を持つ乳幼児では経皮感作のリスクが高まります。離乳中でまだ卵を食べる前から3割ほどの乳児で卵白へのIgE抗体が陽性になっており、そのすべてではありませんが、初めて卵白を食べて即時型アレルギー反応を起こすことになります。
誘発症状があり食物アレルギーが診断された後は、原因食物をしばらく食事中から除去します。乳幼児の卵、牛乳、小麦などの食物アレルギーは、症状が軽くIgE抗体も高値でない限り自然に耐性ができてくることが多いため、症状がおきない ”食べられる範囲”で食べていく部分除去の食事療法を行います。 アレルギー外来では、症状を起こした量から十分減らした量、あるいは以前に症状なく食べられていた量が分かっている場合にはそれを参考にして少なめに設定した安全な量での原因食物の摂取を開始します。定期的な受診での見直しによりゆっくりしたペースで増量していきます。多くの食物はよく加熱する、小麦や米粉などのつなぎ食材を使用して調理するとアレルゲンタンパクが凝集、変化することで症状が出にくくなり、量や内容を調節しながらグレードを上げて食べていきます。アレルゲン食物は少なくとも週3日以上食べると耐性が進みやすいことが分かっています。卵や牛乳などの乳児期にアレルギーを起こしやすい食物では、年齢が上がるにつれて多くは耐性獲得され、日常生活での制限が解除できます。年長児では食事療法中に症状を繰り返すと、たとえ口唇周囲や口内の軽度の症状であっても味覚嫌悪を覚えて治療中のアレルゲン食物を嫌いになり、本来は食べられるようになっているのに摂取が進まなくなることがあります。可能な限り症状が出ないものからゆっくり進めていくのがコツです。
アナフィラキシー症状を起こした、食物特異的IgE抗体の値が高値で症状がおきる確率が高いと予想される、年長児になっても症状がおきやすいなどの場合は、病院で原因食物を用いた経口負荷試験を繰り返し行って閾値を評価したうえで、医師の指導管理のもと計画的に閾値を上げていく経口免疫療法を行います。ソバ、ピーナッツ、木の実などの食物はそのアレルゲンタンパクの性質などから、耐性獲得がされにくい特徴があり、経口免疫療法の効果も限られますが、少量を用いた経口負荷試験で安全域の量を確認しておくこともできます。またこれらのアレルギーでも低年齢での発症した場合は一部で成長により自然に耐性ができることもあるため、定期的にIgE抗体の値を再評価しています。リスクの高い食物アレルギーの経口負荷試験や経口免疫療法が必要な場合は当クリニックから専門施設へ紹介いたします。
アレルギー疾患の家族がいる、本人にアトピー性皮膚炎が疑われるなどリスクのあるときでも、消化管でのアレルギーを抑える働きを引き出していくために離乳食はできるだけ遅らせないようにします。医師の管理のもとアトピー性皮膚炎があるが外用療法で湿疹が十分コントロールされている乳児で生後6か月から少量の加熱全卵を摂取すると1歳時点の卵アレルギー発症を8~9割予防できるという研究成果があります。外用療法やスキンケアで湿疹が改善していれば、卵ならば茹で卵黄などアレルギーを起こしにくい調理品を少量から段階的に慎重に増やしていくようにします。アトピー性皮膚炎の症状が軽快していないときは、離乳食開始前にリスクの高い食物のIgE抗体を測定し、結果から方針を決めていきます。
原因食物を食べた後に、運動することによってアナフィラキシーが起こる食物アレルギーです。原因食物を食べただけで、あるいは運動だけでは症状は出ません。食物への特異的IgE抗体が関係する即時型アレルギーですが、食後の運動によって腸から未消化の食物アレルゲンの吸収が促進されることで症状が出現すると考えられます。過去に原因食物による食物アレルギーがなくFDEIAを発症する典型例と、乳幼児期に発症した食物アレルギーの耐性が進んで食べただけでは症状は起きなくなっていたのに運動により症状が出やすくなる例があります。初めての症状を起こすのは10~20代以降で、原因食物は、小麦、甲殻類、果物や野菜などが中心です。食後2~4時間以内(1時間以内が大部分)の運動により発症し、皮膚症状はほぼ全例に認め、呼吸器、消化器症状、ショックなど重症例も多くみられます。半数以上が再発を経験しますが、1-2回でそれ以降認めない例もあります。症状を誘発する運動はサッカーなどの球技やランニングなど運動負荷の強いものが多いですが、頻回に起きる例では、散歩や入浴、大笑いしたときなど軽い負荷でも誘発されることがあります。学童期後半での初発や原因不明のアナフィラキシーでは本症の可能性を念頭に置く必要があります。
診断は、発症症状時の状況の詳しい問診から、摂取した食物と頻度の高い食物を中心に特異的IgE抗体測定などで絞り込み、同じ食物で症状が繰り返していれば原因食物の可能性が高まります。専門病院で疑われる食物により摂食後の運動負荷試験を行うこともありますが、再現性が低く、原因食物が不明な場合が多いのが実情です。
治療は、原因食物が明らかな場合、食後に運動をする予定のあるときは、食事から原因食物を除去します。もし食べた場合は、最低2時間以上は運動を控えます。原因食物が不明な例では、各食後最低2時間(可能であれば4時間)は運動を避けます。症状が起きた時の対処は一般的なアナフィラキシーと同様です。FDEIAの初回発症を予測する方法はないため、症状が出た患者への生活指導による予防と発症時の対処法の指導が重要で、アドレナリンの自己注射(エピペン®)を携帯します。
口唇、口内、喉の粘膜を中心として誘発されるIgE依存性の即時型アレルギー症状をさし、食物を食べた直後に口や喉の粘膜から直接吸収された食物アレルゲンによって違和感、痒み、腫れなどが出現します。即時型アレルギーの全身症状の一部として発症する粘膜症状とは区別されます。後述の花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)の症状として見られますが、通常の食アレルギーの年長児で耐性が進んで全身の症状や皮膚症状が出なくなった後に、OAS症状のみ残る場合もあります。
花粉-食物アレルギー症候群、PFASは、先に感作された花粉の抗原とその花粉に交差反応のある食物により生じるIgE抗体を介した即時型の食物アレルギーです。交差反応とは両者が似た構造のアレルゲンを持つため、一つのアレルゲンに対して作られた特異的IgE抗体が他方のアレルゲンにも反応して症状を起こすことを言います。花粉と交差反応を起こす果物や野菜、豆類、木の実類、スパイスなどの植物由来の食物が原因となります。原因食物を摂取直後に食物アレルゲンが口腔粘膜に接触することで口内や喉の粘膜の違和感や痒みなどの口腔アレルギー症候群OASの症状がでます。食物が嚥下された後は植物性アレルゲンが消化で消失しやすいためそれ以外の症状が出ることはあまりありませんが、10%程度に多量に摂取した場合などで未消化のアレルゲンによる食道や胃壁への刺激により嘔気や腹部不快感などの消化器症状、ごくまれに全身のアナフィラキシー症状まで進展することがあります。加熱調理した食物は症状が出ません。花粉症にならないとPFASは発症しないので乳幼児期には見られませんが、花粉症の低年齢化に伴い本症も低年齢化しています。
日本ではシラカバ、ハンノキの花粉が原因になることが多く、この花粉タンパクとバラ科果物(モモ、リンゴ、サクランボ、イチゴなど)のタンパクが似た構造を持つため、これらの果実を食べて口内の症状が出やすくなります。シラカンバは北海道や本州の高地に生息しますが、ハンノキは全国的にみられます。スギ花粉症ではトマトでPFASが起きやすくなります。PFASの発症率は花粉アレルギーの約12%で年齢は10-30歳台に集中しています。
年齢を考慮したうえで典型的なOAS症状と疑われる食物への感作(特異的IgE抗体、皮膚テスト)、原因食物と交差性をもつ花粉へのIgE抗体陽性を確認して診断します。PFASは花粉感作から数年を経てから発症することが多いため、花粉感作が幼児期にみられた場合でも、PFASが発症するのは年長児から学童以降です。花粉への感作が成立していれば花粉症が発症する前にPFASを発症することもあります。乳児期や幼児期早期での果物や野菜などでの症状は、その食物自体へのIgE抗体による即時型反応(キウイやバナナなどが多い)か、または仮性アレルゲンとしての食物不耐症と考えられます。
治療は、原因食物の摂取を避けることになりますが、生の新鮮な果物・野菜で症状がでやすいものの、加熱調理した食物やジャム、コンポート、缶詰は摂取可能です。重いアナフィラキシーの既往がなく自制内の軽度口内違和感のみで本人が摂取希望する場合は制限しませんが、体調、花粉の飛散時期以降で症状が悪化することがあるので注意します。治療としてはヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1B)の内服で口内症状の緩和が期待できます。
急性アニサキス症(アニサキス食中毒)は、回虫目のアニサキスが寄生した中間宿主の魚やイカの生食により、アニサキス幼虫が胃や小腸の壁に侵入し、摂取~数時間後に激しい腹痛や嘔吐の消化器症状を呈する食中毒です。寄生している魚が死んで時間が経過すると内臓から筋肉へ幼虫が移動してくるため、鮮魚では内臓をすぐに取り除く、内臓を食べない、60℃で1分以上の加熱や24時間以上の冷凍で死滅させるなどの対処が必要です。
一方、アニサキス由来のアレルゲンに感作が起きることで、その後アニサキスを含む魚を食べることでIgE依存性に蕁麻疹や消化器症状、アナフィラキシー症状などの誘発症状が出ることがあり、これをアニサキスアレルギーといいます。アニサキスアレルギーは、魚(生食)を頻回に摂取する成人に多く、成人で魚アレルギーが疑われた症例でかなりの割合を占めると考えられており、魚介類摂取後のアナフィラキシーを見た際は、本症を疑う必要があります。
アニサキスの寄生率が高い魚介類は、サバ、アジ、カツオ、イワシ、ブリ、ホッケ、タラ、イカなどであり、アニサキスアレルギーを起こすタンパクは加熱処理でも安定しているため調理や加工した魚でも症状が起きる可能性があります。
診断は、アニサキスの寄生率が高い魚介類の摂取後の症状の病歴とアニサキス特異的IgE抗体および魚介類アレルギーの鑑別のための魚介類の特異的IgE抗体の測定を行います。対処法はアニサキスの寄生リスクの高い魚の摂取、特に生食を避けるようにします。
本来の食物アレルギーではありませんが、家庭用のお好み焼き粉、たこ焼き粉、ケーキミックス粉を開封後、密閉されないまま常温で放置することで粉中にダニが混入、繁殖した結果、これらを使用した調理食品をたべた際にダニへのアレルギーによりアナフィラキシーを来す病態で、経口ダニアナフィラキシーもしくはパンケーキ症候群といいます。本邦では、お好み焼き粉でおきることが多く、小麦粉のみの場合はあまりありません。もともと吸入性のダニアレルギーを有する通年性のアレルギー性鼻炎や気管喘息の患者に起きることが多く、原因のダニはコナヒョウヒダニがほとんどです。熱調理してもアレルゲンタンパクは壊れないため症状が出ます。
症状は摂取後30分以内に強い鼻閉、喘鳴など、ダニ・ホコリを吸い込んだ時に起きやすいアレルギー症状が中心で、皮膚の蕁麻疹や口の粘膜の腫れなどを伴います。
ダニ汚染が疑われる粉物を食べたという病歴、ダニへのIgE抗体陽性、小麦による本来の食物アレルギーを除外して診断します。症状誘発時のダニに汚染された粉が残っていたら、粉を顕微鏡で調べることで生きたダニを確認できます。
乳幼児(2歳未満)を中心に牛乳や卵黄などを食べて嘔吐や下痢、血便などの消化器症状が見られる食物アレルギーの病型です。即時型の食物アレルギーと異なり、食べてから症状が出るのは数時間から数日(4時間から24時間ほどが多い)の後となり、病態としてはIgE抗体によらず、消化器粘膜に存在するリンパ球などの免疫系細胞が関与すると考えられています。主な病変の場所である消化管の部位(食道、胃、小腸、大腸・大腸)などによりいくつかの病型があります。胃腸同時に病変があり嘔吐や下痢、血便などが見られる乳児食物蛋白誘発胃腸炎症候群(Food protein-induced enterocolitis syndrome、FPIES)が代表的疾患ですが、その他に乳児期に人工乳により大腸からの軽度の出血で血便が一時的にみられる比較的軽症の食物蛋白誘発結腸直腸炎などがあります。FPIESの多くは人工乳や牛乳製品を取っているうちに、下痢や血便が出現するようになります。最近では固形物の卵黄によるFPIESが急増しています。離乳食で茹で卵黄を開始して何回か食べたときに、食後4-5時間で突然、嘔吐が始まり数回の嘔吐で自然に症状は治まりますが、次に少量摂取しても同様に嘔吐を繰り返すようになります。卵黄のFPIESの増加の原因は分かっていません。診断のための特別な検査はなく摂取状況と症状出現のタイミングなどの臨床的経過から診断します。人工乳による下痢症状のFPIESは人工乳を治療用のミルク(加水分解乳やアミノ酸乳など原因になる牛乳タンパクを分解してアレルギー反応を起こしにくくする処理をしたミルク)に変更して症状が改善するかで判断します。
治療は、即時型アレルギーのように閾値以下の症状のない量が決めにくく、耐性がつく特別な方法がないため、基本的に原因食物の完全除去になります。幸い除去しているうちに自然と耐性獲得されることがほとんどなので、最後に症状が出た時から6か月ほど過ぎてから原因食物を少量試していき、治ったかを確認します。1歳半ぐらいには多くは症状なく食べられようになります。症状を繰り返すときはさらに期間をあけますが、大部分は3歳ぐらいまでに完治します。
気管支喘息は、呼吸のための気管から肺までの空気の通り道である気道が発作的に細くなり(気道の狭窄と表現します)、ゼーゼー、ヒューヒューする喘鳴や咳込み、呼吸困難を繰り返する病気です。発作的な症状は自然ないし治療により収まりますが、ごくまれに重症化して命にかかわることもあります。慢性的に気道に炎症があるために、いろいろな刺激で気管支の周りを取り囲む筋肉が収縮し、気道表面の粘膜がむくむ、分泌物が貯まるなどの原因で気道が狭まります。ウイルス感染、ホコリの吸入、寒暖差や気圧の変化などの気道刺激に反応しやすい状態を気道過敏性の亢進といいます。
気管支喘息、特に小児期に発症する喘息の患者は、アトピー体質を持つことが多く、ダニ、ハウスダストなどの吸入アレルゲンへの特異的IgE抗体が高率に陽性となります。気道炎症は、遺伝的な体質に加え、環境中の刺激因子によりIgE抗体などによる免疫反応が引き起こされ、免疫細胞や炎症細胞が関与することで進行します。さらに発作的な症状を繰り返すうちに気道の壁が厚く硬くなることでより狭窄が増し(平滑筋肥厚、線維化)、元に戻らない構造的変化(リモデリング)をきたし、喘息の症状が悪化します。
気管支喘息の診断は、気道過敏性の亢進により発作性の喘鳴などの症状が反復することを確認し、先天的な異常や一時的な感染症などによる喘鳴を除外することで総合的に行います。乳幼児期には、気道のウイルス感染で喘息と同様の症状がみられることがしばしばあるため、5歳以下の喘鳴のうち明らかな24時間以上続く喘鳴を異なる時期に3エピソード以上反復する、気管支を拡張させる作用のある薬の吸入後に喘鳴が改善する場合に乳幼児喘息と診断します。 以下のアトピー素因の有無などの項目を参考にします。
乳幼児期に喘鳴を起こす場合、その後の経過で大まかに以下のような3つのグループがあります。3番目が典型的なアトピー性気管支喘息です。
前2者は典型的な喘息にならずに成長とともに発作を起こさなくなりますが、はじめはアトピー型喘息と区別が難しいため、暫定的に喘息と診断し、予防的な喘息治療を行う場合があります。
【咳喘息 Cough variant asthma】
喘鳴は聞こえないが、苦しそうな咳が発作的に頻発する状態で、喘息の亜型、前段階と考えられる。気道過敏性亢進が見られ、喘息の発作治療薬が有効である
気管支喘息の薬物治療は、気管支を広げる薬など喘息発作(急性増悪とも言います)を抑える発作治療薬と、発作時以外の抗炎症療法を目的とした予防的な長期管理薬からなりますが、後者がより重要と言えます。
喘息の治療の方針は発作(急性増悪)、長期的な予防治療管理ともに重症度を評価して決定されます。
小発作であればまず家庭で気管支拡張薬の吸入(携帯用の定量噴霧器や家庭用ジェットネブライザー)や内服、吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤の追加吸入などで対処します。気管支拡張薬の吸入は4時間以上あけて行い、発作が収まって呼吸状態が安定してからも朝晩の2回程度数日続けます。普段ステロイド吸入薬をやっていない場合でも一時的に重ねておくと再発予防の効果が期待できます。これらの治療で発作が収まらなければ、一般あるいは救急外来を受診して次のステップである中発作以上の治療を行います。
小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2023
喘息の診断後、今までの治療や症状の程度から現在の重症度を判定し、それに応じた治療ステップによる長期管理を開始します。長期管理薬は基本的に気道炎症への抗炎症治療薬が中心となります。軽い症状が年に数回ほどであればその時々の急性発作への治療で間に合いますが、月に1度以上あるいは重い発作があったときは、症状がない時も予防的な長期管理薬(主に吸入ステロイド薬や抗ロイコトリエン拮抗薬)をしばらく継続していきます。年間では発作の回数が多くないが、季節の変わり目や運動などで一時的に発作の頻度が増える場合も、落ち着くまで予防薬を使用します。
小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン2023
2023年のガイドラインからは6歳以上において全ステップでダニアレルゲン特異的免疫療法が追加されました。
基本治療開始し、追加治療をしても十分な改善がない場合には治療ステップを上げます。 良好なコントロール状態が3か月以上維持できれば、ステップダウンしますが、一般的に最初に気管支拡張薬から減らし、吸入ステロイド薬を継続した後、数ヶ月ごとに吸入量を減らしていきます。 最終的に長期管理薬を中止し、無治療で症状がない状態が維持できれば寛解として再燃に注意しながら経過観察して行きます。
強い運動を持続する場合や、寒く乾燥した環境での運動(冬季のランニングなど)で誘発される喘息発作です。スイミングでは起きにくいとされます(別の刺激として揮発した塩素消毒薬での悪化に注意します)。
咳や喘鳴の発作症状は運動終了後5-10分で最も強まり、安静にして多くは30分ほどで軽快する特徴があります。 重症やコントロール不良の気道過敏性亢進を伴う喘息患者で多くみられますが、軽症でも運動時にのみ運動誘発喘息を起こす人もいます。 運動時の深い呼吸による気道の冷却と気道粘膜の水分が失われて粘膜の浸透圧が上昇することが刺激になると考えられています。 治療としてロイコトリエン受容体拮抗薬の内服や運動15分前のβ2刺激薬の定量噴霧器(携帯用ハンドネブライザー)による吸入が予防に効果的です。また、軽度の運動誘発喘息を生じさせる程度の事前運動をしておくと、その後には症状が出にくい状態(不応期)になります。
季節性あるいは慢性の鼻炎症状を持つ者は多く、特に花粉症は日本人の4割にみられるという統計があります。 鼻炎はその原因により感染性(急性、慢性、ウイルス性、細菌性など)、アレルギー性(通年性、季節性)、非アレルギー性(血管運動性、好酸球増多性)に分類されます。
アレルギー性鼻炎は、ハウスダストや花粉などのアレルゲンが鼻粘膜に侵入し、アレルゲン特異的IgE抗体を介する免疫反応(即時型アレルギー)によって引き起こされる「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」の3症状を特徴とする疾患で、通年性(ダニ等)と季節性(花粉症)に分類されます。
アレルギー性鼻炎の診断は、症状経過の問診、鼻腔内所見、血液中の特異的IgE抗体測定などで行います。
【血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)】
急激な温度変化で自律神経調節が乱れ、鼻粘膜の血管拡張により鼻水・鼻閉を起こす病態であり、春先や秋口の季節の変わり目や冬季に多く見られます。アレルゲンIgE検査は陰性でも発症します。
くしゃみ、鼻汁、鼻閉の症状やその重症度に応じて以下のような内服薬、点鼻薬による局所療法を行います。また花粉症、ダニアレルギーであれば、アレルゲンの回避(マスク、ゴーグルなど)や除去(環境整備)も必要です。
最近では、スギ花粉、ダニによるアレルギー性鼻炎への体質改善や治癒を目指す根本的治療として舌下免疫療法(SLIT)が治療選択肢となっています。SLITとは原因物質である花粉やダニアレルゲンを毎日長期間にわたって口腔粘膜に投与し、体を慣らしていくことでアレルゲンに暴露されたときに鼻粘膜や結膜のアレルギー反応を起きにくくする治療法です。 実際には血液検査などでスギ花粉やダニ・ホコリへのIgE抗体が陽性であることを確認し、1日1回、花粉あるいはダニの成分を含む錠剤(それぞれシダキュア®、ミティキュア®)を舌下粘膜で吸収させます。錠剤は舌下部と内側の歯茎の間に1分間保持し、素早く溶けるのでその後飲み込みます。舌下後は5分間飲食を、また2時間運動や入浴を避ける必要があり、自宅では就寝前の舌下が一般的です。開始1週目は少なめの初期量から、2週目から維持量に増量しそれを継続します。重大な副作用は少なく、口や喉の粘膜の違和感がみられることがありますが、ほとんどが間もなく慣れて気にならなくなります。非常にまれですが、呼吸困難などのアナフィラキシーに注意が必要のため初期量、維持量の初回投与は院内で行い30分経過を見ます。 1年目から症状改善が期待できますが、長期の効果持続のためには最低3-5年続ける必要があります。
発熱時や口内に傷があるとき、歯科治療をした時など1週間ほど休止しますが効果に問題ありません。スギ花粉のSLITはスギ花粉の飛散期以外の時期に開始します(6月~12月)。ダニのSLITはいつでも開始可能です。ダニ、スギ花粉ともに鼻アレルギーがあるときは、両者を行うことが可能ですが、開始時期を最低1か月ずらします。鼻アレルギー以外に気管支喘息を合併する患者では、ダニのSLITにより喘息の治療効果もあることが分かっています。
花粉症の原因花粉は、大きく樹木花粉と雑草花粉に分けられます。樹木花粉は、スギやヒノキ、シラカバ、ハンノキが多く、雑草花粉は、イネ科のカモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなどの多年草とキク科一年草のブタクサ、キク科多年草のヨモギが代表です。それぞれ飛散時期は下記の図の通りです。樹木の花粉は広範囲に飛散しますが、雑草花粉は、野原や河川敷などの周囲のみに限られます。アレルギー性鼻炎での花粉感作の推定には、居住する地域や生活環境の問診が重要です。
各種花粉の飛散時期(関東地方)
蕁麻疹は、膨疹といい、皮膚が一過性に限局して赤く膨らみ、数時間から1日くらいで消えてしまうことを繰り返す皮膚の症状です。多くの場合、強いかゆみを伴います。蚊に刺されたときのような赤い膨らみで、大きさは、1㎜程度から手のひら以上の大きなものから、一つ一つの膨疹が融合して体全体に広がるものまでさまざまです。症状が長引く場合には次々と新しいものが出没し、常に蕁麻疹がでることもあります。膨らみが消えた後は引っかき傷以外に跡が残らないことが特徴です。もし一度出現した皮疹が何日もそこに残り、皮膚表面が厚くごわごわする、茶色い色素沈着がみられるようなら蕁麻疹とは別の発疹を考えます。
通常、蕁麻疹は皮膚の表層の病変ですが、皮膚あるいは粘膜の深いところを中心に限局した腫れをきたす特殊な蕁麻疹を、血管性浮腫(あるいはクインケ浮腫)といいます。血管性浮腫は消えるのに2-3日かかります 。蕁麻疹は、人口当たり20%程度が一生のうちに一度は経験するといわれ、小児期からよく見られる疾患です。
明らかな誘因がなく自発的に出現するものを特発性蕁麻疹といい、実際にはこれが大部分を占めます。発症からの期間が6週間以内のものを急性特発性蕁麻疹、6週間を越えたものを慢性特発性蕁麻疹といいます。慢性化すると数か月から数年にわたることもあります。感染症が契機になって蕁麻疹が出現することがあり、特に小児期にはしばしば感冒などが誘因になることがあります。特定の病原体というわけではなく、必ずしも感染のある部位が特定できるとは限りません。
皮膚あるいは粘膜の深いところに限局した浮腫で数日以内に消失する病型です。顔面、特に口唇、眼瞼に多く見られ、稀ですが気道の強い浮腫により窒息の危険があります。症状の出現や誘因は表在性の蕁麻疹と同様で、特発性、刺激誘発性があります。
【遺伝性血管性浮腫】
先天的な血管性浮腫があります。血液中のC1インヒビターというタンパク質の遺伝的な異常により、顔、喉、口唇、手足などが急にむくむ疾患です。血縁者に同じような症状のエピソードを持つ人がいることや血液検査でC1インヒビターという物質の量や活性、補体C4の量が少ないことを確認して診断します。喉が腫れると窒息のリスクがあるため緊急対応が必要となり、治療としてC1インヒビターを補充する薬の点滴を行います。
蕁麻疹の基本的治療は、原因・悪化因子の回避と症状が出現したときの抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)などによる薬物療法です。特発性の蕁麻疹は、回避できる原因はありませんが、抗ヒスタミン薬の内服で多くは症状が改善、再発を予防できます。副作用である眠気の少ない第2世代の抗ヒスタミン薬が使用されますが、効果が不十分な場合は、同薬の増量、違う抗ヒスタミン薬への変更、抗ロイコトリエン拮抗薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬の併用を行います。 皮膚に出現している膨疹には、局所の冷却や抗ヒスタミン薬を含有した軟膏の塗布がかゆみの軽減に役立ちます。重症な難治性の蕁麻疹にはステロイド薬や生物学的製剤の抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤(オマリズマブ)を使用することもあります。 症状出現がなくなった後で抗ヒスタミン薬などは急性特発性蕁麻疹であれば1週間ほど、慢性特発性蕁麻疹であれば1-2か月ほど予防的に内服してから減らし、さらに内服間隔を3日に1度程度にあけて再発がなければ中止します。
アレルギー外来部長:大柴 晃洋 日本アレルギー学会専門医
担当医師:大川 洋二、佐々木 章人、野上 由貴