自分たちでつくる研修― ICT職専門研修実践「要件定義コース」
こんにちは、GovTech東京 人材育成グループの阿部です。
東京都デジタルサービス局とGovTech東京は「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」に基づき、DX推進の鍵となるデジタル人材の確保・育成に取り組んでおり、その一環として東京都のICT職向けに研修を企画・実施しています。
2025年度の研修より、「行政実務に根ざした研修を自ら設計・実施する」選択を行い、前回の記事はその第1弾としてICT職専門研修実践「企画コース」をご紹介しました(自分たちで設計・実施することに至った背景は上の記事をご確認ください)。
今回はその第2弾としてICT職専門研修「要件定義コース」です。前回に引き続き、内製だからこそ実現できた設計・運営の工夫や効果をご紹介したいと思います。
ICT職専門研修実践「要件定義コース」の位置づけ
東京都では「都政とICTをつなぎ、課題解決を図る人材」として、ICT職の任用を2021年に開始しました。都政の課題を理解し、業務部門とITベンダーの間に立ち、業務改革や住民サービス向上などのDX推進をリードする役割を担います。
その役割を担うため、GovTech東京ではICT職向けに体系的な研修プログラムを構築しています。今回ご紹介する研修はシステム開発の工程ごとに実務を体得する「実践研修」における「要件定義コース」です。

研修内容と内製化の工夫

「要件定義コース」の目的は、前工程の企画内容にもとづき、業務要件・システム要件・非機能要件などを整理して、仕様書に落とし込めるようになることです。本工程におけるICT職の役割は、研修の中で「業務部門と開発ベンダーとの橋渡しを担い、やりたいことを要件(仕様)に落とし込むこと」と定義されています。
1日完結型の集合研修で、午前は実際に業務フロー等を書いて業務要件を整理し、午後はシステム要件、非機能要件などの整理の仕方を学びます。

本研修の特徴は、自分たちで研修内容を考える利点を活かして、行政の実務に近しいケースシナリオを作成し、各要件整理のプロセスにおいて講義と演習を組み合わせて設計している点です。
1日を通してケースシナリオとして「防災備品の貸出・管理業務の見直し」をテーマに、紙や属人的な管理が残っている業務をIT化して、どのように業務/システム要件を整理すると改善されるのか。また非機能要件を考慮してどのようなシステム方式が検討できるのかを実際にグループワークで考えていただきます。

まずはシナリオを読み、業務フローや業務機能構成表を整理するところからスタートします。


最後に、システム方式の検討としてA案IaaS構築、B案PaaS構築、C案ノーコード開発、D案SaaS導入の4案に対して非機能要件の特徴と、各部門間の立場からトレードオフの調整が必要な要件を整理します。
また、本研修のファシリテーターは東京都各局のDX推進支援を行っているGovTech東京 都政DXグループの職員が担っており、実際の都の各局支援における「要件定義の実例」を伝えることによって、現場での活用をよりイメージしやすくしています。
都政DXグループでは東京都で実施している企画などの上流工程の支援や要件定義、プロジェクトの進捗管理支援を通じて、事業の成功に向けたサポートを行っています。要件定義プロセスにおいても、庁内支援における実務経験を基に、都のガイドラインや実務に即してどのような観点で仕様をまとめるかについても、講義に含めて伝えています。

受講者の反応
受講後アンケートでは、満足度が平均4.60点(5点満点)、業務活用度が平均4.43点(5点満点)と高い評価をいただいています。
・ファシリテーターの庁内支援に関する経験談が豊富で参考になった
・特に非機能要件の整理フレームがまとまっていて活用できそう
という声を複数いただき、内製化で狙った効果が出ているようで安心しました。要件定義はシステム開発工程の上流としてその後の設計開発に大きく影響するため、ICT職が担う役割、重要性、進め方の理解が広まるよう、次年度以降の研修をブラッシュアップできればと考えています。
次回は工程上次のステップである「設計開発コース」を紹介予定です。設計開発段階でどのように開発ベンダーと協業するのか、その講義や演習内容をご紹介します。
