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マガジン一覧

note

「書いてくれてありがとうございました」 そう感謝すらしたくなるような文章を、マガジンにまとめました。 折々、大切に、読み返させていただきます。

274 本

心が覚えているその場所へ

“グリルチキンベーコン添え“ 半世紀近くも経つというのにはっきり覚えている。月に一度、家族の特別な夜に頼んでいたメニューの名前。 シャトーという名のレストランには入口にガラスケースが置かれていて、おいしそうなメニューサンプルが並んでいた。テーブルのセットが終わるまでは入口で待機。母と妹はにこにこしながら椅子に腰掛けている。おすまし顔でガラスケースに近づくと、父がそっとうしろに立った。今日は何にする?と聞く声にちょっと考えるようなふりをしてみせる。 小4の私のちょうど目の

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光のとこにいてね

タイトルにひかれて小説を買った。一穂ミチさんの「光のとこにいてね」だ。希望に満ちているようで、別れを告げるような、どこか寂しい言葉だと思った。小説を読むときは何かにつまずきそうなことが多いから、この小説がどこかへの道しるべになればいいなと思った。 小説の内容を詳細に語ることを嫌がる人もいるので概略だけ書くと、小学生の頃に知り合った同じ世代の2人の女の子が、それぞれ特殊な環境に身を置きながら、相手に対して救いのような、共感のような、羨望のような心を持つという内容になっている。

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ひとりごと シロクマ文芸部

ひとりごとをよく言う。と言うより一人芝居を演じることが度々ある。誰かに見られると恥ずかしいので観客は要らない。家族が留守であることが必要条件。 ひとりで何をしているのか。 一つはキッチンステージで歌う。曲目は唱歌、童謡。古い歌謡曲、または中学の合唱部で歌っていた合唱曲。歌を歌うのは心の栄養になる気がする。   もう一つは夫に直接は言えないが、言いたい事をあたかも目の前に夫がいるかのように思いを吐き出す。長い人生を共にし、お互い折り合えない事は多いが本人に直接言ってはならない

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言葉、気配、省みること

指先にまで、ぐぐぐーーっと意識を拡張させて、普段は使わない言葉の引き出し方で単語を打っていく。打っては消してを繰り返しながら。それでも続けていると気づけば文章は積み重なっている。 私は、「自省録」というタグを全てのnoteにつけていた。ご存知の方も多いだろうが『自省録』は哲人皇帝、マルクスアウレリウスが、弱い自分自身を叱り、奮い立たせ、時に慰め、価値観を改め、自らを省みながら書いた文章の記録である。 改善や、少しでも良いことは、まず記録することから生じる。誰もが尊敬する哲

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【名刺がわりの10作品】

【roots】 ・宮崎駿 ・星新一 ・太宰治「正義と微笑」「斜陽」 ・茨木のり子「自分の感受性くらい」「倚りかからず」 ・谷川俊太郎「二十億光年の孤独」「生きる」 ・福沢諭吉「学問のすゝめ」 ・芥川龍之介「兄貴のような心持-菊池寛氏の印象-」「読書の態度」「東京に生まれて」「創作」 ・夏目漱石「坊ちゃん」「我輩は猫である」 ・渋沢栄一「論語と算盤」 ・ダニエル キイス「アルジャーノンに花束を」 ・伊坂幸太郎「重力ピエロ」 ・リリー フランキー「東京タワー」「ビートルズへの旅」 ・中原中也「汚れつちまつた悲しみに…」 ・アルベルト シュバイツァー 伝記 ・さだまさし「風に立つライオン」 ・葉田甲太「僕たちは世界を変えることができない」 ・あさのあつこ「バッテリー」 ・江戸川乱歩「怪人二十面相」 ・細谷亮太「医師としてできること できなかったこと」

10 本

銀座の街を、パパと歩く。

『あんたなんか、生まなきゃよかった』 9歳の誕生日の、あの日の衝撃が、ずっと頭の何処かにあった。 誕生日プレゼントの包装紙を開けると、そこには一冊の本が入っていた。本のタイトルよりも先に目に入ってきたのは、その帯に書かれていた言葉。 【あんたなんか、生まなきゃよかった】 ロサンゼルスで過ごした19の夏が、味気のなくなったガムみたく、いつまでも、吐き出すタイミングを見失っている。 たったひと夏のあの日々が、脳裏にジリジリと焼き付いて離れない。 19歳。サングラスをし

305

つまり、あなたと一緒にいたい。

真夜中のデニーズで、レモンパフェを食べながら背徳に敬礼している。 上の部分はあんなに美味しかったのに、下にいくにつれてバニラアイスに浸りきった甘ったるいフレンチトーストしか出てこなくなって飽きた。 「ミニパフェにしといたらよかったな。」なんて、都合がいいか。自分で選んだくせして後悔してるところがまるでダメだ。 『奥の方まで全部好きかは、奥底までちゃんと知ろうとしない限り分からない。』 そんなことは、真夜中0時のデニーズに、教えてもらうようなことではなかった。 【愛】

162

人生、最初で最後のライブを終えた。

人生で初めて、都内のライブハウスのステージで、歌を歌いました。 もう終わり。20代最後にこんな経験ができて本当に良かった、もう心残りは何もないや。またステージに立ちたいとも、もう思わない。全部置いてきた。そう、思いました。 ◇◇◇ 自分の歌なんか大嫌いだったのに、すごく厄介だったのは、歌を歌うことが、大好きだったことです。 「どうしてメメちゃんはメメちゃんの声に生まれたのかな」 ライブに出る前に、私に歌うことを教えてくれた人が、そんな風に言いました。そんなこと、考え

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生きているということ いま生きているということ

人が死んでいくのを隣でみる機会。 もうすでに死んでいる人の第一発見者になる機会。 ついこの間まで他愛のない会話をしていた人が、亡くなったという報告を受ける機会。 血縁者の代わりに人を看取る機会。 大切な人の死を泣き叫ぶ家族と共に過ごす機会。 そんな様々な死の機会に、日常的にふれる4年間を過ごした。 ‪幾つの人の死と私の人生が重なりあったって、慣れることが、ない。 ‪まだあたたかい体も、さっきまで動いていた心臓が止まるということも、死の瞬間に誰一人立ち会えないとい

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【小説】16ビートで命を刻む君と、空虚めな僕のこと。

お読みいただき、ありがとうございます。 感想等のコメントも心から嬉しいです。 私の知らないどこかで誰かに「次も読みたい」と楽しみに思っていただけるような小説を書けたらなと、すぐに投げ出す飽き性な私ですが、最後まで書き切ってみたいなと、今は思っています。(未完)

4 本

【16ビートで命を刻む君と、空虚めな僕のこと。】#1

君がこの街に住んでいるのといないのとじゃ、世界の輝き方がまるでちがって映るのだろうなと、どこか確信的にそう思っている。 そうなったことがまだないから、憶測でしかないのだけれど。 たまに同じ路線を使っているだとか、気付かないうちに入れ違いで同じラーメン屋に入っているだとかの、そんな偶然も普通に起こってしまうようなこの狭い街のどこかに、今日も君がちゃんと生きていると思うだけで、なぜだか強くいられるような、そんな気がしている。 この街に住んでいるということだけがたったひとつの

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【16ビートで命を刻む君と、空虚めな僕のこと。】#2

もうずっと雨だ。 これが梅雨のせいなのか、はたまた隔週で雨が降る気候に変わってしまったのかわからないくらいに、よく雨が降っていた。 夏は、まだまだ来ないみたいだ。 自然を感じることができないだろうと思っていた大都会は、想像していたよりもずっと、緑が多かった。 人工的な都市デザインのせいなのか、この街では、季節の花をよく目にする。 今の季節ならば紫陽花。 なんでただそこに咲いてるだけで、そんなにも美しいんだよ。この季節の空の色と雨の色を、少しずつ分けてもらって色づい

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【16ビートで命を刻む君と、空虚めな僕のこと。】#3

>>僕 #3 「そんな、バナナ。」 そうやって笑い飛ばしてしまえればいいことで、人は随分とよく悩む。家に着き、ちょうど玄関先で鍵を開けていたところで、同期の山仲から電話がかかってきた。 「よう、相変わらず?」 「まずまずかな」 何がどうまずまずなのかは全くわからないけれど、少なくとも今日という一日はイマイチよりのまずまずだったな、と苦虫を噛み潰しながら、履いていたクロックスを脱ぎ捨てる。 「彼女が誕生日なんだけどさ、プレゼントとかって何がいいと思う?」 買ってき

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【16ビートで命を刻む君と、空虚めな僕のこと。】#4

●前話 >>僕 #4 "職場のある新宿まで一本で行ける割に、地価がある程度安い" たったそれだけの理由で、僕は仙川という街を東京で暮らす最初の居住地に決めた。それなのに、僕が入社した年から会社はフレックスタイム制とリモート制の導入を始めた。そうでなくともインドア派の僕だ。会社にすら行かなくなったら、ほぼ家で過ごすことになる。こうしてほとんど使われることのなくなった新宿行きの定期で、久しぶりに改札をくぐり抜けた。 『都会の乗り換えも慣れた六月の正午  下品な中吊り広告をボ

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【創作大賞2023「ミステリー小説部門」】

目の前に、飛行機が墜ちてきた。 ただそこに墜ちる運命にあったかのように、機体は真っ直ぐに落下し、僕らの隣町を燃やした。 中学3年生の星(アカリ)の父・聡一郎は、宇宙開発事業の先駆者で、ロケットのエンジンを旅客機に応用し、大勢の旅行客を乗せて飛行機で宇宙まで飛ぶことが夢だった。しかし、ロケットエンジン搭載型旅客機が、国の事業になると、研究目的が一変し、聡一郎も変わっていってしまう。そんなある日、滅びゆく地球から限りある資源を持ち出し、月移住を試みている者の存在を知る。 宇宙の壮大さ、月の美しさを教えてくれたのは、“父”だったのに―。 地球が住めなくなった時、月へ移住することは、エゴなのか・進歩なのか。 【それでも生きる意味】

10 本

【企画書】パンフレットとしての読み物

Introduction 3歳になる友達の子供が東京に遊びに来るというので、原宿のど真ん中で待ち合わせをした。 長野県の田舎町で生まれ育った、ごく普通の女の子だ。東京がどんなところなのか知っているのかは分からなかったが、ひとまず原宿の竹下通りへ行き、カラフルな飴やキラキラのグミなんかを一緒に沢山買った。 長野県では出来ないような体験だと思って、特別な日の思い出をプレゼントしたつもりだった。 3歳児は首から下げているミッキーマウスのカンカンにポイフルを入れて、上機嫌で

184

【テレスコープ・メイト】第1話 -はじまりの朝-

この物語は、筆者が、現在のZ世代・α世代として生まれた子どもたちが大人になった世界を想像して書いた創作小説です。 文末に【企画書】の掲載があり、IntroductionとProduction noteをお読みいただけます。 #1 テレスコープ・メイトmeme. 目の前に、飛行機が墜ちてきた。 ただそこに墜ちる運命にあったかのように、機体は真っ直ぐに落下し、僕らの隣町を燃やした。 「・・・っ!!」 墜ちていく機体を肉眼で見たのは初めてだった。 それなのに、初めて見

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【テレスコープ・メイト】第2話 -Twōtter、サービス終了!?-

#2 Twōtter、サービス終了 5.『あの言葉』 星が『テレス』のベランダから最後にオリオン座流星群を見たのは、2070年、小学校4年生の、秋のことだった。 「そろそろ帰るか。」 今年もきれいなオリオン座流星群が、肉眼でよく見えた。 星と鼓は、5歳のあの秋の日の夜に、父からもらった天体望遠鏡を順番に覗き込みながら、はしゃいでいた。 『お前たちは、テレスコープ・メイトだ!』 そう言われたあの日から5年の月日が経ち、2人は10歳になっていた。 これまでの5年間

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【テレスコープ・メイト】第3話 -地球最後の日の訪れ方について-

【 第1話 】 【 第2話 】 8.rocketjet 聡一郎と伸弥が務める『テレス』社が、ロケットのエンジンを応用した旅客機『rocketjet』の完成を発表したのは、2070年の4月のことだった。 初めてのお披露目飛行で、羽田―NY間をわずか20分で飛んだことで、『テレス』は「世界のテレス」にその名をとどろかせた。 『全ての国を隣国に』が大々的にテレス社のキャッチフレーズとなり、これまでの宇宙開発事業と並行して、翌年にはrocketjetの通常運用も開始された。

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【映画レビュー】

「この映画を観た感想を残しておきたい」 そう思わせてくれた映画に精一杯の敬意を込めて、拙いけれど、文章を書いてみます。 🎥https://filmarks.com/users/memenote

5 本

『語り出したら止まらない』そんな映画を、君はいくつ持っているか。

「いい映画」に出会ってしまう、ということは、すごく幸福で、そして、時として、すごく怖い。 TOHOシネマズで映画を観るのに必要な映画鑑賞料が、2,000円に値上がりしてから初めて映画館で2,000円を支払って映画を観た。 『怪物』という作品だった。 映画館で映画を観ることの愛おしさが渦巻いて、涙が出た。はじまりの回を観て、次の回も観て、レイトショーでも観た。次の日も、観に行った。 止まらなかった。 感情の渦が、うごめいて、止まらなかった。 “映画観で観るべき映画”

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「ちょっと思い出しただけ。」きっと、そんな日々を生きていくんだろう。これからも、ずっと。

東京タワーが好きだ。 ただほんと、それだけの理由で、映画「ちょっと思い出しただけ」を観た。予告の節々に東京タワーが映るから。 " ちょっと思い出しただけ " 観終わった後に、本当にタイトル通りの感情になる映画だ。 来月、私の元カレと私の親友が、結婚する。 もっと言うと、17から22歳までの6年間の青春を捧げた私の元カレと、小学校1年の時「ともだちになってください」と手紙を渡して以降、20年という月日を共にしてきた私の親友が、来月、結婚する。 その報告を受けても揺さ

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「花束みたいな恋をした」と「ドライフラワー」における、花と恋と20代。

映画「花束みたいな恋をした」を観た。 タイトルが"花束"なので、花束そのものがこの物語のキーとなるのかと思いきや、相手に花束どうぞするシーンなど全く出てこなかった。もちろん、卒業式にサプライズで花束を渡す所をTikTokに載せるシーンもなければ、真っ赤なバラの花束100本でプロポーズするシーンもない。 だからこの映画は、観た人に、この恋がどう「花束みたい」なのかを考えさせる作品なのだと勝手に受け取って、私の映画評論を残す。 "花"と言えば、最近耳について離れない曲がある

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新海誠『すずめの戸締り』そして、あの日のこと。

「ねぇ、あの日、何してた?」 私たちの中には共通して、たったこれだけの言葉で ”あの日” が、どの日のことを指すものなのかを、感じ取れてしまう日があります。 その”あの日”から、もうすぐ、12年という月日が、経とうとしています。 あの時代に生まれた子どもたちが、もう12歳になるのだと思うと、本当に、随分と時間が流れたのだと実感します。12年といえば、人が1人、小学校を卒業するだけの歳月です。 私が0歳の冬に、阪神淡路大震災が起きました。 起きました、というよりもそれ

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