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マガジン一覧

承継期の戦略会議|地方中堅企業の経営設計

承継は、株式の移転だけでは完結しません。 支配権が移っても、戦略が言語化され、組織が動かなければ、経営は変わらない。 本マガジンでは、特に地方中堅企業の承継期における戦略会議の設計、幹部育成、戦略と財務の接続を考えます。 資本と理念を土台に、 次の世代の経営をどう設計するか。 How toではなく、構造から整理します。

なぜ「よい戦略」ほど動かないのか――実行されない3つの構造と"実行設計"という仕事

はじめに:「人の問題」という誤診「なぜ、あの計画は動かなかったのか」 そう振り返ったとき、多くの経営者やプロジェクトリーダーはこう答えます。 「メンバーのやる気が足りなかった」 「タイミングが悪かった」 「上が本気で動かなかった」 でも、本当にそうでしょうか。そして多くの場合、その答えは間違っています。 私はこれまで14年以上にわたり、地方の中小企業の現場に関わってきました。小売業、サービス業、老舗企業、承継期の会社——業種も規模も違います。それでも、戦略が止まる

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新規事業の話が会議を占領する会社で、本業は誰が守るのか

会議のたびに、新しい話が出てきます。 新しい市場、新しいサービス、新しい提携先。社長の目は輝いています。資料も揃っています。熱量は本物です。 幹部はうなずきます。「面白そうですね」と言います。しかし心のどこかで、別のことを考えています。 今期の受注、来月どうするんだろう。 その言葉は、会議では出てきません。 なぜ本業の問題が会議に上がらなくなるのか 承継後、ある程度の財務的余裕がある中堅企業の新社長ほど、新規事業に早く手をつけたがる傾向があります。これは私が現場で繰

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幹部会議が止まる、その前に起きていること

議題は揃っている。資料もある。それなりに意見も出た。 なのに会議が終わると、「では引き続き検討を」という言葉とともに、何かが次回に持ち越されている。 この経験に、心当たりはあるでしょうか。 私は診断士として、さまざまな企業の会議に同席する機会があります。 また以前は、自分自身が会議に出る側でもありました。規模も業種も違う場を経験してきましたが、「何かが決まりそうで、決まらない」あの空気は、どこかで共通しています。 毎回そうなるわけではありません。ちゃんと結論が出る会議

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中小企業支援|支援者の視点

これらの記事は、中小企業診断士、支援側からの視点で書いています。中小企業支援、特に地方にて支援をされている方のヒントとなりましたら幸いです。

なぜ「よい戦略」ほど動かないのか――実行されない3つの構造と"実行設計"という仕事

はじめに:「人の問題」という誤診「なぜ、あの計画は動かなかったのか」 そう振り返ったとき、多くの経営者やプロジェクトリーダーはこう答えます。 「メンバーのやる気が足りなかった」 「タイミングが悪かった」 「上が本気で動かなかった」 でも、本当にそうでしょうか。そして多くの場合、その答えは間違っています。 私はこれまで14年以上にわたり、地方の中小企業の現場に関わってきました。小売業、サービス業、老舗企業、承継期の会社——業種も規模も違います。それでも、戦略が止まる

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あの熱量は、どこへ消えたのか ~戦略実行を止める3つの落とし穴~

「あの会議、盛り上がりましたよね」の翌週 経営会議で新しい取り組みが決まった翌週、現場を訪ねると、担当に任命されたはずの社員が「……まだ何も動いていないんですよね」と苦笑いする。 この光景を、私は支援の現場で繰り返し目にしてきました。 戦略が動かない理由は、人の意欲の問題ではありません。構造の問題です。どんな規模の会社でも、「実行が止まる瞬間」にはパターンがあります。今回は、現場でよく見かける三つの失敗パターンと、すぐに使える処方箋をお伝えします。 あるある① 担当者

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親族経営の中にいた私が感じた"空気"~ 中小企業での役員時代の気づき~

仕事とプライベートの境界がない、それが当たり前夕食の席で、何気なく始まる経営の話。 休日のドライブ中に、ふと口に出る「あの取引先、最近どうだろう」という言葉。 家族旅行のはずなのに、立ち寄る店で商品構成や陳列を観察している自分。 観光土産品卸売会社で役員として働いていた頃、仕事とプライベートの境界は、ほとんどありませんでした。 でも、それを「おかしい」と思ったことはありませんでした。むしろ、それが自然で、当たり前でした。いつも仕事の話をしている。それは苦痛ではなく、家族の

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9歳の長男に「それ、もうやってるよ」と言われて学んだ、支援者の心得

朝食中の小さな気づき先日の朝、9歳の長男と朝食を食べていたときのことです。 長男は以前からぐらぐらしている歯があり、「最近ご飯を食べるのが怖いんだよね」とぽつりと言いました。 私は咄嗟に「ぐらぐらしてない方の歯を使うようにすれば?」と提案しました。 すると長男から即座に返ってきた言葉は、こうでした。 「それ、もうやってるよ」 その瞬間、ハッとしました。これは中小企業支援の現場でも、頻繁に起きていることではないか、と。 「それ、もうやってます」問題の本質中小企業診断士と

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小松のこと

小松に関すること。

2025年振り返り・ランキング

本年も大変お世話になり、誠にありがとうございました。 2025年は、書籍出版、群馬県産業支援機構での勤務、100社以上の創業支援伴走、事業承継研修受講など、実務と学びが深く交わる1年となりました。多くの事業者様と出会い、ともに成長できたことに心から感謝しております。 1年間の活動を振り返り、皆様への感謝の気持ちをお伝えするとともに、私の1年をランキング形式でまとめました。10位から発表してまいりますので、よろしければご覧ください。 ランキング発表 10位:学会誌掲載

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小規模でも実践できるサステナビリティ経営のリアル ~身の丈のサステナ実践とCSVの形~

2025年10月、『地域で生き残る中小企業のための サステナビリティ経営の進め方』(同友館)という書籍を共同執筆させていただきました。私は群馬県内の老舗企業を取材し、その実践をまとめる形で1つの章を担当しました。 執筆を進めながら、ふと立ち止まることがありました。 「自分自身は、何に取り組んでいるんだろう」 他社の取り組みを取材し、言語化する作業を通じて、自分自身の実践について考えるようになったのです。 正直に言えば、プライベートではネット購入が多く、段ボールや包材を

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経歴|実績|お仕事のご依頼について

小松はどんな人なのか、お仕事のご依頼方法、これまでの簡単な経歴や実績をまとめました。 小松美央はどんな人?群馬県前橋市生まれ、高崎市在住 株式会社ミラ 代表取締役 中小企業診断士 / MBA(法政大学大学院修了) 前職では群馬県の観光土産品卸売会社で常務取締役として、卸売・製造・小売飲食・営業の4部門を統括していました。新規事業の企画から立上げ・運営まで一貫して担当。東日本大震災の際は、事業継続のため自ら現場に立ち続け、復旧活動を展開しました。 この経験があるから、

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書籍出版を通じて感じた「ものづくり」の喜び

ついに、出版社から書籍が届きました。 『地域で生き残る中小企業のための サステナビリティ経営の進め方』 まだ発売前ですが、共著者の一人として参加させていただいた書籍です。手に取った瞬間、胸が熱くなりました。 長年の想いがようやく形に実は、以前からいつか執筆活動に挑戦してみたいと考えていました。それがたまたまお声がけをいただき、昨年2024年の5月頃から本格的に執筆をスタート。約1年半という長い時間をかけて、ようやく2025年10月の出版にこぎつけることができました。

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老舗・中小企業経営

老舗企業や中小企業経営、ファミリービジネス、経営戦略のことなど。

親族経営の中にいた私が感じた"空気" ~中小企業役員時代の気づき~

ファミリービジネスの経営者や後継者の方と話していると、言葉にしにくい独特の悩みを抱えていることがよくあります。親族が役員を務め、家族が株主で、経営と血縁が複雑に絡み合う組織。その"内側"にいる人にしか分からない、独特の空気感があります。 私自身、かつて観光土産品卸売会社で役員を務めていました。そこは親族が経営の中枢を担う、典型的なファミリービジネスでした。当時は「何となく息苦しい」「このままでいいのか」と感じながらも、それを明確に言語化できませんでした。 今回は、親族経営

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100年企業が不況期に「やらないこと」を決める理由〜流行に飛びつかない意思決定の哲学〜

不況期になると、経営者の頭には「何かを変えなければ」という焦りが押し寄せます。SNSマーケティング、DX推進、サブスクモデル――次々と現れる"流行の経営手法"に目を奪われ、「うちも何かしなければ取り残される」と感じていませんか。 群馬県の老舗企業の調査を行い、また14年以上地域企業を支援してきた私が見てきたのは、不況期にこそ「やらないこと」を明確に決める老舗企業の姿でした。100年以上続く企業は、流行を追わない。その代わり、自社の「変えてはいけないもの」を徹底的に見極めてい

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老舗企業に学ぶ「にじませる変化」の時代適応力

「時代に合わせて変化しなければ生き残れない」—経営者なら誰もが耳にする言葉です。 しかし、「変化」と聞くと、事業の大転換や革新的なイノベーションを想起し、「自社にはそんな大胆な変化は無理だ」と感じていらっしゃる経営者の方も多いのではないでしょうか。 私はこれまで、群馬県の老舗企業の永続要因について研究を行ってきました。その結果見えてきたのは、意外にも「すっごく大きな大変化をしてきた企業は少ない」という事実でした。むしろ、長く続く企業ほど、本業や強みを活かしながら「にじませる

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老舗企業に学ぶ「長期的視点」の価値 〜過去を知り、未来を描く経営の哲学〜

過去と未来をつなぐ長期的視点「過去と未来は、振り子のようにつながっているんだよ」 老舗企業の経営者から教えていただいた言葉です。 当時、私は老舗企業11社へのインタビュー調査を行っていました。彼らの多くが、当たり前のように10年、20年先を見据え、中には50年以上先の未来を見据えた経営判断をしていることに驚いたのです。 この経営者が語ってくれたのは、老舗企業の経営者は幼少期におじいさんが経営者である姿を見て育ち、そのおじいさんからはさらに前の世代の話を聞いて育つということ

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雑記

いろいろ。

選曲は楽しく、譜読みは苦しい。音楽経験者が語る新規事業のリアル

新規事業の立ち上げに悩む経営者の方から、こんな声をよく聞きます。「企画段階はワクワクしたのに、実行に移すとひたすら苦しい」「やっと形にしたのに、売上が伸びず試行錯誤の日々」――。 私は3~18歳までクラシックピアノを習い、18~28歳頃まではバンドでドラムを叩いていました。ピアノでは、コンクールに出たり、発表会でショパンのバラードのような大曲を弾いたり。 そして最近、音楽と新規事業には似た構造があることに気づいたんです。 選曲(企画)は楽しく、譜読み(事業化前)は苦しく、

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「カブトムシの幼虫」が教えてくれた経営の鉄則~思い込みを捨て、事実から始める中小企業支援の基本~

息子の一言から始まった"事実確認"の教訓「ママ〜!カブトムシの幼虫を拾ってきたから、飼育セット買って!」 ある日、当時小学2年生(8歳)の長男が目を輝かせながら、土を入れた虫かごを持って帰ってきました。中には芋虫がたくさん入っているようです。 「カブトムシを育てたい」という強い希望を持つ息子を前に、私の頭には瞬時にいくつかの選択肢が浮かびました。 すぐに飼育セットを買いに行く インターネットで「カブトムシの幼虫の育て方」を調べる 元の場所に戻してもらう 中小企業診断

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書籍出版を通じて感じた「ものづくり」の喜び

ついに、出版社から書籍が届きました。 『地域で生き残る中小企業のための サステナビリティ経営の進め方』 まだ発売前ですが、共著者の一人として参加させていただいた書籍です。手に取った瞬間、胸が熱くなりました。 長年の想いがようやく形に実は、以前からいつか執筆活動に挑戦してみたいと考えていました。それがたまたまお声がけをいただき、昨年2024年の5月頃から本格的に執筆をスタート。約1年半という長い時間をかけて、ようやく2025年10月の出版にこぎつけることができました。

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寄り道だらけの経験が、私の武器になった

「専門家の先生が来ると聞いて、正直厳しそうな人を想像していました。こんなに話しやすいと思いませんでした」 確かに私は「ちんちくりん」ですし、インテリな雰囲気とは程遠いです。でも今思えば、その親しみやすさこそが、事業者様の本音を聞かせていただける理由かもしれません。 正解のレール、本当にあるのか?日本社会には「正しい道筋」への強い期待があります。良い学校、良い会社、安定した人生。でも変化の激しい現代で、本当にそのレールは有効でしょうか。 私自身、音楽から建築、海外生活、中

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ローカル企業のサステナビリティ入門

地域に根ざし、地域と共に歩む企業のためのサステナビリティ経営入門。 老舗企業研究を通じて見えてきた『持続経営』の秘訣と、現代のSDGs・ESG・CSVといった概念を分かりやすく解説します。ローカル企業だからこそできる、身の丈に合った持続可能な成長への道筋をお伝えします。

第5回:「新しい経営手法?実は日本の伝統」~老舗企業に学ぶ『三方よし』のサステナビリティ経営~

「最新の経営理論を学ぶより、先人の経営を見直すことから始めませんか」「SDGs、ESG、CSV…どれも大切だと分かるのですが、正直なところ、どこから手をつけていいか分からないんです」 シリーズ第1回から第4回まで、サステナビリティ経営について様々な角度から解説してきましたが、このような声を多くいただきました。確かに、横文字の概念ばかりで「自分の会社には縁遠い話」と感じてしまうのも無理はありません。 しかし、「群馬県の老舗企業の永続要因」を調査する中で気づいたのは、長く続く

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第4回:「CSRからCSVへの発想転換」~誰かの悩みを解決して利益も生む、中小企業の新しい成長戦略~

「地域清掃は大切だが、経営には直結しない」という経営者の本音「地域清掃活動や慈善事業への寄付は確かに大切だと思います。でも正直なところ、売上には全く結びつかないし、続けるのが負担になってきている…」 中小企業の事業者様と関わる中で、このような経営者の本音をよく耳にします。CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の重要性は理解しているものの、限られた経営資源の中で「善意の活動」を継続することの難しさを感じている方も多いのではな

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第3回:「ESGは大企業だけのもの?」~中小企業の機動力を活かした持続可能経営の実践法~

「ESGって結局、投資家向けの話でしょ?うちのような中小企業には関係ないのでは?」 前回のSDGs経営に続いて、経営者の皆さんからこのような質問をよくいただきます。確かに、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)は当初、機関投資家が企業を評価する指標として注目を集めました。しかし中小企業診断士として、事業者様支援を通じて感じるのは、ESGの影響は既に中小企業の日常業務にも深く浸透し始めているということです。 今回は、シリ

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第2回:「中小企業のためのSDGs経営実践ガイド」~中小企業にSDGsが浸透しない本当の理由と、地域から始める持続可能経営~

SDGsバッジをつけるだけでは意味がない!? 老舗企業が取り組む「無意識の持続可能経営」前回のシリーズ第1回では、サステナビリティ経営の基本概念を整理し、「中小企業にはCSV(共通価値の創造)がおすすめ」とお伝えしました。 そして今回は、多くの経営者の方から質問をいただく「SDGs」について詳しく見ていきます。 いざSDGsの17の目標を眺めても「どこから手をつければいいのかわからない」「大企業のような取り組みは現実的ではない」と感じている経営者の方も多いのではないでしょう

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読書メモ

書籍の感想など。