メインコンテンツへスキップ
 

マガジン一覧

アラフィフからのnote部

アラフィフ以上の同志で創る部活です。費用等不要です。 【入部の前にご了承いただきたいこと】 ■ 多くの方の記事が表示されるよう、当マガジンへの投稿はお一人様あたり1日2記事まででお願い致します。※管理者権限で削除させていただく場合がございます。また連続投稿は間隔を調整いたします。 ■ 応援はし合いますが、相互フォローやスキを強制する場ではありません。 ■ 記事を投稿する機能のみを使用ください。 ■ 運営メンバーではない方の記事の投稿はおやめください。※該当する投稿は管理者が削除します。度重なる場合は、管理者権限でご脱会いただきます。 【入部要件】 ■ 我こそはアラフィフ以上の同志だと思う方 (年齢制限なし) ■ 同志と応援し合う気持ちのある方 【2026年3月のテーマ(任意)】 ■ 私の卒業 ■ 「アラフィフの春休み」を取るとしたら? ※タイトルはご自由に。記事を書くヒントに。

22,662 本

早期退職から2年🍃「長い夏休み」の途中で今思うこと。

先日、国民健康保険の手続きをしてきました。退職後に2年間利用していた任意継続の期限が切れたためです。 夫の扶養に入ることも少し考えましたが、やっぱり自分で払うことにしました。お互いの自立を大切にしたいという思いもありますが、税金なども含めて考えると、差がそんなに大きくなかったためです。 それにしても、2年という月日の流れる早さには、あらためて驚かされます。 〜*〜*〜*〜*〜 無職の生活にもだいぶ慣れてきました。 散歩やジョギング、ヨガに映画と、意外に忙しく過ごして

2

ランタナ/出さない手紙【自由詩】

「ランタナの花って、 線香花火みたいなの」 あの日、 そう君が言った時、 僕はランタナが どんな花なのかも 知らなかったんだ。 「へぇ、そうなんだ。 それでさ、 次の休みなんだけど・・・」 僕はただ、貴重な君と会える日の プランを考えるのに夢中でさ。 スケジュール帳を開く僕の 向かいの席で、君は静かに クリームソーダのチェリーをつまみ、 唇に当てる気配がした。 サヨナラは、 そこから始まっていたんだな。 今の僕には、解るよ。 「ランタナの花ってさ、 線香花火みた

7

noteで稼ぐ前に、まず“心に残る人”になる。旅も映画も音楽も、人生の痛みも。全部がブランドになる時代

おはようございます。 良寛(天豆)です。 とても嬉しいご報告がありました。 note編集部さんの「2026年上半期 映画ランキングTOP20」で、第1位『プラダを着た悪魔2』のレビューとして、私の記事をご紹介いただきました。 まだ未読の方は是非お読みいただけたら嬉しいです。 昨年下半期の『鬼滅の刃』レビューに続いての選出で、本当にありがたく、静かに胸が熱くなりました。 ただ、今日書きたいのは、選ばれたことそのものではありません。 その奥にある、 「noteで書き続

17

転職先 決定致しました!!

昨日、面接当日の帰宅後16時に内定のTELを頂きました。社員旅行を遅らせて対応下さったゼネコン様です。 わたくし 一晩考えて、転職先を決定しました。 決めては給与。 月額22万 賞与45〜50万 比較対象だったコールセンターより月額給与が3万も多い(*^^)v 悩んだんですよ 一応。 業務内容や休日、就業時間とかね…いろいろ… あっ コールセンターは来週面接が控えてる段階ですが、受かるていで先走って検討です(^_^;) マニュアル通りの仕事より田舎のゼネコンで事務の方が面

24
もっとみる

アンメッタブル

土曜日のピラティス教室に通う私は、仲間の女性たちのアカウントをハッキングしていた。

34 本

(小説) アンメッタブル完全版

1. 「つながらない! 写真を見せようと思ったのに!」  パステルピンクの爪で、紫がかったシルバー色のスマホの画面を何度もつついたりスワイプしたりした挙句、目的の画像にはたどり着けなかったようだ。  シャンタルはスマホをテーブルに置き、「なんでこういうことになるのかな」と大きなため息をついた。  話をつなぎ合わせると、こういうことだ。  数年前に撮影した画像が、知らぬ間にアーカイブ化されてクラウドに保存されていた。そのアカウントのパスワード確認が上手く行かず、ブロックされて

11

(小説) アンメッタブル 32. 最終回

32. 「それで、オディールは、どうやって人類と再会したの?」と肝心のところを聞く。 「半年ぐらい前に、偶然、仕事で再会したのよね?」と、既に電話で要所をかいつまんで聞いていたモニークが口を挟んだ。 「そう。彼の豹変ぶりに驚いたわ」とオディールが付け足す。 「私だって驚いたよ」とシャンタルが答えた。 「スマートカジュアルの仕事着で現れた時、ピラティスで一緒だったことに全く気づかなかったもん」 「先週みたいな服装? 私もたぶん気づかないわ」「私も」とモニークとシャンタルが笑った

33

(小説) アンメッタブル 31.「魔法でも使ったの?」 翌週のピラティスの後、

31. 「魔法でも使ったの?」  翌週のピラティスの後、オディールを三人で質問攻めにした。 「どうやってあの汚らしい人類を、プリンス・チャーミングに変身させたのよ?」  席に着くなり、シャンタルが目をかっと見開いて叫んだので、私たちは思わず吹き出した。  オディールが鼻を鳴らすと、話が始まる合図とばかりに、シャンタルは静かになった。 「実はね、ピラティスを始めた当時の人類は、離婚直後で自暴自棄になっていたのよ」とオディールが語り始めた。 「エンジニアの仕事は真面目

27

(小説) アンメッタブル 30. オディールと連絡を取り合わないまま、数年が過ぎた。

30.  オディールと連絡を取り合わないまま、数年が過ぎた。  モニークと一緒に始めたストレッチ教室は、効果があったようで、その後は股関節の話を聞かなくなった。だが、モニークは失恋を機に、半年ほどでやめてしまった。  それから、なんとなく入会した別のジムで、ヨガとピラティスの間をうろうろし続けていた。いつの間にかモニークは退会し、疎遠になっていった。  ある1月の金曜の夜、シャワーを出た後でスマホを確認すると、オディールから留守番電話が入っていた。 「ナタリー、元気にし

28
もっとみる

イラスト感想文

イラスト付きの映画・読書感想文です。勝手なことを書いています。 *つぶやき機能がある頃は、イラストは付けていませんでした。

29 本

イラスト感想文 カミュ『異邦人』   (カフカ『変身』と不条理度を比較)

「今日、おかんが死んだ」という有名な出だしと、太陽が原因の人殺しの話、ということだけは知っていた。 おかん死亡。 1940年代。電報だから、今日死んだのか昨日死んだのかわからない。 それが何か? 昔は、そんなものだ。 ところでおかんて、何歳だったっけ? 知らんがな。 まあ、子供なんてそんなものだ。 モラハラ上司のいる会社で、つまらなそうな仕事をしている「ぼく」は二十代半ばぐらいかな。 隣人や常連の店の人にとって、彼は穏やかで良い人間だ。 名前がない「アラブ人」というコ

53

陰ヨガのオンラインワークショップに参加した話

noteで得たご縁で、去年の夏から、ほぼ月1回ペースでMiさんの陰ヨガのオンラインレッスンを受けています。 今回は5~7月限定のワークショップに参加しました。 記事を読むだけでも、とても勉強になります。 陰ヨガは、同じポーズが長く続く分、痛くて苦しいものだと思っていましたが、Miさんの教えてくれるポーズは苦しくなくて、途中ですっかりくつろいでしまうほど。 ストレッチや、筋肉を使うポーズも、適度に痛気持ち良く、直後から身体の調子が改善しているのが実感できます。 私は若

60

イラスト感想文『死刑台のエレベーター』*ファン注意:不満だらけです。

ジャンヌ・モローの映画はいくつか見たけれど、あの決して妥協してくれなそうな口元が苦手で、鼻声も好きになれない。 パリに住み始めたばかりの頃、ああいう顔のマダムにクソメソに意地悪されたのかもしれない。そんな気がする。 しかも、元々サスペンスは苦手で、どきどきすると前のめりになってしまい、翌日肩がこる。 じゃあなんで観たの? と聞かれると、うまく答えられないが、なかなか面白い映画だった。 特に白黒映画のファンというわけではないが、今の映画の、次々とシーンが切り替わる慌ただ

45

イラスト感想文『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』原題Certain Women

2016年アメリカ映画 監督:ケリー・ライヒャルト 主演:ローラ・ダーン、ミシェル・ウィリアムズ、リリー・グラッドストーン、クリステン・スチュワート 製作総指揮:トッド・ヘインズ(以前紹介した「キャロル」もこの人) ということで観に行った。 差別されている女性たちの日常、そこからの脱出の試み、みたいなことを勝手に想像して行ったが、テーマはそういうのではなかった(と思う)。 そして、映画を観た後、なんとなく裏切られたような、釈然としない気分で帰った。 映像はとても美しい。い

31
もっとみる

アッパーウェア

更年期うつとホットフラッシュに悩まされるミリアム。勤務先のホテル・アトランティークに入社した、アンジェリークという新人メイドに誘われて……。

31 本

(小説)アッパーウェア

1. 「関係を持った男性とは、いつも同じパターンの繰り返し。相手が本気になると、逃げ出してしまう。そのことで相談に来たんです」  ミリアムは、コップに入った水をぐっと飲み干した。 「それで、あなたは、どうしたいと思っているの?」  エレーヌというカウンセラーが、首をかしげて質問する。 「その答えを見つけるのが、あなたの仕事でしょ?」  ミリアムはエレーヌをにらみつけ、ぴしゃりと言い返した。   「私が今日ここに来た理由は、2つ」  ミリアムは、目を伏せて話し始めた。 「つい最

29

小説アッパーウェア 32 最終回

32.  午後1時。  人気のない時間帯に、ホテル・アトランティークの廊下を点検して歩くのが、ミリアムの毎日のお気に入りの習慣になっていた。  壁に掛けられている19世紀の風景画。廊下の突き当りに置かれたレプリカの彫刻像。天窓から差し込む小さな光。ミリアムは自分もホテルの一部になったような気分がして、うっとりとした。  突然、二階の客室のドアが開き、軽くアンバーの香りが漂ってきた。ドアの向こうから、アンジェリークともうひとりのメイドが現れた。  シーツやタオルの積ま

22

小説アッパーウェア 31.「アンジェリークと会うと、あの時のことを思い出...

31. 「アンジェリークと会うと、あの時のことを思い出すんです。私には、相談できる母も姉も、いなかった。でも、あの時のジズレーヌは、姉さんみたいだった」    エレーヌは、ミリアムをじっと見つめて、それから優しく微笑んだ。   「やっぱり、あなたはひとりじゃなかった。そうでしょ?」とエレーヌが嬉しそうに微笑む。 「それが何なのよ?」とミリアムは鼻でふんと笑った。 「何の解決につながるんです?」   「あなたは、アンジェリークに相談することが出来る。彼女以外にも、親しい友達が

28

(小説)アッパーウェア 30. 誰もいない大木の後ろで、ビキニの下を脱ぐと...

30.  誰もいない大木の後ろで、ビキニの下を脱ぐと、ジズレーヌは、青いバスタオルで内ももや股間を軽く拭いてくれた。動くたびに、髪の毛から塩素とシャンプーの混じった匂いがする。  ミリアムは肩をいからせて震えていた。寒いからか、それとも怖いからなのか、自分でもよくわからない。 「力を抜いて。ゆっくり、息を吐いて」というジズレーヌの声に従って、ふーっと出来る限り長く息を吐いた。  太ももに触れるジズレーヌの暖かい手と、小さな異物が斜め後ろ上方をめがけて体内に入っていく違和

22
もっとみる

山へ行く

夏のバカンス。パリから山へ行ったメラニーは、思いがけずアレクサンドルと二人の時間を過ごすことになる。

30 本

(小説)山へ行く

1.  「今年の夏は、絶対に山へ行く」  メラニーは春先からずっと、皆にそう宣言していた。  7月半ばのパリの、熱気がこもったアパルトマン。夜に寝室の小窓を開けてみるが、涼しい風は入って来ない。ぬるい空気と一緒に、近所のバーの客たちの興奮した話し声や、ヒステリックな笑いが延々と聞こえてくる。メラニーはため息をついて窓を閉める。  間もなく訪れる1週間の休暇が、待ち遠しい。  山の空気は澄んでいて、朝晩の風は冷たい。パリとは全く違う。メラニーは、アルプスのなにもかもを心から楽

41

(小説)山へ行く 29. 最終回

29.  混みあった駅のホームに、列車が到着する。  若い恋人たちが別れのキスを交わし、幼い子供たちが、長話にふける父親と母親の間を行ったり来たりしている。  メラニーは、SNCF(フランス国鉄)のパネルで、車両番号を確認した。アレクサンドルは、スーツケースを荷物置き場に載せて、慌ただしく車両から降りた。  SNCFのド・ソ・ラb・ミbという、遠慮がちなチャイム音が宙を漂い、パリ行きの列車であることを告げる自動音声のアナウンスが流れる。  間もなく出発だ。急に、ぎこち

34

(小説)山へ行く28. かかととつま先が同時に痛み始めた。

28.  かかととつま先が同時に痛み始めた。メラニーの靴の中で、足がこすれる感覚が一歩踏み出すごとに強くなっていき、ついには耐えがたい痛みになった。もうこれ以上歩き続けるのは無理だ、立ち止まろうと思った、その直後に「あ」と声が出た。  思いがけず、視界にシャムショードの頂上があらわれた。魔法の世界のドアが開いたようだった。  晴天をバックに映える岩石の頂上は明るく、信じられないほど美しい。メラニーの恍惚とした顔は輝いていた。 「この顔が見たかったんだ。連れて来た甲斐があっ

30

(小説)山へ行く 27. アレクサンドルが珍しく語り続ける。

27.  アレクサンドルが珍しく語り続ける。 「君が言いたいことは、なんとなくわかる。あの日から……、何が正しかったのか、俺にも良くわからない」  メラニーは無言で、ただ歩き続けた。 「俺は、あの時……、勇気がなかった」  アレクサンドルの低い声が、心地良い。 「俺は君と、あれ以上の関係になるのが、怖かった。そのくせ、そうなることを何度も想像していた」  アレクサンドルの、ひりひりするような視線を思い出した。 「もし、高校3年の時、オーレリーが声をかけてこなかっ

29
もっとみる

ファーザー・フィギュア

父を愛してしまったセリーヌの放浪記。

20 本

(小説)ファーザー・フィギュア

1.  晴れた五月の日曜日。パリ郊外の古城を貸し切って、父の80歳の誕生会が開かれた。建物の中はひんやりと肌寒いのに、乾いた空気の中、日光が容赦なく庭の招待客を照らしている。  城のテラスからフランス式庭園に出てすぐ、正面に置かれた巨大なテーブルには、多数のフリュートグラスが並べられている。白シャツに黒のベストと蝶ネクタイをまとったウェイターたちが、手際よくシャンパーニュを注いでいる。  私はバラの咲き乱れる囲いの手前から、陽光をはね返す深緑色の芝生をぐるりと見まわす。50

25

「彼が浮気をした時」(マミさん)- 小説『ファーザー・フィギュア』から生まれた夢?

少し前になりますが、マミさんの記事をご紹介します。 私の小説を読んだ影響かと思われる夢を見られた、というお話です。 この夢の続きがどうなったのか……大変気になるところです。 是非とも、このお話をもとに、短編小説を書いて頂きたいものです。 私も、ほぼ毎朝のように夢を見るので、夢の話は大好きです。 次回の物語にも、夢の話が出てきます。

27

(小説)ファーザー・フィギュア 1 晴れた5月の日曜日、パリ郊外の古城…

1.  晴れた5月の日曜日、パリ郊外の古城を貸し切って、父の80歳の誕生会が開かれた。  城のテラスからフランス式庭園に出てすぐ、正面に置かれた巨大なテーブルには、多数のフリュートグラスが並べられている。白シャツに黒のベストと蝶ネクタイをまとったウェイターたちが、手際よくシャンパーニュを注いでいる。  私はバラの咲き乱れる囲いの手前から、陽光をはね返す深緑色の芝生をぐるりと見まわす。50名ほどの招待客は、主に父の昔の同僚や教え子たちだ。  離婚した一人目の夫と、父の元同

47

(小説)ファーザー・フィギュア 2「シャンパーニュを配り終えました」

2. 「シャンパーニュを配り終えました」  ウェイターの指揮を取っていた、恰幅の良い黒ベストの男性が、小声で私たちにささやく。  ヘンリッヒに「お願い」と目くばせをしたが、彼は口元に微笑みを浮かべて、わざと目を合わせようとしない。 「さあ、セリーヌ。ここは君の出番だ」とヘンリッヒに逆に促され、私が乾杯の音頭をとることになる。ヘンリッヒが、胸ポケットからボールペンを取り出し、フリュートグラスのつけ根の部分をかんかん、かんかん、かんかん、としつこく何度もたたく。  度重な

37
もっとみる

スパイスが足りない

フランス人夫と離婚寸前? 54歳。セックスレス希望、夫婦別室希望の私。明るい未来の扉は、どこにあるのか?

35 本

(小説)スパイスが足りない

1. 「離婚したい」  私が夫のエリックに告げたのは、感染症によるロックダウンや諸々の制約がすべて解けて、元の生活に戻ってから約1年後のことだった。  同じ町に住む日本人女性4人組のうち、この1年のうちに2人が離婚していた。4人とも50代で、フランス人と結婚して、長くフランスに住んでいる。  一番年長のヨウコさんが離婚したと聞いた時は、特に響くものはなかった。「ああ、やっと別れるんだな」と胸を撫で下ろしたくらいだ。  会うたびに夫婦喧嘩の話を聞かされていたし、ロックダウンの

38

(小説)スパイスが足りない 1 「離婚したい」

1. 「離婚したい」  私が夫のエリックに告げたのは、感染症によるロックダウンや諸々の制約がすべて解けて、元の生活に戻ってから約1年後のことだった。  同じ町に住む日本人女性4人組のうち、この1年のうちに2人が離婚していた。4人とも50代で、フランス人と結婚して、長くフランスに住んでいる。  一番年長のヨウコさんが離婚したと聞いた時は、特に響くものはなかった。「ああ、やっと別れるんだな」と胸を撫で下ろしたくらいだ。  会うたびに夫婦喧嘩の話を聞かされていたし、ロックダ

55

(小説)スパイスが足りない 2 「マサミ、今夜のディナーは……スープミゾはないの? ご飯なのに?」

2. 「マサミ、今夜のディナーは……スープミゾはないの? ご飯なのに?」  夫が、キッチンにいる私に問いかける。スープミゾとは、味噌汁のことだ。 「今日の主食はポルチーニ茸のリゾット。味噌汁とは合わないから、作らなかった」と言い返す。  エリックは納得ができない様子だ。 「いやぁ、このライスには、スープミゾがぴったり合うと思うんだがなあ」としつこく食い下がる。 「じゃあ自分で作れば? スープ作れるでしょ」と冷たくあしらう。  夫は料理は苦手だが、野菜のポタージュぐらい

39

(小説)スパイスが足りない 3 こんな具合で、ある時から、夫の些細なあれこれに…

3.  こんな具合で、ある時から、夫の些細なあれこれに腹が立ち始めて、それから、何でもかんでもイライラするようになった。  ある晩、食洗器のことで口論になった。  私が食洗器に入れた皿を、エリックが取り出して、入れ直していたのだ。 「何してるの?」と怒りを抑えて聞くと、「流体力学的にみて、この皿の入れ方では、完全には洗えない。常識の問題だ」と言う。  その瞬間、もうこの人とは、これ以上無理だ、と思った。思いがけず「離婚したい」という言葉が口をついて出た。ずっと忍ばせて

28
もっとみる

アナイスの肋骨

あの晩、フィリップは帰ってこなかった。48歳のアナイスの「ひとり」の新生活。フレンチボクシング、体の目覚め、マザンの猟奇的な事件から、いつしかアナイスの冒険が始まる。

31 本

感想『アナイスの肋骨』紫吹はるさん「拳をふるうたび、私は私に戻っていく!」

紫吹はるさんに、感想を頂きました。 「生は性だから。」という言葉に、胸にすとんと落ちる何かを感じました。 人生の折り返し地点通過を強く感じてから、同世代(40~50代)を緻密に描きたくて、小説を書き始めました。私たちは一生、物語の主役でいられる。その気持ちが読者に届けば、これ以上嬉しいことはありません。はるさんの言葉をお借りすれば、「誰かの光になる言葉を紡げる人間でありたい」と私も思っています。ありがとうございました!

20

アナイスの肋骨

1.  月曜の夜だった。アナイスは茶色のルノー・トゥインゴをバックで停めようとした。「バン!」と強い衝撃音。  アナイスはガレージと家の間のスペースに、いつも車を停めている。週末、フィリップがコンクリートブロックを置きっぱなしにしたのだろう。  車の後部がブロックに見事にのめり込んでいる。完全な死角。    思わずおでこを手で叩く。 「メールド(くそ)!」  普段は使わない汚い言葉が、勝手に口から飛び出す。  車を降りて「被害」を確認する。  バンパーの左後ろにへこみができ

34

アナイスの肋骨 1 月曜の夜だった。アナイスは茶色のルノー・トゥインゴをバックで…

1. 月曜の夜だった。アナイスは茶色のルノー・トゥインゴをバックで停めようとした。「バン!」と強い衝撃音がした。 週末にフィリップが置きっぱなしにしていたコンクリートブロックに見事にのめり込んだらしい。完全な死角。 思わずおでこを手で叩く。 「メールド(くそ)!」 普段は使わない汚い言葉が、勝手に口から飛び出す。 車を降りて「被害」を確認する。 バンパーの左後ろにへこみができている。 10年以上乗っている車だから、あちこちに傷があるけれど、今回のへこみはかなり大きい。 バ

31

アナイスの肋骨 2 アナイスが職場のパーキングに車を停める。間髪置かず、黒のフォルクスワーゲン・ゴルフが横に停車した。

2. アナイスが職場のパーキングに車を停める。間髪置かず、黒のフォルクスワーゲン・ゴルフが横に停車した。 中からは 黒いワンピースをエレガントに着こなした、スリムな黒髪の女性が降りてくる。 同じメディカルセンターで働いているイブリンだ。 会ったら挨拶はするが、建物の入口も別だし、話をしたことはない。 今日も「おはよう」と挨拶をする。 イブリンがアナイスに「調子はどう?」と聞いてくる。 習慣的な挨拶に、アナイスも「いいよ。あなたは?」と自動的に聞き返す。 調子がいいはず

23
もっとみる

性の終活

「みんな何歳までしているの?」フランスで暮らす50代の男女。若い時とは違う、気づきや悩みを正面からとらえた小説(を目指します)。一部R18指定あり。

22 本

性の終活 マリー1 マリーの提案で、今夜はセックスをすると決めている。

1 マリーの提案で、今夜はセックスをすると決めている。 ずいぶん昔、ラブホテルの前に立った時、急に自動ドアが開いてしまって焦った。もう引き返せなくなって、逆にやる気は削がれた。今もそんな印象。 でも、セックスを「予約」しておかないと、このままもう、ゼロになってしまう。 薬を飲み始めてから、自分からは全然、欲望が出てこない。 5歳年上の夫も、年相応に疲れている。欲望については、自分と似たり寄ったりだと思う。 それなら、そのままもう終わりにしてしまってもいいような気もする。 で

28

性の終活 マリー2 フランス育ちの息子は日本語で育てた。

2 フランス育ちの息子は日本語で育てた。 息子が10歳ぐらいの時、マリーは、息子の話し方が自分と似ているのに気がついた。 「そうなのよー」 「困っちゃう」 など。 自分の話し方を聞いて育ち、そして他に誰も日本語で話す相手がいないのだから、息子が自分の話す日本語を話すのは当然の成り行きだったが、それはとても不完全なことに思えた。 息子の女性っぽい日本語が、「おねえことば」みたいで嫌だったわけではない。それは全く気にならない。もしそれが息子の選択であるならば。 でも、

15

性の終活 マリー3 その当時、マリーは夫とセックス・カウンセリングに通っていた。

3. その当時、マリーは夫とセックス・カウンセリングに通っていた。 セックスができなくなったのは、病気のせいや薬の副作用だけではなく、触られた時の不快感や、痛みのせいでもあった。 膣の入り口辺りが痛く、乾燥やかゆみを伴うこともあった。 不快感は、一日中続くこともあった。 ネットで調べるて、色々な種類の潤滑ジェルやオイルを買ってみた。 購入者のコメントを時間をかけて読んだ。 具体的にどのように改善したかが詳しく書いてある商品をいくつかピックアップして、期待して商品が届

12

性の終活 マリー4 マリーには本名が二つある。”マリー”と”真理”。日本人の父親とフランス人の母親の間に生まれたハーフだからだ。

4. マリーには本名が二つある。”マリー”と”真理”。 日本人の父親とフランス人の母親の間に生まれたハーフだからだ。 本名が二つと言っても、同じようなものだから、あまり気にしたことはない。 日本のクラスメイトに「真理ちゃん、真理ちゃん!」と呼ばれていた時も、フランスの祖母の腕に抱かれて「マリー、ドードー(寝る時間よ)」とささやかれていた時も、自分の中ではひとつの名前だと思っていた。 日仏ハーフの場合、フランスの役所に登録する名前と、日本の戸籍に登録する名前が違っていても

9
もっとみる