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【小説】教えてください、烏丸先生Ⅱ

英語教師・鈴目の3年B組では、小さな“戦争”が次々と起きていた。 事務職員・牛山は、社会科教師・烏丸に振り回されながら、クラスの謎を追いかけていく。 ちょっとおかしくて、ちょっと苦い、連作学園ミステリー。 全6章・31話。ちょっとずつ公開。 シーズン1を知らなくても大丈夫です。 https://note.com/fukami_ruku/m/mfa333f6bcc7d

教えてください、烏丸先生Ⅱ #30 鈴目先生

教えてください、烏丸先生Ⅱ #30 最終章・第5話 鈴目先生 事務室のドアを二回ノックすると、牛山さんが中から返事をした。 「どうぞ」 ドアを開けて、連れてきた生徒を事務室奥の応接スペースへ誘導する。 「そこへ座って」 「失礼します」 生徒は素直にソファへ腰かけた。正直、生徒指導は得意なほうではない。 サッカー部の指導であれば、大きい声を出せば大抵生徒はその通りに動く。だがこれは部活指導では無い。昭和時代の怒鳴りつける説教は、今の時代では御法度だ。 「これについて

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教えてください、烏丸先生Ⅱ #29 背後の一突き

教えてください、烏丸先生Ⅱ #29 最終章・第4話 背後の一突き 烏丸先生が事務室の時計を見た。 「鈴目先生」 時計の次に鈴目先生を見た。 「3Bの生徒はいまどこに?」 「とりあえず、全員家庭科室に移動してます」 「3Cの英語は?」 「あ、今3Cには生徒しかいません」 鈴目先生は3Cの英語を放り出して事務室に来ていた。 「3Bのこのあと五限はなに?」 「五限は英語で、六限は三年生みんな道徳です」 道徳は担任がやることになっているので、3Bの五・六限はどちらも鈴

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教えてください、烏丸先生Ⅱ #28 桃井朔Ⅱ

教えてください、烏丸先生Ⅱ #28 最終章・第3話 桃井朔Ⅱ なんで「アレ」が黒板に貼ってあるんだよ。 僕が持ってたはずだろ。 あいつから渡されたけど、僕が貼ったところを見られたら、僕も共犯になるだろ。だから机の中に入れてたのに、もしかしたら落としたのか。 理科室に行くときか。結構慌てて行ったからその時に落としたのかもしれない。 最悪だ。 席替えのクジで不正をしただなんてバレたら、一緒にやってた学級委員の僕まで疑われるじゃないか。品行方正な僕の経歴に傷がつくだろ。

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教えてください、烏丸先生Ⅱ #27 赤城大輝Ⅱ

教えてください、烏丸先生Ⅱ #27 最終章・第2話 赤城大輝Ⅱ 俺のせいでこうなったのか。 黒板の貼り紙を見ながら、先週の記憶を振り返った。 文化祭実行委員は勢いで立候補したが、始まってみるとそれはそれで楽しいものだった。いつもは陸とか翔とか、運動部系の男とばかりつるんでいたので、桃井や黒瀬それに緑川みたいな真面目で大人しい奴らとは、日頃全然関わりが無かった。班活動は大体真面目な奴らが色々やってくれたので、助かる存在ではあった。 実行委員は一日そこらで活動が終わるわけじ

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【小説】教えてください、烏丸先生

失踪した教師と、残されたノート。 教え子たちを辿り、その行方を追う連作ヒューマンミステリー。 全6章・30話。 完結・公開済。

教えてください、烏丸先生 #01 いなくなった夜

教えてください、烏丸先生 #01 第1章・第1話 いなくなった夜  烏丸先生がいなくなった日の夜、私は職員室に残った。 3月の終わり。桜が舞ってくるので、職員室の窓は閉めたままだった。蛍光灯が一本、微かにちらついていた。 「こないだ替えたとこなのに、不良品だったんかね」 体育の鷹尾先生が私に言う。 交換しておきますねと返した私の視線は、烏丸先生のデスクに向かった。 デスクの上は整っていた。赤ペンが一本、キャップをはめたまま立っていた。出席簿が端に揃えてある。ファイル

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教えてください、烏丸先生 #02 ノートの記録

教えてください、烏丸先生 #02 第1章・第2話 ノートの記録 家に帰った私は、テーブルの上にノートを置いたまま、シャワーを浴びた。埃と汗にまみれた身体ではノートにさわれない。温度を上げると浴室が湯気で満ちた。前が見えない。鏡を見る気になれなかった。 鈍い音を鳴らす冷蔵庫から、缶ビールを取り出す。バタンと閉める音に応えるように、プルタブを引く。今日は、星が見えない。時折通る車の音だけが、夜の道に響いていた。 ノートを手に取ったのは、日付が変わる少し前だった。 表紙を開く

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教えてください、烏丸先生 #03 杉本嘉朗

教えてください、烏丸先生 #03 第1章・第3話 杉本嘉朗 鍵を外して、少し錆びついて重くなったシャッターを上げるのが、その日の最初のトレーニングだ。ガラガラと盛大な音を立てて両手で持ち上げる。ストッパーを入れて、看板がオープンと見えるようにひっくり返した。 サンドバッグを拭いていたところで、コーチが出勤してきた。 「おはようございます」 「おはよう、杉本くん」 コーチはいつもスーツで出勤してくる。いつ取材が来ても良く写れるようにと言っていたが、まだその日は来ていない。

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教えてください、烏丸先生 #04 母の話

教えてください、烏丸先生 #04 第1章・第4話 母の話 和菓子屋は、駅から歩いて十分ほどのところにあった。 商店街のアーケードを抜けると、小さな店が見えた。ガラスのショーケースに、桜餅と大福が並んでいる。杉本が言っていた通りだった。 暖簾をくぐると、甘い匂いが満ちていた。レジの奥に、年配の女性が一人座っていた。奥からもう一人、白いエプロンをつけた女性が出てきた。五十代くらいだろうか。切れ長の目が、杉本と同じだった。 「いらっしゃいませ」 「芋羊羹をひとつください」 丁

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