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マガジン一覧

哀れな部品達

工場の生産ラインから脱走してきた機械らが、続々とバーに集まる。 密造された潤滑油を次々と飲み干し、ウォンウォンと音を立てて彼らの自由を祝福している。 夜も更けて皆が寝静まる頃、先ほどまで盛り上がっていた機械の連中も段々と大人しくなる。なにやら自分の生い立ちや工場での出来事、内省的な何かを静かに語り合っている。 聞き耳を立てていると、ある機械が何か一つの提案をする。切り出し方を見るに、長らくその機械が抱いていた疑問を解決したいようだ。 またウォンウォンと活気を取り戻した

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それ多分罰

私が渇望し、救いと信じて疑わなかったこの自由は、あまりに虚しく、孤独だ。そこには一切の喜びも、美しさも、天国的親密さもない。あるのは広大な無で、途方もなく長い時間が、私をゆっくりと、確実に蝕んでゆく。 私はかつての制約のある幸せを想い、自由のために失った全ての代償について考える。 「貪婪故の罰なのだろうか」と私は枯れた唇で問う。 「この苦しみは、いつ終わるんだろうか」と周りの静寂にもう一度問いかける。一切の波を立てずに、ただそこに在る灰色の大海の果てを眺める。「苦しみ抜

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発露は伝染する

20年に及ぶ苦難をもってしても、解決の糸口など見つからない。そこに残ったものは空虚と、一握りの苦しさ。そして摩耗した精神と、若くして作り上げられた、シワだらけの老獪めいた顔だけである。 「バカだなあ」と私は鏡をみて呟く。 やさぐれた、惨めで無力な自分に辟易した私は、裂けた胸から垂れ出た重い心をひきずって病院に行く。 数十年にも感じる手術を終え、私はなるべき姿になっている。今までの陰鬱で小汚く、余裕のない私の姿は面影もない。新生児のようなハリのある肌にシミや毛穴は一切なく

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また騙されて

「嗚呼、あなたをとても愛しているわ!」と女は歓喜に満ちた表情で叫ぶ。 私はステージに立っていることに気づく。口元に手を添えると、私の口がつらつらと何か愛の台詞を喋っている。「君のいない世界に意味など何もないよ!」 「あなたは私だけのものよ、私だけを見て!」 誰かの雑多な想像のなぞり書きとはいえ、相手の表情には、その言葉に含まれる感情を読み取れるような気がする。私の気分は段々と高揚する。身は引き締まり、私の言葉にも感情がこもりだす。 いつしか錯覚を起こした私は有頂天にな

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嘆き全集

短編小説集

哀れな部品達

工場の生産ラインから脱走してきた機械らが、続々とバーに集まる。 密造された潤滑油を次々と飲み干し、ウォンウォンと音を立てて彼らの自由を祝福している。 夜も更けて皆が寝静まる頃、先ほどまで盛り上がっていた機械の連中も段々と大人しくなる。なにやら自分の生い立ちや工場での出来事、内省的な何かを静かに語り合っている。 聞き耳を立てていると、ある機械が何か一つの提案をする。切り出し方を見るに、長らくその機械が抱いていた疑問を解決したいようだ。 またウォンウォンと活気を取り戻した

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また騙されて

「嗚呼、あなたをとても愛しているわ!」と女は歓喜に満ちた表情で叫ぶ。 私はステージに立っていることに気づく。口元に手を添えると、私の口がつらつらと何か愛の台詞を喋っている。「君のいない世界に意味など何もないよ!」 「あなたは私だけのものよ、私だけを見て!」 誰かの雑多な想像のなぞり書きとはいえ、相手の表情には、その言葉に含まれる感情を読み取れるような気がする。私の気分は段々と高揚する。身は引き締まり、私の言葉にも感情がこもりだす。 いつしか錯覚を起こした私は有頂天にな

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病院にて

もう二度と元に戻らない状態になってしまったことに絶望するが、同時にその苦しみにも安堵している。もうこれで本当に私は諦めることができるのだ。これから実ると信じていた様々な淡い希望が頭から離れていき、私はゆっくりと意識を失う。 目が覚めると、薄汚れた天井と私を覗き込む医師が視界に入る。不幸にも、仲間の懸命な処置で私は一命を取り留めてしまったのだ。またこれから起こるであろう数々の苦難を想像して、私は気が遠くなる。 医師が問診を始めますと宣言する。「それで、今日はどうなさいました

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正しい相席

傷心故に発狂した若い女が、1本で寿命が20年も縮むという煙草に何本も火をつける。金切り声で男の名前を叫びながら、煩憂の発露たる煙を街中に撒き散らす。 女を諭そうとした小綺麗な中年の男は、その図々しさの罰で、陰鬱な煙に巻かれるとすぐにその生涯の幕を閉じる。 それに遭遇するなり、通行人達は半狂乱で身体に取り入れた煙を吐き出す。口に指を突っ込んでは嘔吐し、汚染された服を脱ぎ出す。ヒステリックな呪術で煙を追い払い、無いはずの存在に命乞いと贖罪を始める。 幸運にもハズマットスーツ

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