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マガジン一覧

インディ病理医・科学ジャーナリスト榎木英介の”機微”だんご

フリーランスの病理医兼科学ジャーナリストである榎木英介が、病理、医療業界や博士号取得者のキャリアパス、科学技術と社会に関する「機微」な話題を語ります。組織に属しない「インディペンデント(インディ)」ならではの忖度ない意見や他では公開できない情報を惜しみなくつづっていきます。 榎木の作った“機微だんご“、うまいかまずいか。まずは試しておくんなさい。うまかったらお仲間になっとくれ。 現在毎日休まず更新中!マガジン購読すると500円でひと月の記事をすべて読めるので、単品購入よりお得!

忙しいのに収入が減った年――フリーランス病理医6年目の振り返り

 毎年この時期、ひとつの「儀式」が終わる。  確定申告だ。フリーランス病理医として独立して6年。会計ソフトのfreeeを使いこなし、今年もなんとか期限内に提出を終えた。  領収書の整理から青色申告の仕上げまで、苦手意識は消えないが、それでも年々スムーズになっていく。freeeもAIが導入されるなど、進歩している。  ところが、今年の申告書を眺めていて、少し気が重くなった。  昨年と比べると、収入が大幅に減っていた。正確には、前年比で約4分の3。つまり、1年間で収入の4

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東大合格最低点、12年ぶりに理Ⅱが理Ⅰを超えた日──AIブーム終焉と「東大ブランド」選択の構造変化を読む

 2026年3月10日、東京大学の一般選抜(前期日程)の合格発表が行われた。合格者は2990人。そのなかで、理科系の結果にひとつの異変が報じられている。  理科の最低点は理Ⅰの303.39点で、理Ⅱの最低点が理Ⅰの最低点を上回ったのは12年ぶりのことだ。  前回は2014年度。理Ⅰが307.4点、理Ⅱが309.7点と、わずか2.3点差での逆転だった。その後、12年間にわたって理Ⅰが理Ⅱを上回る「通常の秩序」が保たれてきた。今年の逆転差はわずか1.61点。小さな数字が、大き

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「自分が始めた物語」だとしても ―― 大学入試不合格論

 ある動画を観て、36年前を思い出した。  1990年3月10日、東京大学の入試の合格発表の日だ。  赤門がちらっと映り、合格者の番号と名前が掲載された掲示板が映り、数秒で終わるビデオ映像がある。私が撮ったものだ。手ブレしたその映像には、自分の受験番号がないという事実だけが静かに記録されている。  わっしょい、わっしょいと胴上げの声が聞こえる。無言の自分。自分の番号がない。すぐ切られた映像。今見ても、あのときの気持ちが即座に蘇る冷凍パックだ。なんであんな映像を残したのだ

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カルテを患者に開けば、医療は壊れるのか——群馬大の試みと「エリートパニック」

 群馬大学医学部附属病院が、2026年3月2日からスマートフォンで電子カルテをリアルタイムに閲覧できるサービスを開始した。  PHRアプリ「NOBORI」を基盤とした取り組みで、医師の診療録、看護記録、薬剤・リハビリテーション・栄養など各部門の記録まで、医療チームが記録するほぼすべての情報を、患者のスマートフォン上で一体的に閲覧できるというものだ。  このニュースはX(旧Twitter)上でたちまち拡散し、「患者の権利だ」「透明性が高まる」という歓迎の声とともに、「誤解を

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医学部医学科への学士編入、再受験関連記事まとめ

医学部医学科に学士編入して入った経験から考えたことを綴った記事をまとめました。

東京科学大、医学部医学科への「進振り」始めるってよ?!

 医学部受験「界隈」(そんなものが存在するのかは不明だが)で、今ある発表が波紋を広げている。  東京科学大の医学部が後期試験を廃止するという。公式ページはこちら。 令和 10(2028)年度東京科学大学入学者選抜における変更について(予告) (第3報)  東大理3に落ちた受験生が殺到することで知られる難関の後期試験。この廃止は上の投稿にあるように、超上位の受験者層の動向に影響を与えるだろう。  ただ、今回のテーマはそれではない。これと同時に発表された情報が、おや、これ

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32歳で医師になった私から、49歳の医師国試受験生へ伝えたい「残酷な希望」

 あるニュースが、SNSのタイムラインを騒がせていた。49歳、9浪で医師国家試験に挑む受験生の記事だ。  一読して、胸の奥がざわついたのを覚えている。記事そのものの内容よりも、それに対するコメント欄やSNS上の反応の冷たさに、だ。 「この年齢で受かっても現場では使えない」 「税金の無駄遣いだ」 「医者になっても体力的に無理だろう」  散々な言われようだった。まるで、彼が医師になること自体が社会悪であるかのように叩かれている。  確かに、ストレートで合格した24歳の研修

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財政審が宣告する「医師・冬の時代」――「金儲け」のための医学部受験は、もう詰んでいる

 2025年12月2日。財務省の財政制度等審議会(財政審)は、来年度(令和8年度)予算編成に向けた建議を取りまとめ、財務大臣に提出した。  このニュースを「毎年の恒例行事」として聞き流した医師や受験生がいるならば、あまりに平和ボケしていると言わざるを得ない。この無機質な行政文書の中に、日本の医師、そしてこれから医師を目指す若者にとっての「死亡宣告」とも呼べる内容が記されているからだ。  私は普段、財務省が振りかざす「科学技術予算の削減」や「短期的なコストカット論」には反対

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医師の「定年」後

 日経新聞になかなか興味深い記事が出ていた。  東京の病院で院長まで勤められた外科医の方が、長崎の離島で第二の人生を歩まれているという。  こういう話はメディアが飛びつく。以前もたとえば九州大学の教授だった医師が、無医村に勤めたり、都会から和歌山のへき地に移られた医師が取り上げられた番組を見たことがある。  確かによい話だなあと思うのだが、こういう「美談」の陰に、何か問題はないのかとちょっと冷ややかに見ることもある。とくに、基礎医学などをずっとやっていた医師が、そうした

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