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アプリの独自性は「何を捨てるか」で決まる|何かを捨てて独自性を築いたアプリ事例7選

新しいアプリを企画・開発するとき、多くの人は「何を提供するか」に注目しがちです。

しかし実は、アプリの独自性や形を決定づけるのは「何をあえて提供しないか」、つまり何を捨てるかという選択にあります。

ハーバード大学の経営学者マイケル・ポーターも「戦略の本質は『何をやらないか』を決めることだ」と語っています。また、Apple創業者のスティーブ・ジョブズも「集中とは、他の100もの良いアイデアにノーと言うことだ。自分たちがやらなかったことにも誇りを持っている」と述べています。

これらの言葉が示すように、優れた戦略やアプリには明確な“切り捨て”が存在します。

なぜ「捨てること」が競争優位につながるのでしょうか?

それはリソースを真に重要なコア価値に集中できるからです。

何でも盛り込んだアプリは一見便利そうですが、特徴がぼやけ競合との差別化が難しくなります。一方で、あえて機能や要素を削ることで、アプリは尖った個性を持ち、ユーザーの記憶に残りやすくなります。

さらに競合他社が当たり前だと考えている要素を捨てれば、競合が真似しづらい独自路線を築けます。「何を足すか」ではなく「何を捨てるか」に注目することで、限られた資源で最大の価値を生み出し、他にはない体験を提供できるのです。

本記事では、「捨てること」で成功したアプリの事例を分析し、その戦略をデータで検証します。そして、自社アプリへの応用方法を具体的に探ってみましょう。起業家や新規事業担当者の方が、自社の差別化戦略を考えるヒントになれば幸いです。

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※YouTube動画でも解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。


何かを捨てて独自性を築いたアプリ事例7選

まずは、実際に「何かを捨てた」ことで独自の地位を築いたサービスの例を見てみます。それぞれのサービスが意図的に削ぎ落とした要素と、その結果生まれた価値に注目しましょう。

【事例①】Twitter:文字数を制限し“つぶやき”に特化

Twitter(あえて当初の名前で紹介します)は「140文字(現在は280文字)の投稿」という制限を設け、長文投稿という要素を捨てました。SNS黎明期、ブログや他SNSは自由な長文投稿が可能でしたが、Twitterはあえて短文(つぶやき)に特化したのです。その結果、ユーザーは文章を簡潔にまとめる必要が生じ、リアルタイムでテンポよく会話する文化が根付きました 。

実際、サービス開始当初から驚異的なペースで利用が拡大し、1日のツイート数は2007年には約5,000件だったものが2009年には250万件、2010年には5,000万件にまで急増しています 。この爆発的成長は、「短文だからこそ気軽に投稿・閲覧できる」というTwitterのシンプルさがユーザーの心を掴んだ証と言えるでしょう。

»出典:Twitter Blasts Past 50 Million Tweets Per Day - Business Insider

【事例②】LINE:メール的な一覧性を捨てチャットに集中

日本発のメッセージアプリLINEは、従来のメールのように件名や受信箱で整理された一覧性を持たず、シンプルな時系列チャットに徹しました。

メールでは過去のやりとりを一覧で管理できますが、LINEはあえてその機能を捨て、一対一やグループでの会話に絞ったUIを提供しました。

その分、スタンプ(絵文字)などカジュアルで即時性の高いコミュニケーションが浸透し、ユーザー同士が小まめにメッセージを送り合うようになりました。

結果としてLINEは急速に普及し、2011年6月のリリースからわずか19ヶ月後の2013年1月には登録ユーザー数1億人を達成しています。

現在では日本国内のSNS利用率トップがLINE(利用率83.7%)というほど広範な世代に浸透しています。メール的な要素を捨ててチャット特化とした戦略が、日本人のコミュニケーション手段の主流をメールからLINEへと塗り替える原動力となりました。

»出典:〖LINE〗Users Exceed 150 Million Worldwide
»出典:日本のLINE利用率は「83.7%」、10~60代で8割超え。70代も7割突破時代に〖ドコモ・モバ研調べ〗 | Web担当者Forum

【事例③】Snapchat:保存せず消えるからこその解放感

米国発のSnapchatは、メッセージや写真が一定時間で消える(保存できない)という大胆な仕様を打ち出しました。従来のSNSやカメラアプリが当たり前に備える「保存して後から見返す」機能を捨て去ったのです。

この一見不便にも思える設計が若年層に支持されました。なぜなら「残らない」ことがユーザーに解放感と気軽さを与え、失敗や黒歴史を気にせず瞬間を共有できるからです。

その結果、Snapchatは10代・20代を中心に急成長し、2016年には日間アクティブユーザー数が1.5億人に達してTwitterを追い抜きました(当時のTwitter日間利用者は1.4億人未満)。消えるからこそ生まれるプライバシー性とリアルタイム性によって、Snapchatは写真・動画SNS市場で独自の地位を築いたのです。

»出典:Bloomberg Says Snapchat Has More Daily Users Than Twitter 06/17/2016

【事例④】note:あえてアフィリエイト収益を許さず信頼性を獲得

日本のコンテンツプラットフォーム「note」は、ユーザーが記事内に自由に広告やアフィリエイトリンクを貼って収益化する機能を意図的に制限しています。多くのブログサービスで見られる広告収入の仕組みを捨てることで、クリエイター本位のクリーンなコミュニティを作ろうとしたのです。

実際、note運営は「創作の街」を目指すうえで、露骨なアフィリエイト目的の投稿が氾濫するとブランドが毀損されてしまうと懸念しています。

このポリシーにより、note上のコンテンツは質が保たれ、ユーザーから「純粋な作品を安心して読める場」として信頼を獲得しました。収益化手段を制限する代わりに、有料記事やサポート機能など独自のマネタイズ方法を提供し、健全なクリエイター経済圏を築いています。「稼ぐ手段」を捨ててでもブランドイメージを守るという大胆な選択が、他の広告まみれのプラットフォームとの差別化につながりました。

»出典:【note】利用規約

【事例⑤】Instagram:テキストを排しビジュアルに特化

Instagramは写真・動画の共有に特化し、長文テキストやリンク共有といった要素を極力排除しました。投稿には画像・映像と簡単なキャプションのみとし、ブログのように文章主体で発信することは想定していません。

その結果、視覚的なコンテンツにフォーカスした世界観が生まれ、言語の壁を越えてユーザーを惹きつけました。サービス開始当初からユーザー数は急増し、リリースから2ヶ月で100万ユーザー、1年で1,000万ユーザーに達しています 。

2012年にFacebook社が約10億ドルで買収した当時、ユーザー数は3,000万程度でしたが、その後も成長を続け2018年には月間アクティブユーザー10億人の大台を突破しました。テキスト要素を極限まで削ぎ落とし「ビジュアルで伝える」ことに徹底した設計が、Instagramをグローバルで成功させた大きな要因です。

【事例⑥】Slack:メールのような堅牢さを捨て迅速なコラボレーションへ

ビジネスチャットツールのSlackは、従来のメールが持つ「厳密な保存性」や「フォーマルな書式」を捨て、カジュアルでリアルタイムな社内コミュニケーションに振り切りました。

メールは送受信の確実性や過去ログの保全には優れますが、その分形式ばった挨拶やCC管理など煩雑さも伴います。Slackはそうしたメールの特徴を大胆に捨て去り、短いメッセージと絵文字リアクションで気軽にやりとりできる仕組みを提供しました。

結果として「すぐ聞く・すぐ返事する」文化が根付き、多くの企業で社内コミュニケーションを効率化しています。実際、Slack社の調査では導入企業で内部メールが平均48.6%も削減され、社内の透明性が向上したとの報告があります 。

またサービスの成長も著しく、2015年時点で日間アクティブユーザー数約170万人だったのが、2019年9月には同1200万人超に達しています。メール的な厳密さよりスピードと利便性を優先する設計が、多くのユーザーに受け入れられた証と言えるでしょう。

»出典:Slack Survey Shows It Reduces Work Email - Business Insider
»出典:Not all Daily Active Users are created equal: Work is fueled by true engagement | Slack

【事例⑦】TikTok:長尺動画と一覧性を捨て短尺・フルスクリーンで急成長

ショート動画プラットフォームのTikTokは、YouTubeに代表される従来の動画サービスが持つ「長い動画コンテンツ」と「動画の一覧表示」をばっさり捨て去りました。

1本あたり数十秒〜数分の短い動画のみを提供し、ユーザーはアルゴリズムが次々と流すフルスクリーン動画をただスワイプして見る体験に特化しています。動画のサムネイル一覧やチャンネルページといった要素を排除したことで、ユーザーは考える間もなく直感的にコンテンツを消費し続ける没入感を得ました。

この戦略が功を奏し、TikTokは全世界で爆発的な利用拡大を遂げます。月間ユーザー数は2018年初時点の約5,500万から、わずか3年後の2021年には10億人を突破しました。

特に若年層の心を掴み、「ダンスやリップシンクといった表現を誰もが発信できる場」として定着しました。長尺コンテンツを捨てて短尺動画×アルゴリズム推薦に特化したことで、YouTubeという王者の座に挑む存在にまで急成長したのです。

»出典:TikTok Statistics You Need to Know in 2025

「捨てる」戦略の実践方法

差別化のために何かを捨てる戦略を、自社サービスで活用するにはどのような手順を踏めばよいでしょうか。ここでは、実践に移す際のポイントを2つに整理しました。

1. 自社のコアバリューを明確にする

まず、自社サービスの核となる価値は何かを徹底的に見極めましょう。ユーザーにとってそのサービスが解決する最も重要な課題や、提供する独自の体験は何なのかを定義します。

そのためにはユーザー調査や市場分析を行い、「このサービスのここだけは絶対に譲れない」というポイントを絞り込むことが重要です。

それが明確になれば、それ以外の要素は大胆に削れる可能性が出てきます。たとえばTwitterであれば「今この瞬間の考えを手軽に共有できること」がコアバリューであり、そこから外れる長文記事機能などは当初バッサリ切り捨てました。

自社でもコアバリューを一文で言えるくらいまで磨き込み、余分な機能は付け足さない勇気を持ちましょう。

2. 競合が捨てられない要素を見極める

次に、競合サービスや業界の常識をリストアップし、「競合各社が当たり前すぎて捨てられずにいる要素は何か?」を考えます。

既存プレイヤーほど、従来の成功体験やビジネスモデルに縛られて捨てられないものがあるはずです。そこにこそ新規参入のチャンスがあります。たとえば既存のブログサービスは広告収入モデルに依存していたため、noteのようにアフィリエイトや広告制限に踏み切るのは難しかったでしょう。

また、老舗航空会社はフルサービス提供が常識で機内食や座席指定を捨てられなかったところに、LCC(格安航空)がそれらを捨て低価格を実現した例もあります。

自社の業界において「誰もが重荷だと内心感じているが、無いと不安で残している機能」はないでしょうか?それをあえて無くすことで、競合が真似できない独自路線を作れる可能性があります。競合分析の段階で、「捨てる候補」を探す視点を取り入れてみてください。

「捨てる」ことで差別化する際の注意点

最後に、実際に何かを捨てて差別化する際の注意点です。まずユーザーにとって本当に不要かを見極める必要があります。

大胆に削った結果、ユーザーの基本的なニーズを満たせなくなっては本末転倒です。事前にプロトタイプ検証や限定リリースで、削る要素が「なくても問題ない」どころか「ない方が使いやすい」と感じてもらえるか確認しましょう。

また、捨てたことによるデメリットを他の工夫で補完することも大切です。例えばSlackもすべての情報が流れていってしまう代わりに、重要なメッセージをピン留めしたり、後から検索できる機能を充実させています。

さらに、捨てる戦略は往々にして一部ユーザーからの不満や批判を招きます。長文を書きたいユーザーがTwitterに物足りなさを感じたり、保存したいユーザーがSnapchatに不便さを感じたりするのは当然です。

その場合でも、ターゲットとするコアユーザー層にとっての価値が上回っているならば、ネガティブな声に過度に引きずられない判断力も必要です。

ジョブズの「やらないことに誇りを持つ」という言葉のように、自信を持って戦略を貫くことが求められます。ただしビジネス環境は変化するため、捨て続けるかどうかの再評価は定期的に行いましょう。

状況によっては後から機能追加する柔軟性(Twitterが文字数制限を拡大したようなケース)も持ち合わせ、常にユーザー価値とのバランスを意識することが重要です。

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