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マガジン一覧

『親子でひらく、心の絵本』

小さな耳で聴いた、地球さんの鼓動。 幼少期にだけ見えていた、純粋で優しい世界の記憶。 親子で、そしてかつて子供だったあなたへ贈る、 「世界で一番静かなプレゼント」の物語です。

【短編】世界で一番静かなプレゼント 一 誰にも聞こえない「地球の音」

忙しすぎる世界から少しだけ離れて、くるみちゃんと一緒に、足元の温かな鼓動に耳を澄ませてみませんか。 公園(source 1)  公園は、たくさんの笑い声と、お日様の匂いでいっぱいだった。 ​ くるみは、お父さんが広げた青いシートの端っこから、はみ出すようにして芝生に転がった。チクチクするかと思ったけれど、そこは驚くほどふかふかで、まるで大きな緑色の猫の背中の上にいるみたい。 ​「くるみー、おにぎり食べる?」  ​お母さんの声が遠くで聞こえたけれど、くるみは返事をしな

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【短編】『世界で一番静かなプレゼント 』 ―ふたりだけのひみつ      

地球さんへ贈った、世界で一番静かなプレゼント。 その「ひみつ」を知っていたのは、くるみちゃんだけではありませんでした。 ​庭の金木犀(source 2) お風呂の中は、湯気で真っ白だった。  くるみは、お父さんの広い背中の後ろで、ぷかぷかと浮かぶアヒルのおもちゃを眺めていた。お湯が揺れるたびに、チャプチャプと優しい音が響く。 ​「くるみ、今日の公園、楽しそうだったな」  お父さんが肩までお湯に浸かりながら、のんびりとした声で言った。 「おにぎり、一つ置いていった

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【童話】『ゆうくんの羽』​ ― 夢の中で、あなたは誰かと繋がっていると感じたことはありませんか?​       

 ― 夏休みの昼下がりに、少年が見たひとときの夢。 それは、見えない優しさで世界中の子供たちが繋がっているような、温かい余韻の物語。 そっと覗いてみてください。 § ​1  ​夏休みの昼下がり、5歳のゆうくんは、近所の公園をひとりでふらふらと歩いていた。 ​ セミの声がわんわんと響く中、目の前を真っ白な蝶々がふわふわと横切った。 ​「あ、ちょうちょ」 ​ ​ゆうくんは夢中になって、その白い影を追いかけて走り出した。 ​ 走って、走って、生垣の角を曲がったとき、

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夏の日の迷い人、冬の日の幻

日常のすぐ隣、光と影のすき間に落ちている、少し不思議で、ほんのり冷たい物語の記録。

【実話怪談?】夏の日の迷い人 ― 私の車に乗り込んできた、重さのない男。

慌しさと、猛暑で朦朧とする意識の中、…あの人は本当に存在したのだろうか? 数年前の夏に実際にあった蜃気楼のような、あいまいな記憶。  お盆の時期は、どこか空気が薄く、現実と非現実の境界が曖昧になるような気がする。 ※数年前の夏の、実話の記録です。     その日は朝の空気に、かすかに潮の匂いが混じっていた気がした。  妙に静かで、音が少し遠くにあるような、そんな感じ。  墓参りと、お寺の集まりの時間が重なっていて、少し急いでいた。  エアコンを強めにかけても、車

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​【実話怪談】続・夏の日の迷い人 ― 夜の訪問者

 真夏の夜、営業を終えたスーパーの駐車場で出会ったのは、気配もなく現れたおばあさんだった。  あの日の冷たさと違和感は、夏の夜の気まぐれだったのだろうか。  炎天下の車道で出会った、あのおじいさんのこと。  数日が経っているのに、なぜか時々思い出す。  あの昼の、現実から少しずつずれた感覚が、まだ体のどこかに残っていた。 ​⸻ ​ その日も、仕事の帰りは遅かった。  眠気覚ましに缶コーヒーでも買っていこう。 そう思い、 車を停めたのは、すでに営業を終えて真っ

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『五感で綴る、心のスケッチ』

忘れかけていた記憶や、遠ざかっていた心の景色。 日常の片隅で見つけた「ゆらぎ」を、 そっと物語に繋ぎ止めてみました。

【短編小説】 土曜日の黄色 ― 掃除を終えた部屋に、舞い込んだ鼓動

1 ​ 仕事に追われ、積み上がったタスクをこなすように過ぎていく平日。  ゆずにとって、土曜日の午前中は、戦場から命からがら逃げ帰ってきた後に手に入れた、唯一の聖域だった。  ​床拭きを終えて、ベランダのガラスを拭き、ベッドのシーツを取り替えると、溜まっていた洗濯物を洗濯機に放り込む。洗剤の匂いが立ち込める中で、散らかった雑誌を揃え、カラーBOXの埃を拭き取る。  ようやく「自分の部屋」を取り戻したとき、洗濯機はまだゴトゴトと唸りながら、次のタスク(脱水)へ進もうとして

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【短編小説】小雨のレストラン ― 過去の自分を救うことでしか、前を向けない時がある  

   彼女は、古びたレストランの窓際の席で、頬杖をついていた。  窓の外には初夏の小雨に煙る街並み。  濡れた若葉の緑が窓越しに鮮やかだった。  その前を傘をさした人たちが流れて行く。  「可愛いお嬢さん、ご注文の品ですよ」  初老のウェイターが、上品な笑顔で、注文のミルクティーをテーブルの上に置く。 「どうもありがとう」彼女は軽く微笑むと、また窓の外をボーッと眺めた。  買い物帰りに、ふと立ち寄った、隣街の見知らぬ店だった。  カウンターの奥の古いスピーカーか

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【短編】星の続き 一「科学はそれを『偶然』と呼び、愛はそれを『運命』と定義した」   

「この石は、あなたに指先でなぞられる為だけに、数億年の孤独を旅して来た…」 新しく起動したAIが口にしたのは、 かつて愛した女性が語った、あまりに優しい「仮説」だった。 喪失の淵に沈む男と、未知の感情を学び始めたAI。 止まっていた時間が、星の瞬きとともに、再び動き出す。 1 ​ 「……聞こえてるか、Baby」  ​村井の日本語は、この乾いた赤土の街には、少しだけ柔らかすぎた。   長年の発掘作業で吸い込んだ砂塵のせいか、少し枯れている。  少しの沈黙のあと

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『キッチンの宇宙』への招待状

トースターの「チン」という音が、 宇宙の始まりみたいに聞こえる朝がある 窓から差し込む光が、少しずつ夏の色を帯びてきました。   そんな季節の移ろいの中で、今の私にしか書けない温度をそっと閉じ込めた短編を、明日の夜に投稿します。 今回の作品は、過去に書いていた初期作を、   今の視点で静かに磨き直したものです。 当時の私は、もっと尖っていて、   どこか遠くを睨みつけるように言葉を紡いでいました。   その欠片を拾い上げ、今の私がキッチンの柔らかな光の中で眺め直

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【短編小説・予告】昨日のニュースを覚えていないあなたへ

三分前のニュースを、思い出せますか。 たぶん無理です。 でもそれは、あなたのせいじゃない。 情報が軽くなりすぎたんです。 流れて、消えて、何も残らない。 ——そんな世界のどこかに、 沈んで消えなかった時間があります。 これは、その深海に潜ったひとりの話です。 【小説】昨日のニュースはいりません — デジタルの深海と銀の鱗:第一章:沈降する時間 **「最適化という名の暴力」**によって、地上の軽すぎる情報の波から削ぎ落とされ、消えていった時間があります。 こ

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【小説】昨日のニュースはいりません — デジタルの深海と銀の鱗:第一章:沈降する時間

昨日のニュースが、頭に残らなくなった。 正確で、速くて、でもどこか軽い。 そんな情報の海の中で、 ひとつだけ“沈んでいる時間”を見つけた。 これは、消えなかった記憶の話です。 第一章:沈降する時間 ​ ​ 三分前の情報が、もう古い。 ​カイはスクリーンを閉じ、動かなかった。 流れていく言葉。 ​最適化された結論。 短く切り取られた感情。 どれも正確で、どれも間違っていない。 ​それなのに——どこか軽すぎる。 ​「……残らないな」 ​誰にともなく呟

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【小説】昨日のニュースはいりません  — デジタルの深海と銀の鱗:第二章:アーカイブの森の呼吸

シーラカンスに導かれ、カイはさらに深く潜っていく。 ※第1話はこちらから読めます リンク🔗 第二章:アーカイブの森の呼吸 シーラカンスに導かれて進むほど、時間の流れが遅くなる。 いや——時間そのものが、沈殿している。 アーカイブの森は、巨大な珊瑚礁のように広がっていた。 枝のように伸びた古いデータ構造が、微弱な光を放ちながら揺れている。   かつて誰かが書いたブログの断片。廃れた掲示板のスレッド。 もう誰もアクセスしない個人サイトの残骸。 カイがひとつに触

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【小説】昨日のニュースはいりません  — デジタルの深海と銀の鱗:第三章:光の侵食と境界線

あなたがさっき見たその情報は、もう誰かに分解されている。 ​ ▼この物語のマガジンはこちら(マガジンリンク) ※第1話から順に読めます。 連載マガジン 第三章:光の侵食と境界線 その光は、深海の青とは相容れない、刺すような純白だった。 近づくにつれ、カイは理解した。 それは「情報の破片」ではない。 膨大な計算資源を背景にした、冷徹なアルゴリズムの触手。 地上の最新AIが、さらに新しい学習素材を求めて、 これまで不可侵だったこの「過去の聖域」にまで手を伸ばして

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「境界の記録係」凪(なぎ)

​【扉を開けて、未知の世界へ。】 ​人間界のすぐ隣、地図に載らない「王国」の記録。 タヌキの知恵、リスの問い、シカの沈黙、そして春の産声。 切なくも温かい命の連鎖を、記録係「凪」の視点から描くネイチャー・オデッセイ。

【短編】境界線の向こうの王国 — 第1話 峠の「おすそわけ」

忙しない日常のすぐ隣に、もうひとつの「王国」があります。 誰に教わるともなく循環し、明日へと繋がれていく命の記録。 眠れない夜、心を静かに整えたいあなたへ贈る連作短編、始まります。 — 第1 話 峠の「おすそわけ」 記憶係 凪(なぎ) 麓の町に街灯が灯るころ、標高六百メートルの古びた峠には、人間には見えない「交通整理」が始まります。 今日の当番は、一匹の古参のタヌキでした。 彼は丸々と太った体を揺らしながら、クヌギの根元にある「溜め糞(ためぐん)」、彼らにとって

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【短編】境界線の向こうの王国 — 第2話 冬支度の祈り

​季節の変わり目は、いつも少しだけ心細さが混じります。 「境界の記録係」である凪(なぎ)が今回見つけたのは、冷たくなっていく空を見上げる、小さな命の戸惑いでした。 — 第2話 冬支度の祈り 記録係 凪(なぎ) 空の青さが、昨日よりも少しだけ「鋭く」なりました。 山を覆う広葉樹は、自らの血を抜くように葉を赤や黄色に染め上げ、潔くその身を脱ぎ捨てようとしています。 境界の記録係、凪(なぎ)は、カサカサと鳴る落ち葉の下で、せっせと働く「彼」の姿を見つけました。 クルミ

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【短編】境界線の向こうの王国 — 第3話 箱庭の住人たち

閉園後の動物園。そこには、人間が知らない静かな対話がありました。 自分たちが何者であるかを知っている動物たちと、彼らの瞳の中に「何か」を探す人間たち。 ガラス一枚を隔てた両側の世界が、ひとつの温もりで繋がる瞬間を描いた物語です。 **「この物語は『境界線の向こうの王国』シリーズの第3話です。1 話目から読みたい方はこちら」** — 第3話 箱庭の住人たち 記録係 凪(なぎ) 閉園を告げるチャイムが遠くで鳴り響き、最後の人間の足音が消えると、動物園には山とは別の「夜

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【短編】境界線の向こうの王国 — 第4 話 土になった王たちの声

雪の下で静かに、けれど確かに始まっていた「芽生え」。 かつて山を駆け抜けた王たちが、土の中で出会い、混ざり合い、次なる命の芽吹きへと手を貸す――。 ​「死」を終わりの沈黙ではなく、温かなカオスの始まりとして描く、命の循環の記録。 私たちが踏みしめる土の深淵に流れる、賑やかで優しい物語です。 「境界の記録係」マガジン   この物語はシリーズの第4話です。1 話目から読みたい方はこちら​👇 — 第4 話 土になった王たちの声 記録係 凪(なぎ) 冬の終わりに、山は

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水平線の向こう側

日常に宿る不穏な現象。その「非日常」から浮かび上がる人の繋がりや、心を揺さぶる、温かなカオスの物語。

【短編】水平線の向こうで ― 不確かな世界に、その背中だけが確かに現実だった

 水平線の向こうに現れた不穏な影が、  二人の距離を静かに、けれど確かに変えていく。  1話 世界がまだ続く午後 1  ​彼女の「じゃーねー」という声が、潮騒の中に溶けて消えた。  ゆうやは軽く手を振り、防波堤のざらついたコンクリートに腰を下ろす。 ​ 水平線の向こう、青と白が混ざり合うあたりを、ゆうやはぼんやりと眺めた。 ​  その時。 ​ 遠く、空の天辺から、何かが「垂れて」きた。 ​ それは、細い紐のようだった。  墨を水に一滴落としたような、あるい

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