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マガジン一覧

リバーサイド■■南には禁止事項が3つある

そのマンションには禁止事項が3つある。 1.20時以降のエレベーターの使用はお控えください。 2.ゴミ集積所での喫煙はご遠慮ください。 3.夜間の騒音は住人のみなさんのご迷惑になりますのでお控えください。 そのマンションに入居した女性は必ず失踪したり、自殺する。予兆は誰にも分からない。怪異は突然やってくる————。 短大を卒業したばかりの亜都里(あとり)は地元を離れ、F市のとある街へ就職のために引っ越し、そのマンションで暮らし始めるのだが…………。

リバーサイド■■南には禁止事項が3つある プロローグ 【中里 亜都里】 ①

「お隣のおじいちゃん、今日死んじゃうよ」と幼いわたしの言葉を聞いた母の顔を、今でも忘れられない。  その日の朝、四歳上の兄が黒いランドセルを背に玄関で靴を履いているのを、登園の準備をすませたわたしはぼんやりと眺めていた。  兄の竜樹は利発で、わたしとは正反対だった。なんでもハキハキと答えて、表情豊かで明るく、家族のムードメーカーだ。  要領が悪いわたしは、兄と比べられてはいつも引け目を感じていた。一時期は兄の真似をして、懸命に父母の関心を引こうとしていたけど、兄から「そ

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リバーサイド■■南には禁止事項が3つある プロローグ 【中里 亜都里】 ②

 字が書けるようになってまずわたしがしたことは、日記を付けることだった。大学ノートに見た夢のことを書くのだ。人に見せる為じゃない。夢の内容を覚えておく為に必要なことだった。  夢はいつも現実で起こるとは限らなかったし、いつ起こるのか予測もつかなかった。当日の時もあれば、何日も先のことだったりする。  夢で見るのは他人のことだけじゃない。自分のことも夢に見る。もし夢の内容を忘れてしまってうっかりしていると、失敗することもあった。  小学二年生になったわたしは、夢のことをク

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リバーサイド■■南には禁止事項が3つある プロローグ 【中里 亜都里】 ③

 コツンと小石が彼のランドセルに当たって落ちる。彼の意識をわたしに向けるには、それだけで充分だった。 「なんだよ!」  意表を突かれて、彼が驚いたような顔つきで振り向いた。小石をぶつけられたことには気付いてないようだった。ただ、振り向いた先にわたしがいることが問題だったようだ。 「中里、なんだよ。なんか用か? それとも、先生に告げ口するつもりかよ」  わたしは精一杯声を張り上げて、「危ないよ。やめたほうがいいよ」と告げた。でも彼に死ぬかもしれないからとは言えなかった。

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リバーサイド■■南には禁止事項が3つある 某所にある、とあるマンション 【中里 亜都里】 ①

「家具や家電は前の方が置いていかれたので、そのままにしてます。そのまま使われるか、処分されるか、中里さんで決めていただいて構いません」  四月から勤めるオリエント株式会社の総務課の女性に説明された。  ということは家具付きのマンションの家賃が住宅手当を引くと月2万円で済む。電気代と水道代、ガス代はひと月一律の天引き請求で支払を忘れることもないし、月の支払金額が変わることもない。インターネット環境も整っていると言われて社宅が空いていて良かったと、最初に案内されたときと同じよ

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#創作大賞2026 応募前に役立つチェックリストを公開します

7月8日まで、日本最大級の創作コンテスト「創作大賞2026」を開催中です! 「#創作大賞2026」のハッシュタグがついた作品を見ていると、応募要項を満たしていないために残念ながら選考対象外になってしまっている作品が見受けられます。 せっかく応募した作品が実は選考対象外になっていた……ということが少しでも減るように、「応募前チェックリスト」をご用意しました。記事の末尾にGoogleドキュメントも添付していますので、ぜひご活用ください! 特に見落としやすいポイント今回作成し

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創作大賞2026は応募規定が少し変わったらしいよ! 気をつけないと!

これは本当に気をつけないと、せっかく応募しても中間にすら行かない。 noteから応募に関してだけだから、TALESは大丈夫みたい。 詳しくはたおたおさんの記事を見てね。 でもこれ注意喚起して気をつけないと、半数以上の(ホラーの応募者のタイトル見たけど、ほとんど規定通りじゃなかった)作品が読んでもらえない。 これは怖いよ。 どんなにいい作品であっても、土俵に上がれないのは厳しい。 土俵に上がって勝負したい。 もう一度、応募規定見てみよう! ステップ4:作品を投稿して応募

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創作大賞2026 作者様&作品一覧  【ホラー小説部門】

※注意事項現在「#ホラー小説部門」に参加されている方で、作品に「#創作大賞2026」のタグを設定されている2026/4/8以降のnoteを対象としております。 作品は各作者様の(取得可能な)最新のタイトルを掲載しております。 「#1話目」タグが付いている場合、これを優先して表示します(アイコンが1️⃣になります)。 2026/4/8以前の記事は「#創26ホラ」タグがあるものを探して取り込みます。 note記事として「#テ26ホラ」タグが付いているものはTALESサイト

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創作大賞2026の作者様&作品一覧 タグを極めればもっと楽しめる!(ハズ)

今年も黄色い画像の季節がやって参りました!😆 皆様、存分に目をチカチカさせて頂くとして、今年も一覧を作っていこうと思います。但し、昨年の教訓?や、今年はTALESが出来たことも考慮して、何点か仕様を変更しております。 ◼全部門を網羅する!去年は小説部門中心だったのですが、もうついでなので全部作ることにしました。案の定、エッセイ部門がエライことになっているのですが、そのウチ分割します。従って対象は全12部門となります。 ◼掲載作品は1作品(例外あり)昨年は最新と最古の2つ

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モルテの海から帰って

ホラーオムニバス。 #創作大賞2026 参加。 #ホラー小説部門

モルテの海から帰って #6 最終回

*  おれはしばらく、地面に手をついて、息を切らしていた。  顔を上げると、赤い鳥居が連なり、その奥に赤い祠が石の台座の上に鎮座している。  ああ、悪いものは入って来れないんだ。ほーっとため息をつき心から安堵した。ザリザリする地面から手を離し、膝と手のひらについた砂をはたいた。どのくらい、待てば、彼女は去るのだろう。それまではここにいなければいけない。とりあえず、小さな社に近づいて、尻ポケットから小銭入れを出して10円玉を賽銭箱に入れた。柏手を打ち、頭を下げて、手を合わ

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モルテの海から帰って #5

*  おれは会社へ足早に向かっていた。莉子のせいで完全に遅刻だ。彼女は弱すぎたのだ。子供を失って、染谷まで失って、それであんなふうにおかしくなってしまった。  弱すぎて自殺するのとおかしくなるのは、どちらがましなのだろうか。  去年の暮れ、同僚の女の子が自殺した。おれの部屋の前の外廊下から身を乗り出して、転落死した。6階だったから、助からなかった。  おれは彼女の目の前にいた。と言うよりもおれの部屋から出た途端、彼女はおれの目の前で飛び降りた。  もちろん、すぐにお

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モルテの海から帰って #4

*  ラインにメッセージを送って10日経ったが、莉子からの返答はなかった。  警察が疑っているように莉子が染谷の変死に関わっているのか。それとも染谷が自死したショックで莉子は逃げ出してしまったのか。  答えも手掛かりも掴めないのがもどかしかった。  寝ても取れない疲労感を抱えたまま、重たい足を引きずるようにして、雑踏の中、スクランブル交差点を渡っていた。遠くから鳥の囀りをまねた定期的な機械音が聞こえてくる。鳴り終わる前に渡り終えないと、とおれは足を速めた。 「結城さ

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モルテの海から帰って #3

*  結局、染谷とは連絡が付かないまま1週間が経った。  休憩時間に社食で昼飯を食っていると、ラインの通知が来た。見ると、染谷からだ。やっとメッセージに気付いたのかとアプリを開いた。 『今夜8時に、面白い動画を配信するから見てくれ』  氷川については何も書かれていなかった。 『染谷さん、氷川さんのこと、読んでくれたか』  おれのメッセージは既読にもならず、結局返答はなかった。  染谷はカメラマン不在のまま、動画を撮ったのだろうか。  それはともかく、予約配信に

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なぼうの封土 ---山田と白准教授シリーズ2---

山田が通う、福北大学の一角には、願掛けすると恋が叶うとされる「恋結び地蔵」があるという。 白准教授は自分の民俗学の講義を受ける一年の女学生・新城弓美のレポートから、「恋結び地蔵」のことを知り、詳しい話を知りたがる。 山田は白のアルバイト初日に、目の前で飛び降り自殺をした女学生と弓美が友人同士だと、そのときに知り、「恋結び地蔵」の噂話が本当かどうか確かめたいという白に振り回される羽目に。 しかし、その噂の「恋結び地蔵」には別の一面があって……。 果たして噂は本当なのか、ウソなのか……? 一方、山田は中学生の時に飛び降り自殺した双子の姉の死の真相を探り、怨霊となった姉を成仏させようと孤軍奮闘する。 ーーーーーーーーーー ※改稿をいたしました

なぼうの封土 プロローグ #1

あらすじ  山田は、腕時計をチラチラと見ながら、早足で歩いていた。  大学構内の並木道を、ざぁっと風が通り抜けていく。風に乗って黄色く色づいた銀杏の葉が舞い飛んでいる。  地面に落ちた黄色い銀杏の実を山田の靴が踏み潰し、実から独特な匂いが放たれる。  休み時間に入っているせいか、道を往く学生達が目立つ。学生が行き交う中、脇目も振らずに急ぐ山田を、何人かの学生が振り返る。  山田は気にも止めず、構内の奥に建つ旧学部棟へ向かっていた。  伝承や民間信仰などを教えている

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なぼうの封土 第一章 恋結び地蔵 ① #2

 壇上で、ひょろりと背の高い、くしゃくしゃ頭の講師の男が、ホワイトボードに『行き逢い神』と殴り書きしている。 「『行き逢い神』というのは神霊の一種です。どこにでもいるとされる〝存在〟で、日本全国の人々の生活に密接に関わっています。九州、山口、四国の一部では『カゼ』、関東以北では『イキアイ』、『通り神』と呼ばれています。鳥取の『日御崎さん』は行き逢っただけで即死するという恐ろしい神だったりします。高知県では『ミサキのイキアイ』とも言われますね」  講師が、ポインターを振りな

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なぼうの封土 第一章 恋結び地蔵 ② #3

 一人暮らしのマンションに帰ってきた山田は、バッグの中身を脱衣所で広げた。ジーンズの血液が洗濯で取れるか分からないけれど、洗濯機に放り込み、作動させた  白から借りたスウェットパンツも脱ぎ、洗濯籠に入れる。  血まみれのコートは、漂白剤に浸けて、血の跡が消えるかどうか試してみることにした。ポケットに押し込んだ紙を取り出して、漂白剤の入った桶に浸けた。  メッセンジャーバッグや布地の小物類は、ジーンズが入っていたゴミ袋に入れて捨てた。  服も着替えず、リビングの床に正座

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なぼうの封土 第一章 恋結び地蔵 ③ #4

 昨日、山田が口述したレポートの主、新城弓美に白は接触できていないようだ。講義まで後六日ある。忘れているわけではなさそうで、研究室の壁のボードには例のレポートが画鋲で留められていた。  一応、持って来た半紙を白に見せる。 「先生、これ、旧学部棟の前に落ちてたんですけど、もしかしたら昨日のレポートに関係あるかと思って」  白が資料から視線を半紙に移した。半紙を受け取って、まじまじと紙を見つめている。 「なんか書いてあるね」 「金と香という漢字は読めるんですけど」 「

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御郷島へ渡る舟 ---山田と白准教授シリーズ1---

千年前から伝わる『おわたい』という民間信仰を見学するべく、三宅|爽果《そうか》に案内されて、 |白 匡介《つくも きょうすけ》(シロ先生)と、その助手である|山田羊《やまだ よう》は、 鹿児島県南端の、準限界集落・漁村の三宅村を訪れた。 その村に伝わる、 |御郷島《おんごうじま》へ渡り橘の実を持ち帰ると豊漁を約束される民間信仰『おわたい』という因習。 『ほかい様』という障る六体の石像。 村の最年長の老婆の歌う数え歌。 千年前におわたいの乙女が御郷島から持ち帰った橘の実。 それらの謎が深まるなか、 シロ先生は知れば知るほど深まる民間信仰の謎を解明するため。 山田は自殺した双子の姉、怨霊と化した綿子を成仏させるため。 二人は変死の続く村に留まることになる——。

御郷島へ渡る舟 プロローグ ② #2

 夢の中に出てきたセーラー服の少女は、双子の姉の綿子だ。先ほどの気味が悪い夢は綿子が見せた悪夢だったのだろうか。  白に助けられながら、山田はゆっくりと立ち上がる。  周囲には、黄色い果実を実らせた木々が、小高い山裾に整然と立ち並んでいる。  村を案内するという爽果に連れてこられたのだ。  枝葉に実る黄色いみかんに、山田は一抹の不安を感じる。それは夢で見た黄色く不吉な果実と同じものだった。 「それ……」  山田が一区画に設けられた果樹の実を指さした。 「あ、これ

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御郷島へ渡る舟 第一章 橘の宝玉 ① #3

 二人が三宅村の地を踏んだ時には、すでにお昼を過ぎていた。  三宅のバス停で下車し、迎えにきてくれた爽果の案内で、村唯一の狭い国道を二十分ほど歩いて、やっと村の入り口に辿り着いた。  旧正月まで、まだ三日あるというのに、五十年ぶりの『おわたい』目当ての観光客で、村は賑わいを見せている。  三宅村唯一の民宿『ゑびす』は、大繁盛で満室だった。急に思い立っての訪問だったから、宿泊する場所がなく、それで、爽果の実家に世話になることになったのだった。  爽果の実家に荷物を置いた

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御郷島へ渡る舟 第一章 橘の宝玉 ② #4

 山田は、民間信仰であるおわたいをブランド化して、儀式の内容をねじ曲げてしまうのはどうかと思う。村おこししたいという気持ちは理解できるが。 「じゃあ、これからは“橘の宝玉”を特産物に生産していくんですか? 毎年おこなうイベントとしておわたいを復興するってことは、そういうことも含まれてるんですよね?」 「村の人とおわたい振興会って言うものを結成して、国からも助成金をもらったから、これから三宅村は忙しくなるぞって父が言ってました。父は振興会の会長をしてるみたいで」 「じゃあ

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御郷島へ渡る舟 第一章 橘の宝玉 ③ #5

「よく覚えてますね」  山田は白の記憶力に驚いた。 「いやぁ、付け焼き刃だよ。鹿児島に行くって決めたときに、資料を漁ったのが幸いした」 「そういえば、先生、民間伝承や民間信仰の研究してましたね」 「うん。たまたま鹿児島県の民間伝承を調べてたから、爽果さんのレポートを見て、興味が湧いたんだよ」  卓の上に豚肉料理や魚料理、刺身、菜園で採れた野菜を使った料理が並べられた。 「さ、冷めないうちに食べて食べて」  万智に促され、山田と白は箸を取った。 「さすがは学者せ

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呪願の代償

子供に呪物のラムネ瓶を与える怪異が、箕形(みがた)第一小学校の子供達を襲う。 除霊師の光一郎は息子の匠と共にその怪異を除霊しようとするが、光一郎は除霊に失敗してしまい、脳死状態になってしまう。 不遇の少女・涼々の夢に、家を出たはずの母が現れ、一本のラムネ瓶をくれる。 これに悲しいこと辛いことを詰めてごらん、きっとお願い事が叶うから。 涼々はその夢の通り、ラムネ瓶に辛い気持ちを吹き込んでいく。 いじめっ子が死に、母が助けてくれたと思っていたのだが、一方で、呪いに染まった涼々の腐った魂を狙う、気味の悪い電話が家にかかってくる。 除霊師を金儲け出来る仕事と思っている匠は、呪物のラムネ瓶を持つ涼々が怪異の正体を知っていると近づくのだが……。 ※タイトルは変更されるかも知れません

「呪願の代償」ハッピーエンドとバッドエンドを掲載しました。

バッドエンドを読むか、ハッピーエンドを読むかはあなた次第!  呪願の代償 第五章 地獄 3 分岐ハッピー バッド

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呪願の代償 序章

 雨がしとしとと降っている。  空を見上げると、灰色の曇天が視界いっぱいに広がっている。止まない雨はないと大人が言っているのを聞いたことがあるが、この雨はいつまでも止みそうにないと、傘もなく濡れそぼった涼々はぼんやりと思った。  ランドセルがやけに重たい。中にある三年生用の教科書はビリビリに破かれている。クラスメイトの愛菜に破かれる度にセロハンテープで貼り付けていたが、散々破かれたせいで文字は読めなくなった。  このまま小学校に行けば、また教科書を破かれたり、あと数本し

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呪願の代償 第一章 除霊師 1

「久世先生、これはほんの気持ちですが」  何もない六畳ほどの座敷に、男が三名、女が一名。  正座している先生と呼ばれた黒尽くめの初老の男に、壮年の男が頭を下げ、分厚い封筒を差し出した。先生の隣に正座する、同じく黒尽くめの三十代の男がそれを受け取る。壮年の男の背後で、うつ伏せで横になっている女はぴくりともしない。 「娘に憑いた悪霊は祓われたんでしょうか」  壮年の男、女の父親が心配そうに訊ねた。  一見、喪服にも見える黒スーツを身に纏った除霊師、光一郎が深く頷き、男を

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呪願の代償 第一章 除霊師 2

 ちょうどその時、玄関のドアが開く音がした。  匠が廊下の奥から玄関を覗くと、耀が帰ってきたところだった。傘を持って学校に行かなかったのか、ずぶ濡れだった。無言で靴を脱ぎ、元気がなさそうに、リビングへ向かう耀を、匠は呼び止めた。 「おかえり、耀。ずぶ濡れじゃないか。風呂場で頭を乾かそう」  急に声を掛けられて驚いた顔で、耀が顔を上げる。 「ただいま」  消え入るような声音で答えた。  風呂場に息子を連れていき、ランドセルを下ろす。ふと気付くと、耀が右手にラムネ瓶を

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完璧な家族 ー首縊りの家ー

幼い頃、とある廃墟に忍び込み、私は家族写真を拾うが、 背後から「完璧な家族になろう……」と囁く怖いものに出くわし————。 それから24年後———— 私は認知症の母親の介護をする為に、休職して福岡にある実家に戻った。 しかし、考えていた以上に過酷な介護に私は日に日に疲弊していくことになる。 毎夜徘徊する母、勝手に外へ出てしまう息子。 思い通りに行かない日々を過ごしていた。 徘徊する母と息子は決まって、あの廃墟の前で見つかる。 そこは、私にトラウマを植え付けた廃墟だった。 廃墟で拾ってきた何の変哲もない家族写真、関わってはいけない廃墟————。 それらに関わってしまってから、私の周囲で異変が起こり始める。

完璧な家族 首縊りの家 プロローグ #0

あらすじ  プロローグ 鷹村 翔太  その空き家は、丁字路の突き当たりに門を構える、平屋の一軒家だった。  屋根付きの門には蔦の代わりに虎ロープが張り巡らされている。壊れた扉は半開きで、ロープの効果はなさそうだ。  長い間、風雨に晒されて、黒く腐った柱は緑色に染まり苔むしている。  空き家を囲む高いブロック塀から、鬱蒼とした枝葉がはみ出して、蔓性植物が巻き付き、いよいよ野放図に生い茂っている。  荒れた印象の木々は暗く沈んで見え、まるで、だらりと手を垂らした緑色の

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完璧な家族 首縊りの家 第一章 #1

第一章 鷹村 翔太 「それはここにお願いします」  引っ越し業者の男性に最後のダンボールを屋内に運んでもらった。実家の仏間にいくつもダンボールが積み上げられていて、その一つ一つに中に入っているものが分かるようにマジックでメモが書かれている。  その中の一つから、いくつか小物を取り出して、仏壇に並べて置いた。母が父の写真を後ろ向きにしているように、私も自分が持ってきた写真立てを伏せた。  沙也加が事故で死んだのはちょうど一年前。私が三十三歳になった時に、息子の隼也を残し

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完璧な家族 首縊りの家 第二章 #2

第二章 鷹村 翔太 「見てみて。これ、なんやち思う?」  やや甘ったるく語尾を伸ばし、磯部先輩に話しかけているのは恋人の舞美《まみ》さんだ。  夏休みが終わり、新学期が始まったばかりの頃だ。  当時十六歳の私は、両親と気まずくなって家出中だった。寝食する場所に困っている私に、サッカー部OBで、近郊の大学に通う磯部先輩が声をかけてくれた。それで、一週間ほど世話になっているのだ。  就活もうまくいって、単位も十分だと先輩は言っていたが、本当のところどうだったか分からない

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完璧な家族 首縊りの家 第三章 #3

第三章 宍戸 篤  お父さんが、新しい家を建てることにしたと告げたのは、ぼくが十二歳の時だった。  今まで住んでいた古い家から、一年後には引っ越すことになる。  お父さんはロープに囲われた更地に入って、ここはリビング、ここはお姉ちゃんの部屋、隣にぼくの部屋だよと、そんなふうに、説明しながら歩き回った。  お母さんもニコニコと始終笑顔で嬉しそうだ。お姉ちゃんも、「やっと篤と違う部屋になる」と、満足そうにしてる。  一人部屋になるのはなんだか心細くて寂しいけど、もう中学

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忌み地

忌み地・因縁・因習・呪詛・人形・あなたの最初の子供は必ず死ぬ運命にある 死んだ義母の家に住むことになった主人公・結花子。 その家には不気味な人形たちがいた。 家中にカビが生え、誰もいないはずの廊下から子供の足音が聞こえてくる。 それは最初は気のせいだと思われていたが、悪意を持って結花子に襲いかかってきた。 結花子は友人の知り合い・霊感が強い壱央(いちお)に助けを求めることになる。 井野家の当主の最初の子供は必ず死ぬ……妊娠中の結花子はそのことを知って戦慄する。

忌み地 序章

 男はひたすらぬかるんだ湿原を歩いている。背中に担いだ死体のせいで、足首までぬかるみの中に沈んでいた。自分が今まで捨ててきた、死体の折り重なる葦原の中を突き進んでいく。足の裏で糜爛した残骸がずるりと剥けて滑る。湿原の水は腐った水に濁り、腐汁と区別がつかない。獣や川魚が腐ったような鼻をつく臭気。疫病で死んだ屍が放つ悪臭には慣れている。体にも死体の臭いがこびりついて離れない。けれど、その臭いは男の暗い欲望を掻き立て、抑えきれない興奮を呼び覚ます。  背に負ぶった裸の女の腹は大き

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忌み地 第一章 結花子 ①

 結花子はハッとして目を開けた。常夜灯がほのかにオレンジ色の明かりで辺りを照らし出す。この家に引っ越してから見慣れた、黒く煤けた天井の板ばりが目に入る。  先ほどまで見ていた夢があまりにも生々しくて、胸の鼓動が鳴り止まない。顔を右横に向けて隣を見てみると、夫の寿晶が静かな寝息を立てて眠っている。  じっとりと汗ばんだ肌にパジャマの布地が張り付いて気持ち悪い。夢見が悪いのは初めてではなかった。十日前に越してきて以来、毎晩悪夢を見ている。その内容のほとんどは覚えていないけれど

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忌み地 第一章 結花子 ②

 それから慌ただしく引っ越しの準備が始まった。夫も会社に引っ越しの手続きを取り、何事もなく交通費の申請も済んだ。夫が会社に行っている間に、結花子は移転元と移転先の区役所に行き転出入届を出して、金融機関などの住所変更をおこない、全てが終わるのに二日ほどかかった。  引っ越しの準備は妊娠四ヶ月の結花子一人では無理なので、夫に頼み込んで全て引っ越し業者がしてくれるプランを選んだおかげで、引っ越し代金は高くつくが気持ちも体も数段楽だった。  五年間住んでいたマンションの掃除を終え

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忌み地 第一章 結花子 ③

 夫がネクタイを緩めながら鞄を畳に置き、どっかと腰を下ろして、お笑い番組のチャンネルをプロ野球に変えた。 「いいよ、今日は疲れただろ?」 「まぁね……」 「なんか臭いな」 「カビが酷かったの」  結花子は慣れて感じなくなっていたカビ臭さを、夫が嗅ぎ取って鼻にしわを寄せた。 「この家、昔からカビ臭かったの?」 「そんなことなかったような気がするなぁ。家を出たのが十七年も前だから忘れた」 「そう……」  結花子は座卓に弁当を並べ、ペットボトルのお茶をコップに注い

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屍喰い蝶の島

「赤きてふは死にし屍を食いたるゆえ、名をしくひてふ、もしくはしじきてふと名付けき。」 年に一度、3月22日に、非業の死を遂げた平家のご落胤が、島民を祟って「御先様」となり、志々岐島の和田津集落を練り歩く。御先様に行き逢った人間は海に牽かれて、碧の洞窟に首無し死体となって上がるのだ。 シジキチョウはその死体を貪る肉食の蝶だった。 民俗学研究をしている院生の夜須は、蝶をこよなく愛し、いつか新種の蝶に自らの名をつけるという野望を持つ。 ある日、1年前に院をやめて田舎に帰った友人・交野から電話をもらい、「志々岐島には肉食の珍しい蝶がいる」と聞き、一に二もなく志々岐島を訪れると約束する。 3月22日迄においでと言われ、夜須は早々に志々岐島に足を向けた。 シジキチョウのことを調べていくにつれ、島の謎にたどり着いた夜須の身の上に降りかかる災厄とは————?

屍喰い蝶の島 プロローグ

 空を見上げれば、落ちてきそうなほどの星が頭上いっぱいに広がっている。  真冬の星の微かな光が、海の波間に霧雨のように降り注いでいる。  水平線ぎりぎりに浮かぶ下弦の月がまばゆく、微かな星の光を打ち消すように輝きながら、静かにさざめく波立つ水平線に映る。  照り返す光に海面が巨大な魚の鱗のように煌めき、その体表に小型漁船がたゆたう。  漁船の裸電球の明かりが月光と星の輝きのように、鈍重な闇の中にぼんやりと浮かび上がり、闇より濃い影を海面に作り出す。  その微かな光が

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屍喰い蝶の島 三月上旬

 文化人類学部の大学院に所属する夜須親寅は、民間俗信である『七人ミサキ』について書いた研究論文の提出が済み、気持ちも晴れ晴れとゼミの仲間を集めて、飲み会に興じていた。後は三月二十四日に開催される、研究論文発表会のスピーチを練習するくらいだ。  終電くらいの時間まで飲み屋で騒ぎ、そろそろお開きにしようかという空気になったとき、夜須のスマートフォンの着信音が鳴った。  こんな時間になんだ? と酔いも覚めやらぬいい心持ちで画面に目をやる。非通知なら出ない、と思っていたのだが、意

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屍喰い蝶の島 三月十九日 ①

 高知県宿毛市にある片島港から志々岐島への午後の定期便は十四時三十分の便しかなく、直行便を含め一日たったの往復二便であることに、夜須は正直驚きを隠せなかった。 「ド田舎じゃねぇか……」  陸の孤島ならぬ、まさに絶海の孤島である。片島港から沖の島を望めても、その向こう側にある志々岐島までは視界に入らない。  交野の言うとおり、シジキチョウが未確認の蝶だと確定しているわけではないし、宿毛市の志々岐島に関する言い伝えを調べても、御先様なる伝承は皆無だった。その代わり、隣の島、

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屍喰い蝶の島 三月十九日 ②

「御先様に遭うたら、海に牽かれるがよ。実際、毎年、碧の洞窟にひるこさんが上がるのよねぇ。家に籠もっちょったら、そがな目に遭わんき、和田津では外に出んわねぇ。やけんど観光客も増えてきたき、気にせん人もおるがよ。ほら、あそこのアクアマリンの店主も店を開けちゅーし。外から来た人は気にしちょらんわね」 「ねぇ」と女性ふたりは目配せし、「うちらは出ないわねぇ」と頷き合っている。そこに何か引っかかるものを感じたが、本当に信じているか判断しかねた。 「じゃあ、海に牽かれるのは迷信なんで

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ぐひんの山

「かんすさびを上手にできた子」「できない子」 主人公・陽菜は上手にできたおかげで蔵から出ることができた。 平良須(へらす)山の首つり鉄塔。限界集落に密かに伝わる話。 平良須山には人を喰うぐひん様がいらっしゃる。 首つり鉄塔を建てる前にあった祠には何が祀られていた? 蔵の木箱はなんのため? 祠跡に埋まっていた甕の中の犬の頭蓋骨と猿の骨。 それを掘り当てたとき、妹の弥生が神隠しに遭う。 生死も分からないまま、2年が経ち、陽菜を含む幼馴染み達はそれぞれ成功を収めていたが、次々と急死・変死・事故死してしまう。 一体陽菜たちに何が起こっているのか。 陽菜は突き動かされるように、自分の一族の秘密、平良須山の謎を解明しようとするが——。 ※ エブリスタ竹書房最恐小説大賞最終候補になった作品です。

ぐひんの山 序章

 夜明け前、玄関の上がり口で陽菜は体を縮こまらせて、磨りガラスの引き戸をじっと見つめ、何者かが去るのを待っていた。冬の寒さで結露した磨りガラスに、小さな手のあとが一つ付いている。  陽菜は息を潜め、声を押し殺す。昨夜の雪で空は曇り、山間の村だけに朝が遅い。夜が明けさえすれば、太陽の光で禍々しい気配はかき消されるのではないか。  どのくらい待ち続けただろう。遠くから軽トラのエンジン音が聞こえてきた。平良須山から麓にある饗庭村まで飛んできたハシボソカラスの鳴き声が、まるで悲鳴

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ぐひんの山 第一章 タイムカプセル ①

 細長い山間に民家が散らばるように点在している饗庭村を、峠の木々の隙間から望む。  陽菜は久しぶりに帰ってきた村を懐かしく思いながら、空色の軽自動車を運転している。植林された杉が残暑の日差しをほどよく遮っている。開け放たれた車窓から吹き抜けていく風が木陰に冷やされて涼しく感じられた。山独特の湿った土と立ち並ぶ木々の匂いが車内に舞い込んでくる。車窓から聞こえてくるツクツクボウシの鳴き声が鼓膜を震わせるほどうるさい。そのおかげか、陽菜は眠気に負けず起きていられる。  昨晩遅く

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ぐひんの山 第一章 タイムカプセル ②

 ふすまが優しくほとほとと叩かれる。 「陽菜、ごめんね。でも、遊びに来たいときはいつでもここに戻れるから」  母親が話しかけてくるのを、陽菜は無視した。陽菜一人で饗庭村に来られるわけがない。饗庭村のバスは一日に四本しかなく、陸の孤島と化している。車がないと病院にすら行けないほどだ。  饗庭村へ行くには都心部から数時間かかる。だから、母親が言う、いつでもというのは詭弁だと、幼心でも理解できた。  それに本当は陽菜にもわかっている。村を出るのは陽菜だけではないのだ。  

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ぐひんの山 第二章 癖山 ①

 青々とした木々から聞こえてくるミンミンゼミやアブラゼミの声が、古民家の広い庭に照りつける真夏日を、より一層際立たせている。縁側の雨戸と掃き出し窓を開け放った板間の囲炉裏に、陽に熱せられた風が吹き込んでくる。型式の古い三台の扇風機が、熱気をかき混ぜるように首を振る。  陽菜はレクリエーションで集った学生達のディスカッションを聞くでもなく、ぼんやりとしていた。  このまま就活をして就職するのか、または希望するテーマで論文を書き、大学院に進むか。そのことで今は頭がいっぱいだっ

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