修習生が弁護士になる話
弁護士事務所に入りたての蘭丸くんには問題があった。スーツだ。 蘭丸くんは163cmで華奢だから、市販の既製品だとどうしても丈が余る。修習生時代は裾上げで誤魔化していたらしいが、弁護士として法廷に立つならちゃんとしたのが要るようだ。 「信長様が伊勢丹のカード貸してくださったんです」 「え、太っ腹」 「『好きにしろ』って」 信長様は言葉が少ないけどこういうところで気前がいい。蘭丸くんの恩人。蘭丸くんが信長様の話をする時の目は、いつだってきらきらしている。 「ついてこう
私はよく国会図書館に行く。 フリーライターが一次資料を当たろうとすると、結局ここに辿り着く。Wikipediaの出典のない記述を検証するためだけに1973年の週刊明星を全部めくったこともある。こんな目的で国会図書館を使っていいのかは分からないが、使っている。 国会図書館というのは、日本国の非常に立派な施設であるにもかかわらず意外と簡単な手続きで使える。最初に行った時はペラ紙に住所氏名などを記入し、マイナンバーカードを見せて、説明をされて終わり。カードが発行されるので、2
その後、帰り道に宏洋さんにLINEした。 「付き合うことになった」 「やっと付き合ったの!? 遅いよ!! めりぴょんさんからLINE何回来たと思ってるの」 「うるさいな!!」 「で、どっちから告白したんすか」 「なんか……気づいたら付き合うことになってた」 「いやどういうこと?」 「ゴッドプロデューサーの話が出てきてさ」 「告白にゴッドプロデューサー!?」 「うん」 「……お似合いだよ。大事にした方がいいよ、ゴッドプロデューサーの話を真剣にしてくれる彼氏」 「私でいいのか
二回試験が終わった日、蘭丸くんから「終わりました」と連絡が来た。「おつかれさま!」と送ったら「ごはん、いつにしますか?」と返ってきた。 またしても初台デニーズで待ち合わせた。向かい合って座った蘭丸くんの顔を見た瞬間、突如として確信した。 ……この子は私を好きだ。絶対に。蘭丸くんが私を見る目の温度。メニュー選んでる私をぼんやり眺めてる横顔。「もえさん何飲みます?」の声のやわらかさ。なんか……全部出てる。 でも蘭丸くんは何も言わない。いつも通りメロンソーダを頼んで、試験の