見出し画像

【埼玉県秩父市】単身者の安否確認をLINEで自動化。孤独・孤立を日々見守る運用を、職員負担ほぼゼロで実現。

単身世帯の増加や働き方・生活様式の多様化により、家族・地域・職場での関係が希薄化し、孤独・孤立は幅広い世代で顕在化しています。
警察庁の集計によれば、2024年上半期(1〜6月)に自宅で死亡した一人暮らしの者は3万7,227人(警察取扱死体10万2,965体の36.2%)でした。このうち65歳未満は8,826人(23.7%)で、いわゆる「現役世代」でも一定の割合を占めています。こうした状況を受け、2024年4月1日に孤独・孤立対策推進法が施行されました。

秩父市ではこの法の要請に応じた施策の一つとして、2025年2月20日、LINEを用いた『単身者安否確認システム』を実装しました。単身者と見守り者にLINE公式アカウントに登録いただき、単身者の毎日ワンタップ応答と、未応答時のみ見守り者に自動通知する仕組みにより、日々の見守りを軽負担で実現しています。

図1:単身者安否確認メニュー

1. 自治体概要

人口:56,413人(2025年11月1日時点。秩父市HPより
友だち登録者数:48,685人(2025年11月7日時点)
主な機能:スポーツ施設予約、単身者安否確認システムなど
LINE ID:@chichibu_city

2. 取り組み詳細

2-1 制度的背景

孤独・孤立対策推進法の施行
2024年4月1日、「孤独・孤立対策推進法」が施行されました。

この法律は、「孤独・孤立の状態となることの予防」、「孤独・孤立の状態にある者への迅速かつ適切な支援」、「脱却に資する取組」を総合的に推進する枠組みを定めています(第1条)。
基本理念(第2条)は、例えば次の3点を掲げています。

  • 社会全体の課題としての推進:「社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ること。」(第2条第1項)

  • 状況に応じた継続的支援:「当事者等の状況に応じた支援が継続的に行われるようにすること。」(第2条第2項)

  • 当事者の意向尊重と社会参加の回復:「当事者等が…関わりを持つことにより…日常生活及び社会生活を…営むことができるように…支援。」(第2条第3項)

責務規定は次のとおりです。

  • 国の責務:「施策を策定し、及び実施する責務」(第3条)。

  • 地方公共団体の責務:基本理念にのっとり、国・他自治体と連携しつつ、区域内の当事者等の状況に応じた施策を策定し、及び実施(第4条)。

秩父市は、この法の要請に応える取組の一つとして、単身者の安否を日々確認し、未応答時のみ家族等へ知らせる仕組み(単身者安否確認システム)を2025年2月20日に導入しました。

2-2 秩父市における孤独・孤立対策

秩父市では、これまでも相談支援や地域による見守りなど、孤独・孤立への対応を段階的に整えてきました。今回、単身者安否確認システムを加えたことで、相談の場(居場所づくりサポートセンター)、地域の気づき(ふれあいコール)、日常の小さなサインをとらえる仕組み(単身者安否確認)の三つがそろい、法の基本理念(予防・継続的支援・当事者の意向尊重)に沿う体制の骨格が整いました。

1.居場所づくりサポートセンター

2024年4月1日から「秩父地域居場所づくりサポートセンター」を運営しています。満6歳以上の孤独・孤立状態にある方を対象に、相談支援や集いの場の提供を行っています。

2.「ふれあいコール」事業

2005年4月1日から高齢者等の見守りが必要な世帯を近隣が気づき合う「ふれあいコール」事業を行っています。隣近所同士で見守り、郵便物の滞留など異変を感じた際に、町会役員や民生委員へ連絡する仕組みです。

3.単身者安否確認システムの導入

2025年2月20日、LINEを用いた「単身者安否確認システム」を導入しました。相談の入口である居場所づくりサポートセンター、地域の気づきを活かすふれあいコールはいずれも有効な取り組みですが、自発的に相談しにくい場面、近隣関係やプライバシー配慮が必要な場面、平日夜間や外出中など定例の接点から外れやすい時間帯では支援が届きにくいことがあります。

本システムは、こうした間を埋める第三の接点として設計しました。
単身者と見守り者にLINE公式アカウントに登録いただき、単身者は毎日のワンタップで意思表示し、未応答時のみ家族などの見守り者に通知。

自己選択型で日常の操作の延長として無理なく続けられ、行政や近隣の関与を常時前面に出さずに、必要な瞬間だけ周囲が気づけます。既存の二つの取り組みと重なり合いながら、支援の網の目を細かくする補完策として位置づけています。

3. 工夫した点・特徴

  • 住民体験:毎朝ワンタップ、未応答のみ家族に通知

  • 運用負担:定常作業ほぼ無し。文面変更時のみ対応

図2:システムの概要

3-1 登録の流れ

本機能では個人情報を取得せず、登録番号と生年月日の照合のみで相互ひも付けを行います。

1.単身者登録

メニューから「単身者登録」フォームを起動します。
入力項目は生年月日のみです。
登録すると登録番号の通知が届きます。

図3:単身者登録 単身者登録が完了すると、登録番号が自動送信されます(右)

2.見守り者登録

メニューから「家族等(見守り者)登録」フォームを起動します。
見守り対象者(単身者)の登録番号(1-cで通知された番号)を入力します。
見守り対象者(単身者)の生年月日を入力します。この時、生年月日に誤りがあれば登録することは出来ません。
正しい生年月日を入力して「登録」ボタンをタップすると完了です。

図4:見守り者登録 見守り対象者の生年月日が不一致だと登録することができません(左)

3-2 メッセージ配信は全自動

1.単身者への配信(毎朝8時)

単身者へは、毎朝8時に自動でメッセージが配信されます。
単身者は、届いたメッセージのボタンを毎日タップします。

図5:単身者への配信(右・毎朝8時) 単身者はボタンをタップして応答します(左)

2.見守り者への連絡(未タップのみ、毎日12時)

単身者がボタンをタップしなかった時は、12時になると見守り者へ自動でメッセージが送られます。
メッセージのボタンをタップすると、単身者の直近の応答日時を確認する事ができます。

図6:見守り者へのアラートと直近の応答日時の確認

4. 結果

以下の実績はすべて対象期間を2025年2月20日〜2025年10月20日(243日)とします。

4-1 導入前後の比較

導入前:日次の安否確認の接点と未応答の自動検知は存在せず、継続的な観測もできませんでした。
導入後:毎朝8時に応答機会を自動生成し、12時に未応答のみ家族へ通知。応答29,417回、通知2,238件を観測しました。

表1:単身者安否確認システム導入前後の比較

4-2 配信・応答実績

1.登録者数
サービス開始から2025年10月20日までの見守り登録者数は103人です。

2.単身者の応答実績
単身者へ毎朝8時に配信されるメッセージのボタンをタップした回数は、累計で29,417回です。

3.見守り者への配信実績(未応答時の通知)
単身者が応答をしなかった際の見守り者への配信実績は、累計で2,238人(受信した見守り者の延べ人数)となりました。

表2:単身者の応答および見守り者への配信実績(2025/2/20〜2025/10/20)

注1:「単身者の応答実績」の集計には見守り者と未紐づきの単身者も含まれます。
注2:「見守り者への配信実績(未応答時の通知)」は、未応答が発生した際に実際に通知を受け取った見守り者の人数合計です(同一人物が複数日に受信した場合はその都度カウント)。

5. 職員コメント

今回のシステム導入に携わった、秩父市社会福祉課の上田様にインタビューをしました。

秩父市社会福祉課 上田様

このシステムを導入したきっかけを教えてください。

窓口で相談を受ける中で、自分から相談に来づらい方や、時間帯や近隣関係の事情でつながりにくい場面があると感じていました。
そこで、毎日ふだんの流れで軽く意思表示できる仕組みをもう一つ用意したい、というのが出発点です。
「毎日1回の応答」「未応答のときだけ家族等に届く」という形なら、利用する方の負担を増やさず、必要なときだけ状況を確かめられると考えました。

導入を決めてから、リリースまでどのくらい時間がかかりましたか?

導入を決めたのは2024年12月下旬ごろです。
リリースは2025年2月20日で、別に進めていた施設予約の公開日程に合わせました。準備そのものに2か月かかったわけではありません。
仕組み自体は、Bot Expressが提供しているパッケージをベースに必要な設定を少し加える程度で済み、数日で形になりました。あとはリッチメニューの整理、案内ページの作成、広報での周知などを行い、1〜2週間ほどで一連の準備は完了しています。

システムを運用する上で、職員にはどの程度の負担がありますか?

日々の運用負担はほぼありません。
登録は住民の方同士で行う仕組みですし、配信は自動です。文面の変更などがなければ特別な作業は発生しません。
窓口で必要な方にご紹介することはありますが、感謝の声をいただくことも多く、負担感は大きくないという実感です。

利用者からはどのような声を聞いていますか?

「こういう機能を待っていた」という声をいただいたことがあります。
家族でも毎日連絡し合うのは負担になることがあると思います。自動で無事が分かる点が、使いやすいと感じていただいているようです。

6. さいごに

今回の事例に触れ、住民を厚くケアすることは、市職員の負担増と必ずしも同義ではないということがよく分かりました。単身者安否確認のように、日々の小さな操作と自動配信を組み合わせれば、「あったらいいな」を軽い運用で形にすることができます。

また、秩父市様の意思決定と動きの早さも印象的でした。相談の現場で見えている課題に対して、必要最小限の仕組みをすっと置く。その姿勢が立ち上がりの速さにつながったのだと思います。
同様の課題に直面する自治体においても、同パッケージの適用で短期間の実装が可能です。まず小さく始めて、実情に合わせて整えていく。その進め方で伴走します。

今回ご紹介した機能はパッケージ化されているため、パートナー自治体であればテンプレートをインストールすることですぐに実装することができます。ご興味ある場合は、担当のパートナーサクセスマネージャーまでお問い合わせください。

<関連記事>


自治体の最新事例や新機能をLINEでお届け。製品デモも操作可能!