トモダチコレクション わくわく生活 - レビュー
化学実験のような面白さ
『シェンムー』や『バーチャファイター』など、数々の名作を生み出した元セガの伝説のゲームクリエイターの鈴木裕だが、最近はトラを飼い始めたらしい。まあ、あくまで『トモダチコレクション わくわく生活』(以下、わくわく生活)においての話だが。
私の島には友達や家族、憧れのゲームクリエイターに伝説の空手家、IGN JAPANのゲームライター、娘の小学校の教師などが住んでいる。自分で考えたMii(キャラクター)が、ひとつのコミュニティとして暮らしていく滑稽な過程を見守っていくことが、このゲームの醍醐味である。
「トモダチコレクション」は「ザ・シムズ」のように人間の生活をシミュレートしたゲームだが、同シリーズのような本格的なシミュレーションゲームというわけではない。キャラクタークリエイトで新しいMiiを誕生させた後は食べ物、お宝、服、家の内装など様々なプレゼントが渡せるが、1週間まったく食べ物を与えなかったとしても問題があるわけではないし、完全に放置しても基本的にはなんの問題もない。
Miiたちが勝手に暮らし、ゲームの舞台である島(私は「ムシパンパラダイス」と命名した)を歩き回り、ほかのMiiと交流して、友達を作ったり恋愛したりする。プレイヤーは彼らの運命を大きく左右する手助けを行うことができるが、本作の最大の魅力はそのコミュニティを観察するところにある。
観察はなぜ面白いのか? その答えはシンプルで、様々な要素を通してMiiやコミュニティに個性を付ける自由を与えられているからだ。
先述したキャラクタークリエイトはシリーズの過去作よりもはるかに自由度が高くなっており、髪・目・鼻・口などのパーツが増えていることはもちろん、フェイスペイントを使えば完全に自由に描ける。絵がうまければ想定している人物にそっくりなキャラクターが描けることはもちろん、動物や宇宙人など、人間以外の見た目をしたMiiも自由に作れるようになっている。現に、筆者も飼い犬のプリコを島の住人として迎えている。

キャラクターの見た目が完成すると、今度は声や性格の設定に入る。Miiたちは棒読みのロボットのようなしゃべり方をするのだが、声の高さやしゃべる速さなどを細かくチューニングできる。これが面倒な人にとってはいくつかのプリセットも用意されている。
性格は「行動」や「考え方」など、5つのパラメータを簡単に設定するだけで、16種類のパターンからひとつを当てはめられる。たったの16パターンでその人の性格を完璧に捉えることは難しいが、多くの場合は最も近いパターンが適用される。例えば、筆者のMiiはノリ系キラキラ型になったのだが、「直観と勢い重視、大ざっぱ。楽観的、熱しやすく冷めやすい」という性格になった。だいたいあっている気がするぞ! ……まあ、冷めやすくはなく、むしろプレイから四半世紀が経過してもまだ「シェンムー」と言っているのだが……。

作ったMiiの性格や見た目が「やっぱりちょっと違うな」と思ったら、いつでも編集できるのもありがたい。そうした柔軟性が「わくわく生活」を、失敗を恐れずに無茶のできるおもちゃ箱にしている。
Miiたちの個性の設定はキャラクタークリエイトが始まりに過ぎない。食べ物や服をプレゼントしたり、悩み事を解決してあげたりする過程で、Miiたちはレベルが上がっていく。悩み事は「お腹が空いた」、「〇〇と友達になりたい」、「家の内装を変えたい」といったシンプルなものばかりだが、レベルが上がるたびに、プレイヤーはMiiの個性をさらに強調できる特別なプレゼントを贈れる。「道具」、「プチ個性」、「口ぐせ」が主なプレゼントタイプだ。シリーズ過去作にもあった「道具」ではそのMiiの趣味や特技を表現できる。極真空手の創始者である大山倍達のMiiに「空手入門DVD」を渡すと、浜辺で稽古する光景が見られた。
「口ぐせ」を設定できるのも面白く、しかもどのタイミングでその口ぐせを使うかまで決められる。「話し始め」や「話し終わり」はかなり頻繁に聞けるようになるが、「寝言」、「怒ったとき」など、より珍しいシチュエーションにあわせた口ぐせも選べる。筆者はかなり真剣になり、ポッドキャスト番組「しゃべりすぎGAMER」の過去の回をこのために視聴して、フリーライターの福山幸司のMiiに「なんかね」や「んでさ」の口ぐせを与えた。レベルアップ時に口ぐせを選べばひとつだけプレゼントできるので、すべのシチュエーションに応じてそのMiiにふさわしい口ぐせを設定できるまではかなりの経験値を稼ぐ必要がある。
「わくわく生活」で新たに加わった「プチ個性」も、そのMiiのらしさにより近づく上で重要だ。「あいさつ」、「立ち方」、「歩き方」、「ご飯の食べ方」、「怒っているとき」、「表情」など、ジャンルごとに、よりそのMiiらしい振る舞いが選べるのだ。筆者(クラベ)のMiiも、今となっては十字を切りながら「押忍」と空手風の挨拶をするし、偉そうにしているつもりがないのについついクセで腕組みをして立つようになり、会話中にたまにまゆを上げるクセも再現されている。娘には「恥ずかしそうにもじもじする」仕草がぴったりだったし、選んでみるまでは気が付いていなかったが、鈴木裕は「ガニマタで立つ」がぴったりだった。

少し残念だったのは、同じジャンルの「口ぐせ」や「プチ個性」を複数プレゼントしていると、片方だけ採用されるようになること。福山氏ならたまには「なんかね」、別のときは「んでさ」と言ってもいいではないか。自分のMiiだって毎回「押忍」と派手に挨拶するだけでなく、たまには「首だけで挨拶」が採用されてもいい。同じジャンルであれば「どれを採用するか」は常に変更できるようになっているとはいえ、さらに柔軟性があるとなおうれしかった。
レベルアップを繰り返して、自分のMiiの個性を強くしていくと同時に、Miiたちがお互いに関係を持っていくのも「トモダチコレクション」の大事な部分だ。多くの場合、最初のきっかけは神様のような存在であるプレイヤー自身が作れる。Aボタンの長押しでMiiを持ち上げて、好きな位置に下ろすことができ、その付近に別のMiiがいれば交流が始まる。Miiたちが倒れてしまったり、しゃっくりになったりする場合も、別のMiiを運んで助けさせることで関係ができる。
とはいえ、プレイヤーがすべての運命を握っているわけではない。Miiたちが自発的に交流を始める場合もあるし、プレイヤーが引き合わせたのにも関わらず相手に感心が持てない場合もある。長身モデルのエカテリーナというMiiを誕生させ、コケてしまうと福山氏に助けさせることにしたのだが、エカテリーナは福山氏に一目ぼれした。猛烈に恋している彼女は一気に福山氏に告白したのだが、彼はエカテリーナにまったくの無関心だった。Miiたち同士の相性が、このようにユーモラスなシチュエーションを作り出してくれる。

こうしたMii同士の関係も、プレイヤーのインプットによって個性をつけられるようなっている。Miiが友達になろうとするとき、プレイヤーに「何の話をしたらいいか」と尋ねてくるのだが、話題を自由に入力できる。筆者のMiiが鈴木裕に接近するときは「シェンムー」の話をするように指示したのだが、これには相手が大喜びしてくれた。
友達や恋人の関係が成立すると、相手をどのように呼ぶのかも選べるようになる。筆者と鈴木裕の関係の場合、自分のMiiが相手を「裕さん」、彼は私を「クラベさん」と呼ぶようになった。相手をどのように呼ぶかだけでなく、他人に相手をどのように話すかまで決められるのは、かなり秀逸だ。例えば、娘に直接話すときはあだ名で呼ぶが、他人に娘のことを話すときは本名を使うといった、極めてリアルな人間関係を構築できるのだ。
Miiたちが友達や恋人といった関係になる前は敬語を使うが、仲が深まるとタメ口に変わる。ここも選択の余地があればさらによかった。大山倍達と友達になれたことはうれしいが、相手が敬語を使わなくなっても自分は最後まで使いたい。『トモダチコレクション わくわく生活』が世界に向けてリリースされたゲームであることを思えば、日本語及び日本文化に依存する設定がないのは仕方ないのかもしれないが、そもそも「敬語から始まり、タメ口に至る」という流れが存在する以上はあってもよかったように思う。

恋愛関係を結んだり、非常に親しくなったりすると同じ家で暮らせるようになるのも「わくわく生活」から導入された新要素だ。筆者は恋人とふたりの子供、それから愛犬プリコの5人で暮らすようになった。深夜、恋人が寝言を言いながらいびきをかき、自分が空手の蹴りを繰り出している間、1階でプリコがこっそりと冷蔵庫を開けて何かを食べている。ひとつの家庭で様々な動きがあるのは見守るだけでニヤニヤしてしまう。
しかし、筆者の恋人はいつのまにか福山氏とも仲良くなったのはいいが、旅行に出かけたときになぜか彼も同行していたのにはさすがに驚いてしまった。
友達や恋人になるときに話題を指定できるほか、「憧れの有名人」や「相手を喜ばせるための言葉」などをMiiたちに聞かれることがある。プレイヤーの回答はすべて「島のことば」として記録され、以降、Miiたちはありとあらゆるシチュエーションで自由自在に使うようになる。これもまた、笑うしかないシチュエーションを作り出す。
筆者と鈴木裕は街を歩きながら「歴史に残るゲームを作ること」について語っていたが、そこで福山氏が登場してマウントを取り始め、鈴木裕はあきらめて去って行った。

福山氏は鈴木裕に興味があるようで、別のタイミングでまた接近して、今度は「アドベンチャーゲームの歴史」について熱弁を始めた。しかし、鈴木裕はこれがまったく面白くなかったらしく、話を早めに切り上げて帰っていった。

Miiたちが「島のことば」を組み合わせるようになると、さらに面白くなっていく。「極真精神はかむかむレモンなしには語れないよね」といった危険なコンビネーションも覚悟が必要になるが、ときどき驚くほど的を得た発言にも繋がる。筆者の愛犬であるプリコが福山氏に「アドベンチャーゲームの歴史といえば、シェンムーですよね」と切り出したときは、しばらく笑いが止まらなかったほどだ。

ゲームをある程度進めると「アイテム工房」という施設がアンロックされ、ここでは自由に自分だけのアイテムを作れるようになる。従来のアイテムに近い「お宝」はもちろん、服から食べ物まで、ほとんどすべてのアイテムタイプが作れる。筆者はセガの名機ドリームキャストを作り、これをすべての住民に渡すようにしている。住民たちがドリームキャストを愛おしく眺める姿は見ていて微笑ましいし、「ドリームキャスト」も「島のことば」として頻繁に使われるようになっていった。

このように、『トモダチコレクション わくわく生活』は様々な機能でプレイヤーの想像力を促し、Miiたちや彼らが織りなすコミュニティの個性を捉えていくことがゲームの肝と言える。プレイヤーが意図的に設定した内容を、ゲーム側がランダムに解釈したり組み合わせたりする結果として生まれた滑稽な出来事を楽しむ。言ってみれば、化学実験のような面白さだ。そして、Miiたちを活かしたUIや可愛らしいBGMがそうした出来事を楽し気に飾り付けてくれる。
「Miiニュース」がその代表例で、鈴木裕が宇宙の天気予報を発表していたり、筆者にそっくりのトマトが育ったという不思議なニュースが聞けたりする。

Miiニュースは現実時間で1日に1回だけ新しいものが報道されるので、「わくわく生活」を長く楽しむための要素であることがわかる。しかし、「長く楽しむ想定」が「わくわく生活」の大きな問題にもなっていると感じた。
というのも、このゲームの本質である「自分の想像力でMiiとそのコミュニティーを捉えていくこと」は極めてシンプルな遊びだ。レベルを上げないとMiiたちに道具・口ぐせ・プチ個性を与えられないので、どんどん食べ物を与えたり悩み事を解決したりしていかないといけない。しかし、これらはかなり単調な作業だ。さらに、「願いのふんすい」では、島全体のランクを上げていかないと、そもそも一部の道具やプチ個性がアンロックされないシステムにもなっている。Miiたちの願いを聞いたり、プレゼントしたりすると「気持ち玉」が集まり、「願いのふんすい」に捧げることで島のランクを上げていく。これも実質レベル上げのようなシステムだ。ランクが上がるとMiiのレベルアップ時の選択肢を増やせる以外にも、様々なスポットへ旅行できるようになったり、リフォーム屋さんで買える内装を増やしてもらったりできるので、最初は「どんどんできることが増えていいね」という感想だった。
しかし、ゲームを長くプレイすると、Miiのレベルアップも島全体のランク上げも、シンプルなゲーム内容にマッチしていないと思うようになった。「大山倍達に『空手入門DVD』をプレゼントしたいが、ランク16にならないとDVDが手に入らない」といった問題がプレイヤーの想像力を不必要に制限しているように思えたのだ。
結果として、本作を長くプレイしていればプレイしているほど、シミュレーションゲームよりもレベル上げを強制するRPGに近い感覚になる。Miiのレベルアップは、ほしい武器や防具のために無能なザコ戦を繰り返す体験とあまり変わらないからだ。「ザコ戦」が「Miiに食べ物を与える」に置き換わっており、「武器や防具」の代わりに「プチ個性や口ぐせ」が手に入るだけだ。
「道具」や「プチ個性」が徐々にアンロックされる過程にポジティブな側面があるとすれば、それに合わせて「こんなMiiを作ろう」という新しいきっかけを作り出してくれることだ。10時間以上プレイして「お絵描きセット」という道具をアンロックして、それなら娘の絵描き教室の先生を作ってみようと思い立ったのだ。
「わくわく生活」の大きな新要素として、Miiたちの住んでいる島をカスタマイズできるようになった。「島作り」というモードに入ると島の地面を自由に変えられるようになることはもちろん、木・植物・ベンチ・自動販売機など様々なオブジェクトも配置できるようになる。地面の種類や配置できるオブジェクトもゲームの進行とあわせてどんどん増えていく。レストランや観覧車といった施設はもちろん、それぞれのMiiの家も好きなところに配置できる。Miiたちが島を自由に歩き、プレイヤーの用意した環境とインタラクションできるようになったことはうれしい。一方で、「島作り」自体はシンプルな内容で、ほかのスローライフゲームや本格的なシミュレーションゲームの奥深さには到底かなわない。そもそも、人間とそのコミュニティーに個性をつけていく体験である「トモダチコレクション」に島をカスタマイズするという遊びは必要なのだろうか。もちろん、あって困るものじゃないし、一部のユーザーにとっては夢中になる要素だろう。一方で、すでに『ぽこ あ ポケモン』や『スターサンド・アイランド』に『あつまれ どうぶつの森』のアップデートで十分すぎるほどに「島のカスタマイズ」を満喫した筆者にとっては、できる限り無視したい要素だった。幸い、「わくわく生活」が島作りを強制してくることはほとんどないし、放置しているとMiiたちから提案される内容に「うん」と答えるだけでもなんとかなる。
しかし、「島作り」というほかのゲームがもっと力を入れている要素にリソースを割くことは、スローライフゲーム激戦区である2026年において正解なのかといえば、疑問が残る。すでに多くのメディアが指摘している通り、Miiたちのやりとりはパターンが多いとは言えず、10時間も遊べば既視感が出てしまう。「押忍」のあいさつや「空手入門DVD」など、たまたま空手要素が充実していたことは筆者にとって好都合だったが、もっといろんな趣味に対応した道具やプチ個性がほしいところ。そうしたバリエーションが不足しているのに、ありふれた島をカスタマイズするモードが実装されたことはどうも本末転倒に感じてしまう。
それでも、個性的なMiiとそのコミュニティを作り出すというユニークな体験は間違いなく魅力的だし、「プチ個性」や「島のことば」といったクレバーな新要素のおかげで間違いなくレベルアップしている。それだけに、島での出来事をシェアする機能を制限するという任天堂の方針を残念に思う人も多いだろう。Miiやアイテム工房で作ったアイテムのシェアは不可能に近く、スクリーンショットをスマートフォンにアップロードするNintendo Switchの機能も使えないようになっている。自分でたくさんのMiiを作るのが面倒で、ネット上にアップされたほかのプレイヤーによるMiiを積極的に使いたいタイプのプレイヤーにとってはかなりハードルが上がるだろう。筆者は自分でMiiを作るのが好きなタイプだし、Switchをパソコンに繋いで画像をアップロードする行程には元々慣れているので、個人的にはこの制限にあまり困っていないのだが。
長所
- 笑うしかないシチュエーションが満載
- 各Miiの「らしさ」を実現できる
- 個性あふれるコミュニティが作れる
- 「プチ個性」や「島のことば」などの新システムが秀逸
短所
- レベル上げが単調になりやすい
- シェアする機能が制限されている
- シチュエーションのパターンが少なめ
総評
『トモダチコレクション わくわく生活』はプレイヤーの想像力とゲーム側の勝手な解釈によって、思わず笑ってしまうような偶然の産物が作り出される化学実験のような体験だ。「プチ個性」や「島のことば」といった新システムによってシリーズが本質的に持つ魅力は間違いなくレベルアップしているが、そのプレイループにRPG的な経験値稼ぎを持ち込むことで損している。シェア機能が制限されていることは残念だが、スローライフゲームが充実している2026年においても本作の個性がひときわ目立っていることは変わらない。
『トモダチコレクション わくわく生活』レビュー RPGのようなレベル上げは面倒だが、個性あふれるコミュニティを作れる体験は秀逸
