『プラグマタ』をSwitch 2でクリアした感想――開発地獄を感じさせない完成度とコンパクトな面白さ
それでも開発者の執念が見え隠れする
今から6年前、PS5発売前のショーケース「THE FUTURE OF GAMING SHOW」でカプコンによる新規IP『プラグマタ』の映像を初めて見たとき、まさか任天堂のゲーム機でこれをプレイすることになるとは思わなかった。
『プラグマタ』は幾度も延期を繰り返し、ここ6年はゲームを取り巻くシーンも大きく変化した。それこそ、2026年現在はすでにNintendo Switch 2の発売から1年が経とうとしている。カプコンは今年2月にも『バイオハザード レクイエム』というAAAタイトルをSwitch 2に対応させ、他機種と比べてほぼ遜色のない体験が人々を驚かせた。
『プラグマタ』を約11時間でクリアした今、まずは本作のSwitch 2版も同様のクオリティーに仕上がっていることを報告したい。グラフィックスが魅力的であることはもちろん、フレームレートもごく一部の場面を除いて安定していた。筆者はPS5版も少し遊んでおり、ヒロインの髪の毛のディテールなどに大きな差があることは一目瞭然だったが、体験そのものに差はないと感じた。
『プラグマタ』では月面施設の調査を任命されたシステム監査員のヒュー・ウィリアムズがアンドロイドの少女と出会い、ふたりで地球への帰還を目指すストーリーが展開される。ヒューはこの少女をディアナと名づけ、数多のロボットと戦闘を繰り広げながらふたりの間に絆ができる。いわゆるバディものである。
戦闘はヒューによるシューティングとディアナのハッキングから構成されており、プレイヤーはこのふたつを交互に(というか、ほぼ同時に)行っていく。ハッキングに成功して敵の装甲を解除しないとほぼダメージが通らないので、いきなり撃ちに行ってもまず倒せない。ハッキングはカーソルでマスの上を進みながらゴールを目指すという、至ってシンプルな内容だ。しかし、敵の攻撃や接近を気にしながら行うのでマルチタスク独特の緊張感がああり、「ハッキング」を終わらせてすぐに「シューティング」に移る独特なプレイループが生み出されている。
カプコンの底力
SF、バディもの、マルチタスクなど、『プラグマタ』は新規IPにふさわしく、カプコンの既存タイトルにはなかった試みがたくさん施されている。ビジュアルや世界観だけでなく、ゲームプレイも「バイオハザード」や「モンスターハンター」とは明白に異なり、それでいて同程度の水準に到達していた。
ゲーム開発にかかる費用と時間が年々肥大化し、新作の延期や発売中止が目立っている昨今、カプコンは安定したペースで高水準のゲームを展開し続けている数少ないメーカーとして知られている。その秘訣とはなんだろうか?
「バイオハザード」シリーズを例に見ていくと、AAAのビジュアルとプレイフィールを提供しながら、実はほぼリニアで10時間程度でクリアできるという、コンパクトな作りになっていることがわかる。
何度も延期を繰り返し、発表から6年もかかった『プラグマタ』はカプコンとしては珍しく、野心的すぎて収拾がつかなくなってしまったのだろう、と筆者は思っていた。しかし、蓋を開けてみると本作もコンパクトにまとまった作りで、丁寧に磨かれたゲームがそこにあった。開発陣は以前のインタビューに「(コンセプトの)実現が難しくて、システムの根本的な見直しを何度も」行ったと発言しているが、そうしたいわゆる開発地獄を乗り越えたゲームとは思えない。
クリア後にアナウンストレーラーを見直すと、当初はまったく違うゲームだったことがわかり、様々な試行錯誤があったことは想像に難くない。それでも最終的に洗練されたゲーム体験に落とし込むところに、カプコンの底力を見た。
「ちゃんと最後まで面白い」と感じたアクションゲーム
『プラグマタ』はアクションアドベンチャーというジャンルを銘打っているが、『バイオハザード レクイエム』が6割アクションだとすれば、本作ではアクションの比重が8割くらいになっている印象で、より純粋なアクションゲームに近い体験と言えるだろう。
プレイヤーの拠点となるシェルターから「トラム」という乗り物に乗って、月面施設の様々なロケーションを訪れ、それぞれステージとして機能している。進行方向は常にスキャンでわかるようになっているのでマップは不要。道中に簡単なパズルこそあるが、戦闘以外はジャンプ・ホバリング・ショートダッシュから構成されるヒューの機動力を活かしたプラットフォームアクションが多い印象だ。一部隠されたアイテムや任意のエリアがあることを除けばリニアなステージで、プレイ時間の大半はロボットたち対戦することになる。
筆者は純粋なアクションゲームがあまり好みではなく、特にゲームの後半では同じアクションの繰り返しに疲弊してしまうタイプだ。そんな筆者にとって『プラグマタ』は「ちゃんと最後まで面白い」と感じた数少ないアクションゲームのひとつとなった。

ニューヨークのような都市から森林まで、ステージごとに見た目が激しく異なるのはもちろん、施設の外に出て重力が変わる場面や、巨大なミミズのロボットを避けて進むエリアなどもあり、ロケーションごとに異なるプレイフィールを届けることにも成功している。
もちろん、ステージごとに新しい敵のタイプも登場し、合わせてヒューの使える武器も増えていく。本作は通常の武器のほか、大ダメージを与える強力な武器や敵の動きを封じるなど補助的なニュアンスの強い武器が存在する。通常の武器以外は「使い捨て」のシステムを採用しており、弾がなくなった時点で消える。その分、ステージ上に新しい武器がすぐにまた出現する。このシステムのおかげで、普段は同じ武器に固執してしまうクセのある筆者でも、より多くの武器タイプを積極的に使うようになった。

ハッキングも、単純なパズルでありながら適度に変化する。マスが多かったり、通行不能のマスがあったりしてゴールにたどり着くのが大変な敵。触れるだけでやりなおしになるエラーマス、複数回入力しないと通り抜けないマス、一定時間のみ通過可能になるマスなども。
敵の奇襲に遭い、素早くハッキングしないと大ダメージを喰らうなど、ハッキングは演出としても巧妙に取り入れられている。
「ノード」と呼ばれる特殊マスの存在も大きい。ノードのマスを通過してからゴールに到達すると、そのノードの効果が発揮されるという仕組みだ。序盤では「デコード」という、ダメージを上昇させる単純なノードしかないが、これもゲームを進める過程で、一気に複数の敵をハッキングできる「マルチハック」や、HPを回復できる「ドレイン」など様々なものが使えるようになる。
ノードも武器と同様の使い捨てシステムが採用されており、その場で拾ったものを積極的に使う立ち回りが必要になる結果、同じ敵タイプでも様々な展開が偶発的に生まれる。
遠くからスティッキーボムという補助武器でハッキング時に出現するマスを減らし、接近される直前に動きを封じる「フリーズ」のノードを使ってハッキングし、当て続けると徐々に威力が上がる「フォトンレーザー」という武器で仕留める。
ステイシスネットで一体の敵を拘束し、別の敵を「コンフューズ」のノードでハッキングして同士討ちを仕掛け、自分は遠くからマルチロックオンできる強力な「ホーミングミサイル」を放つ。
このように、その場で拾った武器やノードをクリエイティブに組み合わせ、敵をやっつけるたびに「俺は最強だ!」という感覚が味わえた。
特に好きだったのは「クリティカルダウン」という、敵をダウンさせて近接攻撃ができるノードだ。ハッキングを成功させないと戦う術がないという本作の性質上、どうしても逃げ回りながら戦うことになるが、だからこそ最後に「クリティカルダウン」で接近してとどめを刺せるのが気持ちいい。
敵の種類はそれほど多くはないが、その分、自分の成長が実感しやすかった。一対複数のシチュエーションが多く、うまく逃げ回りながら与えられた武器やノードを活用してスキを作っていく。あまりTPSに慣れていないためか、筆者は最初こそ苦労し、序盤のステージの特定の場面で何度もゲームオーバーになった。それを克服して、徐々に大勢の敵との戦闘にも対応できるようになる成長過程がわかりやすかった。
もっとも、自分の成長と同等かそれ以上に、ヒューの体力や武器にノードの強化、回復アイテムの数などもどんどん増やしていけるので、それで楽になったことも大きい。本格的なRPGのようにビルドを組む自由こそないものの、モジュールという様々なバフ効果の得られるアクセサリーもあるし、戦いを楽にしていける手段には事欠かない。現に、繰り返しゲームオーバーになった序盤のステージの場面を突破したあと、筆者は一度もゲームオーバーにならなかった。
各ステージの途中にはシェルターに戻れる「エスケープハッチ」があり、実質チェックポイントとして機能している。しかし、その場では体力や回復アイテムの補充をしてくれず、一旦シェルターに戻る必要がある。特にシェルターへ行きたいわけではないのに、補充目的でわざわざシェルターとステージの行き来をさせられ、冒険の流れを悪くしている。
筆者はこれが徐々に面倒になり、ゲームの後半からは用がなければシェルダーへ戻らず、限られた体力でもゴリ押しで突破することが増えた。そのせいで何度も危うい場面に遭遇し、体力がゼロに近い状態で大勢の敵と戦う羽目になった。回復アイテムの補充が手間でなければこんな目に遭わずに済んだわけだが、言い換えれば面倒なシステムのおかげで最後まで緊迫感あふれる戦闘を楽しめたとも言える。まあ、あくまで結果論でしかないが……。
しかし、なぜわざわざシェルターに戻らないと補充させてくれないのだろう? おそらくは、シェルターでディアナと会話してほしいからだと思う。
親子のようなヒューとディアナの絆
シェルターではいつでもディアナに話しかけられるようになっており、ステージの途中の出来事についてもヒューと感想を語り合ってくれる。つまるところ、ステージの途中でしか発生しない会話がたくさんあるわけだ。そして、ディアナとヒューの会話は聞く価値のあるものが多い。
ディアナはアンドロイドなのになぜ魂が宿ったかのような振る舞いをするのか? 人間とアンドロイドは共存できるのか? こうしたシリアスなSFテーマはそこまで描かれないが、大人の男性と可愛らしい少女の絆を描く、一風変わった親子物語としてはしっかりと成立している。
月面施設しか知らないディアナは、地球について知りたがっており、ステージには「アースメモリー(地球の記憶)」と呼ばれるアイテムが隠されている。「水鉄砲」、「ブラウン管」、「ブランコ」、「滑り台」といったアースメモリーをディアナにプレゼントすると、シェルターに置かれるようになる。ディアナはこれらで遊ぶようになり、ヒューはそれらに対する思い出などを語ってくれる。
「ふたりは無事に地球に戻れるのか?」という結末よりも、ヒューがディアナに教えてくれる地球についての細々とした情報が一つひとつ味わい深い。というのも、ヒューが地球について教えてくれるとき、必ず「自分にとっての地球」というフィルターが通されるからだ。「海」について話せば、自分が海の近くで育ったこと、悩み事があるときはひと泳ぎして忘れるようにしていたことを教えてくれる。「虫取り網」については蛇を捕まえたこともあることを打ち明け、ディアナがドン引きするといった些細なエピソードも、ヒューというキャラクターの人間味に貢献している。
テレビゲームの主人公キャラクターの多くは、自分の親についてあまり話さない。カプコンのゲームにしても、リュウやレオンの親がどういう存在なのかはよくわからない。『バイオハザード レクイエム』ではグレースこそ母親との関係が描かれているが、それが彼女という人間にどのような影響を与えたか、結局はよくわからない。ところが、ヒューは両親について「好きなことや夢のためならなんでもやっていいと言ってくれる人たちだった」といった発言をし、ディアナは「ヒューと似ているね」と反応する。ちょっとした会話だが、これによってヒューはロボットを滅多打ちにするスーパーヒーローじゃなくて、生身の人間であることが伝わる。
『プラグマタ』はアクションゲームでありながら、ディアナというアンドロイド少女とふたりで冒険していくことが重要なポイントだ。ふたりは能力も知識も異なり、平等な関係として描かれる一方で、ヒューが幼い少女であるディアナの親代わりのような存在になっていく側面も否めない。だからこそ、ヒュー自身の故郷や親といった情報に意味があり、それらを会話の節々に溶け込ませることでディアナとの新たな関係が徐々に成立していく様は、本作のストーリーテリングの最大の快挙と言えるだろう。
月面施設を歩きながら、ふたりは様々なものを見て、思いを馳せていく。ステージで発見できる文献やログについても、ふたりは話し合う。一緒に謎を解き、数多のロボットと戦い、その過程で深い友情で結ばれていく。『プラグマタ』はユニークなアクションゲームでありながら、バディものとしてもしっかりと成功している。
どんなに大きな困難があっても、このふたりの物語だけは必ず描きたい。コンパクトで安定感のある面白さを提供しながら、「開発地獄を乗り越えてでもディアナとヒューを見せたい」という、そんな執念も確かに感じられる作品だった。
『プラグマタ』はPS5/Xbox Series X/PC向けには4月17日、Nintendo Switch 2向けには4月24日に発売予定だ。
