ビデオゲームのジャンルは「不確かな羅針盤」、『プラグマタ』はシューターかアクションかを起点にあやふやさを捉える

ビデオゲームのジャンルにおける流動性

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カプコンの完全新規タイトルとして注目を集めている『プラグマタ』。これを遊んでいたところ、「もしかするとこのゲームはアクションゲームではないか?」と思うようになっていった。公式サイトを見てみると、確かにジャンルとしては「SFアクションアドベンチャー」と書かれている。

ただし、ゲームメディアなどではシューターとして取り扱われていることが多く、Steamのタグにもサードパーソンシューターとある。やはり、シューターとして見る向きもあるようだ。

はたしてこれはどういうことだろうか? そもそもビデオゲームを語るとき、ジャンルは必要不可欠でありながらもあやふやでよくわからないのである。

これを掘り下げて考えてみるに、ジャンルとは「棚に入れるための道具」であり、それ以上でもそれ以下でもないのではないか。

ジャンル名がユーザーの姿勢を変えうる

『プラグマタ』(2026年)

そもそも「ビデオゲームのジャンルなどが重要か?」という意見もありうる。ビデオゲームのジャンルは誰かが明確に決めたものではないことも多く、単なる言葉遊びとも言えそうだ。

ただ、ジャンル表記はかなり重要である。人間は印象に引きずられる生き物だからだ。

たとえば、赤いかき氷はイチゴ味だろうか? 残念ながら安いシロップはあまり味に差がなく、見た目による印象が大きい。それでも緑ならメロン味に思えるし、青いとブルーハワイ味に感じられるのだ。(ところでブルーハワイ味ってなんだ?)

『Days Gone』(2022年)

筆者は『Days Gone』という作品で印象深い体験をした。本作は「ゾンビがたくさん出るオープンワールドもの」と宣伝されていたのだが、実際に遊んでみると実はバイクおよびバイカーのゲームだったのである。

ゾンビを期待していた者としては肩透かしとしか言えず、後者だと知っていればより楽しめた可能性がある。あるいは、そもそも手を出さなかったのかもしれない。

『Days Gone』においてはプロモーションの都合、より多くの人に購入してもらうために「バイカーものオープンワールド」とは宣伝しなかったのだろう。ジャンルは宣伝の都合のために歪められることもありうる。

また、そのビデオゲーム作品がどういうものか伝える際に、ジャンル名を使わざるを得ない部分がある。ゲームメディアやライターの仕事は、新しい作品がどういうジャンルに位置しており、かつどういった遊びを提供しているのか伝えることにある。その際にジャンルで伝えることはとても有効な手段だ。

「バイオハザード」はホラー? アクション? シューター?

『バイオハザード レクイエム』(2026年)

さて、実は曖昧なジャンルは身近にかなりたくさんある。

同じくカプコンの「バイオハザード」シリーズもよくわからない。これはアクションゲームともいえるし、三人称視点シューターともいえる。ちなみに公式ジャンル呼称は「サバイバルホラー」であり、ますますややこしい。

なぜこうなるのかといえば、ビデオゲームにおいてはデザイン(仕様)がジャンルになりうるからだ。

広大な世界をシームレスに自由に冒険できる「オープンワールド」は、本来であればゲームデザインの話である。世界がそういう形で作られているといった仕様の話に過ぎない。ところが、「オープンワールドもの」というジャンルはありうる。

「バイオハザード」シリーズは、体術の無敵時間で敵をやり過ごすなどアクションゲームに近い部分もあり、一方で敵を撃つシステムは三人称視点シューターであり、同時に恐怖を演出するホラーでもある。

『バイオハザード レクイエム』(2026年)

ビデオゲームは複数のジャンルを兼ねているケースもあり、ゆえにデザインからのジャンル指定が難しい側面もあるだろう。『バイオハザード レクイエム』を見てみればわかるが、この作品は一人称視点と三人称視点を切り替えられる。片方の主人公はシューターに近く、もう片方はホラーに寄っている。

あるいは『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』にはダメージを受けないキャラクターがいるなど、アクションゲームから「アクションを活用してやられないようにステージを攻略する」という根本的な概念すら取り除くことすらできる。ビデオゲームのデザイン、あるいは仕様は、ものによっては変更可能なのだ。

『プラグマタ』はオフィシャルが言うジャンルとしてはSFアクションアドベンチャーであり、デザインとしては三人称視点シューターが採用されており、そこをどう解釈するかによるのだろう。

一口にオープンワールドといっても目指す方向はいろいろ

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)

ビデオゲームのデザインがジャンルとして捉えられるのは十分にありうるが、これにはいくつか難点がある。

たとえば『ゼルダの伝説』も『マインクラフト』も『The Elder Scrolls V: Skyrim』もすべてオープンワールドものといえる。ただし、どれも体験できる遊びは異なる。

これについて印象深いエピソードがある。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はオープンワールドものといえるが、公式にはオープンエアーと呼ばれているのだ。

宮本茂の発言を参照すると、通常のオープンワールドは「物語のための舞台」であり、一方で『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は「探検・冒険と融合した遊びの舞台」を作ったのであり、ゆえにオープンエアーと呼んでいるらしい。

つまり同一、あるいは似たデザイン(仕様)であったとしても、ビデオゲーム作品が描こうとするものは異なるわけだ。

この例を見ると、ゲームのデザインをジャンルにするのも、あるいは既存のジャンル名に当てはめようとするのも、明確に何かの作品から大きな影響を受けたタイトル以外においては難しいように思える。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)

RPGにしてもいろいろな方向性がある。ロールプレイする遊びもあれば、経験値を貯めて育成する遊びもあり、長いストーリーを楽しむ遊びもRPGの醍醐味のひとつだろう。あるいは、それら複数を拾う作品もある。

それらとは異なるものを生み出そうとするRPGもあるわけで、それを一緒くたに“RPG”としてよいのかは難しいところである。特にビデオゲームは(いまのところ)新しいものが生まれやすい文化だ。

とはいえ、わかりやすく説明するにおいては既存のジャンル、あるいはデザインと似ているからこうだと書くのが楽だし、何より明らかに伝わりやすい。ジャンル指定を避け、話をむやみに複雑にすると、読まれなくなるリスクばかりが上がる。

ちなみに、最も伝わりやすいのは「〇〇ライク」、つまり何かに似ていると書くことだ。この表記には文句がつけられやすいし、個人的にも思うところがある。ところが、見出しすら読まれるか危ういインターネット時代には適した表記とすらいえる。

ジャンルはざっくりとした方向表示に過ぎない

『プラグマタ』(2026年)

結局のところ、ビデオゲームのジャンルは流動的なものなのだろう。誰かが宣伝で言いふらしてそれが固定観念になることもあれば、ユーザーの間で自然発生するケースもあるだろうし、あるいはジャーナリストが定義したものがヒットすることもあろう。

任天堂が『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をオープンエアーと呼ぼうとも、ユーザーがその呼称を使うとは限らない。というよりむしろ、だいたいオープンワールドと呼ばれている気がする。

「ハクスラ」は地域によって意味合いが変わる危険すぎる言葉だし、新しいビデオゲームがこれまでと違うものを表現しようとしているのであれば、既存のジャンルに収める必要はない。しかしながら、他人にどういうビデオゲームかを伝えるうえでジャンルは避けて通れないわけである。

つまるところ、ジャンルやデザインで作品を指し示すことは、まち針のような“仮のもの”でしかないのだろう。あるいは、ビデオゲームを売るため・伝えるために、既存の棚に入れるような行為だといえる。

となるとやはり、「そのビデオゲーム作品が描こうとしたものは何か」を語るのが肝要なのではないか。そもそもビデオゲームを遊ぶ行為は、その作品をどう解釈するかという(どの棚に入れるべきか、入れないべきか思考する)行為ではないか? とすら考えられる。

これは何もゲームライターに限った話ではない。カジュアルに遊ぶプレイヤーであろうとも、宣伝・口コミ・ストア説明文などから何かを想像してビデオゲームを手にとり、期待に沿う作品なのかを吟味し、おもしろいかどうか判断しプレイし続けるか否かを決める。それをアウトプットするかどうか、意識的かどうかといった違いはあれど、ビデオゲームを遊び解釈する行為はゲーマーにとって普遍である。

そうなるとやはり「『プラグマタ』はむしろアクションゲームではないか?」というのが持論なのだが、これに関しては筆者の力及ばず編集部判断で記事を掲載しないことになったので、ひとまずビデオゲームにおけるジャンルの流動性の話として筆を置くことにしよう。

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