なぜ『アストロボット』のステージはおもしろいのか?レベルデザインのための30のテクニック【CEDEC 2025】

『アストロボット』をおもしろくする30の気配り

なぜ『アストロボット』のステージはおもしろいのか?レベルデザインのための30のテクニック【CEDEC 2025】
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The Game Awardsの2024年のゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いた『アストロボット』(レビュー)にはさまざまな長所がある。そのなかでも、わかりやすくて楽しくて驚きがあるといった部分はかなり重要であろう。

ゲーム開発者が集まるカンファレンス「CEDEC 2025」にて、『アストロボット』のレベルデザインがいかに作られたのか、つまり遊びやすさの秘密が明らかになる講演「『アストロボット』 テンポ良く遊べる3Dレベルデザイン」が実施された。そのレポートをお届けする。

登壇者であるSIEの矢徳浩章氏。
登壇者であるSIEの矢徳浩章氏。

なお、この講演におけるレベルデザインは「ステージを作る計画を立て、実際に地形を作ってオブジェクトを配置し、体験をユーザーに届ける」といった定義となる。

また、ステージの中の要素を流れるように新鮮な気持ちで遊べることを「よいテンポ」と表現している。よいテンポのレベルデザインを作る方法を30の項目にまとめて紹介が行われた。

レベルデザインのスタートは「準備」から

レベルデザインのスタート地点は「よい素材を見つけてから調理する」となる。

たとえば料理においては、よい素材を見つければどんな料理を作るのかイメージしやすい。ゲームにおいてはゲームプレイ、テクノロジー、アート、サウンドが素材にあたり、その部分を見つけさえすれば完成形も想像しやすいわけだ。

本作においては、DualSense ワイヤレスコントローラーの特殊な振動を活用した気持ちいい体験があるかどうか探した結果、スポンジを絞る感触がよいと判明した。

これをアクションゲームの素材にするために、プレイヤーキャラクターをスポンジにして水を吸って巨大化するといった仕組みを作る。自然と周囲には水がある場所が必要になってくるし、水があるならばそれをかける対象が必要……と、ステージが組み上がっていくわけだ。

ふたつめは「アイデアを集めて試す」。アイデアを集める際にはブレインストーミングも効果的で、本作ではチームメンバーがポストイットに絵でアイデアを表現するといった手法がとられた。

集めたアイデアのなかからよさそうなものをもとに、試しにレベルを設計する。雪玉を使ってシークレットゴールを見つけるといったアイデアは、感触がよく製品版でも採用されている。

続いては「目的を明確にする」である。これまで集めた素材とアイデアをもとに、ユニークなゲームプレイとユニークなアートテーマを作ることになる。

ゲーム全体のバランスも重要で、似たようなゲームプレイやアートテーマがないように気を使っている。全体を考慮してどのような個々のステージを作るのか、まずは明確にしておく必要がある。

いざ作り始めるときには、まず「スタートからゴールまで計画する」。

本作では、一枚の紙にステージをスタートからゴールまで描き、ステージの広さ、外側はどうなっているか、ゴールへの方向はどうなっているか、どんな敵がいるのか、どういう体験があるのかを記していく。

これは細かい設計図ではなく、概要を決めたあとは実際に作りながら修正を行っていくという。

ルートをわかりやすくして、曖昧さをなくす

ここからはジオメトリ編に突入。まずは「メインパスをわかりやすくする」ことがポイントとなる。

メインパスは中心となる道筋であり、これがわかりにくいと前述したテンポのよさが失われてしまう。また、メインパスや目的地がわかりやすいとプレイヤーも寄り道しやすい。

水中の広いステージのような場合、鎖につながれたヒトデを配置することにより、それを助けることが主目的であるとわかりやすい。かつ、残りの鎖によって行くべき場所も伝わるわけだ。

そして「曖昧さをなくす」ことも重要だ。たとえば段差の高さをほどよくして綺麗な面を設置すると、そこでジャンプが必要かどうかといったことがプレイヤーに伝わりやすい。

あるいは、ゲームプレイのエリアと遠景を色を変えるといった手法もある。これによりプレイヤーが遠くに間違えて行くことがなくなる。

ほかにも、不要な装飾で混乱を招かないようにするのもポイントだ。地面も綺麗に整理しておき、壁も登れないのがすぐにわかるようにしておくと、混乱が起こりづらい。

「進行方向を見失わないようにする」のも重要で、これはゴールにランドマークを置くと効果的になる。目的地が明確になっているとプレイヤーの安心感も生まれる。

3Dアクションゲームにおいては「奥行きをわかりやすくする」のは必須といえよう。カメラの位置によっては、近くにあると思った足場が遠いこともしばしば起こる。

そこで本作では、同じ形、同じサイズのものを連続して置くことを心がけているそうだ。また、飛び渡る足場は入口と出口の横幅のサイズを同じくすると、高さ・角度が変わってもそこが通れるとわかりやすい。

続いての「移動パスを想定して地形を作る」も重要だ。プレイヤーに移動してほしいルートを想定して、それに合わせて地形も同じような形にするのである。

そのルートにさまざまなマテリアルの地形を用意しておくと、ハプティックフィードバックによってプレイヤーにいろいろな情報が与えられ、リズムがよくなる。

テンポよく、気持ちよくプレイできる細かなこだわり

次はレイアウト編となる。最初は「移動パスを想定して配置する」というものだ。先にプレイヤーの移動に合わせて地形を変えると言っていたように、敵や物の配置も同様である。

たとえば飛び越える段差の途中にアイテムを配置すると、その段差の広さを活かせる。さらにアイテムを取得してから右へ移動するので、左スティックを切り替える気持ちよさ、テンポのよさを生むという。

敵の攻撃を左右に避けて移動して欲しい場合には、葉っぱを置いて動きを誘導して途中にパンチで壊すアイテムを置くなど、移動を想定してデザインすることが重要となる。

「コントローラー操作を想定して配置する」のもポイントだ。

ただなんとなく敵を配置するだけでなく、コントローラー操作がよいメロディになるよう敵や仲間を配置することにより、体験の品質が高まる。

そして「アクションをつなげる」ことも必要となる。これは、ひとつのアクションを教えたら連続で使うようにするというものだ。

うまくつなげるためにアクションを使いながら敵を追いかけたり、あるいは気持ちよく移動できるようなシステムが追加されている。自然とテンポがよくなるため、逃げる場所や、スピードランのようなシチュエーションとも相性がよい。

「大事なものは中央に置く」ことも心がけているという。たとえば上記画像の場合、困っているキャラクターが画面中央付近にいるほか、プレイヤーが押すべきスイッチも目立つ位置にあるうえ強調されている。

エリアの見た目を変えるときも中央に配置するし、左右に花道を作ってプレイヤーを中央へ誘導するケースもある。初登場の敵も中央に配置するなど、とにかくプレイヤーに認識してもらうものは中央に配置したほうがよいそうだ。

ただし、意図的に中央から外すケースもある。たとえばプレイヤーキャラクターにひっつく敵は、初登場でも少し中央からズレている。これはプレイヤーキャラクターにくっついたときに画面中央になるような構成になっている。

「装飾で空きスペースを埋める」のも重要である。プレイヤーの移動を想定した際に空いている地形が出てくるケースもあるが、これは装飾を配置するチャンスとなる。草などを配置すればハプティックフィードバックも活かせるという。

そして「物理オブジェクトはまとめて置く」のもコツだという。物理演算によって動くオブジェクトは、いろいろな場所に少しずつ置くと散らばった印象になってしまう。

そこでひとまずまとめておいて、プレイヤーが自由にちらかす仕組みにする。プレイヤーが自分でちらかせば納得がいくし、物理オブジェクトの動きを楽しめるわけだ。

あるいは、重力の変化を見せるために物理オブジェクトをまとめるケースもある。ほかにも敵が隠れている場所に物理オブジェクトをまとめておいて、マイクで息を吹きかけてそれらを吹き飛ばすようにするといった、強いインパクトを残す手法にもつながる。

説明なくプレイできると同時に、予想を裏切る刺激を追加

続いては調整編である。まずは「説明なしで教える」ことについて説明が行われた。

ゲームは詳しい説明が出るとテンポが悪くなってしまう。そこで『アストロボット』では、新しい遊びが出たらすぐに試行錯誤できるエリアを用意している。

そこで遊びの仕組みが理解できたらすぐ先に進めるようにし、もし進めなかった場合はチュートリアルの動画が出るような作りになっている。

また、自分で気づく機会をなるべく減らさないように心がけているという。ボスバトルに挑戦する前にガラスが割れることを教えたり、特定の状況でベルが壊せることを伝えたりと、勝つために必要なギミックをプレイヤーに事前通告している。

「操作できない時間を減らす」のも重要だ。ゲームは操作ができないとどうしても気持ちが途切れてしまうため、可能な限り操作できるようにしているという。

本作では、巨大なロボットが動いているときにも、ボスのフェーズが切り替わるときにも、ステージのローディング中も動かせるようになっている。

「1秒先を計画できるようにする」のもポイントとなる。プレイヤーは常にどのように進むかを計画しているため、いきなり敵を出現させるなどして計画を変更させるとよい刺激となる。

ただし、進行方向が上になると先が見えにくくなりユーザーが計画しづらくなる。この場合は判断までの時間を十分にとっているかをきちんと確認する必要がある。

調整編の最後は「ゴールに向けて盛り上げる」となる。ゴールだと思ったら何かイベントが発生してちょっとしたチャレンジがあると、クリアがより盛り上がる。

終わりに向けて気持ちを徐々に盛り上げるのがポイントで、ゴール前にボスバトルを入れるのもありだという。

隠し要素にも細やかな気配りあり

次はひみつ編である。まずは「隠すときはヒントをつける」という手法だ。

ゲームには隠し要素がつきものだが、意図的にヒントを入れる必要がある。柵が途切れているなど、注視すれば見つかるものだとプレイヤーはそこに行ってみようという気持ちになる。

「発見の難しさにメリハリをつける」ことも必要だ。『アストロボット』の場合は全体の70%は簡単に見つかるもの、30%はほどほどの難易度、そしてシークレットゴールだけ難しいといった調整にしている。

そして、「サブパスは少し目立たなくする」のも重要だ。サブパスとはつまり脇道で、本作ではおまけがあるようなルートになる。

たとえばふたつに別れている道がある場合、メインを太くサブを目立たなくするとどこへ行けばいいのかわかりやすくなる。角度を変えるのも有効だ。

「サブパスからの帰りは楽しくする」必要もある。専用の帰り道を用意して楽しく戻れるようにすれば、退屈さが紛れる。戻ったあとは、カメラ中央に次に行くべき場所や物を設置するとテンポがよくなる。

ひみつといえば、「行けそうな場所にもご褒美を置く」のもプレイヤーにとってうれしい要素である。

高い木の上など、特殊な場所には必ずご褒美を置いてプレイヤーの期待に応えるのが重要となる。もし想定していなかった場所に行けてしまう場合は、そもそも行けそうにしないようにしたり、あるいは小さいご褒美を追加するといった対応をとっている。

行くのが難しい場所の場合、叩くタイミングによって当たりと外れが変化するアイテムなど、特殊なギミックの報酬を用意しておくとプレイヤーの納得度が上がる。

カメラはわかりやすく、距離を離さず

次はカメラ編となる。ほかのゲームでも当たり前になりつつあるが、「カメラ操作なしでもプレイしやすくする」のは本作でも重要なようだ。

『アストロボット』でもゲームプレイに合わせてカメラがゆっくり移動する仕組みが用意されている。この際、見せたいものをカメラの中央に捉えさせる必要がある。

「場所ごとに遊びやすいカメラを設定する」のもポイントである。たとえば穴がある場所は、俯瞰するようなカメラにすればわかりやすい。

あるいは、敵をスイングして特定の場所にぶつけるシチュエーションの場合、プレイヤーはボタンを押しているのでカメラ移動ができない。そこで投げる方向に自動でカメラが動く仕組みを入れておくわけだ。

また、「カメラとプレイヤーの距離を近くする」必要もある。カメラとプレイヤーキャラクターが遠いと見やすいが、ワクワクを感じづらいからだ。

量より質を重視、プレイヤーを喜ばすために何度でも作り直す

最後は考え方編となる。『アストロボット』においては「量より質」が重視されている。

レベルを設計している際、不安になるとどうしても量を作りすぎてしまうケースがしばしばあるそうだ。しかし、量を多く作ると直すのもたいへんだし、アートチームやサウンドチームも苦労する。やはり、質を上げるのが重要だったという。

次は「ロジックだけで考えない」。ゲームに必要な要件を満たすだけではプレイヤーは満たされない。

何か発見したときにただご褒美があるだけでなく、たくさんのドングリが飛び出すなど、見つけたこと自体が楽しいとより質が高まる。スタッフロールも名前を出すだけでなく、遊びを入れてより優れたものにした。

最後は「何度も作り直す」である。『アストロボット』の場合、2週間単位でひとつの要素を作り、その後チームメンバーが確認してレビューを行っている。

テストプレイのあとはよかったところ、改善できそうなところの意見がまとめられるため、これを参考にして何度も作り直すわけだ。TeamASOBIでは、すべての仕事がお互いのフィードバックによって改善されていく。

この講演で紹介された30項目は、『アストロボット』を遊んでいるとどれも肌で感じられることだ。改めてまとめられると、細かいところまでプレイヤーのことを考えて作り込まれていたのだと実感できる。


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