荷物をさばき、罰金に怯え、借金を返す 『物流バイト』が描く過酷な労働と、そこに潜む倫理的選択【BitSummit PUNCH】

製品版には16種類以上のエンディング

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『Papers, Please』や『Cart Life』、『SKY THE SCRAPER』など労働を扱ったビデオゲームはいくつもあるが、韓国のTwinChariotが開発する同じような潮流にあるタイトル『物流バイト』がBitSummit PUNCHに出展中だ。

開発が「『Papers, Please』から着想を得た」と説明しているとおり、『物流バイト』も単純作業を繰り返すなかで、社会の抱える問題やその不条理を描くものとなっている。タイトルが示すように舞台となるのは物流センター。プレイヤーはセンターで働き始めた新人「51番」としてコンベアを流れてくる荷物の梱包を行う。

梱包の基本は以下の3段階。一箱ごとに時間制限があるものの、落ち着いてやれば難しくはない。

  1. 箱のフタを閉じる。閉じ方は適当でもよい
  2. 伝票シールを貼る。貼り付け位置は適当でもよい
  3. 出荷ボタンを押す

梱包する箱には食品や飲料、ゲームコントローラーにおもちゃなどが入っているのだが、ゲームが進むにつれて次のような例外処理が加わる。

  • 卵や瓶などの割れ物がある場合は、割れ物注意シールを貼る
    時間に追われ、シールの貼り方が雑になってしまうのも一定の説得力がある。
    時間に追われ、シールの貼り方が雑になってしまうのも一定の説得力がある。
  • 汚損した箱は廃棄する
    箱にぐにゃぐにゃになったところや落書きがあると廃棄扱い。
    箱にぐにゃぐにゃになったところや落書きがあると廃棄扱い。
  • 廃棄対象商品が含まれている場合、廃棄する
    廃棄対象はランダム性がある模様。プレイした範囲ではおもちゃのこともあれば、サラダのこともあったりお菓子だったりした。
    廃棄対象はランダム性がある模様。プレイした範囲ではおもちゃのこともあれば、サラダのこともあったりお菓子だったりした。
  • IPコラボ製品が箱内にある場合、コラボ箱に入っていなければ廃棄する
    じゃがりこっぽいお菓子とともに梱包されている、IPコラボのバットマンっぽいフィギュア。
    じゃがりこっぽいお菓子とともに箱に入った、IPコラボのバットマンっぽいフィギュア。

本作では一箱出荷するごとに日当が増えていく仕組みとなっており、処理が早ければ早いほど賃金が増える。一方、例外処理である割れ物注意や廃棄のし忘れをすると罰金として賃金が減ってしまう。仕事を早くこなさなければならないが、早くやろうとするとミスが生じるというジレンマが待ち構えているのだ。

アップグレードのほかにも到底買えそうにない、戸建ての家や自動車も含まれる。
アップグレードのほかにも到底買えそうにない、戸建ての家や自動車も含まれる。
荷物から工具箱を盗んで、事務所の自販機を直すようなこともあった。
荷物から工具箱を盗んで、事務所の自販機を直すようなこともあった。

加えて賃金は根本的に少ない。たとえば主人公である51番には、14日後までに5万の借金を返済する必要があるが、1日当たりの賃金は1200~3000くらい。さらに空腹度や疾病の概念があり、食事を買ったり病気になったら薬を買ったりと出費もある。一箱あたりの賃金を増やしたり、操作を簡略化したりするアップグレードもあるが、先が明るいとは言えない。

本作はマルチエンディングを採用しており、製品版では16種類以上のエンディングがあるという。体験版の範囲でも3つの分岐があり、同僚の52番が紛失したと話す大金入りの封筒に関連して次のような分岐があった。

  1. 封筒を見落とす
    大金の入った封筒が入ったまま箱が出荷されたことでニュースになり、注文の殺到からセンターでIPコラボが始まって、IPコラボに関する例外処理が追加
    お金の入った封筒を求めてバイトが増加。一方で自分たちの賃金は据え置きなのに、新しいバイトは賃金が高いという悲哀も描かれる。
    IRONBATとのコラボが始まり、誤封入された大金入り封筒を求めてバイトが増加。一方で自分たちの賃金は据え置きなのに、新しいバイトは賃金が高いという悲哀も描かれる。
  2. 封筒を見つけて52番に渡す
    52番は、自身の兄弟と物流センターに関する社会問題を追っていることが示される。例外処理として廃棄対象商品が追加
    52番からカギを託される。なお、主人公にとってこの人物は倒れた最初の52番に代わってやってきた2人目の52番だ。
    52番からカギを託される。なお、主人公にとってこの人物は倒れた最初の52番に代わってやってきた2人目の52番だ。
  3. 封筒を見つけたのに52番に渡さない
    例外処理として廃棄対象商品が追加。52番はセンターを去るが、直後に主人公が封筒を盗んだことをネタにゆすりのメッセージが届く。メッセージには怪しげな指示が書かれている
    封筒を盗んだところを押さえた写真とともに、細かい指示の入った不審なメールが届く。
    封筒を手にしたところを押さえた写真とともに、細かい指示の入った不審なメールが届く。

このように単に物語が変化するだけでなく、分岐によってゲームプレイにも違いが生まれるのはユニークに感じた。また、突如早まる通勤バスの運行予定、梱包時間の短縮、バス停で横になっている体調の悪そうな人、殺伐としている営業所という風に全体に横たわる暗い雰囲気もテーマにはまっているように感じた。

フローチャート上から特定の日にジャンプできるので、分岐の回収はしやすさそうだ。
フローチャート上から任意の日にジャンプできるので、分岐の回収はしやすさそうだ。

Steamのストアページには次のような文言もある。

作業場の外でも、物語は続いていきます。
怪しい提案を受け入れるのか、同僚を裏切るのか……それとも会社に隠された秘密を暴くのか。
便利さの裏に隠された、16種類以上のミステリアスでリアルな物語を発見してください。

体験版時点でも倫理的選択が重要な柱になっていることが感じられ、体調不良の人に栄養ドリンクを渡すのか自分で飲んでしまうのか、見つけた大金入りの封筒を52番に渡すのか、ゆすりのメッセージにどう対処するのかといったさまざまな悩みがあることがうかがえた。

バス停で具合が悪そうな人。栄養ドリンクも自分で飲めばその分のお金が浮くのだが……。
バス停で具合が悪そうにしている人。栄養ドリンクも自分で飲めばその分のお金が浮くのだが……。

なお、日本でも運送業の逼迫などはたびたび報じられているが、『物流バイト』が生まれた国、韓国にも近しい状況があるようだ。韓国ではAmazonのような通販大手サイト「Coupang」を巡り、労働環境に加えて顧客情報の流出が社会問題になっている(参考記事:FNNプライムオンライン)。本作の起動時には作中の人物や団体、事件などが架空のものであることが強調されるが、こうした現実の社会問題が影響を与えている部分もありそうだ。

『物流バイト』はSteamで日本語に対応した体験版が配信中。体験版では最初の7日間、時間にして30分~1時間ほどをプレイできる。発売時期はBitSummit PUNCHのページによれば、2026年12月1日を予定しているという。

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