最終章:マイルスを歌おう 《Boplicity》
いつも隣にマイルスがいた。(マイルス・デイビス生誕100周年に寄せて:全8章)
ヴォーカリスト、シーラ・ジョーダン(1928-2025)のワークショップでは、マイルス・デイビスが作曲し、『クールの誕生』に収録された《Boplicity》を歌うそうだ。
確かに、あの曲のメロディには、ビバップ特有のリズム感と、マイルス特有の節回しがある。そのニュアンスを身につけることは、翻ってジャズという音楽の根幹に触れることになる。そのことに気づいたシーラの着眼点には感嘆するほかない。
マイルスのフレーズを歌うことによってジャズの語法を身につけ、ジャズを後世に引き継ごうとした彼女の試みの偉大さは言を待たない。
出典は忘れたが、ジャッキー・マクリーン(アルトサックス奏者、1931-2006)が子どもたちにジャズを教える記事を読んだことがある。
マクリーンは《Now’s The Time》の音源を流しながら言う。「それじゃあ、サックスのチャーリー・パーカーのソロを真似して歌ってみよう!」
子どもたちはキャッキャッと歓声を上げながらパーカーの真似をするが、パーカーのフレーズが早すぎて上手くいかない。
再びマクリーンは言う。「ちょっと難しかったね。それじゃあ、次のマイルス・デイビスのソロを真似してみようか」
まだデビューしたばかりのマイルスの簡単なフレーズを、子どもたちは一緒に歌う。
おそらく、マクリーンは子どもたちの歌を聴きながら、満足そうな笑顔を浮かべたに違いない。
マイルスは、トランペットを歌うように吹く人だった。
彼がフランク・シナトラの歌を好きだったことからも、それを感じる。
いつの時代でも、どのような編成でも、マイルスは自身のソロを吹く時、懐に歌心を忍ばせていた。
マイルスが逝去した後も彼の音楽が残り、そして彼の歌心は語り継がれるであろう。
マイルスを、歌おう。
参照:シーラ・ジョーダンのワークショップについて
Sheila Jordan/Jay Clayton 主催第一回ジャズヴォーカル・ワークショップ
in Up-State, N.Y. /2002. 2.20~2.24 美山夏蓉子
http://www.miyamavocalstudio.com/workshop.htm
and more...今回の企画のプレイリスト(全9曲・約1時間)

