RAGとは?LLMとの違いや活用例、導入手順など解説
生成AIは文章作成や情報検索にとても便利ですが、実はかなりの頻度で事実と違う答えを出してしまうことがあります。例えば、VisualCapitalistの調査では人気のAIモデルでさえ回答の約37~77%が事実と異なるハルシネーションだったという結果が出ています。
こうした誤情報のリスクを抑え、AIが正確な根拠に基づいて答えられるようにする技術がRAG(検索拡張生成:Retrieval-Augmented Generation)です。そこで、RAGの活用例や導入手順など、詳しく解説します。
RAGとは?
RAG(検索拡張生成)とは、AIに特定のデータを読ませ、その情報に基づいて答えてもらう方法です。
簡単に言うと、RAGは
- 検索(Retrieval):必要な情報を探す
- 生成(Generation):その情報をもとに文章を作る
この2つを組み合わせた仕組みです。
通常のAIは、過去に学習した記憶だけで回答するため、情報が古かったり、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を生成してしまうことがあります。
一方でRAGの場合、社内データや指定した文書などを検索して情報を取得し、それを根拠として回答を生成します。そのため、不特定多数の情報源に頼らず、信頼できるデータだけを使って回答できる点が特徴で、社内データベースなどの活用方法として注目されています。
RAGと従来のLLMとの違い
生成AIを使っていて「その答えは本当に正しいのか」と不安になることがあります。その原因の多くは、従来のLLM(大規模言語モデル)が過去に学習した記憶だけに頼って答えているためです。そこで注目されているのが、検索してから答える仕組みを持つRAGです。そこで、RAGと従来のLLMがどう違うのかを軸に、RAGの特徴を詳しくお伝えします。
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情報のソース
従来のLLMの情報源は、開発時に学習した「過去の公開データ」に限られています。これに対してRAGは、ユーザーから質問があれば、回答を生成する前に最新のニュースや社内マニュアルなどをリアルタイムで検索します。そして、えた情報をもとに回答します。結果として、従来のAIでは提供できなかった最新情報を踏まえた回答や、社内マニュアルを踏まえた回答などが生成できます。
ハルシネーションの抑制
従来のLLMは、過去に学習したデータだけで答えようとするため、回答された情報が古かったり、間違っていたりします。これが「もっともらしい嘘(ハルシネーション)」として問題になっています。一方、RAGは、回答を生成する前に検索し、最新の情報にアップデートされた根拠に基づいて答えるため、AIによるハルシネーションを大幅に抑制することができます。結果として、ユーザーはより信頼できる情報をえられます。
セキュリティ
セキュリティの面では、従来のLLMより安全に運用しやすいという特徴があります。例えば、従来のLLMに企業の機密情報などを直接学習させてしまうと、AIがその情報を意図せず外部に漏れてしまうリスクがありますが、RAGならデータをセキュリティ管理された外部保管庫(データベース)に置いておくことができます。そのため、社外の人間に情報が漏れることは基本的にありません。データベースの情報を利用できるのは、権限のあるユーザーがRAGを利用したときだけに限られます。このように、RAGなら企業の大事な情報やプライバシーを守りながらAIを活用できます。
RAGの活用例
顧客対応、社内マニュアル検索、資料作成など、RAGはすでに多くの現場で業務を効率化しています。そこで、RAGがどんな仕事を、どのように変えているかを具体例で紹介します。活用イメージが明確になることで、「自分の職場でどう使うか」を検討しやすくなるはずです。
顧客への問い合わせ対応
RAGを使って企業の「マニュアル」や「過去の対応履歴」といったデータを参照し、お客様の質問に正確に答えられるよう活用が進んでいます。例えば、「アプリが動かない」や「注文した商品が届かない」といった具体的な相談に対し、RAGを搭載したAIがその企業のデータベースから最新の解決策やルールを検索します。そして、その情報に基づいて的確な回答を作成します。こうすることで、お客様を待たせることなく24時間いつでも質の高いサポートを提供できます。
業務マニュアル確認の効率化
通常、企業の仕事手順やルールは大量のPDFファイルやWEBページに散らばっていることが多いものです。社員にとっては、そこから必要な情報を探すだけでも、何時間もかかってしまうことがあります。しかしRAGを使えば、「経費の申請はどうやるか」、「この機器の設定手順を知りたい」などの言葉で質問するだけで、AIが膨大なマニュアルの中から該当する箇所を一瞬で見つけ出し、わかりやすく要約して教えてくれます。このように、社員は面倒な書類探しの時間を大幅に減らし、本来やるべき重要な仕事に集中できます。
一貫性のあるドキュメント作成
RAGは、社内のドキュメントデータを参考に、新たな資料を作成することができます。例えば、営業担当者が提案書や契約書を作成する際、RAGで過去の資料や最新の価格表などを参照してもらい、それに基づいた文章を作成するといった活用が可能です。これにより、ベテラン社員でも新人でも、誰が書いても、会社のブランドイメージに合った統一感のある資料を作成できます。
RAGの導入手順
RAGは難しそうに見えますが、正しい手順を知れば無理なく導入できます。大切なのは、いきなり高度な仕組みを作ろうとせず、「何のために使うのか」「どのツールを使うのか」を順番に整理することです。そこで、RAG導入のステップを分かりやすく解説します。早速、導入してみようと思うなら必見です。
目的の決定
RAGを導入する最初のステップは「目的の決定」です。「誰のどんな悩みを解決したいか」を事前にはっきりさせてください。例えば「社員が大量の社内マニュアルから、情報を効率よく見つけられるようにしたい」や「お客様からの複雑な質問に24時間自動で答えられるようにしたい」といった具体的なゴールを決めます。このゴールが決まって初めて、AIにどの資料を読ませるべきかなどの計画が立てられます。
データの整備
「データの整備」とは、AIがスムーズに検索できるように、社内のデータ・資料を集め、整備することです。具体的には、社内のマニュアルやドキュメントを収集し、古い情報や不要な文字を取り除いてデータを整備します。さらに、AIが情報を探し出しやすいように、長い文章を意味ごとの短いブロックに切り分けるチャンク化をおこなってください。例えば、Markdownなどを使って、内容を整理するなどが考えられます。料理で例えるなら「食材を洗って使いやすい大きさに切っておく」ようなもので、この下準備を丁寧におこなうことで、RAGからえられる結果の精度を高められます。
AIツールの選定
データを整備したあとは、どのAIツールを使うかを選びます。代表的なところでは、NotebookLMやNotion AIなどが挙げられます。こういったツールは、必要な資料を入れるだけで、自動的に検索して答えを作ってくれるRAGの機能を最初から持っています。つまり、難しい設定や専門知識がなくても、すぐに使い始めることができます。初めてRAGを導入する企業は、既存のAIツールを選ぶのがもっとも手堅い方法です。
テストと改善
AIツールを選定したあとは、使いながら整える段階に入ります。マニュアルや資料、FAQなど、AIに答えてほしい情報を入れたあとは、実際に質問してみて「的確な答えがえられるか」を確認します。もし答えが分かりにくければ、再度データを整えてください。不要な情報を削除したり、Markdownで適切に記述し直すなどのことが必要です。RAGは一度作って終わりではなく、使いながら少しずつ育てていくものなので、不自然な回答が生成されても、焦らず1つずつ直してください。
RAGの仕組みを活用できるAI
RAGは自社で作らなくても、すでに使える形で提供されています。そのため、導入を考える場合、AIツールを選ぶだけでかまいません。どのツールを選ぶかによって、使いやすさや導入のしやすさ、向いている用途は大きく変わります。そこで、RAGの仕組みを裏側で活用している代表的なAIツールを紹介します。自社の目的に合ったものを選定してください。
NotebookLM
NotebookLMは、RAGとしてすぐに使えるAIツールです。PDFやGoogleドキュメントなどの資料をアップロードするだけで、AIが中身を自動で読み取り、必要な情報を検索して答えてくれます。自分で検索の仕組みや難しい設定をする必要がなく、質問すると「どの資料を参考にしたか」を示してくれるのが特徴です。NotebookLMは、資料を根拠にして答えるRAGの仕組みが最初から完成しているため、初めての企業でも安心して導入できます。
関連記事:NotebookLMとは?活用事例とChatGPTとの違いを解説
NotionAI
Notion AIは、Notionに保存しているデータをもとに答えを作る、RAGとして活用できるAIです。例えば、社内マニュアルや議事録、メモなどをNotionにまずはデータとして保存します。一定量のデータがストックできたら、AIを活用し、必要な情報だけを取り出して回答してもらうといった使い方が可能です。データの保管とAIを使用する場がNotionだけで完結するので利便性は高いといえます。
関連記事:Notion AIとは?できることや使い方など解説
Cursor
Cursorは、プログラミング作業に特化したRAGとして活用できるAIです。ソースコードを読み込ませることで、AIが必要な部分を検索しながらコードの説明、修正、追加提案をしてくれます。このように、Cursorは「コード版のRAG」といえます。エンジニアにとっては、コードを探す・理解する・直す作業を一気に効率化できます。
Dify
Difyは、専門的なプログラミング知識がなくてもRAGを作れるAIツールです。PDFやWEBページ、社内資料などを登録すると、AIがそれらを検索して答えるチャットボットを簡単に作れます。検索や分割、回答の仕組みは自動で整えられているため、企業は「どんな資料を使うか」「どんな質問に答えさせたいか」を考えるだけで導入できます。社内問い合わせ対応やFAQ自動化などを手軽に始めたい企業に向いています。
RAGのよくある質問
ここでは、RAGに関するよくある質問をとりあげ解説します。社内で早めに導入したい場合、早速、ご確認ください。
Q.具体的にどのような仕組みで動いているのですか?
Answer)具体的な仕組みは、大きく分けて「検検索→拡張→生成」の3ステップで構成されています。例えば、ユーザーが質問をすると、AIと連携された社内データベースやマニュアルの中を検索し、質問に関連する特定の情報を探し出します。その後、見つかったデータを「ヒント」としてユーザーの質問文に付け加えて(拡張して)AIに渡します。最後に、AIはそのヒントを読み込むことで、元々のデータだけでなく、検索してえた最新の根拠に基づいた正確な回答を生成します。
Q. RAGを使えば、ハルシネーションはゼロになりますか?
Answer)AIが絶対に間違えなくなるわけではありません。確かにRAGは、社内データや最新情報を参照しながら回答を作成するため、ハルシネーションは大幅に減ります。しかし、参照するデータ自体に誤りがあったり、AIが質問に関係のない不適切な情報を拾ってくる場合は、結果として間違った回答になることがあります。このようにエラーが起きにくいのは事実ですが、完全にゼロになるとは限りません。
Q.ロングコンテキストAIとRAGの違いは?
Answer)ロングコンテキストAIは、本数冊分にも相当する大量のデータを一度にAIの記憶領域に入力して全体を分析するため、長い文書の要約や複雑な推論を得意とします。しかし、データ量が増えるほど処理が遅くなりコストも高くなる傾向があります。一方、RAGはデータベースから質問に関連する情報だけをその都度検索して、回答をつくるため、頻繁に更新される膨大なデータを低コストかつ高速に扱うことができるため、正確さや最新情報に基づく回答が求められる場面で強みを発揮します。
Q.RAGにデータを入れる際に気をつける点は?
Answer)データを入れる際の整備のコツは、まずドキュメントをAIが処理しやすいサイズに分割する「チャンク化」をおこなうことです。チャンク化とは、情報の意味が通じる最適な単位(段落や文など)で整理するという意味です。また、PDFやExcelなど異なる形式のファイルを標準的なテキスト等に変換し、不要な特殊文字や空白を取り除くクリーニングを徹底してください。AIが誤読する可能性を下げることができます。
まとめ
RAGは、AIに「調べる力」を持たせることで、正確さと安心感を大きく高める仕組みです。従来のAIと違い、最新情報や社内データを根拠に答えられるため、業務の効率化やミスの防止に大きく役立ちます。そして今は、NotebookLMやNotion AI、Difyなどのツールを使えば、難しい技術がなくても誰でもRAGを活用できる時代です。まずは小さく試し、使いながら育てていくことで、企業の強力な知識パートナーにしてください。


