「エコ疲れ」になっていませんか-過剰情報にうんざり、今こそ冷静に

目次
「エコ疲れ」という言葉が英語圏で広がる
「エコへの配慮って意味あるのでしょうか」。
筆者がエネルギージャーナリストと名乗るためか、知人の女子高生から聞かれた。名門校の真面目な優等生だ。気候変動や環境破壊について心配しつつも、「『これが正しい』『このようにするべきだ』と他人に押し付けられても本当にそうなのか分からない。悪い人に利用されていないか、心配になる」という。
私は「エコ疲れ」という言葉を思い出した。これは英語圏のメディア、環境問題の専門家の中で広がっている。漠然とした内容の言葉だが、環境問題に向き合うことに疲労感を感じる、警戒心を感じてしまうという意味のようだ。英語圏では「eco fatigue」(エコ疲れ)、「climate fatigue」(気候疲れ)、「sustainability fatigue」(持続可能性疲れ)などという言葉もできている。
流れ続ける環境がらみの大量の情報や活動に望まなくても接して、精神的な圧迫、うんざり感を抱く人が増えているようだ。またグリーンウォッシュ(偽の環境配慮)が各所で告発され、人々のうんざり感を強めている。
中でも米国の変化が影響を与えたように思える。トランプ米大統領は、気候変動や環境配慮をめぐる事実とその取り組みを批判し続け、2025年9月の国連総会演説では気候変動「世界史上最大の詐欺行為」などと激しい言葉で罵った。彼の主張は事実に反することもあるが、一定の喝采を世界で集めている。その一連の行動は、米国がこの問題でまとまりがないという国際的なイメージを植え付けてしまった。これは世界で「環境疲れ」を広げる効果があっただろう。
過剰な環境情報への批判、日本の消費者にも
これは消費者の動きでも観察できる。博報堂の「生活者のサステナブル購買行動調査2025」(同年8月発表)では、社会・環境問題への取り組みに「疲れを感じる」人が4割以上いた。
企業をめぐるスキャンダルもあった。中国系メーカーのシーイン(Shein)のヨーロッパでの問題だ。同グループは、エヴォルシーイン「evoluSHEIN」というブランドで、持続可能な素材を使ったエコフレンドリーとされる商品群を発表した。ところが、イタリアの競争・市場当局(AGCM)がグリーンウォッシュ(環境配慮を偽装したマーケティング)の疑いで調査を2024年9月に開始し、25年8月に100万ユーロ(約1億8000万円)の罰金を課した。虚偽、または誤解を招く広報をしたという。保守系のメローニ首相の政権の影響もあるのかもしれない。日本以外の国では、最近の中国批判、そして「環境疲れ」現象に絡めて、メディアや社会評論で大きく取り上げられた。(ロイター通信2025年8月5日記事「Italian regulator hits Shein with 1 million euro greenwashing fine」イタリア規制当局、シーインに100万ユーロのグリーンウォッシュ罰金を課す)
日本のオールドメディアは最近、世界から孤立しがちで、また日本の現実からも遊離しがちだ。この「環境疲れの」報道はほとんどない。英字紙のジャパンタイムスが11月10日に、「Want to fight climate change? Fight ‘climate fatigue’」(気候変動と戦いたいですか、それよりも「気候疲れ」と戦え)という記事を掲載した。日本の大学で教える外国人の社会学者の寄稿だった。日本の環境意識の遅れを叱る視点だったが、筆者はその「上から目線」に共感できなかった。
正直さという当たり前の向き合い方を考えよう
こうした「エコ疲れ」の広がりにどう向き合うのか。私見を述べると、こうした「環境疲れ」は、当然の動きと思う。もちろん環境問題に向き合うことは大切だ。しかし、それがビジネスや政治目的で騒ぐ人の声によって、ゆがめられていないか。
環境問題では最近「何かをしなければならない」という意見の押し付けが目立った。環境保護は誰もが総論では賛成するために、結論が先行して、中身の検証が疎かになる場合もあった。そして声高に環境保護の解決策を主張する人たちの「答え」と称するものを検証してみると、効果が疑わしかったり、ある政治集団や企業の利益になったりするものもあった。前述のシーインの行動はその一例だ。
「他人に押し付けられても本当にそうなのか分からない。悪い人に利用されていないか、心配になる」と前述の女子高生は語った。広がる不信への対応策は、多くの人が抱くこのような考えに向き合うことだろう。個人の場合でも、企業、組織、国などの行政機関の場合でも同じだ。他人へ「環境問題で動け」と押し付けない。正直に、淡々と事実を伝え、合意できることで協力する、当たり前の行為が必要かもしれない。
そして環境問題を語るときに、人々が「環境」というテーマに単純に反応しなくなっているという事実に目を向けるべきだ。「環境」というカードを使って、物事やビジネスをきれいに見せる行為、他人の行動を誘導しようとする行為は、もう効果がないどころか、批判されかねない。
「正々堂々と正直に」。生きるための当たり前の規範が、環境問題に向き合うとき、語るときでも通用する。それを実現することで「本当にそうなのか分からない」という、最近誰もが抱く懸念は消えていくだろう。
一つの相場格言がある。「パーティを楽しんでね。ただし、お酒の置き場と出口への道を忘れないで」。つまり、相場のトレンドに逆らう必要はないが、熱狂からは距離を置き、陶酔をしない、そして逃げることを忘れないで、という意味だろう。みんなが環境を叫び、それにお金が流れている流れが続くなら、それに乗り損ね、儲かる機会を失うのはばかばかしい。しかし、これが危ういものでありそうなら、冷静に観察し、いつでも逃げ出す準備を整えるべきだ。これが「エコ疲れ」への向き合い方と思う。
石井孝明
経済記者 with ENERGY、Journal of Protect Japan 運営
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com
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