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ジェーン・スー✕ 伊藤亜和:往復書簡 日々の音沙汰

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作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストのジェーン・スーさんと文筆家の伊藤亜和さんによる往復書簡。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を転載します。毎月第2火曜日に…
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往復書簡 日々の音沙汰 ー第34回「炎上にみまわれたとき」(伊藤亜和)ー

■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ジェーン・スーさま←伊藤亜和  つかの間の雪日を経て、外が少しずつ暖かくなって参りました。住み始めて4か月ほどの我が家はマンションの一階で、立派な松の木のある庭がついています。私の部屋の敷地内にある庭には、その大きな松と、真っ赤な葉をつける紅葉と、ほんのいくつかだけの花を咲かせる痩せた桃の木があるのですが、同じ一階にある他の部屋の庭にくらべると、今の季節は花が少なく殺風景です。隣の庭には真っ赤な椿が咲いているし、その隣の庭に

往復書簡 日々の音沙汰 ー第34回「負けてたまるか」(ジェーン・スー)ー

■前回の伊藤亜和さんからのお手紙はこちら ✉ 伊藤亜和さま ← ジェーン・スー  亜和さん、こんにちは。お元気ですか? まさか、お父様の姓のほうで手違いがあったとは。そろそろ正式な「バッケ」に戻られた頃でしょうか。「バツケ」もなんだか可愛いけれど、そのままにしているわけにもいかないですものね。  先日は大変でしたね。Xのことです。亜和さんのマネージャーさんが運営する公式アカウントで投稿した『変な奴やめたい。』(ポプラ社)の試し読みを、意地悪く引用ポストした人の投稿がバズっ

往復書簡 日々の音沙汰 ー第33回「私の癖」(伊藤亜和)ー

■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ジェーン・スーさま←伊藤亜和   新年あけましておめでとうございます。とは言っても、これを書いているのはもう1月の下旬です。昔は月が変わるたび、新雪を踏みしめるような心持ちで過ごしていたような気がします。それなのに、今の私ときたらグダグダもいいところで、年初に決めたはずの2026年の抱負をもう忘れています。なんだったっけ。「自分から人を遊びに誘ってみる」だっけ。あぁ、それは去年の抱負だったか。たしか今年は、「ルーティンの確立

往復書簡 日々の音沙汰 ー第32回「三つ子の魂百までになりそうな性癖、偏愛はありますか?」(ジェーン・スー)ー

■前回の伊藤亜和さんからのお手紙はこちら https://webtripper.jp/n/ne7da20f15faf ✉ 伊藤亜和さま ← ジェーン・スー  あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。亜和さんにとって飛躍の一年でしたね。今年も引き続きよろしくお願いいたします。ますますご活躍するに違いありません。他人事ながら、とても楽しみです。いつも応援していますよ!  さて、サンタさん、うちには来なかったんですよ。正確には「クリスマスになるとサンタ

往復書簡 日々の音沙汰 ー第31回「自分を自分にしてくれるものは何?」(伊藤亜和)ー

■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ジェーン・スーさま←伊藤亜和   クリスマスイヴ、いかがお過ごしでしょうか? 子どもの頃は、明日の朝枕元に置かれるはずのプレゼントを探して、夜な夜な家中をほじくり返しておりました。なんて野暮なことをしていたんでしょう。可愛くない子どもです。そんな夢もロマンもないことをしていたら、いつのまにかサンタさんは来なくなって、気づけばもういい大人になってしまいました。クリスマスも、今となってはいつも通りの平日に過ぎず、私はこうして部屋

往復書簡 日々の音沙汰 ー第30回「占いという非日常」(ジェーン・スー)ー

■前回の伊藤亜和さんからのお手紙はこちら ✉ 伊藤亜和さま ← ジェーン・スー   冬が好きです。夏の10倍は好き。ポストヒートテックの時代を生きる亜和さんには信じられないかもしれませんが、私はここ10年ほどヒートテックに袖を通していません。だって、暑いじゃんあれ。肌寒いくらいがちょうどよい。  気象予報士さんによると、四年に一度東京に大雪が降るジンクスがあるそうで、それが2026年にあたるそうです。ちょっと楽しみですね、東京の大雪。ヒートテック着ちゃうかも。これ以上の非日

往復書簡 日々の音沙汰 ー第29回「素敵な誕生日プレゼント」(伊藤亜和)ー

■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ジェーン・スーさま←伊藤亜和   すっかりヒートテック頼みの季節になりましたね。はたして、人類はヒートテックが発明されるまで、一体どうやって冬を乗り越えてきたのでしょう。今となっては、その頃のことがみじんも思い出せません。西洋の基準をそのまま当てはめれば、人類の歴史はキリストの誕生を境に「紀元前」「紀元後」と分けられるようですが、私からしてみればヒートテックの誕生も、それと同じくらいの重要な歴史の転換点のように思えます。世界

往復書簡 日々の音沙汰 ー第28回「結婚、怖くない?」(ジェーン・スー)ー

■前回の伊藤亜和さんからのお手紙はこちら ✉ 伊藤亜和さま ← ジェーン・スー   亜和さん、お誕生日おめでとうございます。10月13日で29歳。いよいよ20代最後の年ですね。素敵なプレゼントを用意したので、楽しみにしていてください。  亜和さんの20代はどうでしたか? ここ1~2年は目まぐるしく環境が変わり、ご自身のご結婚も決まり、社会や自分自身の捉え方が変わったのではないでしょうか。ちょっと前には想像もできなかったことが、たくさん起きたことでしょう。亜和さんの20代総括

往復書簡 日々の音沙汰 ー第27回「誰かの絶望に引きずられるのが怖い」(伊藤亜和)ー

■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ジェーン・スーさま←伊藤亜和   前回お手紙を頂いたときはまだまだ暑かったかと記憶しておりますが、これを書いている今はもう、すっかり寒くなってしまいました。私は今、厚手のカーディガンを羽織り、コタツに潜りながらこれを書いています。まだ11月にもなっていないのに。先が思いやられます。  それにしても今年は大変な暑さでしたね。夏嫌いの私だって、気温が上がり始めた6月頃こそハイテンションで家の周りをウロウロ散歩しておりました。

往復書簡 日々の音沙汰 ー第26回「気持ちよく生きるには手間がかかる」(ジェーン・スー)ー

■前回の伊藤亜和さんからのお手紙はこちら ✉ 伊藤亜和さま ← ジェーン・スー  亜和さん、こんにちは。いつもならなんてことないお天気の話から書き出すのですが、いま、私は暑さにまつわる気候の話をすることに少しナイーブになっています。というのも、先日SNSでエゴサをしたところ、「ジェーン・スーはいつまでオープニングトークで暑い暑いと言っているんだ。ほかのパーソナリティーに比べて話のネタが乏しい」とラジオ番組について文句を言われているのを見つけてしまったからです。  暑さにつ

往復書簡 日々の音沙汰 ー第25回「生きたいところで生きて、自分と家族を守りたい」(伊藤亜和)ー

■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ジェーン・スーさま←伊藤亜和   9月も後半に差し掛かりました。ようやく涼しくなってきましたね。日中はまだ外を歩くと少し汗ばむくらいの夏らしさはありますが、日が沈んでしまえば、少し肌寒いほどです。冷房が苦手な私としては、外からのひんやりとした風に当たりながらキーボードを打っているだけで、なんだか蒸し暑かった頃よりいくらか良いものが書けているような気分にすらなってしまいます。どうかこのまま、秋がやってきてくれますように。  

往復書簡 日々の音沙汰 ー第24回「死んだらそれでおしまい」(ジェーン・スー)ー

■前回の伊藤亜和さんからのお手紙はこちら ✉ 伊藤亜和さま ← ジェーン・スー  8月下旬、夏に追い打ちをかけるような酷暑が続いております。今日は40度を記録した地域が日本で4か所もあり、史上初だったそう。こんな日に限って朝から外出の予定がありまして、10時前には早くも太陽の爛れた光に体の芯まで灼かれておりました。ぐったり。  40度って、もはやドバイです。アブダビでありドーハでありクウェートです。そろそろ温泉ではなく石油がドカンドカン出てもらわないと辻褄が合いません。

往復書簡 日々の音沙汰 ー第23回「お墓問題」(伊藤亜和)ー

■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ジェーン・スーさま←伊藤亜和  8月の半ばにこれを書いています。夏真っ盛りですね。ところで昨日、近所の100円ショップを通りがかった際、店員さんたちがせっせとハロウィングッズを並べている姿が目に飛び込んでまいりました。カンカン照りの太陽に晒されたカボチャのキャンディポケットも、心なしか戸惑っているように見えます。「さすがに気が早すぎるのでは」と、しばらくその様子を見ながら立ち尽くしていたのですが、私より後に通りがかった小学

往復書簡 日々の音沙汰 ー第22回「神輿が来たらすぐ逃げる」(ジェーン・スー)ー

■前回の伊藤亜和さんからのお手紙はこちら ✉ 伊藤亜和さま ← ジェーン・スー  暑さに言及せずとも自然に挨拶が交わせる日を心待ちにしています。まだ8月の頭ですから、2か月後くらいになるでしょうか。いや、下手したら2か月半後でしょう。10月の頭までは30度超えの日がありそうですものね。  私が子どもの頃、体感としての夏は7月と8月だけでした。いつの間にかどんどん幅を利かせるようになり、最初は長尻とでも申しましょうか、夏がなかなか去らない。挙句、今度は早く来るようになり、い