
新コンテンツ「ほっと、やわらか。司法書士がやさしく語る」
司法書士というと、「堅い」「難しそう」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
でも実は、私たちの仕事は日々の暮らしのすぐそばにあります。
相続のこと、不動産のこと、老後のこと。
ふとした瞬間に「あれ、これってどうなんだろう?」と気になるテーマばかりです。
「ほっと、やわらか。司法書士がやさしく語る」は、当事務所の司法書士たちが持ち回りで執筆するコンテンツです。
実務の中で気づいたちょっとした豆知識や、日々の仕事で感じたことを、やさしい言葉でお届けします。
お茶でも飲みながら、気軽に読んでいただけたら嬉しいです。
第2回目は、鈴木さんによる「おひとりさまの財産管理と財産承継について、家族信託などを活用して解決した事例」です。
同居の家族がおらず、相続人もいない「おひとりさま」。
高齢の「おひとりさま」が、もし財産を管理できなくなったらどうなるのでしょうか。
また、亡くなった後、その財産はどうなってしまうのでしょうか。
あなたの身の回りの「おひとりさま」について、 このような不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、「おひとりさま」の財産管理と財産承継について、家族信託などを活用して解決した事例をご紹介します。
ご相談内容

ご相談者様:男性(50代)
ご相談者様には、遠い親戚にあたる70代の女性がいらっしゃいます。
その方はいわゆる「おひとりさま」で、同居家族もおらず、相続人もいない状況です。
その女性は、亡くなった夫から相続した、多数の不動産、株式、預貯金などの多くの資産を所有しています。
しかし、ご高齢になったこともあり、現時点で財産管理が十分にできていない様子です。
また、相続人がいないため、「亡くなった後、誰が財産を引き継ぐのか」という点も決まっていません。
そこでご相談者様から、「ご本人の財産管理や将来の財産承継について、どのような対策をすればよいのでしょうか。まだ元気なうちに、何か手を打っておいた方がよいと思うのですが……」
というご相談をいただきました。
このまま何もしないと…
今回の場合、このまま何も対策しないと、どのようなリスクがあるのでしょうか。
相談者様のお話ですと、現時点でもご本人様は十分に財産管理ができていないということでしたが、この先ご本人が認知症になってしまうと、ご本人だけでは財産の管理や処分ができなくなります。
例えば、「介護施設に入るために不動産を売却したい」といった場合でも、本人の判断能力が低下していると手続きを進めることができません。
この場合、家庭裁判所で成年後見人を選任する必要があります。
また、認知症になると、銀行口座が凍結される可能性もあります。
この場合も、凍結を解除するには成年後見人を選任しなければなりません。
それならば、「もし認知症になったら、成年後見制度を使えばいいのでは?」と思うかもしれませんが、成年後見制度には次のようなデメリットがあります。
デメリット① 財産の処分が柔軟にできない
成年後見制度では、本人の財産を守ることが最優先となるため、自由に財産を処分することが難しくなります。
例えば、自宅を売却する場合は家庭裁判所の許可が必要となり、株式や投資信託の運用も制限されるといった制約があります。
デメリット② 継続的な費用がかかる
弁護士や司法書士などの専門職が後見人になる場合、月額2万〜6万円程度の報酬が発生します。
成年後見制度は、原則として本人が亡くなるまで続くため、その間ずっと費用がかかり続けることになります。
さらに、もう一つの問題は、「財産の承継先」です。
ご本人には相続人がいないため、何も対策をしていないまま亡くなると、財産は最終的に国庫に帰属する可能性があります。
また、その過程では、家庭裁判所で「相続財産清算人」選任申立てを行うなど、詳細は割愛しますが、関係者にとって非常に煩雑な手続きが必要になります。
このように、「おひとりさま」の財産をどうするか、何らかの道筋をつけておかないと非常に面倒な状況になってしまいます。
それでは、どのように対策したらよいのでしょうか?
ご提案
今回は、次のような対策をご提案しました。
まず、 ご本人を「委託者・受益者」、ご相談者様を「受託者」とする家族信託契約を作成する方法です。
家族信託契約を結ぶことで、ご本人は財産管理を受託者に任せることができ、受託者はご本人のために、財産の管理・処分・運用を行うことができるようになります。

そのため、将来ご本人が認知症になった場合でも、 介護施設の費用を捻出するための不動産の売却などの手続きを、成年後見制度を使わずに対応することが可能になります。
もちろん、認知症になる前であっても、契約さえ締結しておけば、それ以降は、煩わしい財産管理を信頼できる受託者に任せることができます。
また、家族信託では、委託者が死亡し、信託が終了したときに信託財産を引き継ぐ人(帰属権利者)をあらかじめ決めておくことができます。
そのため、「財産を引き継ぐ相続人がいない」という問題も解決することができます。
つまり、家族信託契約を結んでおけば、「現在の財産管理の問題」と「死後の財産の承継の問題」、悩ましい二つの問題を一度に解決することができるということになります。
また、最近では、株式などの有価証券を信託財産として管理する方法も広がっています。
家族信託専用の証券口座を利用することで、既存の株式を信託財産として移管するだけはなく、 信託金銭を使って新たに投資を行うことも可能になります。
今回のケースでも、資産を有効活用するために、信託財産の一部を運用に回す方法をご提案しました。
なお、「委託者・受益者」と「受託者」の関係について、今回のケースでは遠い親戚の間柄となります。
一般的には「委託者・受益者」と「受託者」の関係は親子同士となることが多いのですが、「父」と「娘の配偶者」(義理の親子)、「祖父」と「孫」といった、相続人同士ではない間柄でも契約を作成することは可能です。
ただし、信託金銭や信託有価証券を管理するための口座を開設する金融機関によっては、「委託者・受益者」と「受託者」の間柄に一定の条件を設けている場合もあります。
今回もケースでは問題なく口座開設を行うことができましたが、注意が必要です。
公正証書遺言もあわせて作成
さらに、家族信託に加えて、「公正証書遺言の作成」もご提案しました。
家族信託で管理する財産については、帰属権利者の指定によって死後の承継先を決めることができます。
今回のケースでも、ご本人様のほとんどの財産を家族信託の中で管理する予定ではありましたが、信託の対象外の財産については、依然として相続人がいない状態になってしまいます。
そこで、「信託財産以外のすべての財産を誰に承継させるか」を定めるため、公正証書遺言の作成も提案しました。
なお、家族信託契約、遺言書作成は、いずれも意思能力が必要な法律行為です。
そのため、ご本人様が認知症になる前に行う必要があります。
今回は、ご相談者様に、対策するには今しかチャンスがないことをご説明し、ご本人にもご理解をいただき、
・ご相談者様が財産を管理し、承継する「家族信託契約」
・信託以外の財産をご相談者様が承継する「公正証書遺言」
の二つを無事に作成することができました。
おわりに
今回は、「おひとりさま」の財産管理と財産承継について、家族信託を活用した事例をご紹介しました。
おひとりさまの場合、財産管理、将来の介護費用、死後の財産承継などについて、早めに対策を考えておくことがとても重要です。
UNIBESTでは、お客様の状況に合わせて、オーダーメードの財産管理・承継プランをご提案しています。
「おひとりさま」の問題について不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

