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鹿児島県の宇宙ビジネス創出に「県庁がリーダーシップ」–2つの強みを生かして産業発展へ
2025.10.24 08:00
日本で唯一、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット発射場を2つ(「種子島宇宙センター」「内之浦宇宙空間観測所」)有する鹿児島県。2025年10月には、九州地域における宇宙ビジネスの裾野拡大を目指すカンファレンス「九州宇宙ビジネスキャラバン2025鹿児島」が初開催されるなど、県内における宇宙産業振興の機運も高まりつつある。そこで、鹿児島県 商工労働水産部 部長の北村貴志氏に、射場の民間活用も見据えた今後のロードマップや、宇宙関連予算の考えなどについて話を聞いた。

鹿児島県の持つ「2つの強み」
ーー鹿児島県では2022年度に「鹿児島県宇宙ビジネス創出推進研究会」を立ち上げ、宇宙ビジネスへの理解を深めるイベント開催やマッチング支援などを進めてきたかと思います。発足から2年以上が経ちましたが、現在の手応えはいかがでしょうか。
研究会の活動を続ける中で、2024年度に鹿児島における宇宙関連産業の発展に向けた将来像を描き、そこに向かってのゆるやかなロードマップを策定しました。それと同時に、宇宙業界に参入または参入を検討している県内企業がどれほどいるのかを把握するためにマッピングなどもして整理したところです。
県内にも宇宙ビジネスに関心を持っていただいている企業が多数生まれつつあり、たとえば、(マッピングした全体像を指しながら)ハードウェア製造でいうと、さまざまな企業や大学が「鹿児島ハイブリッドロケット研究会(Team KROX)」という組織で一丸となって、ハイブリッドロケットを作ろうとする動きがあります。また、地上局の製造ではエルムという唯一無二の企業もありますし、射場の整備運用や燃料製造などに取り組む企業もあります。さらに、衛星で得られたデータを活用して社会課題につなげる企業や、宇宙をテーマに食・観光に展開する企業も現れています。

もちろん、今はまだ投資をすぐに回収できるフェーズではないため、政府の支援も得ながら粘り強く取り組んでいく必要があります。そうした状況も認識いただきながら、将来的には大きな動きになっていくことを見込んで、県内企業には宇宙ビジネスに関心を持っていただくことが重要だと思っています。
ーー改めて、宇宙産業における鹿児島県の強みとそれらをどう生かしていくのか教えてください。
1つ目はやはり2つの射場を有しており、企業の皆さんからの関心も高いことです。日本では全国的に射場が限られている中、鹿児島は赤道にも近く、発射する東側を通過する航空機や船も少ないため、打ち上げには絶好の場所と言えます。民間企業の皆さんの声も伺いながら、射場の活用可能性について検討しているところです。

2つ目は実証フィールドです。鹿児島県は、日本一を誇る和牛や荒茶生産量日本一のお茶、生産量日本一の養殖ウナギ・ブリ・カンパチといった食材の宝庫であり、屋久島と奄美大島・徳之島の2つの世界自然遺産をはじめとする雄大な自然があります。
南北600kmの広大な離島も含めた県土がありますが、なかなか全てを把握できているわけではありません。こうしたところに衛星データなどを活用する余地が大いにあります。すでにアークエッジ・スペースのような県外の宇宙企業から興味を持っていただいておりますところ、現地の社会課題の解決に取り組んでいただける企業をしっかり応援していきたいと思っています。

将来的には、こうした地域の顕在化した課題に先行して取り組むことで、しっかり“鹿児島モデル”を作り、日本全国あるいはアジアなど世界に対して売り込んでいくことが重要だと思っています。
ロケット射場の「民間利用」は?
ーー射場の民間利用についてもう少し聞かせてください。鹿児島県の宇宙産業発展に向けたロードマップでは、2030年代に射場の活用を図りながら県外からもロケット打ち上げ企業を誘致。2040年代には県内ロケット製造サプライチェーンも確立したいとしています。

まず、JAXAの打ち上げについては、引き続きインフラ整備をはじめ、打ち上げ時のパブリックビューイングの実施にいたるまで、全面的に協力したいと思っています。その上で、世界的な流れとして国の宇宙開発機関のみならず、民間企業もどんどん参入しており、ロケット打ち上げが高頻度化してコストも低くなっていきますが、この流れは止めてはいけないと思っています。
実は(鹿児島県のロケット射場で)打ち上げをしたいとおっしゃっている民間企業もいます。ただし、すぐに民間利用というわけではなく、信頼関係を構築しながら、段階を踏んで連携を深めていくのがいいのではないかと思っており、JAXAや関係省庁、民間企業とも話し合いをしながら取り組んでいるところです。
ーー宇宙ビジネスに取り組む県内企業への補助金の交付状況や県の宇宙関連予算の規模についてはいかがでしょうか。
補助金については、これまで8社の県内企業を採択しており宇宙ビジネス創出に取り組んでいます。また、2025年度は新たに4社が採択され、現在は12社を支援させていただいています。一例として、千葉工業大学がこの5月に鹿児島県肝付町で小型ハイブリッドケット(C0-1号機)の打ち上げ実験に成功しましたが、その際のロケット発射台は鹿児島市の南光が「令和6年度 鹿児島県宇宙ビジネス共創支援事業補助金」を得て製作しました。

(宇宙関連予算について)2025年度は2200万円です。もう少し増やしたい気持ちはありますが、県の財政状況も鑑みますと、まずは呼び水としてこの予算を活用いただいた上で、もう少し事業可能性がしっかり見えてきたら、ぜひ経産省や宇宙戦略基金などにもトライいただき、具体的なプロジェクトにつなげていけたらと思っています。
一方で、プロジェクトをどうお金に変えていくのかというのは難しいところもあります。たとえば、赤潮で大きな被害が出ているとか、他の分野でも本当に困っているといった“ウォンツ”が強くないと、なかなか具体化を図れません。いま各事業者さんは、ビジネスチャンスを探っている状況ですので、そういうチャレンジに対して、県としては支援をして、プロジェクト育てていきたいと思っています。
まずは県庁が「リーダーシップをとる」
ーー日本各地の宇宙の取り組みを見ていくと、やはり自治体の熱量がとても重要だと感じます。その点で鹿児島県はいかがでしょうか。
鹿児島県内には宇宙ビジネスに関心のある、あるいは潜在的に可能性を有する企業が多数いますので、宇宙ビジネスに可能性を知ってもらって、参入してもらうことが非常に重要だと考えています。そこで、2024年には宇宙ビジネスの動きが加速していることを知ってもらうために、関心の高そうな県内企業に数社お声がけして、(東京・日本橋で開催された宇宙イベント)「NIHONBASHI SPACE WEEK 2024」に参加するなど、まずは県庁がリーダーシップをとる形で取り組んでいます。
また、今年度に鹿児島県で「九州宇宙ビジネスキャラバン」を開催できたことは、まさに適切なタイミングでの実施となり、県内企業にとっては非常に刺激のある場だったと思っています。県外から多様なプレイヤーの皆さんにも参加してもらい、その方たちから具体的な目標や取り組みなどを語っていただくことで、県内企業の方には宇宙ビジネスの可能性や熱意を認知いただけたと思います。


鹿児島県内の民間企業による宇宙ビジネスはまだスタートしたばかりです。県には長年にわたり射場がありますが、それ以外の宇宙ビジネスの領域は、これからしっかり温めていくフェーズだと思っています。県内外のプレイヤーをマッチングさせて、宇宙ビジネスに参入できる余地は大いにあると思っています。
ーー経産省は9月に、東北での宇宙産業振興において角田、能代、南相馬の3市での広域連携を検討すると発表しました。こうした動きは九州でもあり得るのでしょうか。
「九州宇宙ビジネスキャラバン」が各地で持ち回りで開催されていることも非常に面白い取り組みだと思いますが、私としては、ぜひ九州が一丸となって連携していければと思っています。たとえば、福岡や北九州を中心にもの作りをして、鹿児島から衛星などを打ち上げ、そこで取得した衛星データで九州全体の課題を解決し、最後に大分に宇宙機が降りる、そういう姿は1つあるのではないかと思っています。
やはり各県が同じようなことをやっていても致し方がないところもあります。それぞれの長所短所を見ながら機能分担して取り組むことは、方向性として私は適切ではないかと思っています。この辺りは、九州経済産業局とも相談しながら、九州一体で宇宙ビジネスを盛り上げられたらと思います。



