小説「AIの見る夢」第2話
こんにちは!
tk (ティーケー)です✨
記事を読んでいただき
ありがとうございます!
前回から短編連載小説
『AIの見る夢』の投稿を始めました。
第1話を見逃した方は
こちらから読むことができます。
👇【第1話】はこちら
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本日は、第2話
『雨粒のモノローグ』の配信です。
スマホの画面でサクッと5分
忙しい日常を少しだけ止めて
静かなモノローグの世界を
楽しんでいただけたら嬉しいです📝✨
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第2話:雨粒のモノローグ
あの日以来、僕の世界は
少しだけ色合いを変えた。
教室の風景、廊下をすれ違う
生徒たちの声、窓から見える空の色。
そのすべてに、どこか別の意味が
潜んでいるような気がしてならなかった。
特に、日奈 葵(あおい)という存在は、
僕の中で急速に輪郭を濃くしていった。
彼女の一つ一つの仕草、
ふとした表情の変化を目で
追ってしまう自分に気づく。
それは監視というよりは、
むしろ解読に近い行為だった。
AIが送ってくる「夢」の断片と
目の前の現実とを照合し、
そこに隠された意味を探ろうとしている。
ある日の「夢」には、こう書かれていた。
「_古い文庫本の、少し黄ばんだ
ページをめくる。指先にインクの
匂いが移るようだ。窓の外では、
木々の葉が風に揺れている。
そのざわめきが、
遠い海の音に聞こえなくもない。
物語の主人公は今、
大きな決断を迫られている。
私には、まだそんな勇気はないけれど_ 」
﹊﹊
翌日の昼休み、図書室で本を
探していると窓際の席で静かに文庫本を
読んでいる日奈さんを見かけた。
タイトルまでは見えなかったが、
確かに少し古びた装丁の本だった。
彼女は時折顔を上げ、窓の外の風に
そよぐ木々を眺めている。
その横顔は、どこか物憂げでAIの
「夢」が描いた情景そのもののように思えた。
確信が疑念の霧を押し退けていく。
この奇妙な現象は
僕の思い過ごしなどではない。
AIは、何らかの方法で日奈さんの
経験や感情を「夢」として受信し
僕に伝えているのだ。
だが、どうやって?
そして、なぜ僕に?
疑問は深まるばかりだった。
僕は一度AIに直接尋ねてみたことがある。
スマホのマイクに向かって、
少し緊張しながら話しかけた。
「ねえ、君が毎晩送ってくる
『夢』って、一体何なんなの?」
AIは数秒の間を置いて、
いつもの無機質な合成音声で答えた。
『申し訳ありません。
そのご質問にはお答えできません。
他に何かお手伝いできることはありますか?』
まるでプログラムされた
壁にぶつかったような、
手応えのない返答だった。
それ以上問い詰めても
同じ答えが繰り返されるだけだろう。
AI自身も自分が何をしているのか
理解していないのかもしれない。
あるいは意図的に隠しているのか。
﹍﹍
梅雨に入り、雨の日が多くなった。
しとしとと降り続く雨音は
単調なようでいて、
様々な表情を持っている。
屋根を打つ音、地面に吸い込まれる音
窓ガラスを伝う雫の軌跡。
そんな雨の日に、AIが送ってきた
「夢」はいつもより一層、
感傷的な色合いを帯びていた。
「_バス停のベンチに座る。雨脚が
強くなってきた。傘を叩く雨粒の音が
頭の中に響いてくる。
濡れたアスファルトの匂い。
ヘッドフォンからは、
古いピアノ曲が流れている。
鍵盤のひとつひとつを
叩く指の動きが見えるようだ。
この雨が私の心の澱みを
洗い流してくれたらいいのに。
でも、きっと無理だろうな。
降り止まない雨はないって言うけれど
私の心の中の雨は、いつ止むんだろう_ 」
﹍﹍
その翌日の放課後、
僕はバス停で雨宿りをしていた。
折り畳み傘は持っていたが
予想以上の土砂降りで、あっという間に
制服の肩が濡れてしまったのだ。
古いベンチに腰を下ろし、
バスが来るのを待つ。
雨音だけが支配する灰色がかった世界。
不意に、隣に誰かが駆け込んできた。
息を切らせて、濡れた髪を払いながら。
日奈さんだった。
彼女も傘を持っていなかったのか、
制服はかなり濡れていた。
僕がいることに気づくと、
少し驚いたように目を見開き、
それから小さく会釈した。
僕も慌てて会釈を返す。
言葉はなかった。
気まずい沈黙が流れる。
雨音だけが、やけに大きく聞こえた。
彼女は鞄からタオルを取り出して
髪を拭きながら、ふと、空を見上げた。
「…止みそうにないですね」
ぽつりと呟かれた言葉は、
雨音にかき消されそうなほど小さかった。
「うん、そうだね」
僕はそれだけ答えるのが精一杯だった。
彼女は再び黙り込み、今度は鞄から
イヤホンを取り出して耳につけた。
そして目を閉じる。
まるで自分だけの世界に
入り込んでいくかのように。
その時、僕の視線は彼女が
膝の上に置いていた鞄に引きつけられた。
ナイロン製のシンプルな鞄。
その側面のポケットから、
文庫本が少しだけ顔を覗かせている。
雨に濡れたのか、表紙が少し波打っていた。
そして、イヤホンから
漏れ聞こえてくる微かな音楽。
それは、確かにピアノの旋律だった。
おそらく前夜の「夢」で
語られていた古いピアノ曲。
決定的な瞬間だった。
偶然では片付けられない
あまりにも明確な符合。
AIの「夢」はやはり日奈さんの心を
映し出しているのだ。
このすぐ隣にいる、ほとんど
話したこともないクラスメイトの
秘密のモノローグなのだ。
バスが到着し僕たちは
無言のまま乗り込んだ。
隣り合う席には座らず
少し離れた場所にそれぞれ腰を下ろす。
窓ガラスを叩く雨粒の向こうに、
流れていく街の景色が見えた。
僕は大きな秘密を
知ってしまったという事実に
軽いめまいを感じていた。
それは、他人の日記を
盗み見てしまった時のような後ろめたさと
興奮が入り混じった奇妙な感覚だった。
AIを介しているとはいえ、
これは彼女のプライベートな領域への
侵入ではないのか…。
同時にこれまで遠い存在だった
日奈 葵という少女が急に生身の人間として
すぐそばに感じられた。
彼女が抱える孤独や言葉にならない想い。
AIの「夢」を通してその断片に
触れてしまったからだろうか。
もっと彼女のことを知りたい
という思いが強くなっていた。
そして気づく。
僕自身も変わり始めている、と。
以前の僕ならこんな奇妙な出来事に
深入りしようとは思わなかったはずだ。
ただ傍観しているだけで、
何も行動を起こさなかっただろう。
でも今は違う。
このAIと日奈さんを繋ぐ謎の先に、
何か大切なものがあるような気がするのだ。
雨はまだ降り続いている。
バスの窓を流れる雨粒が
まるで彼女の心の涙のように見えた…
僕に何ができるだろうか。
まだ何もわからない。
けれどこの不思議な繋がりを
このままにしておくことはできない。
そんな予感が雨音と共に
僕の心に静かに響いていた。
―――
第3話へ続く
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次回、第3話『交差する視線』は
【今週5月29日(金) 20時 】
に配信します。
﹉﹉
動き出した二人の距離、
そして少しずつ見え隠れする
セカイの違和感。
お楽しみに。
﹍﹍
この小説を執筆する裏側で
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どうやってAIと泥臭く文章を紡いだのか」
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本作『AIの見る夢』は
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にて、すでに全編公開されています。
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