幸せなネズミ
家には子供がいる。妻がいる。
晴れの日は森に行く。綺麗な森だ。
晴れの日が続いた。
森の向こうには海があると聞いた。
行ってみたかった。だから行こうとした。
そこに向かう途中、疲れ果てた街のネズミをたくさん見た。
毎日あくせく必要以上のチーズを集めている。
中には集めさせているボスネズミがいた。
海に行くには、まずここで働くらしい。
お金を稼いで、みんなと同じ電車に乗らないといけないらしい。
電車のネズミはみんなと同じ髪型と服を着ていた。
僕もその服を着るようになった。
気付けば40年、あっという間だった。
記憶にあるのは昨日の飲み会くらい。
なぜ、ここに来たか忘れてしまった。
帰る場所も、どこへ行くかも忘れた。
たしか、海へ向かおうとしていたはずだった。


