草花イラスト/宮崎 朱美 © 2018 Akemi Miyazaki
トトロイラスト/宮崎 駿 © Studio Ghibli
| ISBNコード・Cコード | 978-4-00-061273-9 C0095 |
|---|---|
| 書名 | トトロの生まれたところ |
| 定価 | 1,296円(本体価格 1,200円) |
| 発行年月日 | 2018年5月29日(小社出庫日) |
| 判型等 | B5判変型・並製・80頁 |
| 著者 | 宮崎 駿 監修/スタジオジブリ編 |
映画『となりのトトロ』の舞台となった所沢。本書では、所沢に住む草好きの宮崎朱美さんが四季折々の自然の魅力や植生を、繊細で美しいスケッチと日記を通じて紹介。また、当時宮崎駿監督が思い描いたトトロの世界が、そのまま映し出されたイメージボードを、所沢への今の想いを語った監督インタビューとともにお届けします。
30年経って、ああ、そういうことだったのかとわかる話がある。去年のことだ。梅雨の合間を縫って、
「トトロの生まれた場所を案内したい」
と宮さん(宮崎駿)が言い出した。話は何度も聞いていた。宮さんが、日曜日ごとにゴミ拾いに出掛ける淵の森。そして、かみの山は素晴らしい、と。話を詳しく聞くと、このままだとこのかみの山の開発が始まる。それを何とか食い止めたい。
話しているうちに、それだけじゃ物足りなくなって、ぼくを案内すると言い出したのだ。
百聞は一見にしかず。
宮さんという人は、元を正すと、東京のど真ん中で生まれ育ったいわゆる“街っ子”だ。それが結婚を機に、所沢に居を定める。いまから50年くらい前の話だ。そして、家の近くを散策するうちに思いついたのがあの『となりのトトロ』だった。それが証拠に、最初のタイトルは『所沢にいるとなりのおばけ』で、それが縮んで『となりのトトロ』になった。
新秋津の駅で待ち合わせ、まずかみの山を歩く。西武線に沿って真横に歩く。線路と道の真ん中を雑木林が遮る。気がつくと自分の居場所がわからなくなった。同行した所沢市在住のKさんが自慢する。
「土地の人は、この道を軽井沢だと言っています」
大袈裟じゃない。もしかしたら、それ以上だ。
道の突き当たりを曲がると淵の森だ。宮さんから、耳タコで聞かされていた地名なので親近感が湧く。そして、八国山へ。映画のなかでは、七国山と紹介されている。
松が丘を登ると、八国山へ出る。ぼくは、そこで不思議な感覚に襲われた。緑の美しさに現実感を喪う。そこは、まるで“神さまの住処”のような一遇だった。そして、ふと思った。
かみの山、淵の森、八国山は、宮さんの身体の一部になっている。それを喪うということは、宮さんにとっては文字通り、身を切られる出来事なのだ。散歩の途中で、宮さんが洩らした。
「所沢に住んでいなければ、『トトロ』は生まれなかった」
ぼくは、宮さんに対して、はじめて畏敬の念を抱いた。歩いて、観察して、感じたであろうその感受性に対して。
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