書籍『大いなる信頼詐欺:コンサルティング産業はいかにしてビジネスを弱体化させ、政府を幼稚化させ、経済を歪めるか』2023年
➢ 政府支出の40%(90兆円)がコンサル経由
➢ コンサル産業が仕掛けた罠:国家能力の喪失
➢ 気候変動対策を助言しながら、汚染企業にサービス提供
新型コロナの検査体制から気候変動対策まで、見えないところで巨額のコンサルティング料金に消えている。McKinsey、BCG、Big4会計事務所など大手の市場規模は年間70~90兆円。彼らは「専門家」の看板を掲げるが、その実態は利益相反まみれの影の政府だ。
🔹増え続けるコンサル依存
英国政府はパンデミック対応でテスト・追跡システムにコンサルタントへ1日100万円以上を支払った。フース保健相は「政府内に必要なスキルが不足していた」と説明するが、これがまさに問題の核心だ。外部に依存すればするほど、内部の能力は低下する。この悪循環を著者らは「組織の幼稚化」と呼ぶ。
🔹気候変動対策の「二枚舌」
オーストラリア政府は気候科学の専門機関CSIROではなく、マッキンゼーに6億円を投じて脱炭素計画を委託。しかしそのマッキンゼーは、同じ時期に世界の大気汚染企業43社にもコンサルティングを提供していた。一方で気候対策を助言し、他方で汚染企業を支援する——この利益相反が公共政策の健全性を脅かしている。
🔹透明性なき巨額契約
コンサル契約の詳細はほとんど公開されない。英国では税制改正の法案作成に関わったコンサルタントが、その後その知識を活用して企業の税回避を支援する事例が発覚。Big4は世界53の秘密管轄区域(タックスヘイブン)に8万人超を配置。ケイマン諸島、バミューダ、ルクセンブルクでの人口比スタッフ数は異常に高い。推定21~32兆ドルの資産隠しを支援し、年間4270億ドルの税収が失われている。
📌 「学ばない組織」の末路:能力喪失の自己強化サイクル
デンマークは2000年代、行政デジタル化を全面外注した。2017年、EU税制改革への対応が不可能になった。「知識は少数ベンダーの頭の中にあり、我々は何も知らない」と公務員は証言。ITシステムが政治を支配し、政治がシステムを支配できなくなった。
外注依存は能力喪失を招き、能力喪失がさらなる外注を生む。この自己強化サイクルこそ、コンサル産業が仕掛けた罠だ。
英国は2011年、政府デジタルサービス(GDS)を設立し内製化に転換。デンマークは2021年、コンサル支出を半減させ省庁横断の公的分析機関を創設した。透明性改革として、全コンサル企業に顧客リストと利益相反の開示義務化、低価格入札(ローボール)の禁止が必要だ。株主にリスク開示するように、コンサルは納税者と顧客にリスクを開示すべきである。
参考文献:THE BIG CON: How the Consulting Industry Weakens our Businesses, Infantilizes our Governments and Warps our Economies (2023) - Mariana Mazzucato and Rosie Collington
