プロに反転空後のコツを聞く人達のこと
「反転空後の出し方を教えてください」
この手の質問を見かけたことは一度ぐらいはあるのではないだろうか?簡単に言えば「スティックを反対側に倒して振り向いた後にジャンプして再び反対側に倒してA(もしくはCスティック)」である。たった一文で説明が済むこの基礎テクニックのコツをしつこく聞いて回る者は多い。その状況に辟易した一人のプロは動画内で声明を出した。
「俺に聞く前にまず10時間練習してみてくれ」
まったくもってその通りである。
・なぜプロは質問責めをされるのか?
スマブラには「勝敗」が存在する。勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。勝てるようになるには時間をかけて操作の練習をする必要がある。そして初歩の段階で学ぶべき技術や知識は意外と多いものである。始めたばかりの初心者ではオンラインマッチで一勝することもままならないだろう。彼らは勝てるようになるまでの間、いわゆる「逆VIP」で苦しい時間を過ごすことになる。困ったことに、楽しむためにゲームを買ったはずなのに楽しくないのである。ここに「ウラワザ」を求める心理が働くのではないかと思う。「プロが知っているテクニックを教えてもらえば時間をかけて練習しなくても一足飛びで上達できるかもしれない」という淡い期待だ。
それはインターネットの海に漂う「皆が知らない秘密の抜け道で大儲けしてみませんか?」「未経験でも年収2000万円を稼げるようになるテクニックを教えます」といった胡散臭い広告に飛びついてしまう心理に似ているのではないだろうか?根底にあるのは「今からまっとうに努力をしても周りに追いつけるわけがない」という不安と焦燥である。彼らを努力もせずに他人に頼るだけの無能者と断ずるのは簡単だ。しかしその裏にはきっと彼らなりの苦悩があるのだろう。そして彼らの関心を特に惹くのが
〇〇は〇〇するだけで勝てる!
といったようなタイトルの動画である。先にことわっておくが、このゲームは特定の行動を繰り返しているだけで勝つことは難しい。相手も人間なのでワンパターンな行動は読んでくるし、OP相殺(同じ技を連続で当てると弱くなっていくシステム)もある。しかしキャラクターの強みをわかりやすく説明するためか(もしくは再生数のためか)、この手のセンセーショナルなタイトルを動画につける者は後を絶たない。
「細かい技術が無くても、これさえ覚えれば大丈夫!」
それは初心者を安心させるための気配りなのだろう。しかしこういった動画につくコメントこそが「反転空後のコツを教えてください」なのである。「特定のテクニックのコツさえ知っていれば勝てるようになる」ものだと誤認させてしまっているのだ。実のところ、プロ達も同様のタイトルをつけた動画を何本も投稿している。つまり「質問責めにしてくる初心者を呼び寄せるエサを撒いておきながら、しつこい質問責めにウンザリして怒っている」のである。いわば自業自得なのだが、この構図を改善することは難しいのだろうと思う。動画の再生数を得るためにはインパクトのあるタイトルが必要だし、それは投稿者にとって切実な問題なのだ。
・暴徒化する初心者
プロ達がウンザリしているのはなにも質問責めだけが原因ではない。質問責めにしてくる初心者達(以降、「彼ら」と呼ぶ)は自分の質問に答えてもらえないとわかった途端、「荒らし」に変異するのである。「プロを名乗っているくせに初心者を無視するのか」「お前のような心の狭い人間が居るから格闘ゲーム界隈は衰退するんだ」「調子に乗るな」こういったコメントを見かけたことは一度や二度ではない。実際のところプロ達は初心者向けの記事を精力的に投稿しているし、細かいテクニックの説明も行っている。驚くほど献身的なのだ。しかし「彼ら」が不満の色を隠すことはない。それは根本的な思考に起因しているのではないかと思う。
・上手くいかないのは「他人のせい」?
「相手が画面を見ていないせいで負けた」「意味不明なぶっぱをしてくるから負けた」「脳死で技を振り回してくるせいで負けた」
Twitterで時々見かけるこの文章は一見すると意味不明だが「この失敗は自分の責任ではない」ということを説明するために努力した形跡が窺える。「防衛機制」という言葉がある。受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムである。「彼ら」は試合に負けたことによるストレスを軽減するために、無意識的に他人を攻撃してしまうのだ。言い訳を止め、自分の責任であることを受け入れて練習と改善に励まなければ成長することはできない。しかし本能的にそれらを避けているため、いつまでたっても同じ場所をぐるぐると回りながら不満を漏らす悪循環に陥ってしまっているのである。
その結果「自分が上手くいかないのはたまたまスランプにハマってしまっているせいだ」「上級者のアドバイスがあれば勝てるようになるに違いない」という思考に至るのは当然の成り行きなのだと思う。そしてコメント欄に居座り、自身の要求を訴え続けるのである。
「自分は何も悪いことをしていないのに勝てない!勝てるようになるコツを教えてくれ!」
・最後に
この記事は決して初心者を貶めるためのものではないことを明記しておく(これも言い訳かもしれないが)。
自分の失敗を受け入れることは大人でも難しい。それをメイン層の子供たちに要求することは酷なことなのかもしれない。「彼ら」の暴徒化はプロの声明動画によって一時的に沈静化したが、この問題が完全に解決することはおそらく無いのではないかと思う。
この記事を読んでくれた初心者の方々へ
上達したいのであれば負けを対戦相手のせいにしたり、交流の無い他人を質問責めにしたりするのはやめましょう。試合のリプレイを見直すなど、自分の失敗から学ぶ姿勢があれば必ず上達します。
これさえ覚えれば勝てるようになります!!
あっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
おわり
