古材利用の観点からの構造コラム「古材で、確認申請」 2026年3月

河本和義住宅医協会理事・住宅医 /一級建築士事務所TEDOK代表 / 岐阜県


©TEDOK(Timber Engineering and Design Organization / K)

昨年2025年4月に建築基準法の改正が行われました。改めて、現時点での木造の構造設計ルートは、
壁量計算
許容応力度計算(ルート1:令第82条第一号~三号までの計算を行う)
許容応力度等計算
保有水平耐力計算
限界耐力計算
その他の設計法(時刻歴応答解析に基づく方法等)
があります。そして、既存建物の耐震性能評価方法として、耐震診断法があります。

住宅医が手掛ける木造建築物の改修においては、主にはこの耐震診断により、既存建物の耐震性能の把握、耐震補強による性能確認を行っていると思います。また、新築同等以上の耐震・耐風性能を目指し、上記のような構造計算方法によって確認している場合もあると思います。これらには、基本、古材が用いられており、この古材利用の観点から、今回の題目「古材で新築確認申請」に触れようと思います。

木材の経年変化による強度等の変化(古材の構造性能)については、木材の先生にお願いして、構造計算、確認申請や耐震補強の補助金申請の観点から、古材の取り扱いについて考えたいと思います。

耐震診断において、木部材の強度的な扱いについては、劣化の有無によって判断されていると思います。木造住宅の耐震診断と補強方法2012年改訂版※1における一般診断法においては、劣化度による低減係数によって建物全体に、精密診断法においては、壁部材の劣化による耐力低減係数により部位ごとに二次的三次的に考慮できていると考えています。
※1 2025年改訂版では、一般診断法の劣化度による低減係数については変更なし。精密診断法では、壁の劣化低減係数、軸組の劣化低減係数の2つの指標となっている。

一方、構造計算においては、前述の構造計算ルート①~⑥において、仕様規定を満足する必要があります※2。なお、⑤⑥については、耐久性等関係規定のみ満たせばよいこととなっています。これらの規定のなかで木材(今回は古材)に関する部分は以下になります。
※2 令和7年4月改正、告示第1100号第6号より、同告示第2~4までの壁量に関する規定は適用除外とすることができるようになりました

<耐久性等関係規定>
第41条 木材
構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質は、節、腐れ、繊維の傾斜、丸身等による耐力上の欠点がないものでなければならない
<その他の仕様規定>
第44条 はり、けたその他の横架材には、その中央部分附近の下側に耐力上支障のある欠込みをしてはならない
第45条 筋かい
1項 引っ張り筋かいの最小断面、筋かいの材料
2項 圧縮筋かいの最小断面、筋かいの材料
3項 筋かい端部の緊結
4項 筋かいの断面の欠込み
第46条 構造耐力上必要な軸組等
1項 壁量計算
2項 木材の種類・品質、柱脚の接合方法、構造計算(許容応力度計算によるによる安全性の確認)、方杖の規定
3項 床組・小屋組に関する規定
4項 耐力壁の量及び配置に関する基準
<直接木材に関わらない仕様規定>
第42条 土台及び基礎
第47条 構造耐力上主要な部分である継手又は仕口
第48条 学校の木造の校舎(廃止、令6国交告第445号が制定)
第49条 外壁内部等の防腐措置等

太字の部分が、今回のコラムに関係の強い項目になります。

木材(古材)の品質・状態(構造性能を判断する)を担保することになるのですが、構造計算の方法によって求められるものが異なってきます。大きくは、壁量計算と②~⑥壁量計算以外に分けることができると思います。

壁量計算では、仕様規定に基づき壁量計算を行う方法のため、部材の材料強度まで必要ではありません。そのため、仕様規定に基づく木材の品質の担保は、「構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質は、節、腐れ、繊維の傾斜、丸身等による耐力上の欠点がないものでなければならない」を確認できれば、古材利用ができると言えます。
一方、壁量計算以外については、構造計算を行うため、部材の材料強度が必要となります。木材の材料強度は、JAS材であれば強度が定められていますが、JAS材でない場合は強度が定められておらず、構造計算には用いることができません。だだし、告示 昭62建告第1899号1項による令第82条より、令89条告示平12建告第1452号に定めるように、旧製材の日本農林規格(昭和42年農林省告示第1842号)第10条におけるひき角類1等の基準に適合することが確認できた場合は、いわゆる無等級材として材料強度が与えられており、構造計算に用いることができます。
ただし、建築基準法施行令第46条2項に定める集成材等を用いて水平力に抵抗できる架構を構成する方法(木質ラーメン等)については、構造用集成材の日本農林規格(JAS)第3条に規定する集成材等(製材の日本農林規格における目視等級区分製材又は機械等級区分製材の規格に適合し、原則として含水率の基準が15%以下あること)が要求されるため、古材利用は不可能と言えます。

このように構造計算ルートにより、古材の利用の可否、利用の際の要求項目が異なります。これを前提として、次に確認申請について、実際に求められた手続きをご紹介します※3
※3 現在進行中の案件のため、最終結果ではありません

□第41条 木材
□第44条 はり、けた横架材の耐力上支障のある欠き込みがないことの確認
□第45条 筋かいの品質
・調査時に、耐力上の欠点のないことの確認。
・確認申請時に、「使用構造材料一覧表(構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質)」により、節、腐れ、繊維の傾斜、丸身等による耐力上の欠点がないことを明示
・完了検査時に、耐力上の欠点がないことが確認できるように、調査報告等*4の提出

□第46条 木材の材料強度
・無等級材の品質であることの確認
・無等級材において、樹種により強度が異なるため、樹種の確定
・上記同様、調査報告書等※4の作成・提出

※4 現在進行中の案件のため、どの程度のレベルの報告書が必要となるかはわかりません。
例えば、「旧製材の日本農林規格(昭和42年農林省告示第1842号)第10条におけるひき角類1等の基準」の各項目それぞれの適合の有無をすべての材料についてまとめる必要があるとなるとかなりハードルが上がってしまうかと思います。別件(壁量計算ルート)では、そこまでの項目を求められませんでした。また、もうひとつの案件では、限界耐力計算案件についても実施に至りませんでしたが申請機関の見解は 第41条を確認すればよいという見解でした。このように、各申請機関の判断によるのが実情だと思います。

壁量計算ルートであれば、第46条における材料強度の設定が必要なしの手続きとなり、壁量計算以外のルートであれば、第46条の材料強度の設定が必要となります。
この材料強度についてですが、私の事務所では、名古屋大学大学院生命農学研究科山﨑真理子教授に古材調査を依頼しています。山﨑先生の研究のひとつである「応力波を用いた部材ヤング率の非破壊検査」により古材のヤング係数を計測し、利用の可否や材料強度の推定を行っています。こちらの詳しい内容について知りたい方は、山﨑先生の論文等 を読んで頂ければと思いますが、前述のような目視検査だけではなく、数値的な確認を行い古材利用しています。ちなみに先日は、その材料を岐阜県森林文化アカデミーオープンラボで実際に初期曲げ試験(非破壊試験)を行い、荷重をかけてヤング係数を確認する方法にてヤング係数の確認を行いました。

このように、木造建築物の改修において、新築同様に確認申請を行うルートを考える際には、古材の扱いがポイントになります。確認申請において、構造計算ルートにより古材に求められる確認項目が異なります。また、古材利用において、目視による調査では、「旧製材の日本農林規格(昭和42年農林省告示第1842号)第10条におけるひき角類1等の基準」が基準となります。加えて目視だけでなく、材料自体のばらつきなどを考慮した数値的確認を行うことにより、より安全性の高い設計を行うことができます。
以上が、古材利用の参考になればと思います。

河本 和義
©Komoto Kazuyoshi, jutakui


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