SAPが静かに劣化するとき、現場では何が起きているのか
障害は、突然やってきません。
必ず予兆があります。
ぼくが20年で学んだ、一番重要なことはこれです。
---
今日は、SAPの現場で実際に起きていることを書きます。
技術的な話ですが、IT担当者でなくても読めるように書きます。
「うちのSAPって大丈夫なのかな」と思ったことがある方に、特に読んでほしい内容です。
---
まず、1つ質問させてください。
あなたの会社のSAPシステム、「健康」ですか。
「動いているから大丈夫」と答えた方。
それは、答えになっていません。
動いていることと、健康であることは、別の話です。
---
たとえば、こういうことが起きます。
ある朝、経理部のAさんが月次の締め処理を実行しました。
いつもなら30分で終わります。
その日は2時間かかりました。
「遅いな」と思いながら、Aさんは待ちました。
翌月も、2時間半かかりました。
その翌月、締め処理が途中で止まりました。
システムダウンです。
月末の、一番忙しい日に。
---
このとき、ITの担当者は言います。
「突然止まりました」
でも、ぼくに言わせると、突然ではありません。
2時間、2時間半、と、毎月サインが出ていました。
ただ、誰も「サイン」として読めていなかった。
これが、SAPの静的劣化です。
---
静的劣化には、主に3つのパターンがあります。
**パターン1:データベースの肥大化**
SAPは毎日、膨大なデータを記録します。
受注データ、在庫データ、会計データ。
これらは蓄積され続けます。
削除されることは、ほとんどありません。
データが増えると、処理に時間がかかります。
最初はわずかな差です。
1年、2年、3年と、差は積み重なっていきます。
ぼくが見てきた現場では、3年運用したSAPのデータベースが、当初の設計容量の2倍になっていたケースがあります。
そのシステムは、毎月夜間処理が延滞していました。
「昔より遅くなった気がする」と言われ続けて、2年が経っていました。
**パターン2:夜間処理の肥大化**
SAPには、夜間に自動実行される処理があります。
在庫の集計、売上の締め、請求書の発行。
業務が増えると、夜間処理も増えます。
3年前は夜中の2時間で終わっていた夜間処理が、今は朝7時まで走り続けている。
でも、誰も気づいていない。
なぜなら、朝7時には「終わっている」からです。
ただし、ギリギリで。
その「ギリギリ」が毎月少しずつ広がっていくことを、誰も記録していない。
これが、静的劣化の怖さです。
**パターン3:運用知識の劣化**
一番厄介なのは、これです。
システムを知っている人が、会社を去っていく。
「あの人に聞けばわかった」という人が、10年でいなくなります。
残された人は、ドキュメントを見て運用します。
でも、ドキュメントは5年前に書かれたものです。
その後の変更は、誰かの頭の中にしかない。
こういう現場が、本当に多いです。
---
では、これをどうやって見つけるのか。
ぼくが「静的劣化診断」で見ているのは、3つだけです。
- データベースの空き率と増加速度
- 夜間処理の完了時間の推移
- 運用ドキュメントの最終更新日
この3つを見るだけで、システムの状態が9割わかります。
難しい技術は、使いません。
見方を知っているかどうかの差です。
---
最後に、1つお願いがあります。
今日、自社のSAPの夜間処理の完了時間を、1ヶ月前と比べてみてください。
延びていたら、黄色信号です。
3ヶ月連続で延びていたら、赤信号です。
それだけで、半年先の障害を防げる可能性があります。
「見方がわからない」「誰に聞けばいいかわからない」という方は、ぼくに連絡してください。
まず話を聞くだけでも、構いません。
---
